あやしい彼女(2016)

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韓国映画「怪しい彼女」(2014)の日本版リメイク

オリジナル版は見ていません

よくある”入れ替わり”ものの定番で

73歳のおばちゃんが20歳の姿に戻って、孫のバンドで大活躍するというもの

でも中身はババアのまま(笑)

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私の母もですが(笑)

年配の女性って同じことを何度も聞いたり

昔話を何度も繰り返すので

正直ウザイと思ってしまうことがありますよね

(私も将来そうなるかも知れないケド)

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幼馴染の次郎(志賀廣太郎)の銭湯でパートするカツ(倍賞美津子)も

毎日のように、夫を早くに亡くした苦労話や

雑誌社に勤める一人娘、幸恵(小林聡美)の自慢ばかり

さらに毒舌が加わって、人間関係でもトラブルを起こしてしまうタイプ


(年齢のせいで)ファション誌の編集長の仕事を外されたこともあり

息子の翼(北村匠海)がバンド活動に熱中して大学を留年したこともあり

カツが詐欺に100万円騙し取られたこともあり

イライラが募っていた幸恵は、何かと恩着せがましいカツと大喧嘩

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家を飛び出したカツは写真館に飾ってある

オードリー・ヘプバーンの写真に吸い寄せられ

写真館のマスター(温水洋一)に記念撮影をしてもらうことにします


写真館を出たところで、男子学生たちとバイクのひったくりを捕まえると

ミラーに映っていた自分の顔は20歳の頃のものでした

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青春プレイバックとATMから大金を引き出し

髪型を変え、洋服を変え(といっても昭和レトロ)

行くところがないので次郎の銭湯に行き

大鳥節子(多部未華子)と名乗り

適当な嘘をついてそのまま次郎の家に居候させてもらいます

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そして商店街の夏祭りのカラオケ大会で歌ったことから

孫の翼からバンドのメンバーになってほしいと頼まれ

音楽プロデューサーの小林(要潤)に追われることになります


カツのライバル、金井克子のスタイがル良すぎて驚いた(笑)

遠くから見たら、多部ちゃんよりもプロポーション抜群

でもここは「恋の奴隷」じゃなくて「他人の関係」歌わないとダメでしょ(笑)

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昭和歌謡って、日本語の歌詞だからこそ日本人の心に響くのでしょう

多部ちゃんは撮影3か月前からボイストレーニングと歌のレッスンを受け

「悲しくてやりきれない」は音楽担当の小林武史も絶賛したそうです


ATMの防犯カメラの映像から、次郎は節子がカツを誘拐したと思い

節子を捕らえようとしますが、逆に縛られ呆れられてしまいます

そこでやっと節子がカツだと気づくのです

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そこからロックフェスティバルに出場するためオリジナル曲を作ることなったり

節子が怪我をして血の出たところが老化することがわかったり

幸恵が自分は20歳まで生きられないと言われていたことを知ったり

ライバルの金井克子が死んだり

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いよいよロックフェス当日、翼が交通事故に遭い病院に運ばれてしまいます

翼の血液型はRHマイナスAB

血液が足りず、同じ血液型はカツしかいないと幸恵は言います

翼を助けるため節子に迷いはありませんでした

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一時は淡い恋心を抱いた小林を、眩しそうに見つめる73歳に戻ったカツ

目の前にスクーターで現れたのは

グレゴリー・ペックになった次郎(野村周平)でした


「このまま旅にでもでるか」

そうだよ何歳になったって、どんな見た目になったって

そばにいてくれるのは次郎なんだよ

ふたりは「ローマの休日」のように、二人乗りをして出発するのでした

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映画としてもの凄くいい出来、とは言いませんが

気軽に親子3代世代で楽しめる作品(笑)

若い人はもちろん、子育てがひと段落した母親や

シニア世代にも共感できる部分が少しづつあると思います

今でも愛され続けている「ローマの休日(1953)

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そして多部ちゃんの名言の数々にスッキリ

「歌って自分だけが気持ち良くなりたいなら 風呂場で歌いな!」

「その短い棒で人生棒に振るよ」


人生は二度と戻ることはない

11日を自分と家族を大切に生きていくことが

何より大事なのです



【解説】シネマトゥディより

2014年公開の韓国映画『怪しい彼女』を、『舞妓 Haaaan!!!』『謝罪の王様』などの水田伸生監督がリメイクしたコメディー。73歳の頑固な女性がひょんなことから20歳の姿に戻り、失われた青春を取り戻していく姿を描く。ヒロインの20歳時を『ピース オブ ケイク』などの多部未華子が、73歳時を『うなぎ』『OUT』などの倍賞美津子が演じる。多部による1960年代から1970年代のヒット曲の熱唱や倍賞の毒舌など、一人の女性を演じる二人の女優に期待が高まる。

愛と死の記録(1966)

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「エッチじゃね」

「すごい冷たい手じゃね」

「心はぬくいんよ」

「参った!仲直り」

 

