ジョニー・イングリッシュ アナログの逆襲(2018)

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原題は「JOHNNY ENGLISH STRIKES AGAIN」
(ストライクス ”一撃を加える” アゲイン)

忘れた頃にやって来た、まさかの第3弾
意外にも日本だけで1億4千万以上稼いでるヒット作

笑ったのは、VRの現実社会(お婆ちゃん!)と
夜中に眠れなかったジョニーが睡眠薬と精力剤を
間違って飲むところ(ばかだ)

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イギリスMI7がサイバー攻撃を受け
全てのスパイの身元が暴露され活動できなくなってしまいます
そこで引退したスパイの中から
サイバーテロを見つけ出す任務を与えられた
小学校の教師ジョニー・イングリッシュ

ハイテク機器を使うと居場所がわかってしまうので
スマホもなければ、車も大昔のアストンマーティン
相棒は真面目なボブ(ベン・ミラー)

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南フランスに行き、サイバー攻撃の発信源である船に乗り込むものの
ロシア人美女オフィーリアに見つかり監禁させられます
それでもドアを爆破し、サーバールームに発信機を設置し脱出に成功
IT長者のジェイソン・ヴォルタがサイバーテロだという証拠も掴みます

本家ボンドガールオルガ・キュリレンコ(「007慰めの報酬(2008)」)
登場させるという洒落の効きよう(笑)

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おまけにお間抜けな首相(メイ首相をパロっている)を
演じるのはエマ・トンプソン姐さんという無駄な豪華さ
これって邦画でいえば、ゆりやんレトリィバァが出そうなところに
吉永小百合を配役するようなものよね(笑)

序盤に登場した老エージェントたちの中には
ジャッカルの日」(1973)のエドワード・フォックスや
名わき役、マイケル・ガンボンも登場します

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ローワン・アトキンソンの笑いって
好き嫌いが別れると思うのですけれど、私は好き
何といっても伏線の張り方がわかりやすすぎるのがいい
相棒の奥さんが原子力潜水艦の艦長をしているとか
聞いた瞬間から展開が読めます(笑)

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イギリスで電話かけたときの伝言ダイヤルが
「何の問い合わせは1を」「何には2を」「何の場合は3を」
と、日本と同じなんだ(笑)

偶然に偶然が重なって、ミサイル発射
サイバー攻撃の船が破壊、これは気持ちいい
でも最後に爆弾グミを食べた校長はどうなったのかな

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決して真面目に見る映画ではありませんが(笑)

ITに頼りすぎる社会は危険だという
裏テーマはしっかりと押さえています
アナログや人と人とのコミュニティは
決してなくしてはいけないのです

 


【解説】allcinemaより
「Mr.ビーン」シリーズのローワン・アトキンソンがドジな英国諜報員“ジョニー・イングリッシュ”を演じるスパイ・パロディの第3弾。共演はオルガ・キュリレンコエマ・トンプソン。監督はTVを中心に活躍し本作が映画監督デビューとなるデヴィッド・カー。何者かのサイバー攻撃によってイギリスの秘密情報部MI7の現役スパイ全員の情報が漏洩してしまい、活動停止に追い込まれる。そこで最後の頼みの綱として、すでに現役を引退していたジョニー・イングリッシュが呼び戻され、犯人探しのミッションが下される。早速かつての相棒ボフを再び相棒に迎え、犯人追跡に乗り出すジョニー・イングリッシュ。しかしアナログ時代しか知らない彼の前には、デジタル・テクノロジーという最大の難敵が立ちはだかっていた。

きっと、いい日が待っている(2017)

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原題はデンマーク語で「Der kommer en dag」(いつの日か)

日本でも親の虐待によって幼い子の命が奪われたり
学校での虐めが原因による自殺というニュースが毎日のように流れ
最近では学校教諭による、若い教諭への虐めが報道されています

でも実際は、虐待や虐めというひとことで終わる軽々しいものではない
これは私刑(リンチ)なのです
口を利いただけで殴られ、蹴られ、奴隷のように扱われる
嫌がらせをさせられ、食事を奪われ
性的虐待では泣きながら血だらけの股間を洗面台で洗う

役所の人間が視察に来たときだけやさしくされ
きれいな服と靴を与えられ、報復が怖くて真実を言えない
その繰り返しが何度も何年も続き”幽霊”になる決心をする
いつか大人になる日を待つだけ

