レニングラード・カウボーイズ、モーゼに会う(1994)

原題は「Leningrad Cowboys Meet Moses」

伝説のバンドふたたび

アメリカ、フランス、ドイツ、チェコポーランドカザフスタンの3大陸をまたぎ

45人のチーム、わずか6週間という超短期間で制作された

アキ・カウリスマキによる「出エジプト記」でなく「出アメリカ記」

全編に赤を配色しているのは小津へのオマージュ

バンドが苦役として使われるのはブレッソンバルタザールどこへ行く

もみの木を燃やすのはタルコフスキーの「サクリファイス

・・・の、パロディ(たぶん 笑)

アメリカ土産には「自由の女神」(自由の象徴)の鼻を奪い

飛行機の翼にしがみつくのはトム・クルーズにパクられています(笑)

 

しかしアキの旧約聖書(モーゼ巡礼の旅)と共産党宣言へのジョークは理解されず

映画人生で初、世間の風当たりの冷たさを目の当たりにします

以後アキはフィンランドを出ることなく

二度とロードムービーを撮ることもありませんでした

確かに1作目のほうが面白いですし

ウケなかった理由もはっきりしています

映画愛と音楽愛のヲタク度が高すぎてわからない(笑)

故郷のシベリアを去ってから5年

メキシコで成功したのもつかの間、数年で落ちぶれてしまった

レニングラードカウボーイズ

テキーラの飲みすぎでメンバーの半数が死亡し

残った5人(メキシコ部)は犯罪に巻き込まれ

荒野に逃げ込み細々と農業で生活をしていると

ある日匿名の電報で仕事の依頼がきます

 

早速ニューヨークに向かい、ホテルで演奏を披露するメキシコ部

しかし客のノリは悪く、落ち込む彼らの前に

行方不明になっていた元マネージャー

ウラジミール(マッティ・ペロンパー)が現れます

 

長いヒゲを生やしたウラジミールは

「彼は死に、モーゼに生まれ変わった」と自らを指導者だと名乗り

「故郷に帰らせてやる」と海を割るのではなく、プールの上を歩いて見せ(笑)

導くというより、強制的にボートに乗せ脱出させます

それから故郷への土産に自由の女神の鼻をもぎ取って盗み

CIAの諜報員ジョンソンに追われる身となります

 

モーゼは飛行機の翼にしがみついて密航

飛行機から落ちると、そこはフランスの海岸でメキシコ部もいました(笑)

さらにブルターニュで新メンバー(グレーのスーツの6名)と合流します

赤いマイクロバスでビンゴ大会(老人ホーム)の会場に行き

新メンバーが演奏を披露(旧メンバーは見ているだけ)

 

モーゼは「瞑想する」と、売上金を持ちひとりバーで食事をし

腹を空かせたバンドメンバーは路上で子どもに金をせがむ身分

エジプト人イスラエルの民に恵みを与えず苦しめる)

食事にありつこうと、モーゼのいるバーに集まると

音楽プロデューサーを名乗る男(CIAのジョンソン)が現われ

演奏契約を持ちかけます

 

大金を受け取ったモーゼ潰れ

その隙にジョンソンがバスから女神の鼻を奪おうとすると

こっそりついてきた(ちっちゃいリーゼントが少し伸びた 笑)イゴールに殴られ

から弾を抜き取られ、財布を奪われます

バンドはドイツのフランクフルト入りし

(指名手配されている)モーゼはガソリンスタンドの店員に通報されると

バンドとともに逮捕され留置所に入れられますが

イゴール地元の不良を集め、いとも簡単に脱獄に成功(笑)

 

バーで女性歌手と「バビロンの川」をセッションすると

(ジャマイカのレゲエグループによる聖書の詩篇19篇と137篇を翻案した歌)

彼女に惹かれたイゴールは花束をプレゼントします

バンドが難民キャンプで「ロンリー・ムーン」を演奏しているとき

ジョンソンは女神の鼻を積んだバスで逃げますが

NATO軍の基地の前で強盗にバスを奪われ、残ったのは聖書だけでした

任務に失敗し絶望したジョンソンは聖書を読み感銘を受け

預言者イリアに変身します(笑)

一方、ライプツィヒ駅では、モーゼと新メンバーのレーニン

聖書と共産主義宣言(プロレタリア独裁の訓示)のフレーズの読み競いをし

(どちらの主義主張もアキは批判しているように思える)

「くだらねえ」と呆れているメキシコ部に

故郷に帰る本当の理由を「聖なる子牛が生まれた」からだと説明します

チェコに入国したバンドに、預言者イリアが加入し

「ギニワッチ」のボーカルをノリノリで務めると大いに盛り上がります

(客席に本気で泣きそうなくらい笑ってるおばちゃんがいる 笑)

ポーランドでは、バンドメンバーひとりが病気になり

病院に行くお金がないというモーゼ

病気のメンバーを病院の玄関先に置き去りにすると

バンドは病院代を手に入れるため雨の中演奏し

信頼を失ったモーゼは、ビリヤード場でお金を稼ぐことにします

一命を取り留めたメンバーを迎えに行ったイリアは

「女神の鼻を戻すのを手伝ったら人気歌手にしてやる」と約束し

退院させます

なんとか信用を取り戻したモーゼは、ロシアとの国境にたどり着くと

はじめてバンドにパンを分け与え(魚はひとり占め)

「(モーゼは)約束の地を決して見たことがない

皆が国境を越えている間、酒のボトル(中身は偽物)を税関職員渡し

自分だけ西側に残ると再び姿を消すのでした

(エジプトを逃れカナンの地に帰るが、モーゼは戻ってこなかった)

故郷に帰ったバンドメンバーは子牛を見つけると厩で世話をし

(キリストが生まれたのは馬小屋でなく正確には厩(家畜小屋))

その夜、家族らは彼ら(放蕩息子)帰りを祝福しパーティーをします

(おばあちゃんまでリーゼントなのがかわいい 笑)

ジョンソンはひとり女神の鼻をかかえて、酒を飲み

「いとしのクレメンタイン」を歌うのでした

 



【解説】映画.COMより

トンガリリーゼントにサングラスのロックンロール集団、レニングラードカウボーイズを再び主演に迎え、アキ・カウリスマキが贈るシリーズ第2弾。メキシコでヒットしたものの数年後にはすっかり落ちぶれていた彼らの前に、失踪していたマネージャーが突如現れる。自分はモーゼに生まれ変わったと宣言する彼に導かれたレニングラードカウボーイズは、ボートで大西洋を渡りヨーロッパを転々とした後、ついに故郷ツンドラへ辿り着く。

1994年製作/94分/フランス・イタリア・スウェーデンフィンランド合作
原題:Leningrad Cowboys Meet Moses
劇場公開日:1994年