地下室のメロディー(1963)

 
 
 
原題も「LAMELODIE EN SOUS-SOL
この作品での金庫の警報音のたとえ
 
前に見た時はカラーだった記憶があるのですが
モノクロ版と着色版、両方あるのですね
やっぱりモノクロの方が良い感じ
 
刑務所から出所したシャルル(ギャバン59
街は開発され風変わりし、時代遅れになってしまった自分
残りの人生を豪遊して暮らそうと
カンヌのカジノから10億フラン強奪を企てます
 
 
 
 
そこで服役中に知り合ったチンピラ、フランシス(ドロン28歳)
フランシスの義兄であるルイ(モーリス・ビロー)を仲間にします
シャルルが筋書きを書き、実行犯はフランシス
 
昔の仲間のマリオからは断られてしまったり
フランシスが軽率そうだったり
最初から不穏な雰囲気が作り出されていました
 
しかしシャルルにはもう
通気口を潜ってゆくような動きは出来ない
多少浅はかでも、若造に頼るしかないのです
 
 
 
 
案の定、計画にはほころびが出て
カジノの経営者に強い印象を残すようなカバンを使ったり
新聞にはフランシスの姿が写った写真が載ってしまいます
追い詰められたフランシスはバッグをプールの中に入れてしまう
なぜきちんと留め金をしていなかったのか
 
プールの水面を埋め尽くす札束
無表情でそれを見つめるシャルル
このラストはやはり強烈で
このシーンのために作られた映画でしょう
 
フランシスは逮捕され、彼が口を割ったら自分も捕まるだろう
この年になったらもう死ぬまでムショから出られない
そんな覚悟と絶望の顔
 
 
 
 
シャルルに報酬の金を断ったルイの言葉が蘇ります
 
「金はいらない
 金は使うとなくなると気付いた
 使い切ればまたラクに稼ぎたくなる
 義弟の誘いに応じ続け いつか刑務所にいくことに
 だから金はいらいない 味をしめたくないんだ
 前は靴磨きやベッドメークするのも苦ではなかった
 今じゃ女房の料理に満足できないし
 ガキを名門大にやりたい
 車も高級車にのるのが当たり前になってる」
 
贅沢に慣れると、お金がなくなっても
そこから抜け出すのがとても難しいことがわかります
働かずして、他人の金を詐欺や泥棒で奪い
豪遊する人間の気持ちがよくわかる名セリフ
 
ミシェル・マーニュの音楽も雰囲気があり
犯罪サスペンスながらも
人生の哀歌を感じさせてくれる名作でした
 
 


 
【解説】allcinemaより
ジャン・ギャバンアラン・ドロンの2大スターが共演した犯罪アクション。五年の刑期を終え出所した老ギャングのシャルル。彼は青年フランシスと組み周到な計画を立てて、再びカジノの現金を強奪する。そして、計画は成功したかに思えたが……。洗練されたモノクロの映像、モダンジャズの音楽、そして何より主人公2人の卓越した心理描写が光る、フランス映画史に残る名作。