縛り首の木(1959)

f:id:burizitto:20210727114124j:plain

原題は「THE HANGING TREE (ぶら下がりの木)

テーマは「金よりも、愛や善人の命のほうが尊い」だと思うのですが

単純明快な西部劇というよりは、かなりの異色作

どちらかといえば難癖のある作品が好きな方におススメ(笑)

f:id:burizitto:20210727114237p:plain

まずは主演俳優が見ごたえあり

悪役カール・マルデンの、まあ憎たらしいこと

狂信的な役やらせたらジョージ・C・スコットの右に出る者もいない

笑わないゲイリー・クーパーは、この2年後に

癌で亡くなっていることを考えると

(「コルドラへの道」(1959)も極限状態で任務を果たす男性像だった)

身体的に本当に辛かったのかも知れません

f:id:burizitto:20210727114220j:plain
モンタナにある新興の金鉱地にやってきた

医師のジョー(ゲイリー・クーパー)は丘の上の小さな小屋を買い

診療所を開きます

 

そこで町で盗みを働き、顔役のフレンチ(カール・マルデン)に

肩を撃たれた青年、ルーン(ベン・ピアッツア)を助け

治療費を貰う代わりに助手として働かせることにします

この 若き日のポール・ニューマンにちょっと似ている

ベン・ピアッツアという俳優が妙に色気があって

一瞬隠れゲイ西部劇かと思ったのですが(笑)

f:id:burizitto:20210727114257j:plain

ジョーはルーンだけではなく

治療費の払えない、貧しい人たちも無料で診察します

町で呪術的な治療をしてきたジョージ(ジョージ・C・スコット)は

ジョーは悪魔だと人々に説教し始めますが

この時点ではまだ人々は彼の話に耳を傾けていません

 

そんなある日、フレンチは襲われた駅馬車の生存者で

日差しによって目が見えなくなり、火傷を負った

エリザベス(マリア・シェル)というスイス人の女性を助け

ジョーは雑貨屋の離れに彼女を入院させることにしました

f:id:burizitto:20210727114312j:plain
それからというもの、フレンチは自分が命の恩人なのだと

恩着せがましくエリザベスを狙い、近寄ろうとします

ジョーとルーンはエリザベスを守ろうとしますが

ご婦人達までもが、異国の美女に(夫が浮気するのではないかと)嫉妬心を燃やす

ジョーがエリザベスの治療費を、身体で払って貰ってると

根拠の無い噂まで流れます


確かにジョーは聖人なわけではありませんでした

カードゲームで鉱山の権利書を手に入れたり

妻が実の弟と浮気しているのを知り、焼き殺した過去がありました

悪い噂が流れても当然だったのです

f:id:burizitto:20210727114329j:plain
だからエリザベスがフレンチでも、ルーンでもなく

ジョーに思いを寄せても

ジョーは受け入れることが出来なかったのです


やがて回復したエリザベスは、この町で暮らすため金脈を探す決意をします

家宝の宝石(ブローチ)を質に入れた資金で

(宝石は偽物、雑貨屋に頼んでお金を出したのはジョー)

フレンチとルーンを雇い砂金を見つけるための水門を組みます

だけどなかなか見つからない金に、資金はかさみ

フレンチのストレスはマックス

f:id:burizitto:20210727114650j:plain

フレンチもちゃんとした目的をもって働いている時は

真面目でいい奴なんだけどな

ちょっとした失敗や不平不満があると

すぐに傲慢な男になってしまう

 

