スイング・ホテル(1942)

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原題は「HOLIDAY INN」

これはホテル・チェーン”ホリディ・イン”創業の逸話なのかしら?
と思ったらそうではなく(笑)
ホリディ・イン第1号店がオープンしたのは1951年
映画の公開のほうが先でした

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ホテルのショーで毎日のように忙しい歌手のジム(ビング・クロスビー)は
クリスマスの公演が終わったら、ショーのパートナーであり
恋人でもあるライラ(ヴァージニア・デール)と結婚し
田舎で農場をやるつもりでした

本当はライラがショービジネスを続けたいことを知っている
ダンサーのテッド(フレッド・アステア)はライラを引き留め
エージェントのダニー・リード(ウォルター・エイベル)も
テッドとライラふたりの共演で仕事を見つけます

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親友に婚約者を奪われたジムは
独り寂しくコネティカットに行き酪農と農業を始めます
しかし実際の農場生活は過酷で、クタクタに疲れ切り
ショービズ以上に祝日も休日もあったもんじゃない

1年後のクリスマス・イブ、ジムにアイディアが浮かびました
デカい自宅を改装して、祝日だけのホテル”ホリディ・イン”を開こうと
その話をエージェントに相談すると、花屋に勤める
自称「歌って踊れる」というリンダを紹介してくれます

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このヒロイン役、ちょっとMMに似ていて可愛いの
なんでブレイクしなかったのかな

そしてまた1年後のクリスマス・イブ、”ホリディ・イン”がオープン
クリスマス・ソングの定番曲「ホワイト・クリスマス」は
この作品の挿入歌だったのですね
ジムとリンダのショーは大成功、次々に開催されるわけですが

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そこにやってきたのが、富豪と結婚するとライラに捨てられたテッド
今度はリンダをパートナーにしようと、急接近してきます
リンダを愛しているジムはそれを阻止しようとするわけですが
とにかく優柔不断で姑息な手を使い、はっきりしない性格なのです

そこにアステアの神業ダンス登場(笑)
ハートの壁を突き抜けるシーンなど息を呑みます
ジムが腐ってしまうのも当然
リンダの気持ちを確かめもせず、テッドに譲ってしまいます

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リンダは有名になり、やがてテッドと婚約します
だけど心優しい黒人メイドの
「リンダ様が本当に愛しているのはご主人様」の一言で
結婚式当日に略奪というアメリカ映画あるある(笑)

アメリカでは結婚式当日のドタキャンが本当に多いのでしょうか
身内や、招待客の迷惑も考えずなんともご自分様勝手な
せめて招待状配る前に気持ちに気づけよ、バカすぎる

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でも日本の標語大賞が「欲しがりません、勝つまでは」の
第二次世界大戦真っただ中だった頃
アメリカではクリスマス・イブやバレンタイン・デーといった祝日を
ホテルのショーで過ごそうという発想の違いの大きさに驚かされます

まあラストは、リンダとジムは愛を確信しあい
ライラもテッドの元に戻ってきてめでたし、めでたしでしたが
やっぱり結婚式の当日ドタキャンは賛同できないかな
(私の嫌いな映画のひとつに「卒業」(1967)があるくらいだから 笑)

 

 

