メイド・イン・USA(1966)

「私には全てが中国」

原題は「Made in U.S.A.

原作は実際に起こったモロッコの左翼政治家失踪事件

「ベン・バルカ事件」をヒントに書かれた

リチャード・スタークの「悪党パーカー/死者の遺産」(The Jugger

相変わらず意味不明で、噛み合わない会話(笑)

舞台のように場面と人が入れ替わり、スカした哲学的なセリフ

(一片のピザを誰と食べるについてひたすら言及している)

誰が警察で、ギャングで、敵か味方なのか

理解しようとするだけでもテンテコ舞い

わかったのは、アンナ・カリーナが、寄りも引きのカメラも可愛いということ

真っ青のアイシャドウと囲みメイク

バーで歌うマリアンヌ・フェイスフルも可愛い(出番は少ない)

ローリング・ストーンズの「As tears go by」を歌うニクさよ

ギターで弾き語りする日本人女性の名前は「mizoguti」(笑)

病院で包帯ぐるぐる巻きの女が誰かはまったくの謎

 

そして「メイド・イン・USA」とは一体何だったのか

1968年、ジャーナリストのポーラ(アンナ・カリーナ

ボーイフレンドのリシャールからの電報を受け取り

彼にうためアメリカのアトランティック・シティに向かうと

彼が(おそらく心臓発作で)死んでいるのを発見します

リシャールの同僚だったというエドガー(エルネスト・メンツェル)

ポーラにリシャールの死を調べる協力を申し出る

彼女は彼を殴りつけ隣の部屋に引きずり込みます

そこにはエドガーの甥であり作家のデヴィッド

デヴィッドの彼女ドリス・ミゾグチがいました

リシャールは共産党員向けの週刊誌の論説主幹で、党の指導者でした

同じようにアトランティック・シティの前市長で共産党員だった

ラクロワも暗殺されていたことがわかります

独自に捜査を続けるポーラを

地元警察のウィドマーク警部(ラズロ・サボ)と

彼の部下のシーゲル(ジャン=ピエール・レオ)が尾行

ポーラが何者かに殴られ、目が覚めるとそこはガレージで

ウィドマークもいました

ウィドマークはポーラに、リシャールラクロワの死に関する証拠

隠し場所を知ってるか尋ね

リシャールが共産党政治的支持してい音声テープを聞かせます

ポーラとウィドマークがホテルに帰ると

エドガーとドリスが殺害されていて大騒ぎ

パリからアルドリッチ警部が捜査に呼ばれて来ています

ウィドマークはアルドリッチ警部から

リシャール殺しの犯人だとわれているので

リシャールが隠した証拠品を探すのを手伝って欲しいと頼みます

しかしポーラも彼が犯人だと疑っていました

アルドリッチ警部はポーラを尋問しますが

デヴィッドがエドガーとドリス殺しの犯人は彼女ではないと評言し釈放

(権力のある何者かにより)捜査中止の命令を受けたアルドリッチ警部は

パリに戻ることをポーラに告げます

さらにポーラが調査を続けていくと

リシャールが秘密の別荘を所有していたことがわかります

部屋で証拠品を捜索しているところをポーラに見つかったシーゲルは

エドガーとドリスを殺したことを教え

金と引き換えにリシャールの秘密の別荘に連れて行くと申し出ると

ポーラは彼を射殺します

リシャールを殺したのもウィドマークとシーゲルだと感づいたポーラは

ウィドマークとリシャールの別荘へ行くことにします

そしてお互い信頼方法として

ポーラはエドガー殺害告白

ウィドマークはリシャール殺害の告白を書き交換することにします

ウィドマークの告白文を受け取ったポーラは

エドワード・ルートヴィヒ博士という共産党の大物議員が関係していて

地元共産党内の左翼過激派が権力掌握するため

穏健派の左翼一掃しようと、リシャールラクロワ市長の殺害を依頼

(リシャールが断ったためウ、ィドマークがシーゲルが殺した?)

さらに事件を隠蔽するためリシャールも殺したのです

ポーラがポケットに隠している銃に手を伸ばす

それに気付いたウィドマークは彼女を撃とうとします

そこに、後ろから近づいてきたデイヴィッドがウィドマークを撃ち殺

ポーラはデビッドを撃ち殺すのでした

高速道路の料金所に立っていポーラは

友人のフィリップ・ラブロ車に乗り込みます

フィリップファシストの蜂起が起こるとは思ないと言う

ポーラは必ずあると答え、彼らに反撃する力を持ちたいと答えます

結局、政治的には左翼も右も同じ

違う呼び方にするべきだというフィリップ

ポーラはその問題を議論すべきか尋ねるのでした

つまり「メイド・イン・USA」はアメリカ人の原作であること

そして穏健派の共産党員暗殺が

アメリカの象徴のひとつとだということなのです(たぶん)

 

 

【解説】映画.COMより

内務省直属の秘密警察とギャング組織の、つながりと機構を一挙に露出して、仏、モロッコ両政府を揺るがす暗黒事件となった《ベン・メルカ事件》を素材に、架空の都市で謎の死をとげた愛人の死因を調べる女事件記者が刑事やギャングにまとわりつかれる。そして、暴力と殺戮と政治の世界が展開される架空の劇に彼女は如何にして解決をつけるか?製作はローマ-パリ・フィルムのジョルジュ・ド・ボールガール、監督・脚本は「カラビニエ」のジャン・リュック・ゴダール、原作はリチャード・スタークの小説“ザ・ジャガー”、撮影は「カラビニエ」のラウール・クタール、音楽はベートーヴェンロベルト・シューマンから、またマルアンヌ・フェイスフルが自身で出演してローリング・ストーンズの“As tears go by”を歌う。編集はアニエス・ギュモが各々担当。出演は「アルファヴィル」のアンナ・カリーナ、ラズ口・サボ、「夜霧の恋人たち」のジャン・ピエール・レオー、その他イヴ・アルフォンソ、ジャン・クロード・ブイヨン、小坂恭子、マリアンヌ・フェイスフル、エルネスト・メンジェル、声だけのゴダールなど。イーストマンカラー・テクニスコープ。

