ボーンズ アンド オール(2022)

原題も「Bones and All」(骨とすべて)

最初から「カニバリズム」(食人、食人俗、人肉嗜食) の

若者の恋愛映画であるという映画広告のネタばらし()

 

マイノリティの恋愛ロードムービと思って見るのには

耐久が必要ですし(笑)

目玉グリグリ、腹を切り開いて内臓ピクピクの

本格的なマカロニ・ホラーを期待すると肩透かし

 

ただしスプラッタ―であることに間違いないので

ストーリー性を深く考えてはいけません(笑)

LGBT的な要素も出てきますが重要ではありません

あくまでメインは人肉を食らうこと

1988年、バージニア州

高校生のマレンは、お泊り会でクラスメートの女の子の指を食いちぎり

父親は「またやったのか」とメリーランドに逃げます

 

そこでマレンが18歳の誕生日を迎えると

父親は現金と出生証明書とカセットテープを残し消えました

テープには彼女が3歳でベビーシッターを

7歳のとき行かせたキャンプで男の子を殺したエピソードが

録音されていました

マレンは出生証明書を頼りに

母親を探すためミネソタいくことにします

 

途中コロンバスのバス停で出会ったサリーから

「イーター」(同じ族)はほかにもいると教えられ

衝動的にサリーが用意した死にそうな老婆を食べてしまいますが

勝利品だという三つ編みで作ったロープを見せられ

怖くなり逃げ出してしまいます

次にインディアナの店で男から嫌がらせを受けている女性客を助けた

リーという青年と出会い

彼も「イーター」であることを知り、男の車で(男は餌にされた)

一緒に旅をすることにしました

カニバリズム」は臭いでわかる

ヴァンパイアのように人血が無ければ生きていけないわけでなく

普段の食事は普通の人間と同じ

数年人肉を食べなくても平気だったり

逆に短いスパンで衝動的に欲求を押さえきれなくなる時がある

夫婦は夫、または妻は食べない

親から子へ遺伝する場合が多いが、わが子は食べようとします

 

野生の動物のように喰いついて食べる

全身血だらけになるにもかかわらず

目撃者は誰ひとり現れないし、ニュースにもならない

警察に捕まることもありません

本作でもティモシー・シャラメ君は絵になるし

彼を見るだけで幸せという腐女子も多いでしょうが(笑)

何といっても凄いのがマーク・ライランス

怖い、怖い、怖い

出てきた瞬間妖しいオーラが画面にいっぱい

 

そして男性同士のペアのひとり、マイケル・スタールバーグ

怖い、怖い、怖い

いつ殺されるかわからない雰囲気プンプン

でもこのふたり、同じ仲間として助け合おうと

親切心で若者に近づこうとしただけなのです

でもマレンは逃げ出してしまう

 

これが自分でも実は気付いていない

人を見た目で判断する差別とか偏見なんですね

ケンタッキーのリーの故郷に寄り

そこから再びミネソタに向かう

マレンは祖母から母はファーガスフォールズの精神病院にいると教えられ

母に殺されそうになったことで

自分たちの特性を受け入れることが出来なくなり

いったんはリーと別れますが

ケンタッキーに戻ったリーと再会、リーの過去が明らかになり

ふたりはミシガンで人生をやり直す決意をします

しかしストーカー化したサリーが、マレンを追いかけてきます

マーク・ライランス、久々に来ましたよ

ダントツでアカデミー助演男優賞(ノミネートもされてないけどな 笑)

私的に3大サイコは「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンス

「セブン」ケヴィン・スペイシー

ノーカントリー」のハビエル・バルデム ですが

気持ち悪さではこの3人を超えたかも知れません(笑)

ラストまでの展開も想定内

マレンは自分の性(さが)を受け入れたということでしょう

 

ただ証拠が残らないよう男ふたりを食べ尽くしたとしたら

ギャル曽根もびっくり

大食いに転職したほうがいいと思いました

(そういうツッコミ? 笑)