【解説】KINENOTEより
「我が道を往く」のビング・クロスビーと「カッスル夫妻」の フレッド・アステアが主演する歌と踊りにつづられた音楽映画。音楽は「世紀の楽園」のアーヴィング・バーリン作詞作曲し、映画も彼の原案に基づき、劇作家エルマー・ライスが書き上げ、「トップ・ハット」のマーク・サンドリッチが監督製作したものである。ダンス振付はダニー・デーア、撮影はデイヴィッド・エーベルの担任。助演ではマージョリー・レイノルズ、ヴァージニア・デールの二新人と、「三銃士(1935)」のウオルター・エイ
歌の巧いジム・ハーディとダンスの上手なテッド・ハノオヴァは 、ライラ・デイクスンと三人組で、ニューヨークのナイトクラブに出演していた。ジムはライラが承知したので、カネチカット州のミドヴィルという村に農場を買い、芸人の足を洗って結婚生活に入る準備をした。ところがクリスマスも前夜いよいよ最後の晩にライラは寝返り、テッドと婚約してしまう。ジムはさびしく田舎に一年を送ったが、一年目のクリスマス前夜にテッドを訪ねてブロードウェイに現れた。その夜ジムは花屋の売り子をしているリンダ・メイスンという芸人志望の娘に会った。ジムはミドヴイルの家を改造して、祭日だけフロア・ショウを見せて開場するという企画で、ホリデイ・インを始めるから、テッドに出演を頼みに来たのだった。テッドは変人扱いにして相手にしなかったが、翌日リンダが来て歌い踊る契約をした。ジムとリンダは互いに心をひかれつつ、大みそかの夜ホリデイ・インは開業した。ところがその夜ライラはテッドを捨てて駈け落ちしたので、彼は泥酔してインへ訪ねて来てリンダと踊った。かくてまたもやリンダをめぐって二人は恋のさや当てを演じたが、ジムが策略をろうしすぎたので、リンダはテッドと共にハリウッドへ行き、映画スタアとなった。間もなく婚約が新聞に発表された。ジムは発奮してハリウッドへ乗込むと、もともとジムを愛しているリンダは、ジムの腕に抱かれた。

青いパパイヤの香り(1993)

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原題も「L'ODEUR DE LA PAPAYE VERTE」(グリーンパパイヤの匂い)

全篇フランスのスタジオで撮影されたというフランス製ベトナム映画
このセットがすばらしい
吹き抜け、格子の窓、豊かな緑と水の庭
昆虫たち、蛙、鳥のさえずり
その庭で座って作る美味しそうな料理

その見事な空間で、汗でこびりついた髪、裸足、桶の水で洗う身体
蚊帳の寝床という、覗き見のようなカメラ
”10歳の少女”をここまで大人の男目線でとらえる大胆さ
しかも白い樹液や、大量のパパイヤの種は生殖を思わせます

このような禁断という魔力に人は惹かれる
逆に嫌悪する人間もいるでしょう

 

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1951年、生地屋を営む裕福な家に奉公にやってき少女ムイ
奥様はやさしく、病気で亡くした娘だと思い大切にしてくれました
3男の嫌がらせで高価な壺を割ったときも怒りませんでした
3男の度を過ぎた悪戯も、ムイの気を引くためでしょうが(笑)

蟻を眺めて微笑むムイと、蟻を蝋で固めて殺すような兄弟や
家のお金を全て持ち出して愛人のもとに家出する旦那様とは
明らかに人間性が違う
ムイは長男の友人であるクェンに思いを寄せていました

 

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それから10年後、ムイは20歳になり
長男(父親と同じで怠け者)はしっかり者の嫁と結婚
嫁は収入を増やすため、庭にオウム小屋を建てようと提案し
ムイはクェンの家に預けられることになります

この10年後のムイが、仏壇に飾ってある奥様の娘
トーの写真と同じくらいホラーだし、処女性もないし
(私的には)作風を壊してしまいました
まあ、こればかりは監督の趣味なのでしょうね(笑)
実際の奥様でもありますし

 

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クェンには良家の娘で美しい婚約者がいるのですが
ムイは全く気にしていない様子でクェンの身の回りの世話をします
それどころか婚約者に「勝ったオーラ」を全身から放ち
クェンの家すべてを自分カラーに染めてしまう

奥様からいたたいたドレスとアクセサリーをつけ婚約者の口紅を塗る
それを陰から見つめ欲情を抑えきれないクェンは
夜中に彼女の寝る蚊帳へと向かうのです

潔く負けを認めて去った婚約者は、正しく清々しい
どんなイイ女でも、ムイのような女には叶うわけがない
ダイアナ妃が、カミラ夫人とチャールズ皇太子の仲を
決して引き裂けなかったのと同じ

 

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文盲の(この不幸感がまた男にはたまらない)ムイに
クェンは読み書きを教えます
そしてムイは産まれてくる子どものため詩を朗読するのです

