オルフェ(1949)

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原題も「ORPHEE

ギリシャ神話の”オルフェウス”をジャン・コクトーが翻案し映画化したもの

冥土や死神たち、暗殺者が乗るバイクや、黒い高級車は

(ベンツじゃなくてロールスロイスだけどな 笑)

ドイツ占領下のパリでのナチスをイメージしたものだそうです

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冒頭で死んでしまう新進気鋭の詩人は
10
代で「肉体の悪魔」を発表し20歳で亡くなった

レイモン・ラディゲがモデル

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これだけで意味深で文学的な匂いがプンプンしますが(笑)

内容は意外と単純でナルシスト男の浮気の話

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文学青年の集る「詩人カフェ」で喧嘩に巻き込まれた詩人オルフェ

新進気鋭の詩人セジェストがオートバイにはねられて死んでしまい

王女と呼ばれる女性は、オルフェに死体を車に乗せるのを手伝わせます

車が城に着くとセジェストは生返り、王女と鏡の中に消えていきました

オルフェは気を失い、目が覚めると城は消え

女王の運転手ウルトビーズと妻のユリディスの待つ家に帰ります

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しかしオルフェはすでに謎の王女の虜になっていて

その日からロールス・ロイスのラジオから聞こえる暗号に夢中

妊婦のユリディスはほったらかしにされ

寂しい思いをしている美しい人妻にウルトビーズは同情します

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女が苦しくて協力して欲しい時ほど

男は仕事に熱中したり、他の女に夢中になるのよ

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結局ユリディスは死んでしまい

妻を顧みなかったオルフェは地獄で裁判にかけられるのだけど

二度と妻を見ないという約束で、ユリディスを連れ帰ることを許されます

しかし車のバックミラー越しに姿を見てしまったため

再びオルフェの前からユリディスは姿を消します

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それでもオルフェは王女と真実の愛を語らい、イチャイチャ

しかし冥土の王女と生きた人間が

いくら愛し合っても結ばれることはない

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王女は泣く泣くオルフェを諦め

ふたりの記憶をなくし生ある世界に戻す決意をします

そのためには地獄より辛い世界が王女を待っているのにもかかわらず

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結局クソ野郎は妻と子の場所に戻り

バチが当たるのは女だけなんて、愛人の哀しい結末よね

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が現世と冥土を繋ぐアイテムになっているのは

私たち鏡の中で自分自身が、毎日年を取っていくのを見ているから

ジャン・コクトー鏡が人間を死に近づけていると考えたそうです

このアイディアは今でもいろいろな映画で使われています

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神話のオルフェは、なんだかんだあってバッカス(酒の神)により

マイナス(狂暴で理性を失った女)と呼ばれる女性たちに襲われ

首チョンパされたそうですが

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コクトーの、オルフェとユリディスのハッピーエンドは

ナチスから解放されたパリの歓喜を現わしているのかも知れません





【解説】allcinema より

ギリシャ神話のオルフェウス伝説を基に、死と生の境を彷徨する詩人の姿に、俗世を超越した夢幻の世界に憧れる--彼の詩的テーマを託した、妖しい作品である。主人公のオルフェの通う“詩人カフェ”に“王女”と呼ばれる女性(カザレス)がある夜現われ、オートバイにはねられた詩人セジェストの死体を、オルフェに手伝わせ自分の車に運んだ。車はオルフェも乗せて、彼女の館に。そこでセジェストは蘇り、王女の導きで鏡の中に消えた。後を追うオルフェは鏡にぶつかって気絶する。目覚めれば鏡は消滅している。すっかり王女の美しさに囚われてしまったオルフェは、妻ユリディス(M・デア)の待つ自宅に戻っても虚ろであった。しかし、夜ごと彼の夢まくらに立つ王女を、彼は気づかない。妻は夫の心が自分から離れてしまったことを嘆きながら、オートバイにはねられ即死。死の国へと旅立つ彼女を、不思議な手袋の力で鏡を通り抜けて追ったオルフェは、二度と妻の顔を見ないという王女の突きつける条件を呑んで現世に連れ戻す。しかし、ユリディスは夫に見つめられずには愛を感じることもできず、よけい王女を嫉妬し、わざと彼に自分の顔を見させ、再び姿を消した。そこへ押しかけてくる友人たち。セジェストを奪ったのはお前だ--と彼らになぶり殺しにされ、遂に死の国へ迎え入れられるオルフェだったが、彼を愛していた王女は、生の世界に彼を連れ戻すことこそ正しいと悟り、妻と共に現世に帰した。メリエス直系の素朴なトリック撮影にかえって夢心地に誘われる映像は耽美派コクトーの独擅場。主役の、彼お気に入りのマレーも本作では一段と陰翳に富んだ表現を見せる。