ボーダー(1982)

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原題も「THE BORDER」(国境)
「レッズ(1981)」と「愛と追憶の日々(1983)」の間の
ジャック・ニコルソン主演の作品
有名でもおかしくないはずのに、知らない作品でした(笑)

メキシコからの密入国の実態と、賄賂で私腹を肥やす国境警備隊の腐敗
そこに難民で子持ちの少女に、愛情を抱く中年男の事情が絡みます

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ロサンゼルスの警官チャーリー・スミスジャック・ニコルソン)は
タウンハウスに住みたいと言う妻マーシーの望みで
彼女の親友サバンナと夫のキャット(ハーベイ・カイテル)の住む
テキサスとの国境の町エルパソヘ引っ越します
そしてキャットと共にレッド隊長(ウォーレン・オーツ)率いる
国境警備隊員として働くことにしました

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すぐにチャーリーを国境地域を案内した相棒が何者かに殺されます
同じ頃、彼は乳のみ子を抱えた少女マリアを川で見かけました
マリアは弟のファンとメキシコから逃げ出してきた難民でした

新しい家では浮かれた妻がローンで買い物しまくり
その支払いのためチャーリーはキャットに持ち掛けられた
不法入国者を北部へ送っては口銭(こうせん)をとる)
裏稼業に手を染めるようになります

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そこには汚職警備隊員たちの手先のメキシコ人が
難民の子を誘拐しては北部の裕福な家庭に養子に出すという
仕事も含まれていました

マリアの赤ん坊もさらわれ、大金で売られようとしていました
彼女は赤ん坊を取り戻すお金を稼ぐために売春宿で働きはじめます

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チャーリーはマリアを探し出し、自分の家に匿います
(しかも妻に面倒を見ろという 苦笑)
そして赤ん坊を救うため、レッド隊長や同僚たちと撃ち合いになります

救い出した赤ん坊をマリアに届けるため車を走らせる
いかにも正義に目覚めた国境警備隊の男の話のようだけど
美人のメキシコ人少女を入国させたかっただけじゃない(笑)
しかも、このあとどうする?

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社会派サスペンスとしてはかなり雑な締めくくりで
たぶん興行も成功しなかったと思うのですが(笑)

川を隔てたあちらと、こちらの、自由奔放で浪費家の奥さんと
靴もなく裸足で誰の子かもわからない赤ん坊を育てるマリアとの対比は
アメリカの豊かさとメキシコの貧しさをうまく表現していたと思います

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そして流れる曲の歌詞が痛ましく心に響く
メイン・テーマの「Across The Borderline」(国境の向こう側に)
「Too Late」(手遅れ)「Skin Game」(ぺてん、いんちき)
いつかゆっくりサントラは聞いてみたいと思います

 

【作品情報】MovieWalker
アメリカ合衆国とメキシコ共和国の国境の町エルパソを舞台に、国境警備員となった1人の男と彼をめぐる様ざまな事件を描く。製作総指揮はニール・ハートリー、製作はエドガー・ブロンフマン・ジュニア、監督は「大本命」(73)のトニーリチャードソン、脚本はデリク・ウォッシュバーン、ワロン・グリーン、デイヴィッド・フリーマン、撮影はリック・ウェイト、音楽はライ・クーダー、編集はロバート・K・ランバート、製作デザインはトビー・ラフェルソンが各々担当。出演はジャック・ニコルソン、ハーベイ・カイテルヴァレリー・ペリン、ウォーレン・オーツ、エルピディア・カリーロ、マニュエル・ビエスカスなど。

イーストサイド・寿司(2014)

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原題も「East Side Sushi」

カリフォルニアに住むメキシコ系のシンブルマザーが
日本独自の修行に耐え寿司職人を目指す物語
中身は深くないものの、わかりやすく見やすい
シンプルなサクセスストーリー

さらりと性別や国籍に関する差別も盛り込まれていますが
日本文化の表現はまともなほうだと思います(笑)
アメリカでもこういう映画が作れるんじゃない
(トランプが大統領に就任する前の作品だけどな)

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シングルマザーのフォアナは一人娘を育てながら
父親の営業するフルーツカートを手伝ってましたが
強盗に売上金を奪われてしまい一文無しになってしまいます
そんな時日本レストラン「大阪」でスタッフ募集の張り紙を見つけ
調理師の経験があることからスーシェフ(副料理長)として応募します
しかし「女性」という理由でキッチンヘルパーとして採用されます
この店に来る客の多くは、日本人男性の寿司職人が
カウンターで握る寿司が目当てでやってくるからです

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最初は箸も使えない、寿司の食べ方も知らなかったフォアナでしたが
日本人の板前の調理技術の虜になっていき、見よう見まねで寿司を研究します
(でもフォアナの父親は連日の寿司に飽き飽き 笑)

板前長のアキはそんなフォアナを応援し
スタッフからも信頼され、厨房が忙しい時には
人気メニューを調理し客に配膳するようにもなりました

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しかしそのことがオーナーのミスター吉田に知れてしまいます
フォアナは板前になるチャンスを要求しますが
ミスター吉田はカウンターにメキシコ人女性が立つことを許さない
フォアナはキレていまい即座に店を辞めてしまいます