これが大人になったヒロインが、10歳の頃のまま大人になったイメージの
女優さんが演じたのなら、また印象が違ったのでしょうが

この大人ヒロインは(女性から見て)かなり計算高い(笑)
これだけ犠牲系勝ち組女子の
(出た!勝手にジャンル ← いつか流行語大賞 ← あるわけない)
こういうしたたかな女性の描きかたがうまい映画はそう多くない
純愛、間接エロティズム

 

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それでも”お気に入り”にならなかった理由はただひとつ
成人期のヒロインが(女性から見て×2)気に入らなかったから(笑)
せめて20歳に見える女性使ってよ

 

 

【解説】allcinemaより
サイゴンのある資産家の家に、10歳の少女ムイが奉公人として雇われて来た。その家には優しい女主人と根無し草の旦那、三人の息子たち、そして孫娘を失って以来二階にこもりっきりのお婆さんがいた。ムイは先輩女中に教えられ、一家の雑事を懸命にこなしていく。そして彼女は、ある日長男が連れてきた友人クェンに恋心を抱く……。ドキュメンタリー出身のベトナム系フランス人、トラン・アン・ユンが初めて劇映画に挑戦した作品で、1951年のベトナムを舞台に、一人の少女の成長を瑞々しい映像で淡々と綴った小品。フランスのスタジオにセットを組んで作られたその絵造りは、時として演劇的な空間や演出を用いながら、水や光、草木(当然その中にパパイヤもある)、さまざまな小動物といった極めて自然なオブジェを融合させる事でユニークな印象をもたらしている。カンヌ映画祭でカメラ・ドール賞(新人監督賞)を受けたのも納得する力量だ。物語は後半で10年後に移りムイも成長した姿を見せるが、少女時代を演じた、ほのかなエロティシズムを醸し出すリュ・マン・サンの存在感は他を圧する魅力。彼女なくしてこの作品の成功はなかったろう。

魔女と呼ばれた少女(2012)

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原題はフランス語で「REBELLE」
国賊や反逆者、反抗という意味があるそうです

紛争の絶えないコンゴ民主共和国
日本のメディアは芸能人の些細な失言とかは
大きく取り上げてバッシングするくせに
アフリカで今も起こっている大虐殺はまず報道しない
私も日常生活で些細なことにイライラするくせに
世界で起こっている大きな問題に目を向けることはあまりない

でもこういう作品を見ると、自分の恵まれた環境に感謝して
もっと正しい生き方をしなければいけないと改めて思います

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12歳になる少女、コモナは反政府軍に拉致され
両親を殺すように強要されます
代わりに銃を親だと思えと与えられ、重労働に耐え
幻覚を見せる木の樹液によって薬漬けにさせられてしまう

つまり、なんの知識も思想もなく少年兵にされてしまうのです
従わなければ殺されてしまう、それだけ
生きていくためには常に諦め、無駄な感情はなくなる

ただコモナには敵兵を見つけるという才能がありました
そのせいで仲間から”魔女”と呼ばれ、ボスからも認められ
特別な銃をもらうことができます

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しかしアルビノの少年兵で魔術師でもあるマジシャンは
このままでは殺されると予言しコモナを連れて逃げます
そしてコモナと結婚するために白い雄鶏を探すのです

戦争映画なんだけど、スピリチュアルでファンタジック
カメラの構図や色彩感覚も見事
残酷だとか、可哀そうだとかいう気持ちは
ヒロインたちと同じように麻痺してしまうのです

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それでもマジシャンとのつかの間の結婚生活は
キラキラして幸せでした
きっとマジシャンの子を授かったのだと思った
でも違った

目の前でマジシャンを殺され、再び拉致されてしまう
そしてゲリラの部隊長の女にさせられるのです
目の前にある現実を受け入れ従う
実際上司に気に入られるのはこういう人間ですが(苦笑)
コモナは出産を前に逃げ出そうとします

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その方法というのが刃物を仕込んだ果物を股間に入れるというもので
アフリカの女性はこうやって男性に復讐するのか(笑)
当然男性のアソコは血だらけになるわけですが、女性のほうも命がけ
なんとか「肉屋」のおじさんの家にたどりつくものの
両親の亡霊と、悪夢に悩まされます
そして解決には両親を埋葬するしかないと
ひとり故郷の村に向かうのです