【解説】映画.COMより

君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督とティモシー・シャラメが再タッグを組み、人喰いの若者たちの愛と葛藤を描いたホラー。
人を食べてしまう衝動を抑えられない18歳の少女マレンは、同じ秘密を抱える青年リーと出会う。自らの存在を無条件で受け入れてくれる相手を初めて見つけた2人は次第にひかれ合うが、同族は絶対に食べないと語る謎の男サリーの出現をきっかけに、危険な逃避行へと身を投じていく。
主人公マレンを「WAVES ウェイブス」のテイラー・ラッセル、彼女と恋に落ちる青年リーをシャラメ、謎の男サリーを「ダンケルク」のマーク・ライランスがそれぞれ演じる。2022年・第79ベネチア国際映画祭コンペティション部門に出品され、グァダニーノ監督が銀獅子賞(最優秀監督賞)、ラッセルがマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞した。

2022年製作/130分/R18+アメリ

 

RRR(2022)

何がほしい

「読み書きを

原題もRRR(トリプルアール)

今さらながら見てきました

これに無駄な副題つけなかったのは

配給会社にもまともな社員はいるのね(笑)

タイトルの由来はダブル主演の

ラーム・チャランとNT・ラーマ・ラオ・ジュニア(愛称はNTR)と

監督のSS・ラージャマウリ3人の名前の頭文字Rからで

後から「Rise Roar Revolution」(立ち上がれ!叫べ!革命! )

という意味を付けたそうです

製作費はドルにして8000万超(日本円で85以上

インドだけでなくアメリカ、オーストラリア、欧州、中東でも大ヒット

3時間以上の映画ベスト100」第86位 にランキング

イギリス領時代のインド帝国とニザーム(君主)に抵抗運動した

実在の革命指導者アッルーリ・シータラーマ・ラージュと

コムラム・ビーム

もし同じ時代、同じ場所にいたら、という架空の友情物語

完全な勧善懲悪でわかりやすい

しかも破天荒で大雑把

勢いだけで最後まで見れます(笑)

英国の総督とその夫人にさらわれた

幼いマッリ取り戻すため森からデリーにやって来たビームと

かって英軍に襲われた故郷に武器を届けるため警察官となったラーマ

鉄道の爆発事故に巻き込まれた漁師の少年を助けるため協力し

やがて深い友情で結ばれるようになります

導入部の見せ場はラーマの暴動の鎮圧シーン

CGはややショボいものの(笑)

人口の多いインドならではの迫力が画面いっぱい

一方のビーム素手トラや熊と戦い、仲間にしていきます

(金太郎か! 笑)

そしてインド映画の見どころといえばやはりダンスシーン

ダンスバトルでイギリス人の淑女は皆ラーマを応援

でもジェニーだけはビームを応援するんですね

ビームにわざと負けるラーマ

でも全然嫌味じゃない

ラーマには幼馴染みの許嫁がいたのです

こんな美人で健気が恋人が待っていてくれたなら

親友の恋を取り持つくらい余裕綽綽(笑)

でもビームの弟分がラーマに捕まり拷問にあい

ラーマに毒蛇を投げつけます

瀕死のラーマを助けたのはビームでした

妹マッリを取り戻しに行く夜、ラーマに秘密を打ち明けます

そこからラーマにビームが捕らえられ

(総督と総督夫人のサディストぶりが凄いぜ)

ビームとマッリを助けようとするラーマ

次に英軍に捕らえられたラーマを、独房から救うビーム

歩けないラーマを肩車し、ビームが下半身ラーマが上半身

マッチョで濃い濃い髭男が、一心同体となって戦う

たとえ英国艦隊がやって来ても勝てるくらいの強さ(笑)

そして悪人は死ぬけど

善人は死んだと思わせておいて

死なないシステム(笑)