もう金は見つからないと諦めかけたとき

エリザベスは嵐で倒された大木の根に金脈を発見

フレンチと共に歓喜したものの

f:id:burizitto:20210727114348j:plain

フレンチはすぐに町に乗り込み、金をばらまき

酒場でウイスキーを振舞う

そうして町の人々の信頼を受けるのですが

そのまま英雄気取りで贅沢な暮らしでもしていればいいものを

またもやエリザベスを襲おうとし、ジョーに撃たれてしまいます

f:id:burizitto:20210727114417j:plain
フレンチが殺され、今度は呪術師の言葉に扇動され

暴徒となってしまう人々

町はずれの「縛り首の木」(縛り首台ではない=裁判を通さない不法な死刑)に

ジョーを吊るすことにします


だけどジョーは後悔していない

妻と弟を殺した自分には、不名誉な死こそ相応しい

そう覚悟を決めていたのです

f:id:burizitto:20210727114159j:plain
しかしジョーの首に縄がかけられたとき

エリザベスはジョーを救うため、ジョーの命を引き換えに

金塊の入った袋を投げ捨てます

金脈見つかった鉱山の権利書も、風に吹かれなびいていく


町の貪欲な人々は、ジョーのことも呪術師のことも忘れ

我先にと金塊に群がり、権利書を追いかける

f:id:burizitto:20210727114820j:plain
金がもたらすものとは、怒りや、略奪や、殺しばかりなのか

ならばそんなものは全て捨ててしまおう

そのことに気付いたエリザベスの、純真な愛を

ついにジョーは受け入れる決意をするのでした

f:id:burizitto:20210727114504j:plain
それはそれで「愛は金で買えないが、命は金で買える」という

下衆なラストなのですが(←そう思うのはオマエだけだ)


あとはエンディング曲が全て説明してくれます(笑)

f:id:burizitto:20210727114852j:plain

~死にかけて初めて生きることを知った 俺の場合はそうだった

金と引き換えに自由を手にし 俺は縛り首の木を後にする

愛する人と肩を並べて

そのとき初めて気が付いた あの縛り首の木は新たな命の木だったと

俺にとっての新たな希望 俺にとっての新たな愛

縛り首の木 縛り首の木 縛り首の木~♪



【解説】allcinema より

D・デイヴィスの文学趣味濃厚な、ドンパチのほとんどない異色のウエスタン。ある金鉱の町で、自らの過去にさいなまれつつも、医師としての務めを果たしたことから窮地に追い込まれていく主人公をG・クーパーが渋く好演。彼の過去を知る女にM・シェル、彼が助けて助手にする青年にB・ピアザ、彼らの理解者である町の有権者にK・マルデンと、助演者たちの顔ぶれも実に60年代的に、リアル志向になっており、このジャンルの過渡期を現している

七人の無頼漢(しちにんのならずもの)(1956)

f:id:burizitto:20210723192124j:plain

原題は「Seven Men From Now」(今から7人の男)

人殺しをした7人の男が追い詰められて、ひとりひとり殺されていく・・

なんとオープニング主題歌でネタバレ(笑)

そのわりにはリー・マーヴィン以外のならず者に全くインパクトなし(笑)

 

そんなご都合主義のツッコミ系ですが

わずか78分で、西部劇のエッセンスを全て詰め込んでみせたのは

なかなかの職人技

f:id:burizitto:20210723192148j:plain
冒頭、洞窟で野宿するふたり組の男に

チリカウア族に馬を奪われ、雨宿りさせてほしいと現れた男

男は集配所から強盗に金塊が奪われた町から来たと言います

犯人は捕まったのか、訪ねるふたり組

「ふたりは、な」そして男はふたり組を撃ち殺し馬を奪います

(後にも先にも、このシーンがいちばんカッコイイ)

f:id:burizitto:20210723192230j:plain
男が次に出会ったのは、幌馬車が泥にはまり身動きできなくたった夫婦

カリフォルニアのフローラヴィスタに向かうという

グーリア夫妻を助けたストライドランドルフ・スコット)は

グーリア夫妻から旅を同行して欲しいと頼まれます

 

そこに現れたのがストライドを保安官と呼ぶ

マスターズ(リー・マーヴィン)と子分のクリート

そしてマスターズによって、ストライドの過去が少しづつ意味深に

明かされていくのです

f:id:burizitto:20210723192306j:plain
ストライドが選挙に敗れ保安官の職を失ったこと

ストライドの殺された妻がグーリア夫人に似ていたこと

 

こういうハイエナのような役やらせたら、 リー・マーヴィンは一流(笑)

外野から獲物を狙うタチの悪い曲者

だけどどこか本物の極悪人とは一線を引いている魅力があって

チャーミングなのよね

f:id:burizitto:20210723192322j:plain
俺だってグーリア夫人みたいな、器量がよくて料理上手な女と結婚してたら

甲斐性のない旦那より、ずっと頑張って幸せにしてやるのに

ただいい女と、堅気の仕事に縁がなかっただけ

 

一方のストライドも不器用な人間だけど

マスターズと違って女にモテる

それも娼婦とかじゃない、男が妻にしたくなるような美人にばかり(笑)