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これは約50年前、1967年のコペンハーゲン児童養護施設
発覚した事件に基づいているということ
母親は末期がん、唯一の親族である叔父はやさしいけれど
無職で収入がないうえ、、前科がありました
役所の判断でエリック(13歳)と
宇宙飛行士になるのが夢エルマー(10歳)兄弟は
施設に預けられることになります

翌朝エリックは、弟のエルマーは足が悪いので
校長に重労働をさせないでくれと頼みます
その瞬間校長から殴られ、意地悪な子どもたちからも虐めを受けます
一日目で脱走を試みますが、当然捕まってしまい
またもや校長によって酷い暴力を受けるのです

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新任の女性教師であるハマーショイ先生は
(すでに虐待を禁じる法が施行されているので)当然疑問を持つわけですが
校長の絶対権力によって口出しすることができない

施設の子どもたちは幼い頃から家庭に事情があって
読み書きができないんですね
だけどアメリカのアポロ計画の新聞記事を夢中になって読んでいた
エルマーは違いました

10歳とは思えない文章力に、宇宙に対する想像力
ハマーショイ先生のおかげで彼は重労働を逃れ
手紙を仕分けして各個人に届ける施設の郵便係になります
やがて子どもたちの誰もがエルマーの宇宙旅行の話に
夢と希望を覚え聞きたがるようになります

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しかし、幸せな日々は長く続かない
ある真夜中、宿直の先生がエルマーを自分の部屋に連れていきます
子どもたちはそこで何をされるか知っている
先生は幼い子のほうが好き、エルマーの番がやってきたのです
そして血だらけで倒れてしまいます

不審に思ったハマーショイ先生に、校長もその側近も
子ども同士によるよくある悪戯だという(そうだとしても問題だろ?)
エリックは作業場の自動ノコギリの安全装置をはずし
エルマーを傷つけた教員に、二度と悪戯が出来ないように
片手を失わせる大けがをさせます

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しかし復讐の快感もつかの間
母親が死んだという訃報が入ります
泣きじゃくるエリックを、うるさい黙れと殴る、殴る、殴る校長
母の死をあと訪れた叔父に相談し、二度目の脱走を計画するものの
叔父はハマーショイ先生に電話し
空想好きなエルマーだからどこまで本当の話かわからないので
約束は守れないと伝えてくれと頼みます

ハマーショイ先生は兄弟に会いに行こうとしますが
そこに校長が現れ、問い詰められます
脱走は失敗し、またもや殴られ、殴られ、殴られる

母は死に帰る家もない
暴力に耐え、校長の機嫌を取り、18歳になるまで待つしかないと
エリックは悟ります

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公開中で話題の映画「ジョーカー」を見た人たちから
いい映画だが、不幸の連鎖で気分が落ち込むという感想を聞きますが
この少年たちより不幸なのだろうか
まだ「ジョーカー」には”悪”になるという「自由」が残されている
虐待を受けている子どもたちは”悪”にもなれないのです

そこに新しく配属された監察官がやってきました
「訪問する連絡をしていない」という職員に
校長が表彰されるような優秀な施設なのだから
いつ行ってもいいだろうと答えます

施設はあらゆる規定を満たしておらず
泥で全身汚れた子どもたち、顔には傷やあざ
不審に思った監察官が聞いても、校長が怖くて何も答えない
我慢に我慢を重ねて、もうすぐ卒業なのだ
校長の機嫌を損ねたら大変なことになる

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なのにもうすぐ卒業を控えたエリックに
校長は特別にあと三年残ってもらうと言います
キレたエリックが校長自慢の磨き上げた車に傷をつけたとき
校長は今まで以上の、殴る蹴るの暴行を与えます

エリックは意識不明の昏睡状態になり
エルマーは校長先生に嘘をつき、ひとりコペンハーゲンに行きます
そこでハマーショイ先生に連絡をして役所に行き
兄を病院に連れて行ってほしいと訴えます
しかし職員は新任の監察官が帰ったら伝えておくと言うだけで
電話も取り次いでくれない

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エリックを助けるのは自分しかいない、大人は何もしてくれない
自分の命をかけて救急車を呼んでみせる
エルマーは宇宙飛行士の勇気で、校長の車をハンマーで壊します
死ぬ寸前まで殴られ、給水塔の上から飛び降りる
死ぬのは怖くない、天国にはママがいるのだから

虐待を受け続けた子どもが、死の覚悟をするとき
死んだほうが幸せなのです、生きていて何がある?

