原題は「Civil War」(内戦)
「Civil War」定冠詞を付けると
南北戦争(the Civil War)の意味になるそうです
内戦で分断された近い将来のアメリカ合衆国・・
というより若手戦場カメラマンの成長記録を描いたロードムービー
それも悪い方向に
アメリカでは大統領が3期目(2期8年までと憲法に定められている)に突入し
大統領に反撥したテキサス・カリフォルニアが連合する「WS(西部勢力)」と
フロリダ~オクラホマにかけて広がる「フロリダ同盟」は政府軍を撃退し
ワシントンD.C.陥落が時間の問題となってきたとき
戦場カメラマンのリー(キルスティン・ダンスト)
ロイター通信のジョエル(ヴァグネル・モウラ)
リーの師でベテラン記者のサミー(スティーヴン・ヘンダーソン)は
ホワイトハウスの大統領に直撃インタビューを行うため
ニューヨークからワシントンD.C.に向かうことになります
そこに、戦場でリーに助けられリーに憧れている駆け出しのカメラマン
ジェシー(ケイリー・スピーニー) が同行したいとお願いします
(酔っぱらったジョエルがO.K.してしまった)
ピッツバーグからウェストバージニアを通過してシャーロッツビルを経由する
最初に立ち寄ったガソリンスタンドでは
(戦争のためインフレでカナダドルでガソリンを売って欲しいと交渉する)
洗車機に瀕死の男2人(ガソリンを盗もうとした)が吊るされています
ショックで口も利けなくなってしまったジェシーに対し
狼狽える様子もなく民兵に写真を撮らせてくれと頼むリー
翌日、分離主義者(合衆国から独立しようとする革命軍)の民兵が
ロイヤリスト(WASP”ワスプ”のことだと思う)が
占拠する建物を攻撃するのを取材し
捕虜を処刑する分離主義者を撮影するジェシーに
リーは彼女が戦争写真家としての才能が目覚めるのを感じます
難民キャンプで一夜を過ごした後、小さな田舎町を通過すると
そこでの人々は昔ながらに平和に暮らしており
ブティックの店員は「面倒ごとには関わりたくないの」と内戦に無関心
ワンピースを試着するリーを撮影するジェシーでしたが
屋根の上では住民が「よそ者」を銃で狙っていました
しばらく車を走らせると「クリスマスフェア」の残骸のある場所で
狙撃戦が行われていました
どちらの側で戦っているのかと問うジョエルに対し
「殺そうとしている奴を殺している」と説明する狙撃兵
敵か味方もわからないし、思想や政治的観念ももうない
生き延びることだけが優先
もはや殺人や死体を撮影することに
躊躇することのなくなったジェシーでしたが
さらに車を走らせていくと、猛スピードで追いかけてくるトヨタ
乗っていたのはアジア人記者のトニーとボハイでした
トニーとジェシーが車を乗り換えると、先に走り去ってしまったボハイの車
リーたちが追いつくと、そこは(処刑された民間人の)集団墓地で
ふたりを救出するため交渉に入るリーとジョエルとトニー
武装集団のリーダーで赤いサングラスの男は、キルスティン・ダンストの旦那
ジェシー・プレモンスがカメオで出演したということ
アンタ、こんな目立つカメオいないから(笑)
悪いけど作中で一番強烈だったわ
この男には民間人もジャーナリストも関係ないんですね
問題は「お前はどの種類のアメリカ人だ?」
リーたちが意味がわからず迷っていると「出身地はどこだ?」と
「ミズリー」「アメリカだ」
「フロリダ」「アメリカだ」
「・・香港」「中国か」
一瞬で処刑されてしまうボハイとトニー
車を民兵に突っ込んで3人を救ったサミーでしたが
逃走中に撃たれた傷が致命傷となって死んでしまいます
シャーロッツビルWF基地でロイヤリストのほとんどが降伏したことを知り
到着が遅かった、サミーの死は無意味だったと酒を飲み嘆くジョエル
リーは「サミーが仕事中に死ねてよかった」と
サミーの死を撮った写真を保存することができず削除してしまいます
そんなときホワイトハウスから大統領が逃げ出し
WFは大統領専用リムジンの車列と
シークレットサービスのエージェントたちを襲いますが
大統領はまだホワイトハウスに隠れている陽動作戦だと気付いたリーは
WFとともにホワイトハウスの境界線を突破します
しかしリーはサミーの死から心的外傷後ストレスに苦しんでいて
一方のジェシーは写真を撮るためなら向こう見ず
自分を危険にさらしてでも前に前に出て行ってしまいます
WFとシークレットサービスの銃撃戦の間に立つジェシーを押しやるリー
ジェシーはシークレットサービスに撃たれ倒れるリーの姿をカメラに収めます
さらに大統領執務室の机の下から大統領が引きずり出されると
大統領に最後の言葉をインタビューするジョエル
大統領が「彼らに私を殺させないで」と答えるとジョエルは満足し
ジェシーは「feel alive」(生きていると感じる)と呟き
処刑された大統領の死体とポーズをとる兵士たちを撮影するのでした
この女にどうして共感できよう
無鉄砲さにじゃない、才能がない
写真に魅力がないからだ
まるで映画のような(映画だけど 笑)これらの写真を見て
誰が「反戦」を考えるものか
それもそのはず、これは戦争映画ではなくヘイト映画
監督のアレックス・ガーランドはインタビューで
作品に込められたメッセージについての質問に
「トランプには投票するな」と答えたそうです
【解説】映画.COMより
「エクス・マキナ」のアレックス・ガーランドが監督・脚本を手がけ、内戦の勃発により戦場と化した近未来のアメリカを舞台に、最前線を取材するジャーナリストたちを主人公に圧倒的没入感で描いたアクションスリラー。
連邦政府から19の州が離脱したアメリカでは、テキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西部勢力」と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。就任3期目に突入した権威主義的な大統領は勝利が近いことをテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。戦場カメラマンのリーをはじめとする4人のジャーナリストは、14カ月にわたって一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うべく、ニューヨークからホワイトハウスを目指して旅に出る。彼らは戦場と化した道を進むなかで、内戦の恐怖と狂気を目の当たりにしていく。
出演は「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のキルステン・ダンスト、テレビドラマ「ナルコス」のワグネル・モウラ、「DUNE デューン 砂の惑星」のスティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン、「プリシラ」のケイリー・スピーニー。
2024年製作/109分/PG12/アメリカ
原題または英題:Civil War
配給:ハピネットファントム・スタジオ