渡哲也さんを偲んで”数えきれないほどの映画やドラマの中から

NHKBSPが選んだ1作がこれ


吉永小百合といえば、いつもの浜田光夫(笑)

その浜田が、名古屋で喧嘩に巻き込まれ右目を重傷しまい

そこで抜擢されたのが、新人アクション俳優の渡哲也でした

この映画をきっかけにふたりは交際をスタート

しかし吉永の両親の反対により結婚には至らなかったそうです

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まるでふたりの将来を暗示するような映画ですが

映画の結末とは違い、ふたりは友人として絆を深めていきます

サリン・ヘプバーンと、スペンサー・トレイシーのような大人の関係


2017年の「松竹梅」CMの収録後の記者会見で

吉永に「最後の1本はラブシーンをやりましょう」と言い

吉永が「老夫婦の恋愛作品を作りましょう」と答えたエピソードも洒落ています

原作は大江健三郎のノンフィクション「ヒロシマノート」(1965)

紹介された実話の中のひとつ

 

ただの青春日活ロマンの悲劇ものかと思っていたのが

まるで北欧映画のような救いのないラスト

カメラは姫田真佐久(ひめだしんさく

ドキュメンタリータッチで見ごたえのある映像に唸り

音楽は名手黛敏郎、ベテランの技が光ります

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ある朝、和江(吉永小百合は勤め先の楽器店の前で

バイクにはねられそうになり持っていレコードを割ってしまいます

運転していた幸雄(渡哲也)は、同じ印刷会社に勤める藤井(中尾彬)から

2千円を借り和江にレコード代を弁償します

 

和江と同じ楽器店で働くふみ子(浜川智子)と、その恋人藤井の策略で

ふたりは再会し思いがけず意気投合

茶店での「橋尽くし」の会話

窓辺のマスコットを手にして「私のあだ名はバンビ」

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バンビがチャイコフスキーの「悲愴」を誰にプレゼントするか気になったり

藤井とふみ子と一緒にバイクでWデート

まだ交通規制が緩い時代で、バイクがノーヘルだったり

ちょっと危険で、若々しい交際がスタートします


だけど幸雄から愛の言葉や、結婚の話がひとつも出てこない不安を

バンビが打ち明けてしまったことや

ツーリングの帰り道、2人乗りをトラックの荷台の作業員にひやかされ

雨の中突然バンビをバイクから降ろし、幸雄は走り去ってしまいます

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かと思えば、橋の上をトボトボ歩く和江のもとに戻ってきて

「好きなんじゃ!」と叫び抱きしめる


かと思えば、印刷会社の上司で養父代わりの岩井(佐野浅夫)が持ってきた

縁談があると打ち明け、連絡を断ってしまいます

これが放置プレイならともかく(オマエはそういうことしか思いつかないのか)


バンビの兄嫁は「理由があるのよ」

「突然部屋を訪ねてみなさい」とアドバイスします


ベランダからバンビの姿を見たパジャマ姿の幸雄は

慌てて寝ていた布団を隠します

幸雄もまたバンビへの思いを断ち切れず、強く抱き合うふたり

そして幸雄はバンビを原爆ドームに連れて行くのでした

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戦後20年経っても瓦礫が残る原爆ドームの敷地内

地上から見上げる天井のフレーム

私は原爆ドームの姿がどうだったのか、元の建物の正式名称も知りません

だけど広島の人々は、その変わり果てた姿を見るたび

ピカドンを思い出してきたのでしょう

 

そこで幸雄は「7000日前、4000度の熱線を俺は見た

300レントゲンのγ(ガンマ)線を体にうけた

忘れてください、あなたの長い生涯の為に」と

自分は4歳の時に被爆した戦災孤児だと打ち明けます

 

ウクライナでもチェルノブイリ出身者は結婚するのが困難だったそうですが

当時の広島では被爆者への差別や偏見が色濃く残っていたのですね

それでも幸雄と結婚したいバンビは、家族にそのことを打ち明けます

ちょうどその時バンビにはこれとない縁談の話が持ち上がっていました

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母親(三崎千恵子=寅さんのおばちゃん)や(垂水悟郎)

原爆症の青年との結婚より、現実的な幸せを願いますが

冒頭のレコードのお金のやりとりからもわかる通り

バンビは真面目で卑怯なことはできない性格なんですね


原爆病院(なんという病院名)に入院した幸雄を毎日看病していました

介護に迷ったときは、ふみ子が「幸雄には誰もいない、ひとりぼっち」と

バンビの代わりに泣いてくれました

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ある夜、危篤の幸雄に付き添い一夜を共にしたことで

結婚前の女性が外泊したとみんなが怒っているから

一度帰ってきてと兄嫁から病院に電話があります


バンビが家に帰っているわずかの間に

バンビを呼びながら、幸雄が逝ってしまう

もしこの時、バンビが幸雄を最期を看取っていたら

もしかしたら違う結末を迎えたのかも知れません


幸雄の遺体と対面したバンビは言葉を失い

ただ呆然と立ちすくみ

流れる涙が顎から雫になって落ちるだけ

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幸雄が死んだあと、バンビは岩井の紹介で主治医に会いに行きます