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暴力シーンがリアルで、演技とは思えません
それに、もし警察でも児童相談所でも、虐待の通報があったときは
連絡したり都合のいい日を確認してから行くのではなく
すぐ「踏み込む」ことが大事なのだと教えてくれます

暴力を受けて泣き叫んでいる、その時その場に行かなければ助からない
新しい監察官は、非番でも真夜中でもかまわない
エルマーの通報を知り施設にやってきてくれた
そのおかげで真実は知られ、兄弟の命は助かったのです

北欧の世界的モデルとも言われている
今の優れた福祉が出来上がった陰には、こんな犠牲があったとは
だけど虐待はなくならない

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虐待をなくするには、虐待する側の心理も知る必要があるのでしょう
自分が強いということを知らしめるのに、どんな快感があるのか
それを抑えるためにはどうしたらいいのか
虐待する人間をなくさない限り、虐待はなくならないのだから

(長文になってしまった・・ 苦笑)

 


デンマーク「社会」】ウィキペディアより
ノルディックモデルの高福祉高負担国家であり、高齢者福祉や児童福祉が充実しており、国民の所得格差が世界で最も小さい世界最高水準の福祉国家である。市民の生活満足度は高く、国連世界幸福度報告では第1位(2014年)、OECDの人生満足度(LifeSatisfaction)ではスイス、ノルウェーに次いで第3位、世界幸福地図では世界178ヵ国で第1位(2006年)、世界価値観調査での幸福度(Happiness)はアイスランドに次いで第2位(2005年)であった。
市民の95%は、支援が必要になった際に誰かに頼ることができると考えている(OECD平均では88%)

 

【解説】映画.comより
コペンハーゲンの養護施設で起きた実話をもとに、自分たちの手で未来を切りひらこうとする幼い兄弟の絆を描き、デンマークアカデミー賞で作品賞をはじめ6部門に輝いたヒューマンドラマ。1967年。労働者階級の家庭に生まれた13歳の兄エリックと10歳の弟エルマーは、病気の母親から引き離されて養護施設に預けられる。そこでは、しつけとは名ばかりの体罰が横行していた。さらにエリックたちは新しい環境になじめず、上級生たちによるイジメの標的になってしまう。そんな過酷な日常から抜け出すべく、兄弟は施設からの逃亡を図る。ラース・フォン・トリアー率いる製作会社ツェントローパの俊英イェスパ・W・ネルスンが監督をつとめ、デンマークで史上最高視聴率を記録したテレビドラマ「THE KILLING キリング」のスタッフやキャストが集結。ソフィー・グロベルが子どもたちを見守る教師役、ラース・ミケルセンが厳格な校長役を演じた。

奇蹟がくれた数式(2016)

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「公式は人間が作るのではなく数学的には既に存在していて
 ラマヌジャンのような才能に発見されるのを待っている」

 

原題は「THE MAN WHO KNEW INFINITY」(無限を知った男)
第1次大戦下英国に渡り、数々の数式の定理を解いた
インドの若き天才数学者ラマヌジャン
彼を見出したケンブリッジ大学の数学者G.H.ハーディとの
友情と業績を描いた実話に基づいた伝記ドラマ

私は世界一頭がいい国民はインド人だと思っています
数学に強く、語学力に長け、歌って踊れてユーモアのセンスもある
そこらの商店のおっちゃんが高度な暗算をし
ホームレスの幼い子どもでも英語を喋る

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それが上層階級にもなると、教育レベルはかなり高いといいます
なのにラマヌジャンのような天才がなかなか出てこない
それはインドの生活環境に影響されているということが
この作品を見てわかります

シュリニヴァーサ・ラマヌジャンの生い立ちや
どうして数学にのめり込むようになったのかは
ウィキペディアを読んでもらうことにして(笑)

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嫁と姑が外国に行くことは禁じられていると
村八分にされると強く反対するのですね
それでもラマヌジャンの功績が英国で認められた時
彼は村の誇りになるわけですが

今度は嫁がラマヌジャンと暮らすためケンブリッジに行こうとすると
嫁が行ったら息子は二度と故郷に帰ってこない
嫁が書いた手紙を投函したふりをしてすべて隠してしまうのです

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一方ケンブリッジで、ラマヌジャンはとてつもない苦労をしていました
本人も数式は「祈りの時に女神が舌に数式を置いていく」というくらい
無神論者のハーディにとっては、なんの根拠もなく
超難問の答えを見つけてしまうということ
しかもラマヌジャン以外はその数式があっているのか
正しいのか誰もわからない(笑)