1966年製作/フランス
原題:Made in U.S.A.
配給:フランス映画社
劇場公開日:1971年1月15日

 

6才のボクが、大人になるまで。(2014)

「それで要点は?」

「要点なんかないよ」

原題は「Boyhood」(少年時代)

 

まるでどこかの家庭のドキュメンタリーを見せられているようですが(笑)

れっきとしたフィクション

12年もの間、毎年同じスタッフ同じキャストが集まり

脚本にミーティングで出たアイディアや

子どもたちの成長に合わせた変更を加えながら撮影していったそうですが

そのようなタイムラグがあったとはとても思えません

主人公を演じた少年は、撮影が始まった当時のことは覚えておらず

12~13歳頃になって演技を意識するようになったそうです

姉を演じたのは監督の実娘で、さすがに途中で

「私の役、死んじゃだめ?」と監督に頼んだそうです(笑)

なんとか撮影終了まで頑張りました

 

母親の離婚、引越、再婚によるDV、また引っ越しと

そのことに振り回される姉弟の物語

でもこれは子どもたちの成長記録というより

親が親として成長して、子どもが大学に進学するまでの

責任と役目を果たし終えるまでの話なんですね

なので若い人からしたら、なんて身勝手な大人にしか

見えない内容なんですけど(笑)

 

ときどきグサッとくる、いいセリフや

なるほどな、と思うアドバイスもあって

(ただし100%正しいとは言えない 笑)

ラストはハッピーエンド、ほっこりするものがありました

お爺ちゃんからの誕生日のプレゼントがライフルだったり

ティーンがお酒を飲んだりマリファナを喫っているところは

さすがにお国柄や(パーティ)文化の違いを感じましたけど

 

6歳になるメイソンJr.(エラー・コルトレーン

ママのオリヴィア(パトリシア・アークエット)と

姉のサマンサ(ローレライ・リンクレイター)と3人暮らし

ママが新しい彼氏と別れてしまいまい

実家のあるヒューストンに帰り

おばあちゃんの助けを借りて大学に通う決意をします

そこにアラスカへ行っていたバンドマンのパパ

メイソン(イーサン・ホーク)が1年半ぶりに子どもたちに会いに来ます

メイソンは子煩悩でやさしい性格ですが

夢追い人でお金もなく、家庭には向かない人間

帰宅したママと顔を合わせる喧嘩になり、怒って帰ってしまいます

間もなくしてママは大学教授のビルと再婚

ビルミンディとランディというふたりの子持ちでしたが

ビルの子どもたちとも、すぐに意気投合(子どもの立場でお互い苦労しているのね)

新しい家族として、うまくやっていけるように思われましたが

ビルはおを飲むと豹変するんですね、やたら口うるさくなる

やがて常に酒を飲むようになり、ついにはママに暴力を振るうようになります

ママは友人のキャロルに協力してもらい

メイソンとサマンサを連れビルから逃げることにします

ミンディとランディを心配するメイソンに

実子でないため連れ去る権利がない、誘拐で逮捕されると説明します

サマンサが15歳になり彼氏ができると

パパはいかにコンドームが必要かを娘に訴えます(ちょっとしつこい)

その頃メイソンにも好きな女の子が出来て、パパとキャンプに出かけて恋バナ

パパが言うには「女をモノにしたい時は 質問攻めにすること」

そして「出た答えを熱心に聞くこと」らしい(笑)

 

さらにママにテキサスの大学講師の仕事が決まり

また引っ越すことになることを打ち明けると

「どこへでも会いに行くから」と励ますパパ

テキサスでママは新しい恋人で元兵士のジムと暮らすようになり

中古ですが家も購入します(そのため修理費で金欠になり、ジムとも結局別れる)

 

パパもアニーという若い女性と再婚し、赤ちゃんが誕生

アニーと出会ってから落ち着き、真面目に働くようになったパパ

でもメイソンが16歳になったらプレゼントすると約束していた愛車を

手放したことにメイソンは傷つきます

(約束を忘れ、ファミリーカーを買ってしまう)

高校生になったメイソンは勉強より写真にのめりこんで行きます

こういうときの理解ある先生のさりげない一言って

学生にとって将来を左右する影響することがありますね

メイソンはちゃんと授業を受けるようになり(笑)

先生のアドバイスの通り、アート系の写真で才能が目覚めます

パーティーで知り合ったシーナという恋人もでき

ふたりはテキサス大学へ進学したサマンサのところへ遊びに行きます

(メイソンもサマンサと同じ大学への進学を考えている)

サマンサのアパートで(サマンサは彼氏のところで不在)

ベッドを共にしたふたりでしたが(しかもサマンサのルームメイトと遭遇)

シーナにラクロス選手の新しい彼氏ができ

写真コンクールでは銀メダルを獲得したものの

ショックから立ち直れないメイソン

 