14歳で何の知識もないのに(アフリカではあたりまえかも知れないけど)
森でひとりで出産しちゃうなんて女性の本能って凄い
へその緒とかどうやって処理するんだろう

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出産を終え、両親の遺品を埋葬したコモナに
トラックの運転手が「乗っていきなよ」と声をかけてくれました
荷台では知らないおばさんが赤ちゃんを抱っこしてくれました
ほんの少しの時間でも、ささやかな幸せはある
コモナは深い眠りにつきます

カナダ映画の特徴って、問題について一方的に悪く描いたり
ご都合主義に解決したりはせずに
なぜそうなったのかを考えさせ(紛争ダイヤモンド)
その先にも物語が続くことを教えてくれる

コモナと赤ちゃんはこれから先、平和に暮らせるのでしょうか
その可能性はゼロに近いと思います

 

 

【解説】allcinemaより
これが長編4作目となるカナダ人監督キム・グエンが、アフリカの少年兵問題を背景にコンゴで撮り上げ、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた異色の戦争ドラマ。反政府軍によって無理やり兵士にさせられた少女が辿る壮絶な運命を、過酷な現実描写の中にリリカルな幻想的映像を織り交ぜ描き出す。主演は本作の演技でみごとベルリン国際映画祭女優賞に輝いた新人、ラシェル・ムワンザ。
 紛争の続くアフリカ、コンゴ民主共和国。平穏に暮らしていた12歳の少女コモナの村も反政府軍の襲撃を受けてしまう。さらにコモナは兵士として拉致され、その際、自らの手で両親を銃殺することも強要される羽目に。やがて兵士となった彼女は、戦闘中に亡霊に導かれて窮地を脱する。亡霊が見えるコモナは、ボスからも“魔女”と崇められるようになった。そして、ある時コモナは、彼女に想いを寄せる少年マジシャンと2人で逃亡を図るが…。

未来を花束にして(2015)

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原題の「SUFFRAGETTE」(サフラジェット)とは
19世紀末から20世紀初頭にかけて女性参政権を求める活動家のこと

イギリスといえば紳士の国レディ・ファーストの国という
イメージがありますが
実際には99%が労働者階級か、中流階級

しかもおよそ100年前までは、労働者階級の女性は
男性より格下、平等な人間ではないと見なされ
失業者やホームレス、教育を受けていない貧しい人々といった
下層階級の人々と同じ扱いを受け、差別されていたというのです

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労働時間は男性より長く、賃金は安く、その給料も夫に渡します
子育てに家事、パワハラ、セクハラ、DV
そんな彼女らが、わずかな権利を訴えるのはあたりまえのこと

しかしそんな労働者階級以下の女性が投票権を持ち
政治に影響力を及ぼせば、社会秩序を覆すような
危険な思想をもたらしかねないと世の男性や政治家たちは考え
女性たちの意見は却下されてきました

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そこで1903年から、婦人参政権活動家であるパンクハースト夫人は
婦人社会政治連合(Women's Social and Political Union, WSPU)を結成し
女性たちに参政権を求める闘争するように訴えます
それはある意味”革命”(テロ)でした

注目すべき点は、パンクハースト夫人のような有名人を据えたのでなく
名もない普通の主婦が、家族を棄て、命までかけて
どうして身を投じるようになったかということ

「サフラジェット」の戦いは、後のIRAイスラムテロにも
引き継がれたような気がします

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1912年ロンドン、モード・ワッツ(キャリー・マリガン)は
夫(ベン・ウィショー)と同じ洗濯工場で働いていました
ある日、洗濯物を届ける途中に洋品店のショーウィンドウに
石を投げ込むWSPUの過激行動に出くわしたのをきっかけに
婦人参政権運動に巻き込まれていきます

下院の公聴会で証言するはずだった職場の同僚
バイオレット(アンヌ=マリー・ダフ)が夫から暴力を受けてしまい
代わりにモードが工場での待遇や、身の上を語ることになりました
そこでモードは、もしかしたら自分は
”違う生き方”を望んでいるのではないかと気が付くのです