実は宗教の世界でも数学はよく使われていて
古代ギリシアでは、記号や表記の中で数学を使っていたし
インドを起源とする仏教の曼荼羅図は無限を表現しており
何もない”無”から0を発見している
なのでラマルジャンの数学感にも、彼の宗教が強くかかわっているのです

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ハーディはそれを証明する必要があると説明するのですが
ラマヌジャンは答えがわかっているのに
なぜ証明しなければいけないのかわからない

おまけにインド人ということと、学歴がないことで差別を受け
菜食主義者なので大学内で食べるものがなく自炊するしかありません
そこに戦争が勃発し食料不足、しかも研究にのめり込むあまり
極度の栄養不足で結核を患ってしまいます

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ラマヌジャンが倒れ、ハーディと彼の良き理解者リトルウッド
皆が反対するなか、ラマヌジャンをフェロー(特別研究員)に
しようと途力します
ラマヌジャンの研究の成果に、ついにケンブリッジでも
彼の才能を認めざる得なくなる

だけどケンブリッジラマヌジャンをフェローにして正解だよ
純粋数学のことは全く知らないけれど、もしそうしていなかったら
その後何百年も「ケンブリッジは馬鹿の集まりだ」と
言われ続けた汚点になったことは間違いない

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天才として、フェローとして認められ
ラマヌジャンは愛する妻の待つ故郷に帰ることにします
ハーディとの再会を約束して

だけどケンブリッジに戻ってくると約束した1年後
ハーディに届いたのはラマヌジャンの訃報でした
享年32歳
せめて最後の一年が、ラマヌジャンと妻にとって
幸せなものであったと祈りたい

正直映画として悪くはないけれど、特別感動するものでもない
だけど「数学なんか勉強して社会でなんの役に立つんだ」ではなく(笑)
数学学者にとって、数式は夢の魔法のワンダーランド
その答えを追い求めることは、どんなアトラクションより
刺激的で夢中になるものだということはわかりました

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ラマヌジャンが26歳までに発見した定理について
その後多くの数学者によって証明が行われ、作業が完了したのは
80年以上経過した1997年
彼の残した「ノートブック」と「失われたノートブック」の
全文が出版されたのは2018年

この無知な母親がいなければ
ラマヌジャンはもっと偉業を残したのだろうけれど
きっと神様が許さなかったのでしょう

 


【解説】KINENOTEより
インドの天才数学者ラマヌジャンと、彼を見出した英国人数学者G.H.ハーディの友情と業績を描写した伝記ドラマ。一通の手紙から天賦の才を感じたハーディは、インドに住む差出人ラマヌジャンを大学に招聘。やがて二人は世界を変えるような数式を導き出す。ロバート・カニーゲルによる評伝『無限の天才 夭折の数学者・ラマヌジャン』を、新鋭マシュー・ブラウン監督が映画化。出演は「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテル、「リスボンに誘われて」のジェレミー・アイアンズほか。映画作品として初めて、ケンブリッジ大学を構成するカレッジの中でも最高峰のトリニティ・カレッジで撮影された。
1914年。イギリスの名門ケンブリッジ大学の数学者G.H.ハーディ教授(ジェレミー・アイアンズ)のもとに、一通の手紙が届く。インドからはるばる送られてきたその手紙には驚くべき定理が書かれており、ハーディは差出人を大学に招聘する。その差出人ラマヌジャン(デヴ・パテル)は、インドで事務員として働く傍ら、独学で数学の研究をしていた。他の教授たちは、身分が低く学歴もない彼を拒絶。ラマヌジャンは孤独と過労が重なり、ついに重い病に。ハーディは彼の代わりに奇蹟の証明に立ち上がる。

仕立て屋の恋(1989)

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原題は「Monsieur Hire」(ムッシュー・ハイヤー=主人公の名前)
やっぱりパトリス・ルコントが好き

アプローチはヒッチコックの「裏窓」(1954)と同じ
毎日向かいのアパートをのぞき見している男が
ある殺人事件を知ってしまう

だけど「裏窓」のジミー演じる足を骨折したカメラマンと違い
こちらの主人公、仕立て屋のイール(ミシェル・ブラン)の
のぞき見や性癖は見る人によってかなり気持ち悪いはず(笑)

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人付き合いが苦手で、大量の二十日鼠を飼い死んだ鼠を川に捨てる
売春宿に通い、過去には性犯罪の前科もある
潔癖症で、においフェチ、おまけに禿げ
(ボーリングだけは大得意 笑)