それでも大学が決まり、無事に卒業式の日を迎えます

ママは自宅でメイソンのため卒業パーティーを開き

おばあちゃんに、パパとアニーもやってきます

ふたりの子どもを立派に育ててくれたと、ママに感謝の言葉を述べるパパ

その夜、メイソンはパパとパパの友人のジミーのライブへ行

シーナに失恋したことを打ち明けます

(父親の精神年齢が低いのが、たまには役に立つ)

 

子どもたちが巣立つことになり

家を売り、小さなアパートに引っ越すことにしたママ

メイソンサマンサにも自分の荷物を整理

処分するかガレージセールに出すよう伝えます

そして「これからは自由だ」と言っておきながら

「人生最悪の日だ」と泣き出してしまう

「人生はもっと長いと思っていた」

「結婚して 出産して 離婚して ふたりの子どもたちが大学生になった」

子どもたちのためだけに頑張ってきたのに

「これから私に何があるというの もう私の葬式しかない」

でも食事に行ったレストランのオーナーに声を掛けられたことで救われます

移民の修理工だった彼は、かってオリヴィアに「勉強しなさい」と叱咤され

英語を学び、学校に通ったことで出世できたと言うのです

私のしてきたことは無駄じゃなかった

家を出て大学の寮へ入ったメイソンはルームメイトのダルトン

彼女のバーブと友達のニコールとキャンプ場にハイキングに行くので

一緒にどうかと誘われます

そこは昔パパとキャンプへ来た場所でした

素朴で素敵な女性のニコールは、勉学の傍らタップダンスを教えているといいます
タップダンスを始めた理由は「流行っていないから」(笑)
さらに「どうしてみんな 一瞬を逃すな って言うの」
「私はなぜだか逆に考えちゃう 一瞬は私たちを逃さない」

 

その言葉に共感したメイソンは

「分かるよ 時間は途切れない」

「一瞬というのは 常に今ある時間のことだ」と答えます

それから遠くを見つめると、メイソンは今までにない幸せを感じたのでした

メイソンがここまで素直に育ったのは

たとえ離婚しても、失敗だらけの人生でも

両親が揺るがない愛情を子どもたちに注いできたからでしょう

 

そして子どもが幸せになることこそが

何よりの親孝行なのです

 

 

【解説】映画.COMより

ビフォア・ミッドナイト」のリチャード・リンクレイター監督が、ひとりの少年の6歳から18歳までの成長と家族の軌跡を、実際に12年をかけて撮影したドラマ。主人公の少年メイソンを演じるエラー・コルトレーンを筆頭に、母親役のパトリシア・アークエット、父親役のイーサン・ホーク、姉役のローレライ・リンクレーターの4人の俳優が、12年間同じ役を演じ続けて完成された。第87回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞ほか計6部門で候補に挙がり、アークエットが助演女優賞を受賞した。米テキサス州に住む6歳の少年メイソンは、キャリアアップのために大学に入学した母に伴われてヒューストンに転居し、その地で多感な思春期を過ごす。アラスカから戻って来た父との再会や母の再婚、義父の暴力、初恋などを経験し、大人になっていくメイソンは、やがてアート写真家という将来の夢を見つけ、母親のもとを巣立つ。12年という歳月の中で、母は大学教員になり、ミュージシャンを目指していた父も就職し、再婚して新たな子が生まれるなど、家族にも変化が生まれていた。

2014年製作/165分/PG12/アメリ
原題:Boyhood
配給:東宝東和
劇場公開日:2014年11月14日

 

 

私のちいさなお葬式(2019)

原題は「Karp otmorozhennyy」(解凍された鯉)

最近には珍しく邦題のほうがしっくりくるタイトル

エスパース・サロウ」は知らない配給会社でしたが

スタッフがちゃんと映画を見ている会社なのはわかりました(笑)

ロシアの田舎町、73歳の寡婦エレーナは元教師

慎ましく年金暮らしをしています

ある日病院で心臓病(不整脈)で余命宣告を受けてしまい

その帰り道、教え子から釣った鯉を貰ったので自宅の冷蔵庫に冷凍

その直後倒れてしまい入院すると

モスクワで働く唯一の身内でひとり息子のオレクが5年ぶりに帰ってきました

退院したエレーナは、息子のために料理しようと鯉を解凍しはじめますが

オレクは仕事だと、すぐにモスクワに帰ってしまいます

するとその夜、解凍したが飛び跳ねエレーナはその鯉を飼うことにします

そして息子にも誰にも迷惑はかけたくないと

ひとり終活することを決意し

秘密のお葬式計画を実行するのです

ロシア映画だけに、検閲があるのでしょうかね

地域格差、失業、アルコール中毒

医療(保険)問題(先進国で不整脈では死なない)といった

ロシアの抱える社会問題を垣間見せながらも

北欧のお洒落可愛いといいますか(笑)

おばあちゃん可愛い、ファッションやインテリアも可愛い

不愛想に見える人たちも、心の中は優しい

 

エレーナはかって「先生」だった立場を利用し

元教え子に死亡診断書を出させると

教え子に墓を用意させ

教え子から棺桶を買います(笑)

あとは心臓発作で死ぬだけとベットに横になりますが、死ねない

そこで隣に住むおばあちゃん、リューダを呼び

「枕で窒息死させてほしい」と頼むことにしますが

「そんなのイヤだよ」とリューダ

とりあえず最後の酒を飲もうということになり

ふたりは酔っぱらい愚痴りはじめます

やがてエレーナが酔いつぶれると、リューダはエレーナの携帯を使い

「お母さんが死ぬよ」と彼女の息子連絡するのでした

慌てて帰ってきたオレクは母親が酒臭いのにびっくり

翌朝目覚めた母親に、養護施設への入居手続きをしたことを伝えると

母親と口論になり、思わず投げた車のキーを鯉が飲み込んでしまいます

スマホも現金も車の中

職場に連絡もできないし、モスクワに帰ることもできない

鯉のお腹を押し、車のキーが解除されないか試すシーンが

間抜けで可愛いすぎる(笑)