このばかばかしい映画がなぜ世界中でヒットしたのか

それは一部の権力者の利権のために土地や故郷を奪うことが

何世紀にも渡る戦争に繋がることを理解できない

アホな政治家たちを成敗してほしいから

ストレス解消映画なのです

日本でも「暴れん坊将軍」と「鬼平」と「遠山の金さん」で

コラボしたら意外とヒットするかも(笑)

 

ラストはハッピーエンドでスッキリ

好きな人と平和に暮らす、それが何よりの幸せだから

 

 

【解説】映画.COMより

日本でも大きな話題を集め、ロングランヒットとなった「バーフバリ」シリーズのSS・ラージャマウリ監督が、英国植民地時代の激動のインドを舞台に、2人の男の友情と使命がぶつかり合う様を豪快に描くアクションエンタテインメント。
1920
年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため立ち上がったビームと、大義のため英国政府の警察となったラーマ。それぞれに熱い思いを胸に秘めた2人は敵対する立場にあったが、互いの素性を知らずに、運命に導かれるように出会い、無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、2人は友情か使命かの選択を迫られることになる。
「バードシャー テルグの皇帝」のNT・ラーマ・ラオ・Jr.がビーム、ラージャマウリ監督の「マガディーラ 勇者転生」にも主演したラーム・チャランがラーマを演じた。タイトルの「RRR」(読み:アール・アール・アール)は、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字に由来する。第95アカデミー賞ではインド映画史上初となる歌曲賞にノミネートされた。

2022年製作/179分/G/インド

 

 

エレファント・ウィスパラー 聖なる象との絆(2022)

原題は「The Elephant Whisperers ゾウの囁き)

こういう生態系ドキュメンタリーを好んで見るのは

ダーウィンが来た!」のファンならともかく(笑)

映画ツウでも、そう多くないのではないでしょうか

 

私も含め、アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞の

ノミネートを受けて見た人がほとんどだと思います(笑)

でも良かったです

世界で最後に残る桃源郷はインドかもしれません

 

監督は自然動物や社会的テーマを撮り活躍する女性写真家

カルティキ・ゴンサルヴェスで本作が映画デビュー作

わずか40分のこの作品に費やした期間は

なんと7年間()

インド南部タミルナードゥ州ムドゥマライ国立公園の森林局に

運び込まれた瀕死の子象ラグ

母親は感電死し、犬に尻尾を食いちぎられていました

 

飼育を任されたのはこの地域で100年以上にわたり

代々ゾウの調教をしているタミル人のボマンと

夫を虎に殺され、娘を亡くした過去があるベッレ夫人でした

野生のゾウの乳児の飼育に成功した例はなく

ボマンとベッレ夫人もはじめての経験

ふたりに出来るのは、わが子のよう愛情を注ぎ世話をするだけ

特にベッレ夫人は娘が戻ってきたと可愛がります

成人した象は脳みそだけで5kgもあるそうで

地球上で最も賢いとされている動物のひとつなんだそうです

ボマンとベッレ夫人に育てられたラグはふたりの言葉を理解するし

喜びや悲しみといった感情もあり

ボマンとベッレ夫人が嬉しい時は喜びをわかちあい

哀しい時は寄り添いなぐさめます

ラグが4歳になったとき

迷子になった生後5ヶ月の子象アンムがやってきます

いままでふたりの愛情をひとり占めしていたラグは

ヤキモチを焼いて拗ねてしまう(それがまた可愛い 笑)

でもやがてアンムを受け入れ、面倒をみてやるようになり一緒に遊ぶ

人間の姉妹となにも変わりません(笑)