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しかし、夫も世間の目も婦人参政権運動に冷たい
デモを起こせば逮捕されてしまう
ついにモードは夫によって家を追い出され
最愛の息子は養子に出されてしまうのです
参政権どころか、母親なのに親権のかけらさえない

息子を失ったモードは、心のストッパーが外れてしまいます
過激なテロ行為、刑務所でのハンガーストライキ

そして婦人参政運動の「殉教者」(自爆テロ
エミリー・デイヴィソンの葬儀で終わります

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エンドクレジットでは各国の女性参政権
認められた年が列記されていきますが、日本の国名はなし

理由は、日本では1947年の憲法記念日から
基本的人権の尊重(自由と平等)によって女性参政権が認められていますが
それもGHQの指令によるもので、立法府の発布でなかったからだそうです

どちらにしても、今の私たちの生活は
過去の犠牲の上に成り立っているということ

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そしてこのような差別された弱い立場の人間の
”忘れられた革命”こそ当然議論されるべきで
もしかしたら今起こっているテロ活動を止める
糸口が掴めるかもしれません

純粋な人間ほど、迷いもなく命を棄ててしまう(自殺)
テロリストになってしまうのだから

 


【解説】allcinemaより
100年前の英国で女性の参政権を獲得するために立ち上がった名も無き女性たちの勇気ある行動を「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガン主演で映画化した社会派ドラマ。それまで社会に対して無頓着だった一人の若い女性労働者が、“サフラジェット”と呼ばれるラジカルな運動を展開した女性闘士たちとの出会いを通じて政治に目覚め、過激な女性参政権運動へと身を投じていくさまを描く。共演はヘレナ・ボナム・カーターメリル・ストリープ。監督は長編劇映画2作目となる女性監督のセーラ・ガヴロン。
 1912年、ロンドン。夫と同じ洗濯工場で働く24歳の女性モード。幼い息子を抱え、劣悪な環境の中、男性よりも安い賃金でより長時間の労働を強いられる過酷な仕事にもかかわらず、この職場しか知らない彼女にとっては、それが
当たり前のことだった。そんなある日、街で女性の参政権を求めるWSPU(女性社会政治同盟)の過激な抗議活動に遭遇する。この“サフラジェット”との出会いが、のちに自分の運命を大きく変えることになるとは、この時はまだ思いもしなかったモードだったが…

ナチョ・リブレ 覆面の神様(2006) 

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メキシカン・プロレス=ルチャリブレ
派手なマスクを被ったルチャドール(レスラー)による
四次元殺方、プランチャー・スイシーダ、 スモールパッケージホールド
などなど華麗なアクションに、ユーモアたっぷりの試合は
メキシコが誇る大衆文化であり、無形文化遺産にも指定されているそうです
日本でも1970年代のミル・マスカラスドス・カラス兄弟の登場から
チャファンが増えたそうです

しかし本作は本格プロレス映画というわけではなく(笑)
感動的なラストが待つサクセス・ストーリーでもありません
ギャグはスベリ、格闘技ワザも中途半端でスカスカ
だけどその中身のなさと、いい加減さが好きな人は好き(笑)

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修道院で育った料理番イグナシオ、愛称ナチョ(ジャック・ブラック
彼の作る料理は見た目も汚いし、味もマズい
子どもたちは新鮮な野菜を食べたいと駄々をこねます
しかし修道院の経営は傾きかけていて、まともな食材を買うお金もない
そんなとき、シスター・エンカルナシオン(名前長い)が
新しい先生として修道院にやってきました
このシスター、ペネロペ・クルスそっくりで
「オール・アバウト・マイ・マザー」(1999)かよ!
と思わず突っ込んでしまいます(笑)

こういう100%エロ顔、フェロモンまき散らすタイプが
シスター(制服)というのはある意味男の夢の中の女性で
もちろんナチョも一目惚れ、料理作りにも俄然ヤル気を出すわけですが
金はない(笑)

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そこでルチャのチャンピオン、ラムセスの豪華な暮らしぶりを見て
ナチョも、ルチャでお金を稼ごうと決意するのです
パートナー役はホームレスの”やせ男”スティーブン
いいかげんなトレーニングをして、お手製の覆面を被り
試合に挑みますが、もちろん惨敗