獣医から、スパイスを飲ませたらフンと一緒に鍵を出すかもしれないと言われ

ふたりは食料品店に向かいます

そこでオレクは昔恋仲だったナターシャと再会しますが

エレーナはふたりの間に割って入るのでした

オレクをナターシャと別れさせ

年寄りとアル中ばかりの田舎町から

都会に進学させ就職させたのは、エレーナの希望だったのです

結局ナターシャはアル中のDV男と一緒になり

都会に出たオレクも結婚することはありませんでした

 

母親にもし町を出なかったら

「ナターシャと結婚していたかも」と呟くオレク

(ナターシャがこうなることはなかった)

親がいくら子どものために「よかれ」と思った選択でも

それが子どもの本当の幸せに繋がるわけではないのです

夜になり、(昔隠していた)タバコを探していたオレクは古いアルバムを見つけます

そこには子どもの頃の写真や、笑顔の家族写真

こんなにも愛され大切に育てられたことに改めて気付く

ナターシャと別れたのも、母親のせいだと非難するだけで何もしなかった

彼女を救えたかも知れないのに

ナターシャを選ばなかったのも、結婚しなかったのも、

自分の意志だったと気づくオレク

オレクは池に向か鯉を放すと、自分も池に飛び込み泳ぐことにします

びしょ濡れ帰宅し、オレクが母親が横たわるベッド近寄ると

すでに母親は息絶えていました

オレク静かにうずくまると、むせび泣くことしかできませんでした

昔「電波少年」という番組でBluem of Youth(ブルームオブユース)という

2人組の音楽ユニットがロシアを旅する企画があって

ザ・ピーナッツの「恋のバカンス」がロシアの国民曲であることを知ったのですが

本作でも「恋のバカンス」のロシア語バージョンが常に流れていましたね

ウクライナ侵攻や民族問題を抱え、各国から制裁を受けているロシアですが

そのために何の罪のないロシア人が

特に弱い立場のお年寄りや子どもたちが生活苦に陥ってしまう

一度死んでも、蘇った鯉

それこそがロシアの希望、国の再建の象徴なのかなと思いました

 

 

【解説】映画.COMより

突然の余命宣告を受けた73歳の女性が自身のお葬式計画に奮闘する姿を描いたロシア映画。村にただひとつの学校で教職をまっとうし、定年後は気のおけない友人たちと大好きな本に囲まれ、慎ましくも充実した年金暮らしを送っている73歳のエレーナ。そんな彼女が病院で突然の余命宣告を受けてしまう。都会で仕事に忙しい毎日を過ごし、暮らし5年に一度しか顔を見せないひとり息子のオレクには迷惑はかけたくないと、自分で自分の葬式の準備をスタートさせる。惨めな死に方だけはしたくない彼女の願いは、お葬式に必要な棺や料理の手配を済ませ、夫が眠るお墓の隣に埋葬されること。親友やかつての教え子たちの協力もあり、彼女はお葬式の準備を順調に整えていく。しかし、完璧かに思えたエレーナのお葬式計画に想定外の事態が持ち上がってしまい……。

2017年製作/100分/G/ロシア
原題:Karp otmorozhennyy
配給:エスパース・サロウ
劇場公開日:2019年12月6日

 

落下の解剖学(2023)

原題はAnatomie d'une chute 」(落下(転落)の解剖

第76回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドール

第81回ゴールデングローブ賞脚本賞と非英語作品賞を受賞

第96回アカデミー賞では作品賞を含む5部門にノミネート

 

人里離れた雪山に立つフランスの山荘で男の転落死体が見つかり

発見者は彼の11歳になる盲目の息子

死因は頭部の殴打による傷

外部からの侵入者はなく、当時家にいた妻に容疑がかけられます

男は妻に殺されたのか、それとも自殺か事故なのか

それから1年以上裁判が繰り返され

ふたりの夫婦生活が明らかになっていくというもの

推定無罪」(1990)のような、どんでん返しもオチもありません(笑)

検察側も弁護側も状況証拠しかなく、最後まで自殺か他殺かわからない

ラスト母親は無罪を勝ち取りますが

 

これは観客が陪審員(裁判官)になったつもりで

物語の中にある伏線を回収していき

「あなたなら有罪にするか、無罪にするか」を

判断させる映画なのだと思いました

女流作家サンドラザンドラ・ヒュラーは女学生から

論文を書くのための取材を受けていると

論文より女学生に興味があるようで、逆に質問を始めます

(後に彼女がバイセクシャルを公表していることがわかる)

 

すると会話を打ち消すほどの大音量の音楽(50Centの「P.I.M.P.」)が流れ

学生は帰ることにし、車に乗り込む姿をベランダから見送ると

屋根裏の改造をしてる夫に(作業中はいつも大音量の音楽をかけるらしい)

執筆すると伝え寝室に籠ります(執筆活動は耳栓をして寝室でするらしい)

視力に障がいのある息子のダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)

愛犬のスヌープ(介助犬だろう)をお風呂に入れ終わると

散歩に行くため家を出ます

 