そのため、公園で若い女性が殺されたとき
捜査を担当する刑事(アンドレ・ウィルムス)は
イールが犯人なのではないかと、執拗に付きまとっていました

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そんなイールが毎晩のぞき見しているのは
向かいのアパートに住むアリス(サンドリーヌ・ボネール
ある日イールののぞき見に気が付くわけですが
窓にカーテンを付けるわけでもなく
婚約者のエミール(リュック・テュイリエ)との戯れさえ覗かせる
この女も視姦されることが好きな、かなりの変態上級者

そしてついにはイールの部屋まで逢いに来て
デートに誘いキスまでしてきます
でもアリスがそこまで優しくする理由をイールは知っていました
若い女性を殺したのは、アリスの婚約者のエミールだったからです
それをのぞき見で知ったイールを、口止めするつもりなのです

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とはいえ変態同士(笑)
イールの前でエミールといちゃつき
イールのストーカー的な、痴漢的な行為に快感を覚える
イールはますますアリスに本気になっていきます

そして警察がイールではなく、本当はエミールを追ってると知った時
アリスに一緒に外国に逃げようと持ち掛けます
すぐには愛してくれなくてもいい、必ず幸せにする
絶対裏切らないと渡す片道切符

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だけど列車の出発の時間になってもアリスは来ませんでした
そしてイールが部屋に戻ると刑事とアリスが座っていて
アリスの通報で、箪笥の引き出しの中から
被害者のバックが見つかったというのです

一瞬ですべてを悟ったイールは
「君を恨んではいない ただ死ぬほど切ないだけだ」と呟き
屋上へと逃げ、転落しながらアリスと目があう

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ここからラストにかけてのシークエンスが秀逸
さすがルコントはただのSMでは終わらない(笑)

イールはアリスが自分と逃げたら、アリスを救えるよう
逆に裏切ったらエミールにとってもアリスにも
致命傷となる証拠を残していたのです

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原作は「メグレ警部」シリーズで有名な
ジョルジュ・シムノンの1933年に発表された同名小説で
イールはロシア移民のユダヤ
アリスは(当時はドイツと同じくユダヤ人を差別していた)フランス人
エミールはドイツ人として比喩され描かれているそうです

なので二十日鼠を餌を撒いた線路の脇に籠から放つ行為は
やがて鼠が列車に轢かれ死ぬことを暗示しているわけですが
それも籠=収容所で、鼠=ユダヤ人のこと
若い女性が死ぬことにも(ユダヤ人なら)意味などいらない

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しかしルコントは原作にある”人種差別”的な要素より
「恋愛映画に特化した作品に仕上げた」と述べている通り
見事なマゾヒズム的犠牲愛映画に仕上がっています
しかもラストはサスペンス映画としてもきっちり〆るという腕前

80分という尺の短さもフランス映画のいいところ
もちろん「お気に入り」にさせていただきます

 


【解説】KINENOTEより
仕立て屋の中年男が向かいに住む女性を愛するあまり、殺人事件に巻き込まれ、人生を狂わせてしまう物語。「髪結いの亭主」のパトリス・ルコントが、ジョルジュ・シムノンの原作『イール氏の犯罪』(邦題『仕立て屋の恋』ハヤカワ文庫刊)をもとに監督・脚本を手がけたもので、製作順としては「髪結いの亭主」の前作。製作はフィリップ・カルカソンヌとルネ・クレトマン、共同脚本はパトリック・ドヴォルフ、撮影はドニ・ルノワール、音楽はマイケル・ナイマンブラームス「ピアノ四重奏曲第1番ト短調」を主題に担当。

ギリーは幸せになる(2016)

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原題は「The Great Gilly Hopkins」(華麗なるギリー・ホプキンズ)
この邦題はいい(下手な副題がついていないのもいい)
原作は「テラビシアにかける橋」の児童文学作家
キャサリン・パターソンの「ガラスの家族」(偕成社

古典的な児童文学を現代風にしたような
何てことない内容なのですが、凄く良い映画でした
見やすくて、わかりやすい
終盤は涙がこぼれ
観終わった後には爽やかな気分にもなります