ボマンとベッレ夫人、ラグとアンムは

一緒に暮らすうち固い絆で結ばれていきます

そしてボマンとベッレ夫人は結婚式を挙げました

本当の夫婦、ラグとアンムの両親になる

もう孤独じゃない

しかしラグが7歳になったとき

森林局から担当者が代わることが伝えられます

最初ボマンは反対しますが

給料を得てやっている公務の仕事なんですね

断れるものではありません

そしてラグにも大人になる時が近づいていたのです

やがて繁殖の季節もやってくるのでしょう

インドのゾウは動物園のゾウように

ただ保護されているだけじゃないんですね

神聖視され(ガネーシャ神は人間の身体にゾウの頭をもっている)

人間と一緒にお祭りなど行事にも参加(模様と花輪で飾られる)

森で重労働の手伝いもする

とはいえ、同じ国立公園内にある保護施設

ボマンを見つけたラグが駆け寄って来る

たまらないですね(笑)

いくつになっても子どもは子ども

3歳になったアンムにも

やがて旅立つ日がやって来るのでしょう

フサフサした前髪が長いアンム

ボマンとベッレ夫人はその前髪を撫で、可愛く結んであげるのです

 

誰にでも天から与えられた仕事が、宿命がある

この森で暮らす素朴で純粋な人々にも

自然を守りながら、野生動物と共に暮らすという

使命が与えらえているのです

それに答えた時、幸福が待っている

(成功か失敗かは問題じゃない)

 

人間より野生動物が劣ることは一切ない

シンプルでわかりやすく

自然も、動物も、人間も最大限に美しく描かれた

しかもインドでしか作れない映画

ちなみにヒンドゥー教ガネーシャ神は

日本の聖天様(歓喜天と同じ起源をもっている

どんな願いも叶えてくれる万能の神様

 

そのかわり、感謝の気持ちがなかったり

半端な信仰心だと猛烈に怖い

とんだしっぺ返しにあいますのでご注意を

年に1度は誠心誠意の気持ちを込めてお祈りください

 

 

【解説】Netflix () 式ページより

2022年齢制限:7+40分自然・生態系ドキュメンタリー

南インドで野生の象の保護に人生をささげる夫婦、ボムマンとベリー。親を亡くした子象ラグとその親代わりとなった2人が築いた、唯一無二の家族のきずなを映し出す。

2023アカデミー賞ノミネート

カルティキ・ゴンサルヴェス監督によるネイチャードキュメンタリー。

 

アルゼンチン1985 〜歴史を変えた裁判〜(2022)

原題は「Argentina, 1985

1976年から1983年まで続いた独裁政権(汚い戦争)で

アルゼンチンを支配した軍事政府のメンバーの

司法裁判(フンタス裁判)の再現ドラマ

 

アルゼンチンの歴史を知らなくても、法律に詳しくなくても

わかりやすく、感情移入できると思います

映画としてもサスペンス要素があって面白い

法のうえでは上級も下級も平民も国民は平等

忖度など一切ありません

日本よりよほど三権分立している

 

しかも、政府高官に逆らえば出世できない

クビにされるのレベルではないのです

家族が誘拐されるかも知れない、殺されるかも知れない

それでも立ち向かうって、本当に強い信念と

勇気がないと出来ることではありません

汚い戦争時代、不当に逮捕・監禁・拷問された被害者は3万人以上

行方不明になった人たちも多くいます

アルフォンシン政権が、それらの指導者たちを逮捕するため

検事に任命したのはフリオ・セザール・ストラッセラと

ルイス・モレノ・オカンポ副検事

(後に最初の国際刑事裁判所の主任検察官になる)でした

フリオは裁判未経験のルイスと組むのを不安に思いますが

逆にそれがよかった

若く正義感があり、なにより「しがらみ」がない

 