主治医(滝沢修)は戦後多くの被爆者を治療し

自らも被爆者(ハゲも被爆が原因だという軽いジョーク)でした

バンビは幸雄の再発の可能性について黙っていたことを批判しますが

「幸雄くんが白血病とわかって愛することをやめましたか?」とバンビに問います

「いいえ」と言うバンビに「愛のためには人は自殺さえ・・・」

と心の内を打ち明けるのです


主治医との面会の後、バンビは周りに明るく接するようになります

家族には、勉強になった、いい人を探すわ、と

藤井とふみ子には、広島中の橋の絵を描こうと思うの、と

そして喫茶店の窓辺に飾ってある

バンビのつがいのマスコットを貰っていくことにします


「私のあだ名はバンビ」

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バンビが元気になったことで、家族や友人が安心した中

バンビはひそかに、いつもレコードを届けている

隣のおねえさん(芦川いずみ)を訪ねていました


おねえさんはバンビの兄と結婚の約束をしていましたが

被爆者という理由で結婚が許されず、ひとりで生きていくことに絶望し

自殺未遂した過去がありました

でも今は死ねなかった分、老いた両親のため生きると言います

「天国があると思うか?」というバンビの問いには

「うち死に損ないじゃけん、まだわからんわ」と微笑むだけ


芦川いずみさん、雰囲気がなんともいえないですね

こんな美人な死に損ないがいたら、日本中の男が殺到しますから(笑)


誰もが、バンビが幸雄の死という悲しみを乗り越え

これからの人生に前向きになったのだと、そう思ったとき

幸雄の主治医に届いたバンビのマスコット

裏側には、幸雄と和江の名前と年齢が書いてありました


ここからのスピード感が凄い

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サイレンを鳴らし走る救急車

布団に横になったまま動かないバンビを揺する家族

枕元に見える楽の瓶

バンビの両手を布で巻く消防隊員

走り去る救急車

その様子を窓から覗く、隣のおねえさん、顔に残るケロイド

新聞に小さく載った被爆者青年の死を追い」という見出しと顔写真

かってふたりで訪れた原爆ドーム


なぜ主治医は自殺の話をバンビにしたのでしょう

それからバンビは自殺という思いに憑りつかれてしまった

もしかしたら長年の医師としての経験から

健康なバンビにも、死相が見えたのでしょうか

(医療従事者には、そういう勘が身に着くことがあるそう)

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誰もが、それぞれの立場から苦渋の選択を迫られる

被爆地で生きる人々にとって、悲劇が今なお続いているということを

さりげない台詞、さりげない工ビソードで表現している上手さ


広島、長崎の原爆投下もですが

福島の原発記憶さえ薄れつつある現代において

このような作品は、もっと注目されるべき存在

 

たとえニュースにならなくても

私たちが思う以上に差別や偏見で自殺している人は

多いかも知れないのだから

 

 

【詳細】NHKホームページBSシネマより

【監督】蔵原惟繕,【出演】吉永小百合,渡哲也,中尾彬,浜川智子,芦川いづみ佐野浅夫滝沢修,【脚本】大橋喜一,小林吉男,【音楽】黛敏郎

先日亡くなった渡哲也さんをしのんでの放送。吉永小百合との初共演となった純愛映画。昭和30年代後半の広島市レコード店で働く和江は、印刷会社で働く青年・幸雄と偶然に出会い、恋に落ちる。毎日のように一緒に過ごす2人。しかし、楽しい日々は長く続かなかった。幸雄は、幼いときに原爆で両親を失い、自身も被爆していた。原爆症のため、入院することになった幸雄。和江は周囲の反対を押し切って、愛を貫こうとするが…。



母と暮せば(2015)

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松竹120周年記念映画で

2010年に亡くなった井上ひさしさんに捧げた作品

 

「父と暮らせば」の広島を扱った、被爆死した父の亡霊と残された娘に対し

「母と暮らせば」はもう一つの被爆地長崎を舞台にした

被爆死した息子の亡霊と残された母の物語

 

冒頭の長崎への原爆投下の瞬間の描写は見事

授業で使っているインク壺のアップがネガポジ反転したと思った瞬間

グニャッと溶け、同時にすさまじい光と爆風

直接的な破壊や被害は描かれず、生活の一場面に溶け込み

さりげなく登場する負傷者たち

それが自然であればあるほど印象に残る

作品としての期待も高まるわけですが

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黒木和雄監督、原田芳雄×宮沢りえ浅野忠信は両方に出てる 笑)の

父と暮せば(2004)も舞台的で圧倒的なセリフの多い映画でしたが

99分とコンパクトにまとめられているのでまだ見やすい

しかしこちらは130分という長さ

並列的に語られるエピソードを散々聞かされるはめになります

 

しかもラストの葬儀は、まるで息子と母親の結婚式

あの白い服を着た合唱団(死んでいった人々の魂なのだろうか)と

原爆記念像については全くいらない

(すみれちゃんに見えているのは、すみれちゃんも死ぬの?)