約1時間後、ダニエルが家に戻ると何かに足がぶつかります

それは倒れている父親のサミュエルで、胸に耳を当てると心音がしません

大声で母親を呼ぶダニエル

すぐにサンドラは警察に通報

やがて捜査がはじまるとサンドラは無実を訴え

古くからの友人であるヴァンサン(スワン・アルロー)に弁護を依頼します

(ヴァンサンは一方的にサンドラに好意を抱いている)

ヴィンセントはサンドラから詳しい情報を聞き出し落下の状況を整理

屋根裏の窓の下には物置小屋があり、そこに頭をぶつけたことが

サミュエルの致命傷だと推定

サンドラは腕にあるアザもサミュエルと争ったものでなく

キッチンのカウンターにぶつけたものだといいます

(後にサミュエルと争ったときのものであると訂正)

 

しかし検察側は、検視の結果致命傷は頭を殴打されたもので

物置の壁に付着した血痕の位置と、物置の屋根に残留物が残っていないことから

他殺であると理論付けます

(弁護士側は雪解けによって屋根に衝突時の血痕が流れたと反論)

ダニエルへの聞き取りも行われ、ダニエルは散歩に行く前

両親に争ってる様子はなく、落ち着いて会話していたと話します

しかし実況見分が行われると

大音響の中、普通の話し声で会話が聞こえないことがわかります

「勘違いだった」「忘れ物をして家に戻った」と評言を変えるダニエル

サンドラはサンドラで夫はうつで通院していて

(うつの薬を止めてからはアスピリンを過剰摂取していた)

酒とアスピリンを飲み自殺しようとしていたことを思い出します

(嘔吐してしまい未遂に終わった)

一方サミュエルの持っていたUSBから、彼が死の前日

夫婦の会話(喧嘩)を録音していたことがわかります

それによってダニエルが盲目になった原因(事故)が

サミュエルのせいだと責任を感じていたこと(妻に責められていたこと)

そのせいでセックスレスになり、サンドラが複数の女性と浮気したこと

フランス語が得意でない妻がフランスの田舎に連れてこられたことへの不満

ダニエルを学校に通わせず勉強を見ることに夫が文句を言い出したこと

夫のアイディアを妻が盗んで執筆し小説を完成させたこと

(夫にアイディアはあるが、小説もペンションも子育ても結果が出せない)

お互いの相手に対するストレスがぶつかりあい

ついには物を投げ、殴り合うような音で録音は終わります

でも妻が夫を殺したという証拠にはならない

夫が自殺するような心境であったとも思えない

陪審員の心情がどう動くか、盲目の息子の評言にかかります

評言台に立つ前日、ダニエルは父親が自殺を図ったという

アスピリンを餌と一緒にスヌープに食べさせます

翌朝ぐったりしたスヌープを見て、マージを呼び泣き叫ぶと

(法務局からダニエルの面倒を見るため派遣された女性)

彼女は冷静にスマホで検索し薬を吐かせます

なんとかスヌープは一命を取り留めましたが

ダニエルは裁判でそのことを評言します

つまり父親が自殺しようとしていたことを

愛犬を使って証明してみせたのです

 

さらに父親から、いつか愛する人が死ぬ準備をしておかなければならない

その後も自分の人生は続く、と伝えられていたことも

無罪を勝ち取ったサンドラは、ヴァンサンら弁護士チームと打ち上げをし

ダニエルが待つ家に帰ると抱擁を交わします

それから眠る準備をすると隣にスヌープがやってくるのでした

 

さて伏線を回収していきましょう(笑)

ダニエルがスヌープをお風呂に入れていて、臭いを確認している

※何かの臭いが付着したということか

※しかも人里離れた雪山で1時間以上散歩するか

 

父親はいつも大音量の音楽かけて作業する

※息子は盲者で音から情報を得なければならないのに、大音量の音楽をかけるか

※本当だとしたら息子のストレスは相当なもの

息子が夫を発見した時、妻は耳栓をして昼寝していたという

※裁判で息子の呼び声に気付いたのは、耳栓が片方はずれていたと評言

※発見時も音楽は大音量で鳴っていたはず

 

夫の死因は金槌のようなもので殴打されたもの

※改装中で現場には金槌などの工具が多くあったはず

息子が失明したのは夫が迎えを怠り事故に遭ったせい

※妻は長年夫を責め続け、息子も父親のせいだと刷り込まれている可能性

 

息子の治療費で金銭が困窮し、ロンドンからフランスの田舎に引っ越し

※息子は負担に感じていたのでは

息子が学校に行かず夫が勉強を見ているのは夫の提案

※息子の将来を思うなら盲学校に通わせ点字等勉強させるべき

 

夫が自殺未遂した嘔吐物を食べた犬が一度死にかけている

介助犬の訓練を受けた犬が拾い食い、まして嘔吐物を食べるか

帰宅した妻に、犬が寄り添う

介助犬が介助者を離れるか(犬のボスは息子ではなく妻か)

 

以上だけでも、妻(または息子)が夫を殺害する動機は十分あります

2度、3度見たらもっと出てくるのでしょうね(笑)

そこでサミュエルの死には④つの原因が考えられると思います

①妻が殺した

②息子が殺した

殺したあと、ふたりで窓枠から夫(体重は85キロ)を放り投げ

息子が散歩に行っている間に妻が証拠隠滅

 

③妻と息子が共謀した

夫に窓枠を覗かせ、後ろから突き落とした

 

④妻と夫の争いを見た、声を聞いた犬が

夫の作業中襲いかかり、逃げようとした夫が誤って転落した

(妻と息子はそのことを知らない)