数千人の被害者や目撃者から証言を集めるための「失踪委員会」でも

ルイスと同じように軍事政権下での「なあなあ」な仕事に不満を持っていた

若いメンバーを採用することにします

ハイライトは、拷問された当事者や家族による証言シーン

拷問は妊娠した女性でもおかまいなし

何の証拠もない冤罪、いくら拷問されても答えられるはずがない

軍や警察もそれはわかっている

彼らも最初は命令され

自分を守るためやるしかなかったと思うんですね

でもアウシュビッツと同じ

やがて感覚は麻痺し、被害者をひざまずかせ奴隷のように扱い

権力をふりかざす快感を覚えてしまったのです

恐怖を与えることによる支配

フリオとルイスはそのことを

軍の指導者の指示により行われたという証拠を掴むため

過去資料を全て調べることにします

ファシストによる非道な軍事政権下であっても記録は記録

日本のように黒塗りされてはいませんでした(笑)

準備に準備を重ね、ついに裁判の初日

裁判所爆弾を仕掛けたという脅迫電話があり

弁護士チームは安全が確認されるまで

裁判を無期限で延期することを主張します

それは永遠に裁判が行われない可能性を意味していました

それだけは断じて避けなければならない

フリオの訴えを裁判官は承諾し裁判は決行

裁判官がマトモな人でよかった()

クライマックスの最終論告のスピーチは感動

法の下の平等をいかに訴えるか

どんな政府高官あろうと罪は償わなければいけない

 

結果は、ホルヘ・ビデラ将軍とエミリオ・マッセラ提督に終身刑

ロベルト・ヴィオラ将軍に17

アルマンド・ランブルスキーニ提督に8

オーランド・アゴスティ将軍に4年半

他は無罪放免となります

全員終身刑を目指していたフリオは落ち込みますが

息子が「やったね」と励まします

「次は全員終身刑だ」

 

その言葉に、フリオは上訴することを決める

そこで映画は幕を閉じますが

2006年、元将軍で警察長官ラモン・キャンプの右腕だった警察官

ミゲル・エチェコラッツが終身刑の判決を受けた直後

裁判で証人として発言したフリオは突然姿を消し

未だ行方不明のままだそうです

 

 

【解説】映画.COMより

1985年のアルゼンチンであった軍事独裁政権の弾圧に対する裁判を映画化したリーガルサスペンス。フリオ・ストラセラ検事、ルイス・モレノ・オカンポ副検事、そして法を信じる若者たちが一丸となり、強大な相手との裁判に挑む姿を描いた。
1976
年のクーデターによって樹立されたアルゼンチンの軍事独裁政権は、国民に過剰な弾圧を行っていた。政権崩壊後の1985年、弾圧の犠牲者たちに正義をもたらすため、フリオ・ストラセラ検事らは限られた準備時間のなか、脅しや困難にも屈せず、軍事独裁政権の幹部たちの責任を追及していく。
主演は「瞳の奥の秘密」などで国際的にも知られるアルゼンチンの名優リカルド・ダリン。監督は「サミット」などでもダリンとタッグを組んできたサンティアゴ・ミトレ。2022年・第79ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。Amazon Prime Video20221021日から配信。

2022年製作/141分/アルゼンチン・アメリカ合作

 

バビロン(2022)

原題のBabylon」は

メソポタミア地方の古代都市のことで「神の門」という意味

序盤から中盤までとにかくお下品

糞(象も下痢をするのか)尿、ゲロ、クスリ

セックス、SM、綺麗な裸と肥満男の裸と小人症の裸

ポップコーンを買って鑑賞するのは

少し考えたほうがいいかも()

テキストになっているのは

「ハリウッド・バビロン」という(信憑性のない)ゴシップ本

サイレント時代の悪声の人気女優を描いたミュージカル「雨に唄えば

ポルノ映画スターの名声と転落を描いた「ブギ―・ナイツ」

ラストは「ニュー・シネマ・パラダイス

しかも50年代の映画館の回想シーンで

近代の映画まで思い出に蘇るというサービスぶり()