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問題ばかり起こし、里親の元を転々としている12歳の少女ギリーは
ベテラン里親のトロッターさん(キャシー・ベイツ )に預けられます
ソーシャルワーカー役が見た目ジョニー・デップ 笑)
そこには同じ里子で(過去の虐待のせいで)あまり喋れない
ウィリアム・アーネスト(W.E.)も住んでいました
そして夕食を共にする隣人で盲目の黒人ミスター・ランドルフ

このギリーが本当に曲者で、反抗的なクソガキ
間違いなく誰でもギリーのことが大嫌いになる
そんなギリーの願いはひとつ、サンフランシスコに住む
一度もあったことのない実の母親コートニーと暮らすことでした

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そのために母親の住所に
トロッターさんからも、担任のハリス先生からも虐待を受け
ウィリアム・アーネストは頭がおかしい
ミスター・ランドルフの家は不衛生なごみ屋敷
もう耐えられなので、サンフランシスコまで行く
旅費を送って欲しいという嘘の手紙を出すのです

ついにはミスター・ランドルフの家と
トロッターさんの財布からお金を盗み
サンフランシスコ行きのバスに乗り場に向かいますが
当然、補導されてしまいます

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私も小学校で週1回、放課後教育ボランティアをしていますが
こういう手に負えない子って、必ずいるんですね
自分の居場所を見つけられず、他人を困らせてばかりいる

やはりそういう子のほとんどが
ギリーのように家庭に問題を抱えていて
家には帰りたくない、だけど勉強も嫌だ
そのうち悪い仲間とつるんで、悪事をしていくようになる
場合もあるのですが

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トロッターさんの意見は違う
子どもには誰にでもある間違いと言う
ミスター・ランドルフもギリーを責めず
バイトで家の手伝いをしてくれと頼むだけ

担任のハリス先生はギリーの国語力を高く評価し
差別的な発言を書いたカードを贈っても
今まで抱えていたストレスが解消したと大笑い
ウィリアム・アーネストは本当は頭がよく
通学路が同じで鬱陶しいと思っていたアグネスも
ただ親切でやさしいだけだったのだと知る

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自分はこんなにも周りの人間から守られていたんだ
今までの行動の過ちに気づき
ギリーに本当の家族、本物の友達が出来たとき

ギリーの祖母(グレン・クローズ)がやってきて
ギリーは祖母の家に行くことになるのです
母親に送った「虐待されている」の手紙のせいで
トロッターさんは里子を預ることができなくなってしまったのです
ウィリアム・アーネストも家を出されるかも知れない

ギリーは自分の行動を悔やみ、「あの手紙は嘘だった」と訴えますが
役所で決まってたことを覆すのはもちろん無理な話

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でも祖母もとてもいい人なんですね
娘とは疎遠で、娘が子どもを産んだことさえ知らず後悔してるのでしょう
ギリーに良い教育、良い環境を与えようと努力します
そしてギリーのため、娘を呼び寄せるのです

夢に見た、大好きな大好きなお母さん
やっと会えた、やっと会えた、やっと会えた
でも再会したその場所でコートニーは祖母に
「お金を貰ったから来た」だけとぶちまけるのです
ギリーはショックのあまりタクシーで
ミスター・ランドルフの家に戻ってしまいます

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この作品良いところは「正しい行いとは何か」がテーマだと思うんですね
子育てや教育やしつけは、まわりの大人も協力すべきだし
差別や虐めはいけない
失敗を責めず「長所を褒める」重要さ
だけど決しておしつけがましくない

日本未公開らしいのですけど、これほんと
文部科学省推薦にしていいくらいの出来で(笑)
クソ娘の成長ぶりにとことん感動しますし
主演者も一流ばかりなので見ごたえがある

他人と関わっていくって、本当に難しいこと
それでも誠意のある行動を続けていくことが
大切なのだと教えてくれる

子どもだけでなく、多くの大人にも見てほしい
「お気に入り」を献上させていただきます

 


【解説】映画.comより
アメリカの人気児童文学作家キャサリン・パターソンの小説「ガラスの家族」を、「やさしい本泥棒」のソフィー・ネリッセ主演で実写映画化。行く先々で問題を起こすせいで里親のもとを転々としている12歳の少女ギリー。いつか本当の母親と暮らすことを夢見る彼女は、新しい養母トロッターさんのもとや転入先の学校でも反抗的な態度ばかり取ってしまう。そんなある日、実母から手紙を受け取ったギリーは、母が暮らしているというサンフランシスコへ行くことを決意。心優しい盲目の隣人ランドルフさんからお金を盗んで大陸横断バス乗り場へと向かうが……。「ミザリー」のキャシー・ベイツ、「ヘルプ 心がつなぐストーリー」のオクタビア・スペンサー、「危険な情事」のグレン・クローズら名女優たちが脇を固める。監督は「101」のスティーブン・ヘレク。WOWOW放送時のタイトルは「ギリー・ホプキンズの不機嫌な日常」。