 

ここは上海のおじさんと、となりのおばさんの

「なんだか幸せそうに寝ているみたいだね」で終わるべきでした

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医学生だった次男の浩二(二宮和也)が死んで3年目の墓参り

現役の助産婦として働く母親の伸子(吉永小百合)は

今も伸子に尽くしてくれる、浩二の恋人だった町子(黒木華)に

浩二の死を受け入れる決心をしたと話します

 

その日、死んだはずの浩二が姿を現し

やっと「母さんに会いに来れた」と語ります

それからたびたびやって来ては、子どもの時のことや

町子のことなどを、思い出話をしていくようになります

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夫が早く死に、長男も戦死

残された次男に、自分のすべての愛情を注いできたのでしょう

その息子がある日突然跡形もなく消えてしまった

母親が諦めきれないのは当然

 

息子が死んだと諦めたとたん、伸子は壊れてしまった

原爆症が悪化し、総合失調症まで患ったのでしょう

自分にしか見えない、ときどき現れる幽霊と話をする

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伸子は浩二に「もし町子にいい人が現れたらどうする」か訊ね

「死んでしまった浩二のことは忘れてその人と幸せになってほしい」と

自分の気持ちを打ち明けます

 

はじめは「町子はぼくの妻になる人」と反発した浩二でしたが

「自分よりいい人なんていないと思うよ、いないと思うけど・・」と

伸子の考えを受け入れることにします

 

ある日、町子の教えるすみれちゃんの家で赤ちゃんが生まれました

すみれちゃんは伸子に「黒ちゃんは町子先生が好き」と教えます

伸子が町子に「黒田先生はどういう人」と訊ねると

「子どもたちに人気のいい先生」とだけ答える町子

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そこに闇市で商売する「上海のおじさん」(加藤健一)や

町子が教えている小学2年の民子(本田望結)を
原爆で行方不明になった父親の消息を確かめるために
復員局に連れて行くエピソードが加わります
祖父からの言われた通り、泣かずに職員(小林稔二)から
死亡通告を受け取るシーンはジーンとくる

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「浩二から怒られるから」と、上海のおじさんから食料品を買うのをやめた伸子

死んだ息子が見えるという伸子の体調をおじさんは心配し

実際伸子はその頃から体が弱っていました

 

そして町子がお正月のお餅を持って

黒田先生と婚約したことを報告しに来ます

伸子は町子の婚約を喜びますが

 

浩二が死に、町子だけが幸せになると思ったとき

「あの子が代わってくれたらよかった」

つい本音が出てしまうのでした

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浩二は伸子に「もうこの家には来られない」と告げます

焦った伸子は「町子が去ってしまって、浩二まで来てくれなくなったら

自分は寂しくて死んでしまう訴えますが

 

浩二は「これからはずっと一緒にいられるから大丈夫

「あなたはもうこちらの世界の人だから」と伸子を導くのでした

キリスト教で人が死ぬことを「お迎えが来る」と言います

いままでずっと「お母さん」と呼んでいた息子が突然「あなた」と呼ぶ

 

上海のおじさんの不器用なやさしさが最後まで心に残ります

町子は自分だけ好きな人と幸せを掴んだことを

浩二と伸子に詫び続けながら残りの人生を過ごすのだろうな

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山田洋次が描く「サイコ」は、怖くて悲しいハッピーエンド

そしてやっぱり、それぞれの登場人物がいい

 

ラストが残念なことだけが、やはり悔やまれます

 

 

【解説】KINENOTEより

作家・井上ひさしが晩年に取り組んでいた広島・長崎・沖縄をテーマにした構想を「男はつらいよ」の山田洋次監督が受け継いだ家族ドラマ。長崎に落とされた原爆により息子を失った母と彼女のもとに現れた死んだはずの息子とが過ごす少し不思議ながら幸せな日々を描く。広島を舞台にし2004年には黒木和雄監督により映画化された戯曲『父と暮せば』と対になる作品として制作された。助産師の母親を「おとうと」の吉永小百合が、息子を「硫黄島からの手紙」の二宮和也が、息子の恋人だった女性を「小さいおうち」の黒木華が演じる。ほか、「私の男」の浅野忠信、舞台を中心に活躍する加藤健一らが出演。松竹120周年記念映画。

194589日、長崎に原子爆弾が投下された。それからちょうど3年後。助産師として働く伸子(吉永小百合)のもとに、原爆により死んだはずの息子・浩二(二宮和也)がひょっこりと現れる。それからというもの浩二は度々姿を現し、伸子と思い出話や浩二の恋人・町子(黒木華)についてなどいろんな話をしていくが……。

 

 

