フィッシャー・キング(1991)

 
「ゴミからも素敵なものが出来る」
 

 
 
ロビン・ウィリアムズさんを偲ぶ】
 
ロビン・ウィリアムズさん、コメディから感動作
たくさんの素晴らしい映画に出演していますね。
私も大好きな俳優さんのひとりです。
 
彼の主演作の中で一番好きな映画・・
選ぶのはとても難しいのですけれど
私的にはこの、「フィッシャー・キング」です。
 
ニューヨークの街が素敵。
セントラル・パークを駆ける赤い騎士
ギリアム・ワールドのファンタジックなセンスが光ります。
 
過激な発言が売りの自意識過剰なDJ、ジャックの発言により
リスナーが発砲事件を起こしてしまいます。
この事件で妻を殺されたことが原因で
精神分裂症を病みホームレスとなってしまった元大学教授のヘンリー。
仕事を失い酒におぼれるようになったジャックは
ある日酔って若者に襲われているところをヘンリーに助けられます。
 
ヘンリーは「聖杯」を欲しがっていました。
そして「聖杯」を捜してくれるのはジャックだと言うのです。
 
ジャックはなんとかヘンリーを助けようとします。
でもそのことは、決して罪滅ぼしからではなく
不器用な彼の、精一杯のやさしさからというのがいいのです。
ヘンリーが想いを寄せている女性との仲も取り持って
どうにかデートをさせてあげようともします。
 
もちろんジャックだけではなく
誰もがピュアなヘンリーの恋を応援したくなってしまいます。
 
グランド・セントラル駅のシーンは特に素晴らしい。
恋する気持ちが溢れているのです。
 
毎日12時ちょっと前に、駅で出勤するリディアを待つヘンリー。
彼女が現れると、そこは巨大なダンスホールになります。
ワルツを踊る人々の間をすり抜けていくリディア。
手を差し伸べてダンスに誘いたいヘンリー。
彼女の姿が消え、時計の針が12時を指すと
駅は一瞬で人混みに戻るのです。
 
ギリアム監督が苦手な方でも
このシーンだけはぜひ見ていただきたい。笑
 
チャイニーズ・レストランでの食事も楽しい。
上手に箸を使うことが出来ず、食べ物が転がりまわります。
好きな人が笑ってくれることこそが極上のご馳走ですよね。
 
だけれど、幸せな時間はすぐに過ぎ去ってしまいます。
 
それと同じに
哀しい時間にもいつか終わりが来るはずなのです。
 
「あなたは今日とてもいいことをしたのよ。私まで鼻が高いわ」
 
恋するって素晴らしい、そう思える大人の寓話でしょう。
 
 
 
映画の中で、インタビューで、いろいろな舞台で
登場するたびに明るく、楽しく、ファンを笑わし、癒してくれた
彼の笑顔をもう見られないと思うと、とても寂しいですね。
 
心からご冥福をお祈りします。
 
 

 
【解説】allcinemaより
奇才テリー・ギリアムが描く、ファンタスティック・コメディ。過激なトーク時代の寵児として君臨したスーパーDJのジャック・ルーカスは、放送中に発した不用意な言動がもとで忌まわしい事件を誘発し、奈落の底へ転落する。また、教授だったというヘンリーは、3年前のある悲劇的事件に見舞われてから人が変わり、過去を捨ててホームレスとなった。共に精神に深い痛手を負った男達は、ニューヨークの底辺で出会い、奇妙な友情で結ばれる……。映画は、マス・メディアの恐怖、溢れるホームレスという社会的テーマを含みながら、傷つき人間不信に陥った男と、愛する人を失い過去を捨ててホームレスになった2人の男の友情を、笑いと哀しみを交え、この監督の独特とも言える幻想的映像で包んで描いてゆく。そしてこの映画の魅力に一役かっているのが、ヘンリー役のR・ウィリアムズ。深い哀しみの為に少し気が変になった男の、ゆえに純粋な優しさを持つこの役どころは、まさに彼のためといった感じのハマリ方で、この人物の持つ魅力を十二分に引き出して演じている。実に不思議な魅力で溢れた心温まる作品。