隠蔽捜査【今井敏】(2005)


 
 
 
この小説はドラマ化もされていますしシリーズにもなっている
人気のミステリーですよね。
そして「隠蔽捜査」というこのタイトル
なんとも警察小説ファンの心をくすぐります。笑
 
警察官が犯した殺人事件。自供したにも関わらず
捜査現場の様子はおかしく捜査も手間取っています。
どうやら上層部から、事件の隠蔽が指示されたようです。
そんな事件のさなか、予備校に通う息子がヘロインを吸っているのを発見します。
家族の不祥事とはいえ、竜崎のキャリアももしかしたら警察官という
職業も失うかもしれない。
もみ消すのが正しいのか、それとも公表するべきなのか・・
 
「東大以外は大学ではない。それが省庁で生きていく最低の条件なのだ。」
「家庭のことは妻の仕事だ。私の仕事は、国家の治安を守ることだ」
 
私利私欲に無縁な警察官僚、主人公の竜崎のキャラクターが好ましい。
私は、このような無愛想で人付き合いが苦手な変わり者って
案外嫌いではありません。笑
あまりにも真面目で融通がきかないその行動に
だんだんと気分よく爽快になったくらいです。
「組織の犬」「変人」と陰口を言われる、中年エリートキャリアが
ヒーローというのも新鮮でしたね。
 
「貴方は国家の為に働きなさい。」
 
この気難しい男に連れ添っている、妻の冴子のキャラもまた素晴らしいのです。
夫を「唐変木」と呼びながらも、竜崎が窮地の時でも堂々とし
家庭を支えています。
忙しすぎて家庭を顧みることができない男性にとって、理想の妻の姿でしょう。
 
警察小説ファンには、さすがのオススメの小説。
でももう警察小説ファンならとっくに読んでいますね。笑
 

 
【あらすじ】ウィキペディアより
竜崎伸也は独特の信念とキャリア独特の矜持を持つ警察庁のキャリア官僚。ある時、暴力団員の殺人事件が発生。10年前の少年犯罪が関わっていたことを知った竜崎はその対応の遅さに怒り、同じくキャリア官僚で小学校からの同級生である警視庁刑事部長で本事案の捜査本部長を務めている伊丹俊太郎や刑事局に詰め寄るが、暴力団の抗争が原因だからそんなに慌てる事はないと聞く耳を持たない。しかし次々と起こる殺人事件に方針を変更、捜査のやり直しの過程で警察官が殺人に関わっているのではないかという疑念を抱く。そんな中、息子の邦彦が薬物を使用していることを知って…。