これって両方の言い分がわかりますよね
フォアナにしてみれば板前に負けない寿司メニューが作れるわけで
女性という理由でスーシェフになれないのは納得いかない
(香水つけて料理はさすがに日本料理ではNGだけど 笑)

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だけどミスター吉田にしてみれば
カリフォルニアロールのような寿司を作れただけで
一流の板前とは認めないでしょう
味はもちろん、魚のさばきかた、包丁の研ぎかたから衛生面まで
何年もの厳しい修行が必要だと考えるのは当然です

でも若い、そして何より生活に必要なお金が欲しい
フォアナにはそのことが理解できない
かといって洗車場で働いてみたものの、板前への夢が諦めきれない

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そんなとき、テレビで「Champions of Sushi」の応募者募集を知り
フォアナはファイナリストの1人に選ばれます
彼女は早速アキにそれを伝え、フードトラックでメキシコ料理デート
日本人ってジャンクフードも実は好き(笑)

そしてアキは「Champions of Sushi」の決勝戦
店の仕込み中にさりげなく、ミスター吉田に見せるのです
フォアナは惜しくも優勝を逃してしまいますが、彼女の努力に
ミスター吉田は板前としてカウンターに立つことを許します

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それは日系とメキシコ系の違いはあれ、必死で仕事を求める彼女の姿に
自分がアメリカで日本レストランを始めたときと同じ
苦労を見たのだと思うのです

人種や、世代や、性別のジェンダーギャップはなくならないもの
それをセクハラだ、パワハラだとすぐ騒ぐより(悪質なものは別)
本当に自分のやりたいことなら、実力を認めてもらうまで頑張ること

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なんでも南カリフォルニア大学と、アメリ国務省
共同プロジェクトの一環で作られたインディペンデント映画で
モデルになった実在の女性がいるそうです
しかし当時はなかなか配給会社が決まらず、日本では
アメリカ大使館主催で上映会を行ったそうです

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寿司はアメリカンスタイルそのものですが(笑)
何よりも作り手の誠意を感じることができました

 


【解説】amazonプライムビデオより
ングルマザーのフォアナは、地元の日本食レストランで働くことを決意。立ちはだかる困難にもめげす、すし職人になるという夢に向かって奮闘する。CAAMフェスト、ハートランド映画祭、ナパバレー映画祭公式出品作品

 

「アラン・ドロン生誕84年記念祭」に行ってきました

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2019年11月9日
第7回「アラン・ドロン生誕祭」シネマライブが
銀座タクトで開催されました
アラン・ドロンを愛するファンが集まり
映画の名シーンと映画音楽を生演奏で楽しみます

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ドロンさまの秘蔵映像たっぷりの第6回も素晴らしかったですが
今回はよりグレードアップしたように思います
名優ジャン・ギャバンリノ・ヴァンチュラ
「あの胸にもういちど」のマリアンヌ・フェイスフルの
映像もふんだんに使われ、鮮やかに蘇る名シーンと名演奏に
会場から拍手が沸き起こります

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主催者で企画構成で視界も務める
チェイサーさんのセンスと才能が光ります

ライブシネマの詳しい曲目はfpdさんのブログ
https://fpd.hatenablog.com/entry/2019/11/10/120301
でご覧ください(笑)

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会場にはカリスマブロガーfpdさんのほかに
ゆうちゃん、(fpdさんのブロ友)徳さん
愛媛からはジーナちゃんが駆け付けてくれました
そのほか昨年のライブシネマでもご一緒になったみなさまと
今年もお会いできたことを嬉しく思います

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ライブシネマ終了後、チェイサーさんから参加者全員に
アラン・ドロン生誕84年記念祭セットリスト」CDが贈られました
これはドロンさまの映画を愛するファンにとっては、最高のプレゼント

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fpdさんからは「太陽がいっぱい」と「夜の訪問者」の
オリジナルサウンドトラック
東京国際映画祭」と「L.A.コンフィデンシャル」(1997)のパンフレット

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ジーナちゃんからは「四国道後うつぼ屋坊ちゃん」という
和菓子のお土産をいただきました

全国菓子大博覧会道家元賞受賞というだけあり
上品な甘さで緑茶によくあいました

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チェイサーさん、fpdさん、ジーナちゃん
素敵な思い出の品をありがとうございます

 

2次会は10名ほどで新橋の居酒屋へ

写真はイメージです

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2次会からはたっふぃーさんと、たっふぃーさんのブログの
人気コーナー「天然妻A」の奥様も参加してくださいました
チェイサーさんを囲んで映画の話から、そうでない話まで(笑)
盛りに盛り上がりました

写真は料理の一部です

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ちなみにチェイサーさんの一番好きなドロンさまの映画は
やはりその名の通り「チェイサー」(1977)で
好きな女優はロミー・シュナイダーだそうです

3時間+延長1時間があっという間に過ぎ
まだ飲み足りない数名は3次会に(笑)
そこでは札幌のguchさんと電話対談
みんな酔っぱらっているので会話が成り立っていたかどうかは不明(笑)

