ドクトル・ジバゴ(1965)





「ラーラのテーマ」は映画史に残る名曲ですね。

戦争、革命というロシアの転換期。
大きな時代のうねりの中で生きた
医者であり詩人でもあるユーリ・ジバゴの物語。

ロシア文学と言えば登場するのが
男を翻弄する絶世の美女。
(だけど不幸のまま死ぬのよね)

この作品でもラーラという美女が
多くの男の人生を狂わせます。
ただ、美しいというだけの理由で。

母親のブルジョア階級の愛人に手篭めにされてしまい
復讐のため拳銃で撃ち殺そうとします。
その男の怪我を助けたユーリ。
その時にすでに一瞬見たラーラに恋していたのでしょう。
大切な女性、トーニャがいるというのに。

戦場で医師として怪我人を手当てするユーリは
再び看護師として働くラーラと出逢います。
二人の感情は盛り上がりますが、お互い妻と夫のいる身。

戦争から家族のもとに帰るものの
ラーラの居場所を知ったユーリは逢いに行ってしまう・・
聡明で従順なトーニャが身重にもかかわらずです。
夫の不振な行動に気がついていながら何も言わないトーニャ。

革命前は優雅な生活のお嬢様
しかし革命後は家を奪われ、食べるものもない貧しい生活。
自分は寒さに耐えても夫のユーリのためには暖房を炊く
そんなトーニャがあまりにも健気すぎます。

なのに捕まったパルチザンから逃げたユーリが
真っ先に向かったのはラーラのもとでした。
ユーリの心はラーラだけのものなのです。

北国の風景を捉えたカメラは素晴らしいですね。
どこまで行っても地平線しか見えない凍てつく大地。
雪の上に残る足跡、窓ガラスの氷の結晶。
だけれど春になれば一面に花が咲き乱れるのです。
雪解け水がナイアガラのように流れ込む巨大ダム。

ただ恋愛ものとしてみるならば
心のゆさぶりはありませんでした。

ラーラとトーニャの間で揺れ動くユーリの心情や
トーニャの哀しみがもっと描かれていればよかったですね。
こういう作品ではやっぱり思い切り泣きたいから。笑



【解説】allcinemaより
ロシアの文豪ボリス・パステルナークの同名小説を映画化した長編大作。時はロシア革命前後の動乱期。純真な心を持つ詩人でもある医者ジバゴを主人公に、ラーラとトーニャという2人の女性への愛を通して波瀾に満ちた生涯を描いてゆく。人生の軌跡を、多彩な登場人物を交えながら時代のうねりと共に描く壮大な一大叙事詩。M・ジャールによる美しい“ラーラのテーマ”も忘れがたい。