天国の日々(1978)


 
 
「人は誰しも、天使の顔と悪魔の顔という、ふたつの顔を持っている」

 
風に揺れる黄金色の麦畑
光輝く川面
夕陽の残照

ネストール・アルメンドロスのカメラが素晴らしい
テレンス・マリック監督らしい、映像美を追求した作品でしょう

 
大金持ちの農場主のチャック(サム・シェパード)に日雇いとして雇われる
殺人犯のビル(リチャード・ギア)
チャックが余命1年程度の不治の病に罹っていると知ったビルは
恋人アビー(ブルック・アダムズ)を自分の妹と偽って
ビルと結婚するように仕向けます

そして、チャックのお金と、天国のように美しい広大な農園で
ビルとアビーと、ビルの本当の妹リンダ(リンダ・マンズ)は
贅沢な暮らしに溺れます

真面目で純真なチャックが、あまりにも可哀相でした
彼を襲う、嫉妬と疑惑の苦しみ
 
ピストルでビルを撃ち殺そうとするチャック。
でも逆に刺し殺されてしまう
逃亡したビルもやがて警察に射殺されます

後半の展開は、いかにもアメリカン・ニュー・シネマ的でした

 
若い地主を演じたサム・シェパードが光っていました
ノスタルジーのある映像は、まさしく見る価値ありです
ただストリー性は、好みは分かれるかもしれませんね
 


【解説】allcinemaより
第一次世界大戦が始まって間もない頃、シカゴから放浪の旅に出るビリー(R・ギア)と妹リンダ(L・マンズ)、ビリーの恋人アビー(B・アダムズ)の3人はテキサスの農場で麦刈り人夫の職につく。若き農場主(S・シェパード)はアビーを見初め、彼の命が長くない事を知ったビリーは、楽をしようとアビーに形だけの結婚を促す……。「地獄の逃避行」(73)で一躍脚光を浴びたT・マリックが、今世紀初頭のテキサスを舞台に、若者たちの葛藤を描いた秀作ドラマ。そしてそのドラマを完璧にサポートしたのがN・アルメンドロスによる撮影(オスカー受賞。H・ウェクスラーは追加撮影を担当)。穂に光受け黄金色に輝く麦畑、四季折々につれ変化を見せる農場などの自然描写、季節労働者大道芸人たちの横顔など、まるで絵画を思わせる美しい映像の集積は、ドラマと見事に融合しつつ、ある部分ではドラマをも越える訴求力を放っている。役者陣も好演で、語り部たるリンダに扮したL・マンズの少女ぶりとその眼差しも忘れ難い。