【解説】KINENOTEより

作家・井上ひさしが晩年に取り組んでいた広島・長崎・沖縄をテーマにした構想を「男はつらいよ」の山田洋次監督が受け継いだ家族ドラマ。長崎に落とされた原爆により息子を失った母と彼女のもとに現れた死んだはずの息子とが過ごす少し不思議ながら幸せな日々を描く。広島を舞台にし2004年には黒木和雄監督により映画化された戯曲『父と暮せば』と対になる作品として制作された。助産師の母親を「おとうと」の吉永小百合が、息子を「硫黄島からの手紙」の二宮和也が、息子の恋人だった女性を「小さいおうち」の黒木華が演じる。ほか、「私の男」の浅野忠信、舞台を中心に活躍する加藤健一らが出演。松竹120周年記念映画。

194589日、長崎に原子爆弾が投下された。それからちょうど3年後。助産師として働く伸子(吉永小百合)のもとに、原爆により死んだはずの息子・浩二(二宮和也)がひょっこりと現れる。それからというもの浩二は度々姿を現し、伸子と思い出話や浩二の恋人・町子(黒木華)についてなどいろんな話をしていくが……。

あゝひめゆりの塔(1968)

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今井正監督の「ひめゆりの塔(1953東映)

「太平洋戦争と姫ゆり部隊」(1962東宝)に続いて

舛田利雄監督の日活ニューアクション世代による三度目の映画化


主人公は中村翫右衛門校長をする女子師範学校の総代で

みんなを引っ張っていく係の吉永小百合

同級生に和泉雅子、太田雅子(梶芽衣子)、音無美紀子

浜川智子(浜かおる)、後藤ルミ

男子部の生徒はいつもの浜田光夫和田浩治藤竜也(笑)

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1968ゴーゴークラブで踊る若者たち

ひとりの青年(渡哲也)のインタビューに彼らは1621だと答えます

青年昭和18年秋の沖縄師範学校女子部運動会を思い出していました

いきなり下肢をむき出しの提灯ブルマ姿で徒競走やダンスという

女学生たちの健康的(で無駄にエロティシズム)な姿(笑)

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男子部の学生たちは運動会を見たいがために

姉の与那嶺和子の応援に来た中学生男子をまるめこんで運動会に紛れ込み

男子部のひとり西里(浜田光夫)は与那嶺和子の従弟だと嘘をつきます

しかし目の前にいたのは初対面の与那嶺和子(吉永小百合)でした

それからふたりは意識しあうようになります

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今となっては誰が見てもわかる、沖縄らしさに欠ける言葉に風習

沖縄県民に見えない風貌(返還は公開の二年後)

リアリティさに欠ける生ぬるいエピソード

舛田利雄のなかでは評判はあまりよくないようですが


敵兵はひとりも姿を現さず、ひたすら見えない敵と戦うという演出は

いかに相手が巨人であるかということが伝わりますし

沖縄県民の4人に1人(約20万人)が命を落とした

最悪の地上戦を描いた貴重な映画のひとつに違いないでしょう


米軍上陸に備え、竹槍での軍事教練を受ける女学生たち

本土からやって来た教育係の軍人は

アメリカ兵はおまえたちを素っ裸にして戦車の一番前に縛り付け

日本兵が攻撃できないようにするのだから

そうならないよう本気で訓練しろと脅します

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昭和19年、和子教育実習をした子どもたちが

教師をしている和子の母親の引率で九州に集団疎開することになります

しかし家族が子どもたちの出発を見送ることを軍部は許しませんでした

数日後島民は、子どもたちを乗せた船が敵の発射した魚雷により

沈没したと知らされます(対馬丸事件


昭和20年、すでに沖縄本島に米軍は上陸していて

女学生たちはは卒業式を目前にして野戦病院看護師として従軍させられます

戦火の拡大で運び込まれる兵士、空爆により戦死していく肉親や同級生たち

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そんな中でも、形だけの卒業式を行おうと提案してくれた校長先生

卒業証書は戦火で焼かれ、答辞だけのささやかなものでしたが

娘たちは歓喜し、涙するのでした


戦線の後退、首里城陥落が間近になり

野戦病院も戦線にあわせて洞窟に移転することになりました

歩けない患者の中には同級生のトミ和泉雅子)もいましたが

後で軍のトラックで運ぶと言われ和子らは先に出発します

しかし残された患者には青酸カリ入りの牛乳が配られていました

トミは軍人しかもらえない牛乳を欲しいと望み

トミの気持ちを察した兵士は牛乳を分け与えます

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5月の沖縄は雨期なのですね、雨と泥の中移動する軍人と娘たち

しかし海軍記念日日本海軍の攻撃により

戦況が膠着(こうちゃく)したという知らせが入り

女学生たちは川遊びをして、泥を落とし髪をとかします

ところが日本海軍が動いたというのは娘たちを勇気付けようとした嘘で

制空権は依然米軍にあり、機銃掃射による攻撃で

のどかな風景が一瞬にして血の海になる

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娘たちは「ガマ」と呼ばれる天然の壕に逃げ込みます

618日、日本軍に抵抗する力は残っておらず

元女子部の学生に突然の解散命令が出されます

移動の指令を女学生に届ける直前、浜辺で戦死してしまう校長先生

それを知った女学生たちは校長先生の遺体を回収したいと訴え(ばかだ)

