「他に道がない時にのみ革命は起こる」
東京日仏学院エスパス・イマージュ【追悼アラン・ドロン】にて鑑賞
原題は「The Assassination of Trotsky」(トロツキーの暗殺 )
レフ・トロツキーが暗殺されるまでの最後の7日間
そもそもトロツキーが何を成し遂げた人なのか
よく知らないまま鑑賞したせいか、途中睡魔に襲われるハメに(笑)
ラスト15分、トロツキーが頭を割られるシーンからが見どころ
悲鳴をあげたのはトロツキーでなく暗殺者でした
トロツキーはウラジーミル・レーニンとともに
ソビエト連邦を樹立した中心人物で、赤軍や諜報機関を創設しますが
スターリンの一国社会主義論(社会主義の建設はソ連1国だけで可能)を批判し
世界革命論(西欧や世界に革命を広げ援助を受けるべき)を主張しますが
スターリン派によって役職を解任、国外追放となります
スターリン体制と呼ばれる独裁体制のもと粛清(しゅくせい)が行われ
メキシコに亡命したトロツキーにも刺客が送られたのです
ジャック(アラン・ドロン)こと
フランク・ジャクソン(本名ラモン・メルカデル)はソ連のスパイで
貿易商(上司で母親の愛人、ナウム・エイチンゴンが作った幽霊会社)を偽り
ギダ(ロミー・シュナイダー)と恋人関係にあります
毎日ギダを車でトロツキーの屋敷に送り迎えをすることで
トロツキーのボディーガードたちに自分をトロツキーの支持者だと信用させ
屋敷のセキュリティーなどを密かに調べ上げていました
といっても、怠惰的な生活を送っている
ジャックに政治的信条があるようには見えません
ギダとベッドでいちゃついたり、ボートでいちゃついたり(笑)
全く中身のない人間のように描かれている
ギダと闘牛を見に行き、闘牛場で
「出来る限り近くに寄って、仕留めるんだ」と呟く
「馬を殺すのを見てなにが面白いのか」と
ヒステリックに騒ぐギダ(なぜ牛を馬と言ったのは意味不明)
これは闘牛を革命に例えているんでしょうかね
殺される牛はトロツキーのメタファーなのか
それとも失敗したら逆に殺される、ジャックのことなのか
自己陶酔という狂気と、恐怖による支配
屋敷は要塞化されセキュリティーはますます厳しくなりますが
その頃にはジャックは自由に屋敷に出入りできるようになります
(誰が見ても挙動不審なのに 笑)
トロツキーの奥さんがすごく出来た人で
トロツキーも愛妻家のように描かれていますが
実際は次々と愛人を作っては、「避難訓練」だと偽り
愛人のもとに通っていたそうです(笑)
イギリスに亡命したジョセフ・ロージー
トロツキーに自分と同じような運命を感じたのか
そこらへんは美化されすぎている感じがしますね
政治論文を書いたので、トロツキーに読んでもらいたいと頼みます
快く引き受けるトロツキー
しかしジャックはトロツキーの放つカリスマ性に圧倒され
彼を殺すことが出来ませんでした
トロツキーから論文を指摘されたジャックは
トロツキーの書斎に2度目の訪問をします
そしてコートに隠し持っていた登山用のピッケルで彼の頭を殴ります
駆け付けたボディーガードたちに取り押さえられるジャック
ジャックは母親を人質に取られていたんですね
トロツキーを殺さなければ母親が殺される、もちろん自分も
どっちにしても逃げられないのです
そのジャックを救ったのはトロツキーでした
「殺さないで話を聞け」
翌日、トロツキーが死んだことを知らされたギダは
尋問中のジャックに面会に行き、半狂乱で「その男を殺せ」とわめくのでした
ギダに怯えるジャック(女を騙すとスターリンより怖い?笑)
扉を開け放つと現れる大勢の記者たち
ジャックが自分のことを「トロツキーを殺した男」と名乗るところで
映画は幕を閉じますが
20年の実刑判決(メキシコに死刑はないため)を受けたラモン・メルカデルは
自分に忠実な側近さえ理由もなく殺していったスターリンですので
ある意味スターリンが生きている間、刑務所にいたことで
メルカデルは生き延びることができたのかも(笑)
母親とハバマで暮らしたということ
ジョセフ・ロージーの思惑とは裏腹に
案外世間が思うよりメルカデルにとって
ハッピーエンドな人生だったかも知れないと思うのは、私だけでしょうか
【解説】映画.COMより
1929年、スターリンによってソ連から追放された革命家トロツキーはメキシコに逃亡したが、1940年、クレムリンの密命を受けた暗殺者フランク・ジャクソンの手にかかって殺された。世界史上あまりにも有名なトロツキー暗殺事件をスクリーンに再現した暗殺劇。製作はジョセフ・シャフテル。監督はジョセフ・ロージー、原作・脚本はニコラス・モスレー、撮影はパスクァリーノ・デ・サンティス、音楽はエジスト・マッキが各々担当。出演はアラン・ドロン、リチャード・バートン、ロミー・シュナイダー、ヴァレンティナ・コルテーゼ、エンリコ・マリア・サレルノ、カルロス・ミランダなど。
1972年製作/104分/アメリカ
原題または英題:The Assassination of Trotsky