これじゃあマスターズが僻むのもわかるよな(笑)

f:id:burizitto:20210723192337j:plain
マスターズは度重なる嫌がらせで、ストライドを本気で怒らせ殴られます

腹いせに一足先に目的地の町に入り、主犯格のボディーンと会い

ボディーンが(旅の途中でお金に困っている)グーリアに

金塊の運び屋を頼んでいたことを知ります

f:id:burizitto:20210723192242j:plain

もちろんグーリアはボディーンから頼まれた荷物の中身が

強奪された金塊だとは知りませんでした

ストライドは金塊の入った箱を預かり、町には行かず逃げろと忠告します

お金より、奥さんと命のほうを大事にしろと

 

しかしグーリアは町の保安官事務所に行く決意をします

彼だって、妻にいいところを見せたかったのです

f:id:burizitto:20210723192418j:plain
町に入ったグーリアは、案の定簡単にボディーンに撃ち殺されてしまう

そしてボディーンはストライドがいる渓谷に向かいます

が、ボディーンを仕留めたのはストライドではなく

最初から金塊だけが目的のマスターズでした

 

マスターズはストライドに、グーリア夫人が寡婦になったと伝え

金塊を奪おうとしますが、ストライドの銃声のほうが一瞬早かった

f:id:burizitto:20210723192433j:plain
ストライドは奪われた金塊を持ち主に返し

たとえ補佐でも、再び保安官として働くとグーリア夫人に告げます

 

そしてグーリア夫人は

夫と行くはずだったフローラヴィスタへの出発を突然取りやめ

しばらくこの町に滞在する決意をするのでした

f:id:burizitto:20210723192455j:plain
特に残るものはないけれど、おひとりさまの隙間時間に

サクッと見るのにはちょうどいい

旦那が死んだばかりで不謹慎な話にもかかわらず

粋なエンディングにも、妙に納得させられてしまった(笑)

f:id:burizitto:20210723192512j:plain
さて、今日の名言

人妻の「恋に落ちたからよ」

 

使えるか?

コレ使えるか?(笑)

 

 

【解説】KINENOTEより

愛妻を殺した7人の無頼漢を追う元保安官が主人公の西部劇。バート・ケネディの原作・脚本によって「灼熱の勇者」のバッド・ボーティカーが監督、「中共脱出」のウィリアム・H・クローシアが撮影監督を担当した。作曲指揮はヘンリー・ヴァース。主演は「勇者の汚名」のランドルフ・スコット、「密輸空路」以来久々のゲイル・ラッセル。「攻撃」のリー・マーヴィン、テレビ・スターウォルター・リードらが助演。

7人組の無頼漢に愛妻を殺され、大金を奪われた元保安官ストライドランドルフ・スコット)は、一味を追って馬を進めるうち、幌馬車に乗ったジョン・グリーアとその妻アニイ(ゲイル・ラッセル)と出会い、カリフォルニアの宿場まで同行することになった。駅馬車中継所に着いたストライドは、マスターズとクリントという2人の男と知り合い、彼らも加えて一味の潜むと思われるフロラ・ヴィスタの町へ向かった。翌朝、一行はインディアンに襲われる牧童らしい男を助けるが、インディアンが去って間もなく折角助けた男をマスターズは射殺した。彼は、この男こそ7人組の1人だと、不気味な笑みを浮かべてストライドに告げた。その夜の露営で、マスターズは、しつこくアニイに戯れ始めた。怒ったストライドはマスターズを殴りクリントとともに追出した。そのマスターズはフロラ・ヴィスタの町に入り7人組の首領ボディーンと知り合った。ボディーンは、奪った金をグリーアの幌馬車で運んでくることを漏らし相棒になれとボディーンに奨めた。が胸に一物あるボディーンは即答を避けた。一方、ストライドは単身フロラ・ヴィスタに向かったが、途中ボディーンの部下2人に狙われ相手を倒すが自分も重傷を負った。後から着たグリーアとアニイに彼は助けられたが、親身に介抱するアニイは、夫にすら示さなかった愛情にあふれていた。ところが馬車の中でストライドは、グリーアがボスのボディーンに大金を届ける途中だとアニイに語る言葉から総てのカラクリを知った。開き直ったストライドは、7人組の残りを引寄せるため、金が欲しいならここまで来いとボディーンへの伝言を持たせ、グリーアを町にやった。町で、事の次第を告げたグリーアは直ちにボディーンに射殺された。そして間もなく部下を連れて現れたボディーンとストライドとの間に戦いが始まった。が、ボディーンは後から来たマスターズに射たれ、部下は逃げ去った。ほっとしたストライドがマスターズの助太刀を感謝しようと思った一瞬、そのマスターズが金を寄こせと迫った。大金を独り占めにしようとするマスターズは遂に馬脚を現したのだ。睨み合いの数分、一瞬早くストライドの抜打はマスターズを倒した。家へ帰るストライド。アニイも彼との愛の巣を求めていくだろう。

