女が階段を上る時(1960)

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「車で帰るのが一流 電車で帰るのが二流 客としけ込むのが最低」

「階段を上る」とは仕事上での出世、キャリアアップのこと

 

市井(しせい)に生きる女を描くのを得意とした成瀬に

銀座の高級クラブのママは無縁のような気がしましたが(失礼)

(黒沢組の)菊島隆三は、成瀬のイメージにあわせて

かなり研究したのではないでしょうか、手堅くまとめています

ひとこと文句をいうならナレーションが邪魔

カメラは玉井正夫

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銀座のクラブの雇われママ、圭子(高峰秀子)は

30歳で夫をトラック事故で亡くした未亡人

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身持ちが固く、夫の骨壺にラブレターを入れたという噂があります

そんな彼女に思いを寄せ、狙っているのが

クラブのマネージャー、小松(仲代達也)

利権屋の美濃部(小沢栄太郎

関西の実業家、郷田(中村鴈治郎

下町の工場経営者、関根(加東大介

銀行の支店長、藤崎(森雅之

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しかし売れっ子だったユリ(淡路恵子)が独立し

店の太客(ふときゃく)を引き抜いたせいで、客足は低下

圭子は小松とともにカルトンというバーに移籍します

そのユリが派手な経営のせいで負債を抱え自殺してしまう

ユリの葬儀に行った圭子は、その場に部下をよこした美濃部の債鬼(さいき)に

所詮女は、男の仕事の道具なのだと思い知らされます

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ユリの死によって常連たちは戻ってきましたが

気持ちの収まらない圭子は飲みすぎて血を吐いてしまいます

しばらく実家の佃で療養するものの

女将細川ちか子は早く店に出ろと催促に来るし

実家の母賀原夏子 は事件を起こした兄織田政雄の弁護料を払ってくれと

兄は兄で小児麻痺の息子の手術代が欲しいとアパートまでやってくる

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そんな心も身体も弱っているときに慰めてくれたのが関根でした

冴えない醜男だけど、やさしいし、小さいながら会社も経営している

圭子は関根のプロポーズを受け入れますが、彼の話は全部嘘

たまたま彼の奥さんがいい人で大きな損害にはならなかったけど

貧乏バラック住まいの子持ちの詐欺師だったのです

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圭子が自分の店でやけ酒を飲んでいると

銀行の藤崎が若い芸者を連れてやってきました

藤崎は他の客のように圭子を口説いたり、でかい儲け話などしない人

圭子は藤崎のことが好きだったんですね

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泥酔した圭子は芸者に対抗心を燃やしたうえ

藤崎と店を出ていき圭子のアパートで一夜をともにしてしまいます

しかし藤崎は大阪転勤が決まったと

圭子に10万円相当の株券を渡し去っていくのでした

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藤崎と入れ替わりにやってきた小松はショックを受けますが

その場で圭子にプロポーズします

圭子は「同業者同士の結婚はうまくいかない」と拒否

小松は圭子を諦め、店も辞めてしまいます

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新しい店をもったばかりの、純子(団令子)の

プライドの一切ない明るさに癒される

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ラスト、大阪に向かう列車に藤崎を見送り来た圭子は

カルトンという店のホステスであることを伝えたうえで

株券を藤崎にではなく奥さんに、贈り物を子どもに渡します

 

妻が夫を問い詰めることはないだろうけど

これから先、列車内の家庭を支配するのは夫ではなく妻になる

藤崎はこれから一生妻の顔色を過ごして過ごすのです

圭子のささやかな復讐

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この瞬間圭子の中で何かがふっきれ、変わります

女という弱みを見せたら負け

これからは決して情にほだされない

どんな苦境にも立ち向かう

そう、プロとして生きていく

(占いでも「2年後成功する」とも言われたしね 笑)

 

今までとは違う

圭子は一歩一歩力強く階段を踏み締め、仕事に向かうのでした

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同じ女をおもちゃとしか思っていない男たち中で

戦後を逞しく生き女たちでも

成瀬と今村昌平が描けば、こうも違うものか(笑)

 

ちなみに30は女の曲がり角」じゃねえよ

曲んねえよ、オヤジが!

 

 

【解説】allcinema より

菊島隆三のオリジナル脚本を成瀬巳喜男が監督した。主演の高峰秀子が衣装を担当。菊島は本作で初めて製作も務めた。1970年にはテレビドラマ化された。
 夫を亡くした圭子は、外国人マスターが経営する銀座のバー“ライラック”の雇われマダムだった。よく店に来ていた利権屋の美濃部が、かつて圭子の下で働いていたユリに店を持たせ、そちらへ頻繁に出入りしているようだ。マスターからはユリのように体を張って売り上げを回復させろと言われてしまう。ある日、狂言自殺をするつもりだったユリが本当に死亡した。葬儀の席で圭子は美濃部に食ってかかるが、血を吐いて倒れてしまう。酒の飲み過ぎで胃潰瘍にかかっていたのだ。やがて圭子は客に体を許すようになるが、その度に裏切られてしまう。