おはん(1984)


 
 
優柔不断なダメ男に尽くす、芸者と捨てられた妻。
吉永小百合さんと大原麗子さん、当時は30代後半ということで
いまでいうアラフォー世代。
綺麗ですねえ、日本人形のようです。
大原さんなんて声も色っぽいですしね、本当にうっとり。
 
美味しいものを食べるように
綺麗な人を見るというのは幸せなものです。
 
そしてこの美しいふたりを
いかにして脱がせないまま官能的に魅せるのか、撮るのか
監督もカメラも衣装も編集も
そのことばかりを考えていたのだろうと察しがつきます。
汗ばんだうなじ、着物の襟がずり落ちた肩、一瞬覗かせる太もも
市川組のチラリズムの美学の集大成でしょう。
 
だだストリー的には、石坂浩二さん演じる幸吉に主体性がなく
あまりに薄っぺらすぎてイラつきます。
おはんもおかよも、いったいどこが良くて
幸吉が好きなのかまったくわかりません。
あまりにもダメ男だと、女は世話を焼きたくなるのでしょうか?
子どもの面倒を見るかのように。
 
しかしおはんのように男に言われるまま
付き合い別れまた付き合うという
ズルズルと、ウジウジと、そんな関係を続ける女性もいるのでしょう。
おかよのようにヒモ男の面倒を健気にみる女性もいるのでしょう。
現実にはそういう女性は、あまり美人ではない気がしますけど。
(ごめんなさい。笑)
 
どのおうちも、お店も、昔の日本屋敷のセットは素晴らしい。
見る価値があると思います。
幸吉とおはんに部屋を貸すミヤコ蝶々さんも
さすがの味わいのある演技でよかったですね。
 
あとは吉永さんと大原さんの女性の円熟期を鑑賞する作品。
このふたりが並んだら、贅沢、とにかく贅沢。
だから余計に石坂浩二さんがダサく見えたんだろうなあ~
きっと。笑
 

 
【解説】allcinemaより
生活力の乏しい中年男が、一度別れた妻と芸者との間で揺れ動くさまを親子の情愛を絡めて描いた、市川崑監督、吉永小百合主演による大人の愛の物語。大正時代、関西の田舎町。ほとんど商いのない古物商を営みながら、自分の小遣銭を稼ぎ、芸者のおかよの許に身をよせているしがない男・幸吉。ある日、7年前におかよと馴染みになって以来、別れて会っていなかった妻のおはんと再会する。おはんから息子の話を聞かされた幸吉は、やがておはんともう一度やり直す決心をするのだが……。