「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」(水野晴郎さん風に)
映画で繋がる出会いと友情

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アラン・ドロン生誕85年祭」ライブシネマは
2020年11月8日(土)に開催されることが決定
またみなさまとお会いできることを楽しみにしています

 

ボルサリーノ (1970 )

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チェイサーさん主催の「アラン・ドロン生誕84年記念祭」も明日と迫り
(2019年11月9日(土)12:30~(開場12:00)銀座タクト)
勝手に前夜祭も、今夜で終わり(笑)

最後を飾るのは原題も「BORSALINO」
アラン・ドロンジャン・ポール・ベルモンド
三つ揃いのスーツやコートの着こなしが素敵すぎて
モデルのようです

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ブリテッシュスタイルのダブルブレスト(ボタンが2列になっている上着)と
ピークドラペル(テーラードジャケットの代表的なラペル(襟)の形)のスーツは

アメリ禁酒法時代の ギャングスタイルと
フレンチシックをミックスしたデザイン

コーディネートが効いていて、帽子やマフラーなどの小物使いもお洒落
ふたりを見ているだけで幸せになれます(笑)

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軽妙で印象的な音楽はクロード・ボリン
マフィアの紛争ものですが、ゆったりとしたペースと
時にユーモアのある展開にとてもマッチしています

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1930年マルセーユ
3ヵ月の刑を終えた出所したロッコ・シフレディ(ドロンさま)は
ローラ(カトリーヌ・ルーヴェル)という女が働いていたバーにきます
しかし店主に男と出て行き、どこに行ったか知らないと言われ
手下と共にバーに放火します

ローラはフランソワ・カペラ(ベルモンド)という男と一緒でした
ローラを巡り派手な殴り合いが始まりますが
同時にダウンした瞬間笑いだし、意気投合

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はじめはボッカスという親分に気に入られ、小賢しさと運の良さで
小遣い稼ぎをする程度のチンピラにすぎなかったふたり
それがボッカスの黒幕であるリナルディ弁護士(ミシェル・ブーケ)から
魚市場の大半を支配するエスカルゲルに手を貸すよう頼まれます

フランソワは迷ったときコインを投げる
このときはエスカルゲルの奥さんが美人だったから
依頼を引き受けることに決定(笑)

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話し合いの日、フランソワはマダム・エスカルゲルに
花束をプレゼントするため花屋に寄りました
そこにテニスに行く途中の若い女ジレットが現れ彼女に一目惚れ
マダム・エスカルゲルとの約束も忘れてナンパ(笑)
花束はジレットに渡されます

遅刻したフランソワはマダム・エスカルゲルから
ロッコは時間に正確で、花も持ってきたのにと嫌味を言われ(笑)
それでも「腐った魚作戦」(勝手にネーミングしています)に乱闘
エスカルゲルに魚市場の利権全てを与えることに成功します

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そのことに気を良くしたロッコは、ポリの肉市場を襲う計画を持ってきます
ポリとマレロはマルセイユを支配する二大親
あまりに危険な賭けに(コインで)フランソワは断りますが

ロッコとローラ、そして手下たちと湖に泳ぎに行った場所に
ポリ一家と一緒に可愛いジレットの姿がありました
フランソワはポリ親分の目の前でジレットをボートに誘い、ジレットも従う
ジレットはポリ親分が目をかけていた愛人でした

ふたりがボートから戻るとロッコも、ポリ一家もすでに帰ったあとでした
そこにポリの手下が現れジレットを殴り
フランソワはボコボコにされてしまう
フランソワはロッコの、ポリの資金源の食肉倉庫を
襲撃するという計画に乗ることにします

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(「ロッキー」(1976)に出てくるような肉のぶら下がった)倉庫で
牛肉に火をつけ燃やすフランソワとロッコと手下たち
そこにポリの手下たちが現れ銃撃戦となり
襲撃は失敗してしまいます

フランソワはジレットにこの計画を話したのです
そのジレットはフランソワの泊まるホテルの部屋で射殺されていました

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フランソワとロッコはマユセイユから逃げ
ひとまず田舎の隠れ家にひきあげ、仲間が武器を集めます
そんなときリナルディ弁護士が
マユセイユの助役になったと新聞で知ります

まずレストランを出るポリを暗殺
フランソワとロッコはポリの後釜として肉市場を牛耳ります
マレロは自分はポリほど馬鹿じゃないし
リナルディを殺すことだけは許さないと警告します

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ふたりはリナルディを殺すのは市長選挙のあとにしようと約束します
なのにリナルディは背中から撃たれ瀕死の重体
リナルディは病院で刺殺され、マレロ一家との抗争が始まり
フランソワはロッコが裏切ったと思うわけですが

リナルディ夫人が「真犯人を知っている」とロッコに告げに来ます
それはマレロの側近で「ダンサー」と呼ばれる男の罠でした
フランソワとロッコは再び手を組み、マレロの経営するカジノに行き
フランソワが賭けている間、ロッコはマレロの部屋に行き
マレロに銃で撃たれる前に、彼の机の上の(ペーパーナイフと思われる)
ナイフを投げつけます