敵機からの掃射のなかを走り抜けようと

道案内した兵士までが爆撃を受け戦死してしまう

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619日、先生の引率により班ごとに別れ、ガマを脱出することにした学生たち

しかし敵の銃乱射や、毒ガス弾と思われる攻撃により仲間は殺され

沖縄戦で毒ガス弾が使われた記録はないものの)

生き残った娘たちは、日本軍が残して行った手りゅう弾を使って

自決する決意をするのです


沖縄に上陸したアメリカ兵は、200万人近い兵員が上陸した

「ノルマンディー作戦」以上とも言われ

こんなにも若い女学生の犠牲者が多く出た戦争は

世界史上どこにも例がないそうです

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ただ可哀そうだと涙を流すだけでなく

反戦を訴えるだけでなく

 

彼女たち死に追いやられたひとつひとつの要因を

今こそ真剣に考えてみるべきなのだと思います



【解説】KINENOTEより

喜劇 ニューヨーク帰りの田舎ッペ」の若井基成と、「恋人をさがそう」の石森史郎が共同でシナリオを執筆し、「昭和のいのち」の舛田利雄が監督した戦争秘話。撮影は「関東刑務所帰り」の横山実

戦場(1949)

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原題も「Battleground」(戦場、激戦区)

これは埋もれた傑作でした

 

第二次大戦末期の1944年、ベルギーのバストーニュ

ホリー(ヴァン・ジョンソン)が所属する、バストーニュのサンドバッグ野郎

the battered bastards of Bastogne)と呼ばれるアメリ101空挺師団に

ドイツ軍勝つことに憧れきた新兵(マーシャル・トンプソン)

前線と現実と、戦場の残酷を知り成長していく、というのが主なストーリー

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同じ「バルジの戦い」を描いた「バルジ大作戦(1965)

上層部の視点から米独両軍の作戦を分析し

機甲部隊(戦車隊)を中心に描いているのに対し


こちらは歩兵小隊の局地的な戦いにおける

兵士ひとりひとりの会話や、表情の変化を丹念に映し出します

移動しろと命令されれば移動、穴を掘れと言われれば穴掘り

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寝床もない、揺れるトラック、噛みタバコ、入れ歯

チョコ欲しがる子どもたち

民間人女性の家に招き入れられても、セックスする体力がない(笑)

また移動、また穴掘り

ヒーローらしさナッシング(笑)

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ベルギーの子ども達もアメリカ兵を見ると

「ギブミー・チョコレート」って言うんですね

素直に子どもたちを可愛いと思う兵士たちの心情が伺えるし

まだ気持ちに余裕があることが伝わります

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しかし冬のベルギーの濃霧は厳しく、救援物資が届かない

ブーツ、濡れた靴下、大切な鶏卵、とき卵のヘルメット、雪ではしゃぐ

アイテムの使い方や、過酷な状況とユーモアのバランスがうまい

そしてまた移動、また穴掘り

穴の中で仮眠

 

偵察では敵か味方かわからず、合言葉で確認し合うものの

米兵を装い英語を話す(知略)ドイツ軍に騙されることもあります

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合言葉だけでは信用できないとベティ・グレイブルの夫は誰か」とか

「テキサス・リーガーズ・ヒットはなにか」(大リーグ用語でぼてんヒットのこと)

と本物のアメリカ人将校に質問しまくる失態

 

「百万長者と結婚する方法」(1953)のベティ・グレイブル

その脚線美と可愛いお尻で、当時のアメリカ兵の恋人

ナンバーワン、ピンナップ・ガールだったんですね

アメリカ軍の一方的な視点で描かれているものの

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監督は第一次世界大戦で戦った経験のあるウィリアム・A・ウェルマン

戦場での兵士たちの状況がとてもリアルに感じらます

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霧と雪で閉じ込められた、異国での行き先の見えない戦況

死んでいく仲間たち、凍傷の痛み

従軍牧師と祈る兵士たち

牧師が「この戦争は必要だったか?」と自ら問い答えるシーンは

小さな感動を呼びます

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やっとバストーニュの空に霧の晴れ間が見えた時

莫大な数のアメリカの戦闘機がやってきて空爆

空輸による救援物資のパラシュート投下

これには圧倒的な国力と戦争資金の差を見せつけられます

なぜ日本軍は終戦ギリギリまでアメリカに勝てると思っていたのだろう

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ドイツ軍が最後の力をふりしぼったルントシュテット攻勢は失敗に終わり

101空挺師団は忘れられないクリスマスを迎えることができました

 

反戦を訴えるテーマはひとつもなく(笑)

清々しい気持ちで迎えるラスト

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個性的な兵士たちが魅力で、地味なのに飽きさせない展開

エンディングではそれぞれの兵士と演じた俳優が紹介されます

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が、私が知っていたのは「ショーシャンクの空に(1995)

おじいちゃん囚人を演じたジェームズ・ホイットモアと

スター・トレック」のカーン役のリカルド・モンタルバンくらいでした(笑)