地獄への逆襲(1940)

f:id:burizitto:20210720200213j:plain

原題は「The Return of Frank James(フランク・ジェイムズの帰還)

ジェーシー・ジェイムズ兄、フランク・ジェームスのその後を描いた

地獄への道(1939)の続篇

 

主演のフランク・ジェイムズにヘンリー・フォンダ

フォード兄弟にジョン・キャラダインとチャールス・タンネン

鉄道会社の社長にドナルド・ミークなどが同役で出演

f:id:burizitto:20210720200351j:plain
大きく変わったのは、監督がヘンリー・キングから

フリッツ・ラングになったこと

 

前作からのコメディタッチを残しながらも

悪義も正義も、平等に陪審員制度で裁かれるべきという

社会派・・

f:id:burizitto:20210720200447j:plain

までいけてない(笑)法廷ドラマ

 

1861年から1865年にかけて、北部のアメリカ合衆国北軍)と

南部のアメリカ連合国(南軍)の間で行われた南北戦争(内戦)

 

映画の舞台となるミズリー州では

断固としてアメリカ合衆国に残留しようとした北軍派と

あくまで南部支持感情を捨てることの出来ない南軍派が

まっぷたつに分かれてしまいます

f:id:burizitto:20210720200341j:plain

しかも州内で行われた戦闘は、南軍の兵士は正規軍ではなくゲリラ

「市民兵士」(あるいは暴徒)でした

そのなかのひとりが、ジェシー・ジェイムズ

戦後になっても北部(の資本主義)と戦い続けます

 

兄のフランクは弟ほど有名ではなく、記録も少ないので

ほとんどが脚色されたフィクションだと思います

f:id:burizitto:20210720200436p:plain
冒頭、使用人(黒人奴隷)のピンキーが「フランク様、フランク様」と

何度も語りかけます

すでに強盗団から足を洗い、名前も素性も替えていたフランクは

「フランクは死んだ」「ベン様となぜ言えない」と何度も説明しますが

正直者のピンキーは長年の習慣を替えられない

f:id:burizitto:20210720200418j:plain
これが後から、フランクが弟を殺したフォード兄弟に復讐するより

不法に逮捕され死刑宣告を受けたピンキーを救うため

自らが自首する、という伏線になるわけです

 

私たちがメディアによって植え付けられた奴隷制度といえば

白人からの一方的な差別や虐待や強制労働、レイプや放火や縛り首

でもそれは(KKKやネオナチように)理想世界を目指す集団や

自分より弱い立場の人間に、暴力や死を与えることによって

f:id:burizitto:20210720200426j:plain

快楽を覚える一部の人間によるものだったのかも知れない

その理由のひとつが白人が黒人(奴隷)や先住民を殺しても

有罪にならないから

 

賞金稼ぎが賞金首を殺しても罪にはならないのも同じ

賞金首が有罪か無罪か冤罪か、証拠がある、無いのにもかかわらず

誰かが誰かに懸賞金を賭けただけで、人が人を殺しにやってくる

f:id:burizitto:20210720200529j:plain

だけど「風と共に去りぬ(1939)のマミーや

ハティ・マクダニエルが黒人初のオスカーを受賞)

 「ドライビング Miss デイジー(1989)で

映画の中の話ではあるものの、その家にとっては使用人も家族の一員

 

対等に意見を言えるのはもちろん、お互い助け合って生きている

ピンキーを死刑判決から救おうと逮捕されたフランクの

弁護人を引き受けた新聞社のトッド少佐は

f:id:burizitto:20210720200537j:plain
ヤンキー(北部の人間)の言ってることのほうが間違ってる

南部の人々から、土地や財産や生命を奪ったのはヤンキーのほう

フランクが強盗した鉄道会社の金庫の警備員を殺したのも

きちんと調べればフランクでないことが証明されるはず

その言葉は裁判官や陪審員に届きます

 

フランクは全員一致で無罪判決

法廷に姿を見せたボブ・フォード(フォード兄弟 弟)を

(兄チャールズは作中では逃走中に崖から落ちて死亡←実際は鬱による自殺)