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これでマルセイユのボスとなった、フランソワとロッコ
ロッコは豪邸を建て、豪華なパーティを開いていました
フランソワはマルセイユを出ていくと言います
「争いはとめどない」やがてふたりの殺し合いになると
じゃあ俺が出ていくと言うロッコ

どちらが旅立つか、またもやコインで決めようとするふたり
だけどロッコは最初からコインのトリックに気が付いていたのです
ボスの座はロッコに譲ろう

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そしてフランソワが建物を出た瞬間、何者かの銃弾が彼を襲う
フランソワの死体を抱きしめ、叫ぶロッコ

「その後ロッコ・シフレディの名を聞いたものはいない」
で、陽気に流れるテーマ曲(笑)

 

この作品はたぶん、ジャン・ポール・エドモンドとアラン・ドロン
正反対なキャラクターと個性の違いを楽しむことを目的としていて
「ゴッド・ファーザー」(1972)と比べるのは無意味だと思います

ちなみに5年後の続編は、フランソワの葬式から始まるそう
来年の「アラン・ドロン生誕84年記念祭」までには
観賞したいと思います(笑)

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残念だったのは肝心の「太陽がいっぱい」(1960)
冒険者たち」(1967)「地下室のメロディー」(1963)の
再見とレビューが今回間に合わなかったこと(涙)

過去記事は以下の通り
今読んだら自分でも恥ずかしいものもあるかも知れませんが(笑)

もし気が向いたら時間のある時にでもどうぞ

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太陽がいっぱい」(1960)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2013/02/09/120552_1
「太陽はひとりぼっち」(1962)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2019/05/31/222940_1
地下室のメロディー」(1963)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2018/02/08/115726_1
「山猫」(1963)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2018/06/23/171657_1
「危険がいっぱい」(1964)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2014/02/17/145835_1
冒険者たち」(1967)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2013/04/18/162527_1
「仁義」(1973)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2019/05/26/163315_1
「暗黒街のふたり」(1973)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2019/05/29/201100_1
「フリック・ストーリー」(1975)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2014/07/10/202803_1
スワンの恋」(1984)
https://burizitto.hatenadiary.jp/entry/2018/10/14/164219_1

 

それではみなさま
銀座で、新橋で、ドロンさまで盛り上がりましょう(笑)

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【解説】KINENOTEより
一九三〇年代のマルセイユに、青春の野心とロマンを生きた二人の男の物語。製作はアラン・ドロン、監督は「太陽が知っている」のジャック・ドレー。ユージェーヌ・サコマノの原作をジャン・クロード・カリエールクロード・ソーテ、ジャック・ドレー、ジャン・コーが共同脚色。撮影はジャン・ジャック・タルベス、装置はフランソワ・デ・ラモティエ、衣裳はジャック・フォントレー、音楽はクロード・ボラン、編集はポール・カイヤットがそれぞれ担当。出演は「暗くなるまでこの恋を」のジャン・ポール・ベルモンド、「シシリアン」のアラン・ドロン、「暗くなるまでこの恋を」のミシェル・ブーケ、「めざめ」のカトリーヌ・ルーヴェル、「5時から7時までのクレオ」のコリンヌ・マルシャン、フランソワーズ・クリストフなど。

 

さらば友よ (1968)

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「Yeah! 」「Yeahー!」

チェイサーさん主催の「アラン・ドロン生誕84年記念祭」
(2019年11月9日(土)12:30~(開場12:00)
勝手に前夜祭もここまできました
お待ちかね、原題も「ADIEU L'AMI」(さらば友よ)

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緊迫感あるコインゲーム
ドロンがブロンソンのタバコに火を付け「イェー」で終わるラスト
「男」を感じる名シーンに痺れます

テーマ曲は「冒険者たち」「サムライ」のフランソワ・ド・ルーベ
要所要所でニクくて素晴らしいメロディを聞かせてくれます

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アルジェリア帰りの兵士たちを乗せた船が、マイセイユに到着し
多くの軍人が港に溢れていました
その中で軍医のディノ・バラン(ドロンさま)は
同じ軍医で「モーツァルトと同じ綴り」のモーツアルトを探している
美しい女性から「バランさんでしょ?」と尋ねられますが
無視して移動します

次に外人部隊アメリカ人兵士プロップ(チャールズ・ブロンソン)が
やってきてバランをコンゴの戦地で人稼ぎしようと誘います
戦争に嫌気が差しているバランはプロップの申し出を断り
先ほどのモーツアルトという軍医を探していたイザベルと会います

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大手広告代理店に勤める彼女は、会社の債権を盗み利用していたけれど
年末の決算が近いのでクリスマスの連休に金庫に戻したい
金庫室は医務室の隣にあり、そこに勤めていて共犯で
死んだモーツアルトの代わりに、バランに仕事を依頼し
バランは彼女の会社に医師として潜り込みます
(そして若い女性社員ばかり身体検査をする 笑)

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バランは金庫室を覗くことができる医務室の小窓に
連写装置のついたカメラをセットし
警備員が金をしまうとき、金庫のダイヤルの組合せ番号を
写真に映して盗み出そうとします