 

 

【解説】KINENOTEより

MGMの製作部長となったドーリー・シャーリーが自ら製作に当り「鉄のカーテン」のウィリアム・A・ウェルマンが監督した1949年度作品。共同製作者のロバート・ピロッシュが脚本を書き撮影はポール・C・ヴォーゲル、音楽はレニー・ヘイトンと新進気鋭のスタッフを揃えているほか、出演者も「ママは大学一年生」のヴァン・ジョンソン、「帰郷(1948)」のジョン・ホディアク、「芸人ホテル」のジョージ・マーフィー以下、リカルド・モンタルバン、マーシャル・トンプソン、ジェローム・コートランド、ドン・テイラーデニーズ・ダーセル等の新人が起用されている。

頭上の敵機(1948)

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原題は「12 O'clock High」(12時高=白昼

邦題を見ると、「眼下の敵」の向こうを張った作品のようですが(笑)

制作は「眼下の敵」の7年前の終戦4年後

 

ドイツ本土にある軍需工場を破壊するため

白昼爆撃に向かう空軍隊の物語ですが

ドイツ兵はひとりも登場せず、空戦シーンも極めて少ない

戦争映画というより命令は絶対という軍隊での

上司と部下たちの葛藤を描いたヒューマンドラマ

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空戦シーンはドイツ軍とアメリカ軍が撮影した

アメリカ空軍が保管する実写フィルムをつなぎあわせて編集したもの

正直、映像やつなぎ目はかなり粗く、現代の技術でリマスターすれば

迫力のあるスゴイものになるような気がしますが

このハリボテ感が時代を感じて、いいといえばいいのかも(笑)

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戦争が終わって4年、弁護士のハーヴィが骨董店でビアジョッキを見つける冒頭

店主はなぜこんなボロのジョッキに金を払うのか不思議がりますが

ハーヴィは戦争中イギリスにあったアメリカ空軍第918隊の飛行基地でおきた

B17機(本物!)の胴体着陸と救助されたパイロットのことを思い出していました

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このハーヴィを演じたディーン・ジャガーが、枯れ専門の私の超ドストライク(笑)

最初から最後までいい(アカデミー助演賞獲得も納得)

 

918隊の隊員たちはドイツ軍から対空砲火による集中攻撃を受け

4分の1の未帰還機を出してしまい士気を失っていました

隊長のダヴェンポート大佐は、これを不運だと表沙汰にしようとせず

疲れ切った隊員たちに休養を与えようとしていました

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しかしサベッジ准将(グレゴリー・ペック)は攻撃の失敗の問題は

温情家のダ佐にあると将軍に説明し

ダ大佐を解任し自ら918隊を鍛えなおすことにしました

 

IDの確認もせず准将の車をそのまま通す門衛のMP

基地外で飲酒している中佐

Tシャツで口笛を吹きながら職務する軍曹

ユルユルの918隊に、厳しい体制と過酷な演習を命じます

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これも白昼爆撃を成功させるため

隊員たちもわかってくれるだろうと強気にでるわけですが

全隊員から転任届を提出されてしまうのです

 

唯一の味方と思えるのは書類係のハーヴィ少佐だけ

彼の主な仕事は戦死者の遺族に手紙を添えて遺品を送ること

彼はサ准将に「私は弁護士です良い弁護士は依頼人を信じます」と

隊員たちを鍛え上げ、敵地攻撃ができるようになる日まで

転任届を留めてくれることを約束してくれたのです

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隊員たちからの反感と相反して、訓練によって戦果は改善

成功体験は隊員たちにやる気をおこさせ、挙句の果てには地上勤務の軍曹や

ハーヴィまで無断で飛行機に搭乗し爆撃に向かう始末(笑)

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やがてサ准将もダ大佐と同じよう、隊員たちに情が移り

勇姿を称え、行き過ぎた行為を見逃してしまうようになります

もちろんいくら部下を信じたとしても、成功ばかりでない

空に散っていく者、たとえ帰還しても怪我を負ってしまった者

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任務を成功させなければならないという重圧と

部下の命を守りたいという責任感

度重なる出撃による過労

ついにサ准将は精神が崩壊し、倒れてしまいます

 

冷酷な鬼だと思っていたサ准将が、実は自分たちを鍛え上げるために

無理をしていた姿だったと悟った隊員たちは、ますますドイツ軍打倒に燃え

ついに空戦に勝利し軍需工場破壊に成功するのです

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主要登場人物には実在するモデルがいて

細部まで入念なリサーチを行い、それぞれの人物の人柄や

実体験によるエピソードを集めてストーリーを構成したそうです

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組織論としては現在の職場にも通じるものがありますが

昔の上司は厳しいけれど、イマドキの政治家や管理職と違って(笑)

自分のした命令の責任は、自分でとる覚悟があることは偉いと思います

 

押井守監督著「仕事に必要なことはすべて映画で学べる」でも

紹介されている名作(笑)