最後に最も重要なのは、妻が「小説家」であること

 

すべての評言が、私たちが見せられたすべても

母子の作り話を映像化したものに過ぎないのかもしれない

 

よって私の判決も、証拠不十分で無罪

ダメ夫のいない新たな人生を、歩んでほしいと願いました

 

 

【解説】映画.COMより

これが長編4作目となるフランスのジュスティーヌ・トリエ監督が手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞したヒューマンサスペンス。視覚障がいをもつ少年以外は誰も居合わせていなかった雪山の山荘で起きた転落事故を引き金に、死亡した夫と夫殺しの疑惑をかけられた妻のあいだの秘密や嘘が暴かれていき、登場人物の数だけ真実が表れていく様を描いた。
人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見し、悲鳴を聞いた母親が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた。当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦ゲンカをしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく。息子に対して必死に自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、仲むつまじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦のあいだに隠された秘密や嘘が露わになっていく。
女性監督による史上3作目のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作。主人公サンドラ役は「さようなら、トニー・エルドマン」などで知られるドイツ出身のサンドラ・ヒュラー。第96回アカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされた。

2023年製作/152分/G/フランス
原題:Anatomie d'une chute
配給:ギャガ
劇場公開日:2024年2月23日





ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語(2023)

原題は「The Wonderful Story of Henry Sugar

原作はロアルド・ダールの1977年に発行された同名短編小説

(日本では「ヘンリー・シュガーのわくわくする話」小野章訳 1979年)

絵本や紙芝居のような、定点映像な構図

ウェス・アンダーソンらしいキュートでポップなビジュアル

お洒落な色彩

作者のロアルド・ダールレイフ・ファインズ)が

不思議な力を身につけたヘンリーの物語を語っていきますが

登場人物たちは皆、無表情で人形のようです

物語に何の起伏もなく、なんのこっちゃなのですが(笑)

原作を読んでみると納得

ロアルド・ダール好きが、ロアルド・ダール好きのために作った

ロアルド・ダール本の「読み聞かせ」映画なのだとわかりました

童心の頃のワクワクや感動に戻りたくても

二度ともう戻れない哀しさよ

ヘンリー・シュガー(ベネディクト・カンバーバッチ)は

裕福で働いたことがなく、相続したお金でギャンブルだけが趣味の独身男

ある日、書斎で1冊の本にが目に留まると

それはイムダット・カーンという、目を使わずに見ることが出来る男のことを調べた

インドのチャルテジー医師(デーヴ・パテール)の記録でした

イムダッド(ベン・キングズレー)は少年の頃

森で空中浮遊する不思議な男(リチャード・アイオアディ)に出会い

麻原彰晃じゃんか 笑)

何年何十年か修行し目を使わず物を見る能力を身に着けます
イムダッド曰く、それは目ではなく身体の別な所で見る感覚だそうです

その後サーカスに入り、「目を使わずに見る」芸を見た

チャルテジー医師(デーヴ・パテール)と

マーシャル医師(リチャード・アイオアディ二役)が

イムダッド(が盲人の教師になれば役にたつと考え)を診察することにします

しかし医師がさらなる研究のためにと会いにいくと

イムダッドは急死していました

ヘンリーはこの本に書いてある「目を使わずに見る」能力を身に付け

ギャンブルで大稼ぎすることを思いつきます
蝋燭の炎を見つめ続けるという、イムダッドの瞑想を実践すること苦節3

ついにトランプの裏を読み取ることに成功

カジノに行きブラックジャック3万ポンドを稼ぎます

だけどヘンリーの心は寧ろ
この能力を使えば、トランプで勝つのは分かり切っていること

何のスリルも喜びもありませんでした

そこでバルコニーから3万ポンドをばらまいたヘンリー

すると金を受け取ろうとした人々が暴動が起こし

警察官(レイフ・ファインズ二役)が

ばらまくほど金が有り余ってるなら、病院や孤児院

貧しい子供たちに寄付しろと咎めます

人の役に立つという、はじめて人生に目的が出来たヘンリーは

会計士見つけコンビを組むと、変装しながら世界中のカジノを回

新たな病院や孤児院をたくさん作ります

しかしヘンリーを知る人は誰ひとりいませんでした

そこで20年後ヘンリー肺塞栓で死ぬ

ロアルド・ダールのもとにやって来た会計士は

ヘンリー・シュガー物語を書くように依頼したのです



【解説】映画.COMより

チャーリーとチョコレート工場」で知られるイギリスの児童文学作家ロアルド・ダールの著作「奇才ヘンリー・シュガーの物語」を、「グランド・ブダペスト・ホテル」「アステロイド・シティ」のウェス・アンダーソン監督が映画化した短編。
大金持ちで働いたことことがなく、賭け事が大好きな男ヘンリー・シュガー。ある時、目を使わずにものを見ることができるという導師の存在を知った彼は、その力をギャンブルでイカサマをするために利用しようとするが……。
主人公ヘンリー・シュガーをベネディクト・カンバーバッチが演じるほか、レイフ・ファインズ、デブ・パテル、ベン・キングズレー、リチャード・アイオアディ、ルパート・フレンドらが出演。Netflixで2023年9月27日から配信。第96回アカデミー短編実写映画賞ノミネート。

2023年製作/39分/アメリ
原題:The Wonderful Story of Henry Sugar
配信:Netflix
配信開始日:2023年9月27日

 

 

ニモーナ(2023)