週末の金曜日は帳簿をしまうため金庫が開けることになっていましたが
その日は社員のクリスマスのボーナスと月給を含めて
約二億フランの現金も金庫に入れられることを知ったバラン
バランは債券を返したとき、二億フランをいただこうと計画するのです

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しかしカメラには7つのダイヤルのうち
(警備員に隠れて)3つしか写し出されていませんでした
組合せは無数、時間は金曜の夜から月曜の明け方までの3日3晩

一方のプロップはコンゴ行きの仲間が集まらなかったのか退役
変態の金持ちが集まる秘密売春クラブで詐欺を働いていましたが
一発大きな仕事で大金を稼ぎたいと考えていました

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ふらりとバランを訪ねると、そこはまさにその時
バランが金庫破りをしようとしていた現場でした
プロップが仲間に入れてくれなきゃドアを開けないと言えば
バランは自販機の飲み物を買い占めて隠す意地の張り合い
(男っていつまでたっても子どもよね 笑)
なのにバランが隠した飲料の入れ物を見回りの警備員が持ち帰ってしまう

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それでもひとりよりふたり、同期の桜(笑)
同じ戦地を潜り抜けたふたりには友情が芽生え始め
バランはアルジェリアで一緒だったモーツアルトのことを話し出します
一緒にばかをした、楽しくて最高の奴だったと

バランがイザベルの依頼を引き受けたのは
それがモーツアルトが引き受けた仕事だったからかも知れません

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そうして交代で何千種類もある番号の組み合わせ試し
警備員の見回りのたび隠れる
なのにやっと開けた金庫は空っぽ、しかも金庫室に閉じ込められ
脱出しようとプロップが壁の向こうの電線をナイフで切ったら
電気は消え、空調まで止まるという災難
暗闇の中、金も、水も、食料も、希望もない

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あるのはドロンさまと、ブロンソンさまの光り輝く上半身の裸体だけ(笑)
これぞ「大人のエレガンス」と「男のマンダム」
日本のテレビコーマーシャルで外国人俳優を採用し始めたのは
この作品がきっかけだったかも知れません(笑)

もはや無用になったイザベルから渡された債権に火をつけ明かりを灯す
酸素がなくなるのが先か、脱水症状が先か
そのときプロップが壁に触れると、1か所だけ冷たい場所
通風孔があることを発見します

金庫の番号の組み合わせの次は、通風孔に通じる壁の破壊(笑)
ふたりは金庫の棚で少しづつ壁を壊し、通風孔から脱出
(「地下室のメロディー」もだけどドロンさまには通風孔がよく似合う)

歓びもつかの間、そこに転がっていたのは
死後2日は経っている警備員の死体でした

そこではじめて、バランは罠にかけられたとを悟ります
バランが金庫室に入る前に、金庫の番号を知ってる何者かが
警備員を射殺し、2億フランを盗み、バランに罪をきせようとした

「さらば、友よ」

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バランとプロップは、何があっても知らない者同士だと約束し別々に逃げます
金庫破りと警備員殺しのニュースは派手にかきたてられ
空港で非常線によって捕まったバランを救うため
プロップ奇怪な行動をし自分が逮捕されます

その間バランは、イザベルの行方を探すために
医務室の助手をしていたドミニクの家を訪ねます
助けてくれるのは君だけだ、会社に行ってイザベルのカルテを探してくれと
相変わらずの(笑)キスとベッドイン攻撃で落とそうとするのです

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警察ではプロップはバランのことは知らない
空港で逃げたのは秘密売春クラブの詐欺のせい
バランから電話が欲しいという供述が新聞に取り上げられます

バランはプロップの連絡係の看護師の勤める病院から
警察に捕えられているプロップに電話
その後刑事とカフェで待ち合わせして「夜まで待て」と告げると
あえて警察に尾行させドミニクを連れて
イザベルのカルテを探すため会社の医務室に向かいます
そこに現れたイザベル

同時に警察で金庫のダイヤルの番号を突き付けられたプロップは
それは”ワーテルローの戦い”(1815.6.18)だと告げ

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バランはドミニクのニックネームが”ワーテルロー”であることから
警備員殺しはドミニクと、(同性愛の関係にある)共犯のイザベルで
尾行し潜んでいる警官たちにもわかるよう説明します
犯行がばれ警官の存在に気付き、逃げようとするイザベルとドミニク

武器であるバランのリボルバーにもう弾は入っていない
バランは警官を阻止しようとしますが、ふたりは射殺されます
夜まで待てと約束したのに

バランはイザベルとドミニクに騙された被害者で
プロップは刑事の取引に応じず、売春詐欺で逮捕

警察署で煙草をくわえ連行されるプロップに
さりげなくマッチの火を差し出すバラン

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すれ違うふたりは最後まで目を合わせない
ここ、背筋に悪寒が走るほどかっこいいです

金持ちは保釈金ですぐ釈放されるでしょうし
売春と言っても、美女が回転駐車場で全裸になり
お喋り人形の「パパ~」を真似をするマニアなものなので(笑)
プロップも、よほど金持ちが立場を考えず控訴しないかぎりは
財布を盗んだ罪くらいにしかならない

たとえ善人でなくても、義理と人情を重んじる人間には
神様は罰を与えません

 

