1917 命をかけた伝令(2019)

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原題も「1917」
この邦題でネタバレってどうなんでしょう(笑)
しかもCMで”兄を助ける”みたいなキャッチコピーで
戦火の中を走っている主人公、アカの他人ですから(笑)

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シンプルだけど傑作、面白かったです
ぬかるみにハマった車を押すだけでハラハラ
橋を渡るだけでドキドキ
地下に隠れる女性と赤ちゃんとの出会い
兵士の歌のシーンという束の間の幸福に
心を奪われてしまいます

これはIMAXで見たほうがよかったかも知れない
カメラはロジャー・ディーキンス
今、大物監督から最も信頼を受けている撮影監督でしょう
以下、ネタバレ注意

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1917年4月のフランス、ドイツ軍と連合国軍が戦う西部戦線
昼寝をしていたブレイク(ディーン=チャールズ・チャップマン)は
「誰かひとりを連れて」と言われ、たまたま隣で寝ていた
スコフィールド(ジョージ・マッケイ)と共に
将軍(コリン・ファース)の元に向かいます

そこでブレイクに与えられた命令は、彼の兄が駐在している
マッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)の部隊に
明日の朝までに攻撃の中止を知らせるというものでした
ドイツ軍の後退は連合軍を誘引する罠だったことが
航空偵察によってわかったためです
もし前進すれば要塞化したドイツ軍の砲兵隊に1600名の兵士が全滅してしまう

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戦いのあとの戦場の描写はなかなかリアルでいいですよ
死体の腐れ加減といい、ハエのブンブンという音といい
カラスが屍をつつき、ネズミが走る

さすが、ロジャー・ディーキンス
好きな映画の1位が「ワイルドバンチ」(サム・ペキンパー)
2位が「炎628」(エレム・クリモフ)というだけのことはある(笑)

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イギリス兵の陣地はぐちゃぐちゃで食べ物もマズそうだけど
ドイツ兵の陣地はきれいで土嚢の積み方も丁寧
地下まで掘られてベッドの置かれた居住スペースまであります
ドイツ人の勤労さが伺える(笑)

しかも敵が来たときのために退去する前に居住スペースには爆弾を仕掛け
近隣の、もとは農家だったと思われる住居の桜の木は切り
放牧されていた牛は全て殺していく(食料を敵に与えないため)
いくら仕事ができても、ここまでされると憎さも100倍

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ブレイクは親切が仇となってドイツ人パイロットに殺され
スコフィールドは代わりに手紙を届け、ブレイクの兄を探すと約束します

スコフィールドは過去にメダル(栄誉賞のようなものだと思う)
をもらった経験があるようなのですが、そのわりには
”夜になってから行こうよ”とか、”なんでおれを選んだんだ”とか
文句ばかり言っていたのですが(笑)

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なぜ彼がメダルを与えられたのかがわかってきます
的確な判断ができて、射撃の腕も一流
本来の姿を取り戻し、たったひとり戦地を潜り抜けていく

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川に浮かぶ死体もいいですねえ
溺死するとああなっちゃうんですかねえ

目をつむる人もいるかも知れないけれど
こうでないと反戦映画とはいえません
90を過ぎた爺さんがベッドで死ぬのではないのです
将来のある若者が苦しみ、悶えながら死んでいくのが戦争
そこに国籍は関係ありません

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スコフィールドはブレイクとの約束を果たします
生きて帰れたら、またメダルを授与されるかも知れない

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だけど彼の故郷の妻と娘たちは、たぶん戦争で亡くなったのでしょう
彼がメダルをワインと交換したのは、やけ酒を飲みたかったのだろうと
私は思ったから
フランスで桜の花言葉が「私を忘れないで」というのも泣かせる

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ひとこと感想は、ワンカットにだけこだわって観賞する作品では
なかった、でした(笑)

 

【解説】allcinemaより
アメリカン・ビューティー」「007 スペクター」のサム・メンデス監督が第一次世界大戦西部戦線を舞台に、まるで全編ワンカット撮影かのような切れ目のない驚異の映像で贈る戦争アクション大作。1600人の味方の命がかかった重要な指令を届けるため、最前線へ向かって戦場を駆け抜ける2人の若いイギリス人兵士の姿を、圧倒的な臨場感で描き出す。主演はジョージ・マッケイとディーン=チャールズ・チャップマン。共演にマーク・ストロングコリン・ファースベネディクト・カンバーバッチ
 第一次世界大戦真っ只中の1917年。西部戦線ではドイツ軍の後退が始まり、イギリス軍はこれを好機と、追撃に乗り出そうとしていた。しかし、それはドイツ軍の罠だった。そのことを一刻も早く最前線の部隊に伝えなければならなかったが、あいにく通信手段は途絶えてしまっていた。そこで若い兵士スコフィールドとブレイクが呼び出され、翌朝までに作戦中止の命令を届けるよう指令が下る。この伝令には味方の兵士1600人の命がかかっていた。その中にはブレイクの兄も含まれている。こうして2人は塹壕を抜け出し、いくつもの危険が待ち受ける無人地帯(ノー・マンズ・ランド)へと飛び込んでいくのだったが…。