原題は「Nimona

原作NDスティーブンソンによる同名グラフィック・ノベル

NDスティーブンソン(女性として生まれる)はノンバイナリーでトランスジェンダー

双極性障害ADHDであることを公表しており2019年女性と結婚

Netflixでシリーズ化されたシーラとプリンセス戦士」も彼の作品)

2024アカデミー賞ノミネート、Netflixからは10作品18ノミネート中

(未配信はナタリー・ポートマンジュリアン・ムーア主演の「May December」のみ)

なんと4作品がLGBTもの

しかもついにアニメーションまでそうなったかと

悪いと言っているわけではないのですよ

ストーリーそのものもはよくできていましたし

(「ヒックとドラゴン」の2番煎じといえばそれまでだけど)

何よりヒロインのニモーナが魅力的

だけど、このモヤモヤはなんだろう(笑)

3DCGアニメーションのテクスチャー

(CGの三次元画像で質感を表現する技法のひとつ)の進化は凄いですね

スパイダーマン:スパイダーバース」のキャラクターデザインが

いかにその後のアニメーション作りに影響を与えたかがわかります

昔々、ある王国をモンスターが襲います

伝説の女戦士グロレスはモンスターを倒し

二度とモンスターが入らないよう王国を高い壁で囲いました

それから1000年もの間、グロレスが設立した騎士団に王国は守られ

騎士たちは国民から英雄として崇められています


孤児のバリスター・ボールドハートは

グロレスの一族の血筋で無いにもかかわらず

(伝統を変えようとしている)女王に実力を認められ

騎士学校に入学し首席で卒業します

騎士仲間であり恋人のアンブロシウス・ゴールデンロインとともに

女王からナイトを叙爵される式典の最中

バリスターの剣が突然レーザーを放ち女王を殺害してしまいます

 

バリスターは無実を訴えますが

(訓練のせいでとっさに反応した)アンブロシウスに右腕を切り落されてしまい

自分を信じてもらえないと悟ったバリスターは逃亡し

隠れ家を見つけ義手を作成します

中世が舞台なんですけど、同性愛が認められている世界で

スマホもPCもあってSNSが浸透している時代

街中の巨大モニターにはバリスターが女王殺しの犯人だと大々的に写し出され

騎士たちはバイクや戦闘機でバリスターを探します

 

それを見たひとりの少女が、待っていました大犯罪人

彼こそが自分と同じ嫌われ者のヴィラン(悪人)だと

これで王国をぶっ潰せるとウキウキワクワク

少女の名前はニモーナ

バリスターを探し出し、私たちはバディだと言い出します

(声を担当したクロエ・グレース・モレッツちゃんの実写版でもヨカッタかも 笑)

こんな女の子にまとわりつかれて迷惑なバリスターでしたが

ニモーナは鯨からゴリラまで、どんな動物がありました

 

ふたりは女王殺しの汚名を晴らすため、バリスターに剣を与えた従者

ディエゴを見つけて誘拐します

ディエゴが(隠れてバリスターの甲冑を着ていた)スマホの動画を見せると

そこには校長が剣をすり替えている姿が録画されていました

騎士学校に向かったバリスターは、アンブロシウスと校長に証拠を突きつけますが

校長は騎士たちに命じてスマホを破壊

 

アンブロシウスが校長に詰め寄ると、校長は彼を刺し

瀕死のアンブロシウスに女王を殺したことを認めます

彼女はいくら才能があっても有色人種が騎士になることなど

女王が伝統を見直すことに反対していたのです

それを聞いたアンブロシウスは無傷で立ち上がります

彼はアンブロシウスに化けたニモーナでした

さらに校長の自白をネット上に拡散、国民は校長こそ女王殺しだと

政府(軍)に反発しますが

 