ジャック(ブラッド・ピット)のモデルは

トーキーになり声が高過ぎることで人気が落ち自殺した

ダグラス・フェアバンクスジョン・ギルバート

ネリー(マーゴット・ロビー)はサイレント期のセックス・シンボル

アルコール、ドラッグ、ギャンブル、セックスなど

多くのスキャンダルで世間を騒がせたクララ・ボウ

レディ・フェイ(リー・ジュン・リー)はアンナ・メイ・ウォン

トランペットの名手シドニー・パーマー(ジョヴァン・アデポ)は

俳優として役を演じながら、同時に自分たちの音楽も演奏した

デューク・エリントンルイ・アームストロング

エセル・ウォーターズ、ベッシー・スミスらから

インスピレーションを受けたそうです

デイミアン・チャゼルのジャズ愛は本作でも健在

ツウのオールドファンならこの説明だけで

映画を見なくても内容が想像できますね()

サイレント時代は屋外の同一のスタジオで

何本も同時に映画撮っていたとか

火事が起こっても撮影を続けたとか

いかに撮影が命がけであったとか

知識で知っていたことでも、映像で見れるのはやはり面白い

それからたった10年で機材の数も増え部屋は大きく防音になり

さらに10年でカラーになり、シネマスコープになり

ベン・ハー」のような超大作が撮られたのですね

ただテンションアゲアゲなパリピなシーンと

ブラックなギャグ

鳴り響くBGMが延々と「189分」も続くので(笑)

疲れるのは確か

見世物小屋のシーンは丸々カットしてもよかったかも

(いちばん驚いたのはワニのシーンだったけど 笑)

正直「ラ・ラ・ランド」の批判を踏まえた

人種やLGBTに配慮しすぎが少々あざといし

商業的なウケ狙いもこれでもかと感じられ

アメリカ本国では興行的に大コケしたそうですが

デイミアン・チャゼルはまだまだ若い

作中でブラット・ピットが舞台女優で何人目かの妻に伝えたように

「映画は観客がいちばん大事」というスタンスを忘れずに

次回作に取り組んで欲しいと思います





【解説】映画.COMより

ラ・ラ・ランド」のデイミアン・チャゼル監督が、ブラッド・ピットマーゴット・ロビーら豪華キャストを迎え、1920年代のハリウッド黄金時代を舞台に撮り上げたドラマ。チャゼル監督がオリジナル脚本を手がけ、ゴージャスでクレイジーな映画業界で夢をかなえようとする男女の運命を描く。
夢を抱いてハリウッドへやって来た青年マニーと、彼と意気投合した新進女優ネリー。サイレント映画で業界を牽引してきた大物ジャックとの出会いにより、彼らの運命は大きく動き出す。恐れ知らずで美しいネリーは多くの人々を魅了し、スターの階段を駆け上がっていく。やがて、トーキー映画の革命の波が業界に押し寄せ……。
共演には「スパイダーマン」シリーズのトビー・マグワイア、「レディ・オア・ノット」のサマラ・ウィービング、監督としても活躍するオリビア・ワイルド、ロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリーら多彩な顔ぶれが集結。「ラ・ラ・ランド」のジャスティン・ハーウィッツが音楽を手がけた。

2022年製作/189分/R15+アメリ

 

モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021)

原題はEnnio」(エンニオ)

500以上の映画やテレビの音楽を手がけ

20207月にこの世を去った、作曲家エンニオ・モリコーネの偉業を

ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ

解き明かすドキュメンタリー

ツウのムービーファンからの評価が高いですね()

ぎりぎりラスト上映で鑑賞してきました

まず最初に映し出されるのがモリコーネの書斎

壁一面を覆いつくす書籍、山のように積まれた紙

楽家の部屋じゃない、まるで数学者(笑)

常に難問を解こうとしていて

答えが見つからないときは床に寝ころび、謎の体操(笑)

普通才能ある音楽家は、監督から駄目出しされたら

プライドが許さず仕事を降りてしまうのでしょうが

モリコーネは違う、ひとつの答えにこだわらない

まさしく音楽の学者であり研究者

B級映画だろうが

ホラーだろうが

無名の新人監督だろうが、どんな仕事も引き受ける

しかもセンスが良くて痺れる

どんな不調和音も、いちいちかっこいいのです

(モリコーネはゴミと言ってる 笑)

