神様メール(2015)




「人生はスケート場だ  大勢が滑って転ぶ」
原題は「The Brand New Testament」(最新約聖書


面白かったです
発想的には、イエスブッダが立川のアパートでつつましく同居する
中村光氏の漫画「聖☆おにいさん」のような感じといいますか









しかし「聖☆おにいさん」が超癒し系に対して
本作の神様は超「クズ親父」
パソコンで人間に「あるある」災害を与え
運命を弄んでいます
(「普遍的な不快の法則」は笑えます)

この「クズ親父」な神の解釈は実に見事です
どうして世の中には災害や戦争がおこるのだろう
なぜ人は憎しみあうのだろう
そんな疑問がスッキリと解明されました
神様がイジワルだからなのです 

実際「旧約聖書」では「敵を徹底的に殺せ」
と教えられるそうです
人間が「いやです」と断れば「子どもを捧げろ」と命令され
「大洪水を起こす」(ノアの方舟)、疫病だ、大量虐殺だと
ここでの神そのもの

しかも「クズ親父」毎日酒を飲み、煙草を吸い
ジャンクフードを食べ散らかし
奥さん(女神)には文句を言い、娘にはDV





ついにキレた娘のエアは、お兄ちゃん(キリスト)の
使途を18人まで増やして「新・新約聖書」を作るという
アドバイスに従い、人間たちに「余命」をメールしたあと
「クズ親父」のパソコンにイタズラをして人間界に脱出します

そして余命を知った使徒たちとエアは出会い
かれら残りの人生の過ごし方を「新・新約聖書」として
書き残していきます


独特の世界観のあるシュールなオシャレ映画ですが
避けられない寿命を恐れるより
今大切にすべきことはなにか?というテーマは
とてもわかりやすいです
「本来の自分になる」ことだと思います

また、登場人物が皆魅力的なのです
大・大女優のカトリーヌ・ドヌーヴ
まさかのゴリラとメイクラブはよくやりました(笑)





神が洗濯機工場で働かされる様はザマーミロ
パソコンはリセットされ、女神が作った空は花の刺繍模様
そして偏見も差別もない、自由な世界がやってきます

ポップでセクシーで可愛いコメディ映画でしたが
キリスト教の信者の方でも、古すぎる思想を押し付けられるより
本当に「新・新約聖書」を求めている人が
多いのではないかと感じました



【解説】allcinemaより
トト・ザ・ヒーロー」「ミスター・ノーバディ」のベルギーの鬼才ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が、神様は退屈しのぎにパソコンで人々の人生を弄ぶ意地悪なおっさんという過激な設定で贈る奇想天外ファンタジー・コメディ。そんな神様の10歳になる娘が反乱を起こし、人々の余命をメールで知らせてしまい、世界中に混乱が広がる中、人間界に舞い降りた娘が悩める人々と繰り広げる奇跡の数々を、シニカルかつ遊び心あふれる筆致で描き出す。出演は神様役に「ココ・アヴァン・シャネル」のブノワ・ポールヴールド、その娘役に「サンドラの週末」のピリ・グロイン。共演にカトリーヌ・ドヌーヴヨランド・モロー
 世界を創造した神様はブリュッセルのアパートで家族と暮らしていた。神様はパソコンで世界を操り、人々の生活を面白半分に引っかき回して楽しんでいた。10歳の娘エアはそんな父に反発し、父のパソコンで全人類にそれぞれの余命を知らせるメール送信してしまう。そして兄JC(イエス・キリスト)のアドバイスに従い、そのままアパートから家出すると、大混乱の街に繰り出し、6人の使徒を探す旅に出る。こうして、冒険家になりたかった会社員や殺し屋に転身した元保険セールスマン、夫との関係が冷え切った主婦など、悩める人々と巡り会い、小さな奇跡を起こしていくエアだったが…。