東京のフランスと呼ばれている
アラン・ドロンの特集上映「追悼 アラン・ドロン」に行ってきました
「サムライ」「仁義」「ル・ジタン」「フリック・ストーリー」
「パリの灯は遠く」「山猫」「暗殺者のメロディ」の7作品が上映されるほか
映画プログラマーのクレモン・ロジェ氏による講演会
映画評論家・荻野洋一氏によるトーク(11/1終了)
字幕翻訳家の上條葉月氏と
アンスティチュ・フランセ日本の坂本安美氏によるディスカッションもあります
私はトークイベントは無理なので(笑)
1本目は未見だった「ル・ジタン」を鑑賞してきました
原題は「Le Gitan」で、仏語でジプシー(ロマ)のこと
「ジダン」とあだ名されるロマ族のならず者、ドロンさまが脱獄し
仲間と共謀して銀行を襲おうと計画する話と
そのドロンさまが、大物の宝石泥棒で妻殺しの
ポール・ムーリス演じるヤンの行くところに偶然にも度々現れて
ヤンまでドロンさまの仲間だと警察に疑われてしまうというもの
監督のジョゼ・ジョヴァンニは10代の頃から犯罪組織と関係し
戦時中はフランス人民党(ファシストでゲシュタポに協力)に所属
終戦後は少なくとも3件の強盗殺人に関与し、死刑を宣告されるものの
大統領恩赦を受け1956年に釈放されるという経歴の持ち主
その経験を生かし小説家、脚本家、映画監督として成功
ジダンが強盗を犯すのは、自分が生まれ育ったロマのコミュニティを守るため
無期懲役で入獄したのも、ロマを追い出そうとした村の村長を殺したため
しかも服役中にはリケという検察官?官憲?からジプシー出身という理由で
屈辱的な扱いと虐待を受け、その恨みを晴らそうとする
どちらかといえば復讐劇なのですが
セリフはいちいち気障(笑)
「この偶然は引っかかる 魚の小骨のようにな」
「パンを丸飲みするといい」
「なぜ助けた 犬と同じか?」
「私は植民地にいました 助ける者を匿う決まりでした」
「お礼だ 取ってくれ」「俺は国の金しか奪わない」
「握手だけでいいです」
「夜明けは俺の時間」なんて
ドロンさまだから似合うし、許される特権ですね(笑)
ウインクするシーンなんてマジでキュンで
(釣りをする男の子と、助けてもらったヤンに)
この映画がノワールであることを忘れてしまいそうです(笑)
脇役は皆よくて
ジダンの仲間にボクサー(レナート・サルヴァトーリ)と
あだ名のないジャック
ジダンを追うブロー警視
ブロー警視の部下でヤンの妻と不倫していたマルーユ
そしてヤンのかってのレジスタンス仲間で
今は小さなホテルを経営しているニニー(アニー・ジラルド)
フランス映画はこういう気丈な女性を描くのが本当にうまい
ジタンら3人は外国に逃亡する旅券を手に入れ
最後の仕事としてニースの郵便局を襲撃しますが
昔の仲間だったリナルディ兄弟に密告された
マルセルが警官に撃たれて死んでしまいます
ジタンはリナルディ兄弟を射殺し、ニニーのホテルの近くに潜伏
その夜、ニニーのホテルにヤンの弁護士と
ヤンの盗んだ宝石の密売の仲介人、ジャンノが訪れると
カップルが宿泊したいとやってきます
ふたりはジャンノを尾行してきた男女の刑事でした
そこにボクサーとジャックが夜食を食べに来てしまい
ついでに女好きのジャックが
従業員のミレーユ・ダルク(ノン・クレジット)を口説く(笑)
ホテルは包囲され、逃げようとしたボクサーとジャックは撃たれて重傷
それを知ったジタンはバイクで逃げますがやはり撃たれ
町のはずれの動物病院に駆け込み意識を失いますが
獣医は黙ってジタンを手当てするのでした
それから1ヵ月後、ロマのキャンプに身を隠し
妻と息子と過ごしていたジダンでしたが
新聞でボクサーがまだ生きていることを知り
ボクサーの居場所を教えてもらうためヤンの家を訪ねると
早朝、そっとヤンの家を出て行こうとしたジダンは
ヤンを捕まえようとやってきたブロー警視と部下たちに遭遇
ジタンはブローにピストルを突きつけヤンを逃がそうとします
しかしヤンは逃げようとせず
自分の車のキーをジタンのポケットに入れるのでした
ブローを人質にして車に乗り込むジダン
(ブローがいるため)警察が車を撃てないでいると
ブローは駐車場に置き去りにされていました
ヤンはジャンノの密告により逮捕され
ジダンはひとりロマのキャンプに向かうと
仲間のジプシーたちが立ち退きをさせられている最中でした
ジタンは口笛で息子を列車の貨車に呼び寄せると
「さようなら愛する息子」と別れを告げたのでした
ラスト、ジダンが死ななかったのは
フランス人のレジスタンスを戦う者への敬意でしょうか
泥棒という以外、なんの共通点もないジダンとヤンが
いきなり理解し合って助け合うのは謎ですが(笑)
殺人、強盗、脱獄を繰り返し、社会に復讐していく男を演じながらも
隠しきれない色気
男盛り40歳のドロンさまを堪能できます
(ポスターがまたカッコいい)
【解説】映画.COMより
ジプシーの出身というだけで、いわれなき差別を受けてきた男、ル・ジタンの憤りと反逆の人生を描くフィルム・ノワール。製作はレイモン・ダノンとアラン・ドロン、監督・脚本・原作は「暗黒街の二人」のジョゼ・ジョヴァンニ、撮影はジャン・ジャック・タルベス、音楽はクロード・ボラン、編集はジャクリーヌ・ティエドが各々担当。出演はアラン・ドロン、ポール・ムーリッス、アニー・ジラルド、レナート・サルヴァトーリ、モーリス・バリエ、マルセル・ボズフィ、ベルナール・ジロドーなど。
1975年製作/フランス
原題または英題:Le Gitan
配給:東映洋画