黒い罠(1958)

 
 
解説にもあるように
フィルム・ノワールの知られざる傑作ということ。
 
冒頭の3分18秒にわたる長回しによる撮影は
とても有名だそうです。
カメラはラッセル・メティ。
 
ジャネット・リー、マレーネ・ディートリッヒ
ジョセフ・コットン、デニス・ウィーヴァー・・
物凄いメンバーですね。
 
とくに元恋人役のウェルズとマレーネの存在感は強くて
下劣な醜男に、余裕で「(太りすぎは)キャンデーの食べすぎね」なんて
語っちゃうマレーネ姐さんはやっぱりカッコイイ。
 
ウェルズみたいなアクの強い男がひれ伏す女は
世界のマレーネしかいない!笑
大物×大物、さすがの貫録でございます。
 
アメリカ人妻と新婚旅行に出発するため、国境近くの町にやってきた
メキシコ政府特別犯罪調査官ヴァルガスは
そこで爆破事件に遭遇してしまいます。
死んだのは町の富豪とストリッパーの女でした。
 
妻をホテルに滞在させ調査を始めるヴァルガス。
しかしアメリカ側の捜査担当のハンク・ウィンラン警部と
捜査をめぐって対立することになります。
 
警察のずさんな捜査、証拠品のでっちあげ、人種差別
しかも町全体がグルなのです。
事件の真相を突き止めようとするヴァルガスを陥れるため
ハンクはヴァルガス夫人を誘拐し麻薬常習犯に仕立て上げます。
 
警察の汚職、人種差別、暴力があまりにも卑劣で
怒りを覚えずにはいられません。
でも警察という権力を利用してそういう行為を行うことは
今でも時々ニュースなどで知りますよね。
無実の人間が自白を強要され有罪になった事件あったり。
 
でもねつ造ばかりしていると
ねつ造をしていることが、わからなくなってしまうのではないでしょうか。
そのうえ自己愛が強すぎて、保身ばかりになってしまう。
 
傾いたマンションのくい打ちに
オリンピックのロゴマーク
映画とは関係ないですけど
大きな事件から小さなものまでも(小さくはないか)
いろいろ考えてしまいますね。笑
 
映画通な方向けの映画だと思います。
作品にまつわる逸話も多いので
そちらも楽しめるでしょう。
 

 
【解説】allcinemaより
メキシコ国境の小さな町で起こった車の爆殺事件。偶然にも現場を目撃したメキシコ政府の特別犯罪調査官ヴァルガスは事件の捜査に乗り出すが、アメリカ側の担当者であるクインラン警部はヴァルガスの介入を露骨に拒否。だが上司の命令で、クインランはやむなくヴァルガスと共同捜査を開始する……。国境の町に拡がるどす黒い陰謀を描いたW・マスターソンのミステリ小説を、O・ウェルズが脚色・監督したフィルム・ノワールの知られざる傑作。冒頭の長回しシーンを筆頭に、R・メティのカメラを得て成された、技巧を凝らした画面造りと演出。そこから醸し出されるダークな雰囲気と緊迫感は只事ではない。ウェルズ自ら演じるクインランの特異なキャラクターと存在感は、ヴァルガスに扮するヘストンを軽く圧する迫力だ。108分のオリジナルが「黒い罠-完全版-」としてリバイバルされた。