ところが、そのおバカな負けっぷりが観客に大ウケ
ファイトマネーをもらい、次の試合の出場も決まります
しかし修道院の老僧たちはルチャは罪だと
テレビの試合を観ることすら禁止されていました

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だけど、シスターにおいしい食事させたいナチョは内緒で試合を続け
ついにチャンピオンと対戦するまでになります

ブヨブヨの体系にピチピチの青タイツ
ワザの度にオナラ、これを真剣な真顔でするんだから(笑)
でも(スティーヴ・マーティンもだけど)こういうギャグって
日本人にはあまりウケないようです
私は大好物なんですけど(笑)

チャンピオンとの試合当日、シスターと子どもたちが
ナチョを応援になんと会場に来てくれました
そして賞金で買ったバスで、子どもたち約束の遠足
叶った夢がちっちゃいのが、またいい(笑)

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ただこれ実話をもとに作られたそうなんですけれど
当事者は怒らなかったのかしら(笑)

 

 

【解説】allcinemaより
スクール・オブ・ロック」の主演・脚本コンビ、ジャック・ブラック&マイク・ホワイトが、「バス男」で注目を集めた新鋭ジャレッド・ヘスを監督に迎えて贈る痛快ハートウォーミング・コメディ。実話をヒントに、傾きかけた修道院を救うため、メキシカン・プロレス(ルチャ・リブレ)の覆面レスラーとして奮闘する心優しきダメ男の活躍を描く。
 幼くして両親を亡くし、修道院で孤児として育てられたナチョ。大人となった今はその修道院で料理番として孤児たちの面倒を見る日々。しかし、お金のない修道院では子どもたちに満足な食事を与えることもできない。そんなある日、街でルチャ・リブレのスター、ラムセスの豪華な暮らしぶりを目にしたナチョは、自分もレスラーになってお金を稼ぎ、子どもたちにおいしい食事をあげようと決意する。ところが、ルチャ・リブレ修道院の老僧やナチョが憧れるシスター・エンカルナシオンから忌み嫌われていた。そこで彼は、修道院には内緒で試合への出場を決め、ひょんなことから知り合った謎のヤセ男を相棒に、奇妙なトレーニングを開始するのだが…。

スピード(1994)

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あの時、私はサンドラ・ブロック
夫はキアヌ・リーブスだった(うそつけ)

 

ダイ・ハード」(1988)と並ぶハリウッド的アクション映画の傑作
低予算で作られたにもかかわらず、興行収入は製作費の12倍近く
サンドラとキアヌの出世作であり、ヤン・デボンの名前も
世界に知らしめました

エレベータ、バス、地下鉄で起こる
爆弾テロによる逆恨みノンストップアクション
悪役は デニス・ホッパー
当時はあの悪役顔で入浴剤のCMに出て
「アヒルちゃん♡」とか言っていましたね(笑)

”反逆のアイドル”ビリー・アイドル
(と、ひたすら頭を揺さぶりギターを弾くスティーヴ・スティーヴンス)
の歌う主題歌の「SPEED」も良かった

意外にも、今見ても十分楽しめました
スピードを時速50マイル(約80キロ)以下に落とすと
爆発する爆弾を仕掛けられたバス
ネタは「新幹線大爆破」(1975)と同じなのですが(笑)
(原案は黒澤明の「暴走機関車」のオリジナル脚本らしい)

 

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射殺された運転手の代わりに
バスを運転するハメになってしまった女子大生(サンドラ・ブロック
対向車やドラム缶や標識を弾き飛ばしたり、ぶつかったり
ベビーカー(中身は子どもでなく缶詰)や
登校中の児童の群れに突っ込みそうになったり
あらゆる障害を抜け、ここなら自由に50マイル走れるだろうと
バスは空港に向かいます、と思いきやガス欠の危機

そこで警察はドライブレコーダーの録画をテレビ中継で流し
その間に乗客を脱出させることに成功します

だけど、そこで黙っちゃいないのがデニス・ホッパー(笑)
親切な警察官を装ってサンドラを誘拐し
彼女に爆弾を巻き付け地下鉄に乗り込み逃走するのです
それをひらすら追いかけるキアヌ