ニモーナの正体を探るため古い巻物を探し出した校長は

彼女が伝説の女騎士グロレスに倒されたモンスターで

校長の自白は、バリスターがモンスターを利用して

捏造した動画だと発表します

アンブロシウスはバリスターに会いに行くと

巻物に書かれていたニモーナの過去を伝え

ニモーナに騙されているのだと主張します

バリスターがニモーナにモンスター(ニモーナにとって禁句)かと問いただすと

ショックを受けたニモーナは壁の向こう側の森に隠れてしまいます

そこでニモーナは昔を思い出します

1000年前、ニモーナは仲間をつくろうといろいろな動物に姿を変えましたが

どの動物たちも彼女を受け入れてくれませんでした

ある日、少女の姿を見たニモーナは初めて人間に変身します

少女はグロレスという名前で、すぐにニモーナと親友になり

ニモーナが変身できることも歓迎してくれました

しかし、グロレスの両親や村人たちがニモーナの変身を見たとき

人々は彼女がモンスターだと攻撃します

抵抗し誤って村に火をつけてしまったニモーナに

グロレスは剣を向け、彼女を森の奥へと追い払ったのです

かってグロレスに嫌われ憎まれ、今度はバリスターに恐れられている

ニモーナの人々に対する憎悪が膨れ上がった時

彼女はグレート・ブラック・モンスターに変身してしまいます

再び王国に入り、街中を壊しながら騎士学校のある王室に向かいます

はちゃめちゃだったけど、自由でワイルドで

なにより友だちを、バリスターを守ろうとしてくれたニモーナ

その彼女が哀しみで巨大なモンスターになってしまった

バリスターはニモーナを止めるため必死で自分の愚かさを謝罪します

偏見、恐怖、無知、決めつけという差別で苦しめてしまったこと

誰より彼女の孤独をわかってあげれたはずなのに

ニモーナが少女の姿に戻ると、バリスターは思い切り彼女を抱きしめます

しかし校長はニモーナを殺すためレーザー砲の発射命令を出します

アンブロシウスは、レーザー砲を発射したら

ニモーナだけでなく多くの民間人まで死んでしまうと抗議しますが

校長にとって下級国民の命などどうでもいいことでした

本当のモンスターはどっち、って話よね

ニモーナは、みんなの願いを叶えればより良い世界になるのだから

私さえいなければ誰もが安心して暮らせるのだから

今度は人々を救うため犠牲になって歴史に残ると言い

赤い不死鳥に変身すると、自らレーザー砲に飛び込みます

爆発により校長は死に

衝撃で壁が壊れると、その先に美しい山間の谷が現れます

やがて壁の裂け目から人々は自由に森へ移動できるようになり

ニモーナとバリスターは英雄として讃えられ

バリスターとアンブロシウスの関係も修復します

しばらくして、バリスターはかつての隠れ家を訪れてみます

すると彼を呼ぶニモナの声がして

彼女生きていたことを知ったバリスターは嬉しく思うのでした

 

 

【解説】映画.COMより

近未来的な発展を遂げた中世の王国を舞台に、女王殺しの濡れ衣を着せられた騎士と変身能力を持つ少女の友情と闘いを描いた長編アニメーション。
孤児出身でありながら騎士学校を主席で卒業したバリスターは、騎士任命式の最中に起こった女王殺しの犯人に仕立てあげられ、追われる身となってしまう。隠れ家に身を潜めて汚名をそそぐ機会をうかがう彼は、さまざまな生き物に自在に姿を変えることのできるいたずら好きの少女ニモーナと出会い、一緒に真犯人探しを始めるが……。
ニモーナ役でクロエ・グレース・モレッツバリスター役でリズ・アーメッドが声の出演。N・D・スティーブンソンの同名グラフィックノベルを原作に、「スパイ in デンジャー」のニック・ブルーノ&トロイ・クエインが監督を務めた。Netflixで2023年6月30日から配信。第96回アカデミー長編アニメーション映画賞ノミネート。

2023年製作/102分/アメリ
原題:Nimona
配信:Netflix
配信開始日:2023年6月30日

 

彼方に(2023)

原題は「The After」

最愛の妻と幼い娘が、連続通り魔事件の犯人と遭遇したことによって

亡くしてしまった男の物語

いわゆる「感動ポルノ」ものになるのでしょうが

(英語の「ポルノ(porn)」には、視聴者の感情を誘引させるため

”意図的に作られたコンテンツ”という意味もあるそう)

 

私はむしろ、このような深い傷を負った人間に対して

知らないこととはいえ、不用意な言葉やジョークが

相手の傷口をさらにえぐることもあるかも知れないと

気付かされました

ロンドンにある会社の重役ダヨ(デヴィッド・オイェロウォ)は娘のローラと

妻のアマンダ(ジェシカ・プラマー)の待ち合わせ場所に向かいます

今日こそは仕事を休んでローラの発表会に行こうと決心したとき

 

(友人で共同経営者?から)取引先とトラブルがあったという電話が入り

妻子と離れて脇に寄ったところ

突然ナイフを持った男が現れ、娘を刺し高台から突き落とします

ダヨと通行人たちが犯人を取り押さえたものの

パニックになった妻が娘を追って高台から飛び降りてしまいます

それから数年後、ダヨはライドシェアの運転手をしていました

(日本でいう白タクで、イギリスでは合法)

ダヨに入っている留守電の様子から、かっての共同経営者はおろか

ソーシャルワーカーとも連絡を取っていないことがわかります

その日はローラの誕生日

スマホの動画を見ながら「ハッピーバースデー」を歌う

仕事が忙しいからと、なんでもっと一緒にいてやらなかったんだろう

後悔の念だけが、波のように押し寄せてくる

そうして涙を拭くと、ストイックに

さまざまな乗客を乗せていきます

 

空港で予約していた家族を拾うと、一家の娘がローラに似ていることに驚きます

もしローラが生きていたら、これくらい大きくなっていたのだろうか

しかし乗車中夫婦はずっとくだらない口論をしていて

ダヨはそのことを態度に表すことはありませんでしたが

ローラににた娘を可哀そうに思い同情します

目的地(家)に到着しても、夫婦はずっと喧嘩したまま

ダヨは荷物を運ぶために車から降りると、娘に降りないのかと尋ねます

車から降りた娘は、突然ダヨの背中に抱きつきます

思わず娘の手を握り返すダヨ

驚いた両親が駆け付け、ダヨから娘を引き離すと

ダヨは縁石に倒れこみ泣きじゃくってしまいます

両親は彼を訴えることもなく、娘を連れてその場を立ち去るのでした

私はローラが娘の身体を借りて、父親に会いに来たのだと思いました

今日が誕生日なのだと

 

そうしてしばらく泣いた後、ダヨは涙を拭き

何事もなかったように車に乗り込み発進させるのでした

世の中には想像もできないような深い哀しみが

人それぞれにあることを忘れてはいけない

 

そういうことなのだと思います



【解説】Netflix公式サイトより

残虐な犯罪により失意のどん底にたたき落とされた男。ライドシェアサービスのドライバーとして虚しい日々をやり過ごすなか、ひとりの乗客の存在が、彼の心を揺さぶり、悲しみと向き合わせる。

出演:デヴィッド・オイェロウォジェシカ・プラマー、アメリー・ドクボ

2023|年齢制限:13+|18分|ヒューマンドラマ

第96回アカデミー短編実写映画賞ノミネート。