ファイヤーフォックス(1982)

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1976年9月6日、MiG-25(ミグ25)が函館空港に着陸し
亡命を求めたミグ25事件(ベレンコ中尉亡命事件)
クレイグ・トーマスは、この事件にヒントを得て小説を書き
翌年には出版されたベストセラーの映画化

しかも特殊効果はジョン・ダイクストラ
カメラはブルース・サーティス
音楽はモーリス・ジャール
監督、演出、主演はクリント・イーストウッド
一流の名前が並んでいます

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が、内容も低空飛行(笑)
今となっては古臭い特撮に、リアリティのなさ
だけどこういう映画ってミリタリー・ファンにとっては
たまらない魅力があるのよね(笑)

イギリス秘密諜報局は、ソ連が最新鋭の戦闘機
ミグ31(ファイヤーフォックス)を完成させたという情報を入手
それは最高速度マッハ6、アンチ・レーダー・システムを持ち
思考誘導兵器装置を装備する驚異的なジェット機
NATOがこれを開発するには10年以上かかるといいます
NATOはミグ31のを奪取する作戦を立てます

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そこで呼ばれたのがベトナム戦争の退役軍人
ミッチェル・ガント(クリント・イーストウッド
彼は優秀なパイロットで、ロシア語に堪能で
ソ連軍の戦闘機にも精通しています
ただベトナム戦のPTSDに悩まされていました

当然、諜報局とNATOの申し出を断ることは出来ず(笑)
輸出業者になりすましてモスクワのシェレメティエボ空港に降り立ちます
そこで待っていたのはソ連在住のユダヤ人協力者たちでした

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ここらへんの入国から、基地にあるファイヤーフォックス
格納庫に爆弾を仕掛けるあたりまではスパイ映画らしくなかなかよろしい
だけどセキュリティが甘すぎるし
書記長も、ソ連兵も、KGBもちょっとお間抜け(笑)

ただ凄いのはロシア人とかドイツ人って映画でこれだけ
アメリカからひどい扱い受けているのに
おおやけに反発したり映画の悪口を言わないことだよな
(もしかしたら本国で公開はしないのかもしれないけど)
隣国の要人の発言にいちいち反応して、すぐに記者会見する
どこかの国の官房長官とは大違い

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どさくさに紛れて簡単にファイヤーホックスに乗り込み
ブツブツと独り言を呟き続ける
イーストウッドの姿には笑ってしまいますが(笑)
それを追うソ連空軍のパイロットが操縦するファイヤーフォックス2号機

ドックファイト(空中戦闘)も”ロシア語”で脳波操作する
思考誘導装置が活かされていればもっと面白くなったでしょうね
いくらロシア語に堪能でも、母国語であるソ連パイロットのほうが
当然優位なはずですから

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まあ、今や巨匠と呼ばれるイーストウッド
こんな作品も作っていたということで(笑)

制作年は1982年、 80年モスクワ、84年ロサンゼルスと
米ソが互いにオリンピックまでボイコットした冷戦真っただ中
逆に言えば冷戦がなかったら、スパイ映画も
作られることはなかったのでしょう

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高い製作費で真面目に作ったB級スパイ&スカイアクション
映画としての評価は低いとは思いますが
一部のミリタリー・ファンやガン・マニア
プラモデル・ファンには超オススメ
もちろん私もイーストウッド様に軍服萌えでございました(笑)

 


【解説】allcinemaより
レーダーには機影を残さずマッハ6で飛び、思考誘導装置によって兵器を放てるソ連最新鋭戦闘機、コードネーム・ファイヤーフォックス。その戦闘機の奪取を命じられたパイロットの死闘を描いたC・トーマスの原作を、イーストウッドが製作・監督・主演で作り上げたサスペンス大作。スカイ・アクションに仕上げるよりも、ポリティカル・フィクションぽくしたかったのか、その丁寧な演出とじわじわと展開される物語は完全に逆効果で、前半の冗長さは娯楽作品としては致命的。その緩やかなテンポは、奪ったファイヤーフォックスが活躍する後半でも続き、全体的に大味な印象は免れない。ジョン・ダイクストラ率いる“アポジー”によるSFXも上出来とは言えず。オリジナルは136分で96年に全長版LDが発売(Blu-rayも同じく136分)。ビデオ、DVDは短縮版の124分。