 

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ラストはお約束的なハッピーエンドでしたが(笑)

この映画の最も凄いところは、これだけのアクションをもってきても
徹底的に「死者を出さないように」作られていること
実際作中で亡くなっているのも、ドラマ作りのための
女性ひとりと、バスの運転手と、犯人の3人だけ
人がたくさん死ぬことだけがスリリングではないと思います

このようなヒット作の場合、時を経てから映画として
高評価されることはまずないのでしょうが(笑)
名作と言っても過言ではないと思います

「スピード2」(1997)に関しては、舞台が豪華客船になったぶん
「スピード」関係ないじゃん!と、ツッコミたくなりますけど(笑)

 


【解説】allcinemaより
 時速50マイル以下になると爆発する路線バスをメインに、爆弾魔とSWAT隊員の攻防をノンストップで描くジェット・コースター・アクション。次々起きる危機また危機とその解決手段がゲーム感覚で展開されていく様は、“秒刻みのクリフハンガー(スタローンの映画の事ではない)”とでも呼ぶべき映画的興奮に満ちている。余計なキャラクター描写を極限まで切り詰め、過去のアクション映画のエッセンスを凝縮させた脚本のG・ヨスト、撮影監督の経験を活かしビジュアルで語る事に徹底したJ・デ・ボン、二人の“新鋭”の果たした功績はあまりにも大きい。

チップス先生さようなら(1939)

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原題も「GOODBYE MR. CHIPS」
ジェームズ・ヒルトンの原作は中学生の時読んだことがあります
モデルとなった学校はケンブリッジのレイズ・スクール

ロバート・ドーナットは同年公開された「風と共に去りぬ」の
クラークゲーブルを抑えてのアカデミー賞受賞
確かに当時34歳のドーナット25歳から83歳までを
違和感なく演じたのは確かに見事
ただ身体が弱かったということで多くの主演作を残せなかったそうです

市川崑監督の妻で、脚本家の和田夏十(なっと)が
ドーナットのファンでこのペンネームをつけたのも有名な話

 

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1928年のイギリス、83歳になるチッピング先生は
すでにパブリックスクールの教師を退職していましたが
始業式に出席しようとしていました

だけど風邪のために医者から止められてしまい
暖炉の前で暖まりながら、寝てしまします
そして、過ぎ去った日々が回想シーンとして
彼の脳裏に去来するのです

いわば教師物の先駆けですが、情熱と熱血で
名門校の古いしきたりを変えていこうというものではなく(笑)
チッピングのほうがよほど堅物で時代に取り残されたような人物
生徒から尊敬されているわけでなく、出世からも見放されている
同僚のシュテフェル(ポール・ヘンリード)はそんなチッピングを
休暇をオーストリアで旅して過ごそうと誘います

 

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山登りで遭難しそうになったチッピングは
山中でキャサリングリア・ガースン)と出会い
娘のように年の離れた彼女に恋してしまいます
そして結婚します

美人の嫁を貰ったというだけで、学校でのチッピングへの評価は激変(笑)
同僚たちも、生徒達からも、一目置かれ
チップスも人情味ある教師に変わっていくのです
(チップスはキャサリンがチッピングを呼ぶときの愛称)
しかし愛するキャサリンとの幸せな生活は長く続きませんでした

 

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しかも普仏戦争、南ア戦争(ボーア戦争)、第一次世界大戦
卒業した子どもたちが次々と出征して行く
そして帰ってこない辛さと寂しさ
彼は子どもたちひとりひとりに、本当の息子へのような愛を向け
毎週日曜には必ず名誉戦死者名簿を読み上げる

少年時代のコリー1世から4世を1人4役で
クローンのように何であろうとでてくるのが面白い(笑)

死の床で身寄りのないチップスを憐れむ見舞客
だけど彼は呟きます
「子供はいたよ 何千人も 何千人もの子供たちがみんな私の息子なんだ」

 

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教師としての天職を全うできたことは
チップスにとって何より幸せなこと
そしてキャサリンと赤ちゃんが待つ天国を
きっと神様は用意してくれていると思います