唯一のこだわりはひとつの映画はひとりの音楽家が担当する事と

オリジナル曲であるということ

しかも自分の作曲した曲をすべて覚えているのです

これだけの天才だと孤独に悩んだり

アルコールや薬物に溺れたり

精神的におかしくなる音楽家が多いものですけど

モリコーネは苦労人なんですね

そして支えてくれる奥方がいた

モリコーネのバリアとなり彼をあらゆる敵から

守っていたのです(笑)

ジョン・ウィリアムズが、ハンス・ジマーモリコーネを語る

いかにその映画のワンシーンワンシーンを自分のものにして

完璧な曲を作り出すか

天才同士にしかわからない産みの苦しみ

クラッシュが、メタリカが、モリコーネをライブで歌う

ジェイムズ曰くモリコーネメタリカ・ファミリー」 )

これも偉大な音楽家なら怒りそうなものだけど()

モリコーネは歓迎

音楽は生き物

常に成長し、変化していくものなのです

不満はといえば、日本未公開のイタリア映画のなんて多いことか

「荒野の用心棒」以前は、ほぼ知らない作品ばかり

(しかもなぜかグロいシーンばかり 笑)

日本の映画会社のシステムは、ホントどうにかしたほうがいいな

アカデミー賞もだけど)

でもさすがのジュゼッペ・トルナトーレ

最後には数々の名場面と名曲に幸せな気持ちになれます

できれば謎の体操の意味も解き明かして欲しかったけど(笑)



【解説】映画.COMより

ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督が、師であり友でもある映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネに迫ったドキュメンタリー。
1961
年のデビュー以来、500作品以上もの映画やテレビの音楽を手がけ、20207月に惜しまれながらこの世を去ったモリコーネ。「ニュー・シネマ・パラダイス」「荒野の用心棒」「アンタッチャブル」など45作品にも及ぶ傑作から選ばれた名場面や、最高の音響技術で再現されたワールドコンサートツアーの演奏、クエンティン・タランティーノクリント・イーストウッドウォン・カーウァイオリバー・ストーン錚々たる顔ぶれの監督・プロデューサー・音楽家へのインタビューを通して、モリコーネがいかにして偉業を成し遂げたのかを解き明かしていく。
さらに、モリコーネのプライベートライフやコメント、初公開のアーカイブ映像などにより、モリコーネのチャーミングな人間性にも迫る。2021年製作/157分/G/イタリア

西部戦線異状なし(2022)

原題は「IM WESTEN NICHTS NEUES」(西洋で新しいことは何もない)

世界で最悪の老害は戦争

 

今もプーチンキリル総主教やその側近のせいで

その戦争に加担している国々のせいで

ロシアとウクライナの将来ある若者が死んでいるのです

将来は医者に、技術者に、芸術家になっていたかも知れない若者

 