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ただ私たちは、たとえ上空から見えなくても

爆撃で死んだ何十万人もの民間人がいたことを

決して忘れてはいけません

 

 

【解説】KINENOTEより

「蛇の穴」と同じく、二十世紀フォックスの副社長ダリル・F・ザナックが自ら製作に当たった1950年度作品で、最近相ついで作られた第二次大戦を背景とした戦争映画の1つである。監督は「海の征服者」のヘンリー・キングで、第二次大戦に参加したバーン・レイ・ジュニアと、サイ・バートレット(「アラスカ珍道中」)の2人が自作の小説より脚本を書いたもの。撮影は「狐の王子」のレオン・シャムロイ、音楽は「私も貴方も」のアルフレッド・ニューマンの担当。主演は「仔鹿物語」のグレゴリー・ペックで「パーキントン夫人」のヒュー・マーロウ、この映画でアカデミー助演賞をうけた「西部魂(1941)」のディーン・ジャガー、舞台出身のゲイリー・メリル、「私も貴方も」のミラード・ミッチェル、「ワイオミングの緑草」のロバート・アーサー、その他が共演している。

眼下の敵(1957)

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「艦長がどんな男か一度会ってみたい」

 

原題は「The Enemy Below」(下の敵)
宇宙戦艦ヤマト沖田十三艦長敵将ドメルの死闘

この映画がモデル(笑)

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第二次大戦中の南大西洋

アメリカの駆逐艦ヘインズ号に、商船から召集された民間人艦長

ロバート・ミッチャムは着任以来ずっと艦長室に閉じこもりきりで

乗組員たちは船酔いで苦しんでいるのだろうと噂していました

ある日、艦のレーダーがUボートをとらえ

初めて艦長は乗組員の前に姿を現わし、見事な指揮で追跡をはじめます

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一方Uボートの艦長クルト・ユールゲンスは

敵の暗号書を本国へ持ち帰るという重大な使命をまかせられていました

第一次世界大戦時代から軍人をしている沈着で古いタイプの男ですが

2人の息子を戦争で失い、ナチスにも無益な戦争にも疑問を抱いています

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駆逐艦が大量の水雷を目標めがけて攻撃するのに対し

Uボートは一発で決めなけばならない魚雷しかない

それも発射するためには海上ギリギリまで浮上しなければならず

圧倒的に不利

Uボートの乗組員がストレスで錯乱するシーンがありますが

それくらい精神的に重圧がかかることなのです

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駆逐艦が落とす爆弾によってさんざんいじめられたUボートは

沈没したと思わせ海底に潜み駆逐艦が去るのを待ちます

水圧で艦はきしみ固唾を飲む乗組員たち

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ここからはロバート・ミッチャムとクルト・ユールゲンスの頭脳戦

ミッチャムはUボートには何か重大な任務があって

もとの航路に戻る可能性が高いと予想します

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ユールゲンスはソナーに感知されないように潜航し

隙を見つけ魚雷を発射、反撃に出ます

攻撃を受けた駆逐艦は乗組員の布団を大量に燃やし

実際より被害が大きいように見せかけUボートをおびき寄せる

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魚雷や水雷こうして使うものなのか、非常にわかりやすい(笑)

バカがいないのも好感で、たとえ敵であっても敬意を払う

戦争の大義は意図的に消され、スポーティでノーサイド(笑)

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Uボートの艦長は、駆逐艦5分以内に離艦するよう要求

ミッチャムは全員を離艦させた後

最後の力をふりしぼって駆逐艦Uボートに体当たりさせます

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海上では敵味方関係なく乗組員たちが助け合い

ユールゲンスは永年の部下のひとりを艦内に助けに戻ります

逃げ遅れたユールゲンス見捨てることができないミッチャム

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当時はほのぼのとしたラストが望まれたのかも知れないけど

ここは敬礼するユールゲンスが、爆発したUボートとともに

海に沈んでいったほうがよかったかな(笑)

 

それでも憎しみをのない、爽やかな終わり方はやはり後味はいい

共に死んだ部下の水葬を行う

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撮影にはアメリカ海軍が全面協力し

本物の駆逐艦USSホワイトハーストを使った

砲撃、水雷投下シーンは迫力満点

戦争映画として名作中の名作のひとつですし

ミリタリーファンなら絶対見なくてはいけません(笑)

 

 

【解説】KINENOTEより

イギリス海軍中佐D・A・レイナーが自分の体験にもとづいて書いた処女小説「水面下の敵」の映画化で、第二次大戦におけるイギリス駆逐艦とドイツ・Uボートとの戦いを描く戦記もの。「翼よ!あれが巴里の灯だ」の共同脚色者の1人、ウェンデル・メイスが脚色、「夜の乗合自動車」のディック・パウエルが監督した。撮影は「悪い種子」のハロルド・ロッソン、音楽は「気まぐれバス」のリー・ハーライン。主演は「海の荒くれ」のロバート・ミッチャム、「素直な悪女」のクルト・ユールゲンス、新人アル・ヘディソン、「アフリカの女王」のセオドア・バイケル。