「イェー!」(笑)

 

 

【解説】allcinemaより
 A・ドロンとC・ブロンソンの共演による犯罪ドラマで、ブロンソン人気に火をつけた作品。アルジェリア外人部隊から帰還した軍医ドロンは、広告会社に勤める女ジョルジュ=ピコから奇妙な依頼を受ける。彼女が黙って持ち出した債券を会社の金庫に戻して欲しいというのだ。ドロンと同じく戦争帰りのブロンソンは、ドロンの仕事に興味を持ち、二人は金庫に潜入する事となった。こうなれば債券を持ち出す代わりに金庫の金を奪い取ろうという魂胆だ。だが、ようやく開いた金庫の中には金はなく、そのうえ二人は金庫に閉じ込められてしまった……。日本では他に「ジェフ」や「太陽の200万ドル」ぐらいしか知られていない監督ジャン・エルマン(その後は仏製アクションの脚本の仕事が多い)の代表作。スタイリッシュなラスト・シーンはやはりカッコ良い。「禁じられた遊び」から大分成長したB・フォッセーの姿も見れる。刑事役にB・フレ


ッソン。

黄色いロールスロイス(1964)

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原題も「The Yellow Rolls-Royce
これは隠れた傑作でした
恋して、お洒落で、楽しくて、だけどシニカル
心躍るテーマ曲が、ここぞというときに盛り上げてくれる

1台の黄色いロールスロイスが持ち主の手から手に渡る
オムニバス形式で紡ぐ3つの時代の3つの物語

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【第1話】
1930年代初期のロンドン
国務大臣フリントン侯爵(レックス・ハリソン)は
結婚10年目の記念日のお祝いに黄色いロールス・ロイス
愛する妻のエロイズ(ジャンヌ・モロー)に贈ります
しかし妻は侯爵が最も信頼する部下
フェーン(エドマンド・パードム)と不倫していました

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しかし(浮気に気づいた)フェーンの妻の要望で、彼の転勤は決定しており
アスコット競馬で男爵の馬のレースの最中、黄色いロールス・ロイスの中で
最後のお別れをしたいと約束するふたり

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競馬場には、もうひとりフェーンに気があるご婦人がいて侯爵に
駐車場で逢引きすることは「たいしたことじゃない」と耳打ちします
競馬どころではなくなった侯爵は駐車場に向かい
カーテンの閉まった黄色いロールス・ロイスの後部ドアを開ける
そこには抱き合うふたりがいました

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侯爵は自分の馬が優勝しても、ショックで歓びどころではありません
開き直った妻は強い、周りに愛想笑いまでしています
相手がジャンヌ・モローだから余計図太く見える(笑)

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金持ちのご婦人が若い男のパトロンになるのは、よくある話なのか
立場上離婚はできないと話し合う侯爵とエロイズ
エロイズはフェーンと別れる決意をします

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侯爵は黄色いロールスロイスを「忌まわしい」と返品してしまいます
恋と結婚は別物、私だって浮気だけで離婚しません(笑)
ただ元の夫婦の関係を取り戻すのは困難でしょう

 

【第2話】
それから数年後のイタリア
アル・カポネの子分パオロ(ジョージ・C・スコット)は
右腕のジョーイ(アート・カーニー)と
情婦のメイ(シャーリー・マクレーン)をつれて旅行中

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不機嫌なメイが気にいった黄色いロールスロイスを購入して
ピサの斜塔や、大聖堂といった観光地を巡ります
そこでもメイは「柱ばかり」と不機嫌

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そこに観光客相手のカメラマンで、口が巧くお調子者の美男子
ステファーノ(アラン・ドロン)が現れ
パオロは黄色いロールスロイスで彼をローマまで送ることにします
とにかくこの男、女を口説くのが天性(笑)
不機嫌なメイもやがて彼を意識するようになります
面白くないパオロはローマに着く前にステファーノを車から降ろしてしまいます

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その頃マイアミでマフィア同士の紛争が勃発したという電報が届き
パオロは縄張りを守るため、メイを置いて一時アメリカに帰国します
メイは早速ステファーノのいる町に向かうようジョーイに言いつけ
青の洞窟に行ったとき、ステファーノと恋に落ち
黄色いロールス・ロイスの中でふたりきり、情事を繰り返すようになるのです

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博士の異常な愛情」(1964)でキューブリックから
高い演技力を評価されたという ジョージ・C・スコット
同じ年の公開ですが、ここでは本物のイタリア系のマフィアにしか見えない

シャーリー・マクレーンはめっちゃ、めっちゃ、めちゃくちゃキュート
シャーリー・マクレーン史上最高に可愛い

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ドロンさまはハリウッドデビュー作
かなり陽気で真の女ったらしは、どんな女性にもその時は本気
だからモテる(水着姿はダサかったけど 笑)

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でもいちばんよかったのは 運転手のアート・カーニー
とにかく頭がいいし、人間ができているし、口が堅い
信頼できる男とはこういう男のこと

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パオロは凄腕の殺し屋
ジョーイはメイに、ステファーノを愛しているのなら
彼のために別れるべきだと教えます