ヴァン・ヘルシング(2004)

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マーベルの「アメコミヒーロー大集合」に対抗したのか(笑)
「憧れの車大集合」(ワイルドスピード)に続く
ユニバーサルが放った「モンスター大集合」もの
でも20世紀フォックス(X-MEN)に
負けたような気がするのは私だけかしら(笑)

ヴァン・ヘルシングとはブラム・ストーカーの小説
「ドラキュラ」に登場するアムステルダム大学の老教授のこと
今では”吸血鬼ハンター”の名前のほうが有名ですが
原作でドラキュラと戦うのは彼の教え子たちで
ヴァン・ヘルシングは広い知識を活かした補佐役だったそうですが

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こちらは(当時35歳の)ヒュー・ジャックマンがいい男(笑)
だけどやっぱりこの手のアクション・アドベンチャーものは
ツッコミどころが満載すぎる

物語はドラキュラが、フランケンシュタイン博士の開発に
加わっていているところからはじまります
しかしドラキュラの誕生した怪物の利用目的を知った
フランケンシュタイン博士は殺され
フランケンも村人に追われ炎に包まれてしまいます

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そこから一転、ハイド氏と戦う謎のモンスター・ハンター
ヴァン・ヘルシングが登場
彼には記憶がなく、仕事を依頼するのは教会の枢機卿
教会の地下には「007」ばりの武器庫があるうえ”Q”かよ?(笑)の
修道士カールが新しい武器を紹介していきます

枢機卿ヴァン・ヘルシングに与えた次なるミッションは
ルーマニアに向かいドラキュラと戦っているトランシルバニアの末裔
ヴェルカンとアナ王女の兄妹を救えというもの
しかもそこにはヴァン・ヘルシングの消えた過去の
記録があるかも知れないという証拠がありました

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たぶんドラキュラや狼男ものなので夜の設定で
画面を暗くしていると思うのですが、これが非常に見づらく疲れる
(白夜にしてくれよ 笑)
しかも同じようなターザンアクションばかりで
キャラも見た目重視だけで個性が弱い

フランケンはお茶目でもっとチャーミングにするべきだし
修道士カールはドジでお間抜け、でもいざというときは役立つ
アナ王女のドラキュラを倒すという信念ももっと欲しい
ドラキュラも花嫁たちも、いざという時になると失速するのも
いかがなものか

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そのわりには、ここ?という場面でアナ王女死ぬし(笑)
ヴァン・ヘルシングの記憶は戻らないままだし(笑)
いかにも続編ありきのジ・エンドのわりには、シリーズ化されませんでした
内容はともかくシリーズ化されたら、ユニバーサル・スタジオ
良いアトラクション(お化け屋敷)になったと思うのですけど(笑)

この監督「オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主」(2013)もだけど
素敵なヒロインを簡単に死なせちゃうのが
続編出来そうで出来ない鬼門なのかも(笑)

 


【解説】allcinemaより
伝説のモンスターたちと壮絶な闘いを繰り広げるモンスター・ハンターの活躍を、最新のVFXでスペクタクルに描いたアクション・アドベンチャー。ドラキュラ伯爵の宿敵として知られたヴァン・ヘルシング教授が、若くてセクシーなニューヒーローとしてスクリーンに復活、ドラキュラ伯爵ばかりかフランケンシュタインやウルフマンらユニバーサルが誇る人気モンスターたちと激突する。監督は「ハムナプトラ」シリーズのスティーヴン・ソマーズ。主演は「X-メン」シリーズのヒュー・ジャックマン。共演に「アンダーワールド」のケイト・ベッキンセイル
 19世紀のヨーロッパ。バチカンの秘密組織から命を受け、世にはびこるモンスターたちを退治し、彼らを恐れさせる謎のモンスター・ハンター、ヴァン・ヘルシング。彼はある日、バチカンの密命を帯び、相棒で武器発明のエキスパートである修道僧カールとともに怪物伝説の土地トランシルバニアへ向かう。目的は、邪悪なパワーで世界征服を企むドラキュラ伯爵を抹殺すること。やがて彼らは、代々ドラキュラと闘い続けてきたヴァレリアス一族の末裔であるアナ王女と出会う。そして、共にドラキュラの陰謀阻止へ立ち上がるのだが…。