1930年版「All Quiet on the Western Front アメリカ映画

タイトルの、繰り返される無線の声は有名なラストシーン

第一次世界大戦開戦から3年目の1917

序盤の愛国心ある老教師のスピーチに感銘を受けた

パウル、アルベルト、フランツ、ルートヴィヒの17歳の学生4人が

ドイツ帝国陸軍に入隊するというプロットはほぼ同じ

それが戦死者の軍服とも知らず嬉々として受け取る

だけど勝戦国にも敗戦国にも、名誉の死などひとつもない

むしろ犬死といっていい

年寄りの政治家が暖房の効いたテーブルでシェフのご馳走を食べながら

戦死者を英雄だとほざき、メディアをコントロールしているだけ

戦場の現実を知らない国民はそれを真に受け

純粋で幼い少年たちが、国のため、栄誉のため

男であることを見せるため、志願兵になる

母親だけはいつの時代もまとも

「あなたに戦争は無理」

戦場に就いて初めて母の言葉の意味を知るのです

死ぬか生きるか、殺すか殺されるか

だけど、そんな間にも楽しいことはあった

攻撃のないときの戦友とのつかの間の団らん

盗んだガチョウを皆で食べる

同じ頃、マティアス・エルツベルガー(ドイツの左派的政治家←のちに右派に暗殺)は

連合国と休戦協定をしようとしていました

しかし連合国最高司令官のフェルディナン・フォッシュは交渉の余地を与えず

72時間以内に連合国の条件を受け入れるよう通告します

それは無条件降伏を意味するものでした

パウル・フォン・ヒンデンブルク元帥は連合国の条件を受け入れ

1111日午前11、ドイツと連合国が休戦する協定がなされます

戦争終結に浮かれ、酒を飲み祝うドイツ兵

それは連合軍も同じ

しかしフリードリヒ将軍だけはまだドイツの勝利と名誉を信じていたのです

兵士たちを集め

1045分、連合軍へ攻撃するよう命令します

従わない者は銃殺

どちらにしても兵士を待っているのは死しかないのです

本作が他の戦争映画と違うのは

戦友、仲間というテーマがメインなこと

もちろん何より家族が大事だし、敵を倒すことが目的

でも、いまここにいる親友の死がいちばん辛いということ

それは敵兵に対しても同じこと

言葉が通じなくても家に帰りたい気持ちは同じ

彼らにも彼らを待つ家族がいるのだから

そして本作が教えていることは

勝戦国が敗戦国から摂取する仕組みを無くさない限り

戦争は無くならないということ

(これ国連に言っていいほど、我ながら名言)

 

 

透明で青みがかった美しい映像

北の冬を知っている人ならわかる

雪は青い、澄んだ湖のように

そして物凄く寒い、氷点下の体感

その美しさがより哀しみを増す

私の予想では、ドイツ映画なので(笑)

作品賞は難しいと思うのですが

アカデミー賞がノミネートしただけでも成長したがな)

美術賞、音響賞、視覚効果賞あたりは

アバター」と競うのではないでしょうか

カメラは素晴らしい、撮影賞は受賞するかも知れません

ほかの作品は見ていないのでわかりませんけど(笑)

毎年言ってるけど、日本の映画会社には

アカデミー賞前にノミネート作品を上映してほしいもの

どういう伝統かはわからないけど、これも老害でしょう(たぶん)



 

【解説】ウィキペディアより

西部戦線異状なし』(ドイツ語:Im Westen nichts Neues)は、エーリヒ・マリア・レマルクによる1929年の同名小説を原作とした2022年のエピック・反戦映画である。エドワード・ベルガー(英語版)が監督を務め、フェリックス・カマラー、アルブレヒト・シュッフ、ダニエル・ブリュール、ゼバスティアン・フールク、アーロン・ヒルマー、エディン・ハサノヴィッチ、デーヴィト・シュトリーゾフらが出演している。第一次世界大戦末期を舞台とし、理想に燃える若きドイツ人兵士のパウル・ボイメルを描いている。仲間と共にドイツ軍に入隊したボイメルは戦争の現実を目の当たりにし、英雄になるという当初の希望を打ち砕かれながらも生き残るために最善を尽くす。映画では原作小説にはない休戦交渉を描いたパラレルストーリーが追加されている。

西部戦線異状なし』は2022912日にトロント国際映画祭で初上映された後に20221028日にNetflixでストリーミング配信された。20228月に第95アカデミー賞国際長編映画賞のドイツ代表作としての出品が発表され、124日にノミネートが決定。同時に作品賞を始め、脚色賞、音響賞、歌曲賞、視覚効果賞、美術賞にもノミネートされている。

映画は原作の反戦メッセージに忠実であるとして批評家から高評価を得た。またナショナル・ボード・オブ・レビューのインターナショナル映画トップ5に選ばれた。