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ステファーノに観光案内の礼を言い、写真の代金を渡すメイ
しかしステファーノは「売り物ではない」とお金を返し
メイが去ったあとメイの写真を破り捨てるのです
いくら好きでもマフィアの女と付き合ったらどうなるか
彼もわかっているはず

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そしてジョーイとメイは何事もなかったように
パオロと再会し旅を続けるのです

 

【第3話】
1941年、イタリア
アメリカのミレット夫人(イングリッド・バーグマン)は
ユーゴスラビア皇后に国境を越えて会いにいくため
黄色いロールス・ロイスを手に入れます
お側付きの女性があちこちで戦争が始まって
危険だと言っても聞く耳をもちません

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その話を傍で聞いていたダビッチ(オマー・シャリフ)と名乗る男が
自分も新しい王に会うためにユーゴスラビアに行く用があるので
同乗させてくれと願いでるのです

しかし国境付近になって彼はパスポートを投げ捨て
どうにか国境警備隊を切り抜け、国境を渡ってほしいと
トランクに身を隠します

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このミレット夫人の愛犬が馬鹿でねえ(笑)
危機を助けるんじゃなくて、危機を誘ってしまう
国境でダビッチが隠れているトランクに向かって吠える、吠える
国境警備隊がトランクを開けろと言った瞬間
空襲がはじまり、運転手は逃げてしまいましたが難を逃れます

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ダビッチは国外追放された対ドイツのパルチザンでした
ドイツの侵略の危機にさらされている祖国を救うため戻ってきたのです
ミレット夫人はダビッチを村で降ろし、ホテルに向かいます
ところがディナーの最中にまたもや空襲されてしまいます

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このイングリッド・バーグマン、すごくいい
大げさな演技は相変わらずだけど(笑)
吠えてばかりいる愛犬を放り投げたり
爆撃中でも逃げもせず、シャンパンを開け食事をするという大雑把さ

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被害の大きさを知り、レストランのテーブルクロスをひっぱがし
負傷者の包帯にして、豪華なドレス姿で人命救助
ダビッチの同志を集めるため、何度も黄色いロールスロイスを走らせる
タフで男勝りで、私が見たバーグマンの主演作の中で一番カッコイイ

アンソニー・アスキス作品はお初なんですけど(笑)
俳優の長所を最大限に引き出せる監督だと感じます
大物俳優たちが、これだけ活き活きと光り輝いて
楽しそうに演じる姿はそう見れるものではありません

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ダビッチはミレット夫人に感謝しつつ、同時に愛も芽生えます
で、ここまできたらもうおわかり(笑)
やっぱり黄色いロールスロイスの中で結ばれます

ミレット夫人はナチの非道を訴えるため
ダビッチと別れ、アメリカに帰国する決意をします
船に積まれる黄色いロールスロイスは傷だらけで埃だらけでしたが
ミレット夫人にとっては、何よりの誇りになったことでしょう

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好きな人との別れは辛いけど、次の新たな人生がある
だから前を向いて胸を張って進もう
そんな気持ちにさせてくれる

 

ドロンさまの出番は多くないものの(笑)
こんなフルコースを楽しめる映画はそうありません
お薦めです

 


【解説】KINENOTEより
「予期せぬ出来事」のコンビ、テレンス・ラティガンの脚本を、アンソニー・アスキスが監督したオムニバス・ドラマ。撮影は「サーカスの世界」のジャック・ヒルドヤード、音楽は「第7の暁」のリズ・オルトラーニが担当した。出演は「マイ・フェア・レディ」のレックス・ハリソン、「大列車作戦」のジャンヌ・モロー、「何という行き方!」のシャーリー・マクレーン、「さすらいの狼」のアラン・ドロン、「訪れ」のイングリッド・バーグマン、「日曜日には鼠を殺せ」のオマー・シャリフほか。製作はアナトール・デ・グランウォルド

恋ひとすじに(1958)

 

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原題は「CHRISTINE」(クリスチーヌ=ヒロインの名前)
ドロンさま無名の23歳、3作目の主演で初めての主役級
一方のロミーは、皇后エリーザベトを演じたオーストリア映画
「プリンセス・シシー」(1955)が大ヒット
16歳でトップスターになり絶大な人気を誇っていましたが

”シシー”シリーズの4作目が、親への反抗もあり
どうしてもいやで、フランス映画への主演を決めたそうです
当時19歳のロミーが、たまたま雑誌で見かけたドロンさまを
相手役に指命したのも運命でしょう

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しかしまだこのときロミーはフランス語が話せず
ドロンさまもドイツ語がわかりません
ロミーはドロンさまのことを低俗な男だと思い
ドロンさまもロミーのことを感じの悪いと
お互いの第一印象は最悪だったそう (笑)

なのに撮影中に映画の中恋が、本物の恋に変わってしまった

翌年ふたりは婚約を発表
しかしドイツのマスコミからは、ドイツにいる家族と
ファンを裏切った女優だと叩かれたそうです

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この頃のロミーを、日本人に勝手に例えたらエビちゃん蛯原友里さん)かな
純粋なイメージで、白のドレスが似合う
笑顔が可愛くて見ているだけ幸せな気分になる

