原作は立川市役所職員として勤務するかたわら作家活動を行い
58歳で脳出血により亡くなった河林満(1950生)が
1990年に発表した同名小説(文學界新人賞を受賞し、芥川賞候補にもなった)
原作は未読なので、子どもの貧困やネグレクトなどの社会問題と
(その解決となる?)水道水の無償提供というテーマに
どこまで食い込んでいるのかわかりませんが
映画のほうは脚本がお粗末というか(笑)
大人の行動としていかがなものか、というのが正直な感想
特に子役が好い演技をしているので、もったいないですね
雨が降らない状態で、水不足が問題になっているわけですが
幼い姉妹がお金もなく電気と水を止められて
熱中症や餓死の危険性さえあるのに
水道局の人間が支援センターにも児童相談所にも連絡も入れない
近所のおばちゃんは両親がいないことを知っていても放置だし
ガレージの水道から水を盗まれたおっさんも
スーパーで万引きを見つけた店員も
ただ追いかけるだけで、姉妹がそこまでする理由を何も考えない
一応日本には「児童虐待の防止等に関する法律」第六条第1項に
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は
速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所
若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村
都道府県の設置する福祉事務所
若しくは児童相談所に通告しなければならない
という法律があるんですよ
児童相談所虐待対応ダイヤル「189」(いちはやく)
またはお住まいの区市町村の子供家庭支援センターに
相談してください
ちなみに原作の結末では
姉妹は鉄道自殺してしまうそうです
市役所の水道部に勤め、は料金滞納世帯の水道を止める
長らく支払いが滞っている小出秀作の家で姉妹に出会う
姉妹は母親は不在、父親は船に乗っていて外国の海にいて
長いあいだ家に戻っていないという
次の訪問で岩切は母親に(スマホ代は払っている)
生活保護を勧めるものの「親に連絡行くのは嫌」と断られてしまいます
母親は出会い系サイトを利用してデート商売をしていますが
若い女性を求めてきた男たちに断られてばかり
やっと親切な男性と知り合うと、男の家に転がり込んでしまったようです
岩切と木田は「今のうちに溜められるだけの水を溜めておきなさい」
「お母さんが帰ってきたら連絡して、すぐ使えるようにするからね」 と
停水を執行します
水道局だけでなく、こういう督促の仕事をしている人たちって
相手から忌み嫌われ罵倒されますよね(代金を払わないほうが悪いのに)
そういう人たちにいちいち怒ったり反論してもしょうがない
感情を表に出さないようになり、考え方も白黒はっきりしてきます
(しかも今どきヘビースモーカーという設定)
なので岩切の奥さんは、夫が冷たくて息子を連れて実家に帰ってしまった
もっと心を開いて、何でも話してほしいのに
(といっても守秘義務があるしな)
一方姉妹の母親は帰ってこない
溜めていた水がなくなると、姉妹は公園に水を汲みに行き
やがて渇水で公園の水道も止められてしまう
お金は尽き、自動販売機の周辺にお金が落ちていないか探す
よその家の水道から水を盗み、姉は万引きするようになる
その現場を見てしまった岩切は、スーパーに金を払うと
姉妹を水道局の車に乗せて公園に向かいます
そして水栓を開いて水を放出し、3人で水浴びをしたのです
水道局の職員と警察に取り押さえられてしまう岩切
姉妹は児相に預けられ
岩切は退職させられますが、息子からの「僕、海に行きたいな」という電話に
家族との絆を取り戻せる予感がしたのでした
【解説】映画.COMより
「凶悪」「孤狼の血」などを送り出してきた白石和彌監督が初プロデュースを手がけ、生田斗真を主演に迎えて送る人間ドラマ。作家・河林満の名編「渇水」を原作に、心の渇きにもがく水道局職員の男が幼い姉妹との交流を通して生きる希望を取り戻していく姿を描く。
市の水道局に勤める岩切俊作は、水道料金を滞納している家庭や店舗を回り、料金徴収および水道を停止する「停水執行」の業務に就いていた。日照り続きの夏、市内に給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々を送る俊作。妻子との別居生活も長く続き、心の渇きは強くなるばかりだった。そんな折、業務中に育児放棄を受けている幼い姉妹と出会った彼は、その姉妹を自分の子どもと重ね合わせ、救いの手を差し伸べる。
監督は、岩井俊二監督作や宮藤官九郎監督作で助監督を務めてきた高橋正弥。
2023年製作/100分/PG12/日本
配給:KADOKAWA