それなのに、ロミーの未来を予期していたように
この作品のラストも
実際のロミーの晩年も(睡眠薬とアルコールの過剰摂取)
最期は不幸に終わります

ゴシップはこれくらいにしておいて(笑)

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1906年ウィーン、若い少尉フリッツ(ドロンさま)は
エッガースドルフ男爵夫人、レナ(ミシュリーヌ・プレール)との
不倫がだんだんと重荷になっていました

親友のテオ中尉(ジャン・クロード・ブリアリ)は
そんな関係は終わらせ、もっと遊ぶべきだと言います
将校たちは酒場で、女の子をナンパできなかったら
皆にシャンパンを奢るという賭けをして楽しんでいたのです

テオはミッツイーという女の子と仲良くなり
ミッツイーの親友、クリスチーヌ(ロミー・シュナィダー)を
フリッツに紹介します

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クリスチーヌにはつい先ほど喧嘩別れしたばかりの冴えない彼氏がいて
フリッツは男爵夫人に別れを切り出せず悩んでいました
これでは話が弾むはずもありません
それでも男のマナーとして彼女を家まで送り届けます

テオとミッツイーはそんなふたりを、何とかくっつけようとします
自分たちのデートに誘い、恋のアドバイス
コメディタッチながら、ここらへんの演出は
なかなか説得力があります

結局クリスチーヌとフリッツを放って
木陰でふたりでイチャするだけなんですけど(笑)

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それでも何度かデートして(山へのドライブで木霊のシーンがいい)
ふたりはお互い惹かれあってきます
クリスチーヌはオペラ座の歌手のオーディションを受け
フリッツはクリスチーヌに結婚を申し込む決意をする

そこに夫の海外出張に同行していた男爵夫人が帰国し
合鍵でフリッツの部屋に入るとツーショット写真を見つけてしまう
そこに電話が鳴り、電話の向こうのフリッツは別れたいと告げます
夫人は、天覧オペラの警備の任務があるというのに
翌日必ず家に来るようにフリッツ命令するのでした

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夫人がフリッツの部屋を出るところに
弁護士のヴィンマーが偶然通りかかり、男爵に報告します

そんな時クリスチーヌはオペラ座に採用されたことで喜びで一杯
天覧オペラではオーケストラ演奏する父の応援にミッツイーとやってきます
テオとフリッツは警備席に着き、会場が暗くなると同時に
フリッツは任務から抜け出し男爵邸に向かいます
夫人とシャンパンを飲み、正直な気持ちを話し愛の手紙を暖炉で燃やす
これで終わりのはずでした

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しかし最終幕前の休憩で、フリッツがいないことに気付いた男爵は
急いで馬車に乗り自宅に戻り、不倫の証拠を探します
するとチェストに見覚えのない鍵が入っていました
男爵がフリッツの部屋に向かい、ドアの鍵穴に差し込む
夫人が隠していたのはフリッツの部屋の鍵でした

別れた男との記念品なんて取っておくもんじゃない

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男爵は名誉を回復するため、フリッツに決闘を申し込みます
しかし男爵側の仲介人による条件は、男爵が先に引き金を引くという
フリッツにとって不利なものでした
テオはいちどは決闘の証人を引き受けたものの
納得できず除隊を決意します

決闘の朝、銃声は一発だけ
テオとミッツイーは決闘の場所に走り
クリスチーヌの家にフリッツの死を知らせに行きます
クリスチーヌはショックを隠せない

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いつもの朝と同じく、軍の行進のマーチが鳴っている
だけどそこにフリッツはいない
クリスチーヌはバルコニーまで走り、視界から消えてしまいます
ほんの一瞬の隙に、飛び降り自殺をしてしまったのです

楽しいラブコメ調から、いきなり主役のふたりが死ぬという(笑)
さすがにこの結末は予想できなかった

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でも一番辛いのはお父さんだよな
男手ひとつで育てるのに苦労もしたことでしょう
そんなやさしくて、可愛い娘が突然いなくなってしまう

そんなことは男爵にも、夫人にも
貴族ににとっては関係のないことなのだろうけれど

 

 

【解説】KINENOTEより
「セクシーガール」のロミー・シュナィダーと、「お嬢さん、お手やわらかに!」のアラン・ドロンを主演させた独仏合作の作品。アルトゥール・シュニッツラーの有名な戯曲『恋愛三昧』の映画化である。一八世紀のオーストリアの都ウィーンに舞台をとって、ウィーン情緒たっぷりな恋の物語がくりひろげられる。監督にあたったのは、「巴里野郎」を作ったピエール・ガスパール・ユイ。ピエール・ガスパール・ユイ自身と、ジョルジュ・ヌヴー、ハンス・ウィルヘルムの三人が原作戯曲を共同で脚色し、撮影を担当したのは「モンパルナスの灯」のクリスチャン・マトラ。音楽をジョルジュ・オーリックが受けもっている。他の主演者は「いとこ同志」のジャン・クロード・ブリアリ、「肉体の悪魔(1947)」のミシュリーヌ・プレール、「レ・ミゼラブル」のフェルナン・ルドウ等。製作はミシェル・サフラ