すぐに追ったフランクでしたが

f:id:burizitto:20210720200544j:plain
裁判所の前で待っていたクレムと相撃ちになり

クレムは息を引き取ってしまい

ボブ・フォードは馬小屋でのフランクとの接戦で

捕らえられるのを恐れ、自ら命を落とします

(結局フランクは、誰も殺さなかったということ)

 

このような復讐劇に、無鉄砲な若者や

正義感強い女性が邪魔に入るのはよくあるパターンですが

こちらは両方(笑)

f:id:burizitto:20210720200250j:plain
肝心な所やピンチに限って、大人になったつもりの少年クレム

一流のジャーナリスト気分満々の大学生エレノアが

邪魔に入ることで、ストーリーを面白くしています

ラスト、やっとフランクに訪れた本当の平和

 

これからは小さな農場で、誰にも知られずつつましく生きていく

もしかしたらその場所に

若くて美しい女性ジャーナリスト、エレノア(ジーン・ティアニー)が

来きてくれるかも知れない、という希望を抱いて

f:id:burizitto:20210720200324p:plain
ハリウッドに迎えられてからは

ジャンルを問わず、多くのB級作品を撮ったフリッツ・ラング

 

このような作風に批判したファンも多くいたと思いますが

もしかしたら、本人は生きるためだけでなく

案外楽しんで映画作りをしていたかも知れません(笑)

 

【解説】KINENOTEより

ジェシー・ジェームズの半生を描いた「地獄への道」の続編、1940年作品。前作同様ダリル・たF・ザナックが製作指揮に当たり、サム・ヘルマン(「荒野の決闘」の潤色)のオリジナル・シナリオを、「扉の影の秘密」のフリッツ・ラングが監督している。撮影はジョージ・バーンズ(「レベッカ」)とウィリアム・V・スコール(「ジャンヌ・ダーク」)の協同。「地獄への道」と同じくヘンリー・フォンダがフランクを、ジョン・キャラダインが敵役ボブを演ずる他、「夫は偽者」のジーン・ティアニー、かつての子役ジャッキー・クーパー、「ジェニーの肖像」のヘンリー・ハルらが共演。

ジェシーと共に西部を荒し回っていたフランク・ジェームズ(ヘンリー・フォンダ)は、弟と別れてから正道に戻り、変名で一介の農夫として働いていた。ある日彼は、弟がかつての仲間ボブ・フォード(ジョン・キャラダイン)とその弟に殺されたことを聞き、更に彼らが絞首刑を免れて保釈されたと知って、固く復讐を誓った。彼は仲良しのクレム(ジャッキー・クーパー)と鉄道駅を襲い資金を獲得しようとしたが、クレムが誤って人を殺し、不当な裁きを受けようとしたので、彼を伴って逃走した。デンヴァで、彼は新聞記者の娘エリアナジーン・ティアニー)から、世間は彼がすでに死亡していると信じていることを聞き、公然とフォードを探すことになった。やがて彼は目指す仇の兄弟に巡り合い、烈しい撃ち合いで弟を殺すことができたが、当のボブは取逃した。デンヴァに戻ると、彼の召使の黒人ピンキーが駅の殺人犯人として絞首刑に処せられようとしていた。フランクは自分の素性を明かして黒人の無罪を証明、自首して出たが、この時ボブと再会、めでたく本懐とげて、心安らかに縛についた。

地獄への道(1939)

f:id:burizitto:20210718201919j:plain

原題は「JESSE JAMES」(ジェシー・ジェイムズ)

日本では1951年公開

続編「地獄への逆襲」(1940)とともにヒットしたそうです

 

1866年~列車や銀行を襲い殺人を繰り返したジェイムズ兄弟

特に弟のジェシーは、敬虔なキリスト教徒で甘いマスク

弱者を救い、強者に立ち向かう「ロビン・フッド」のような存在として

今でも人気があるそうです

f:id:burizitto:20210718201931j:plain

映画のほうはかなり同情的な内容から始まります

横暴な鉄道会社にタダ同然で土地を奪われ

立ち退きされられてしまう農民たち

f:id:burizitto:20210718201950j:plain

ジェシータイロン・パワー)と兄のフランク(ヘンリ−・フォンダ)は

組合を作り鉄道会社に立ち向かおうとしますが

鉄道会社から雇われたパーシーとその部下は

暴力で農民たちを脅し、ジェイムズ兄弟の逮捕状まで入手するのです

 

f:id:burizitto:20210718202048j:plain

新聞社のコッブはふたりに身を隠すように忠告しますが

兄弟の留守中、パーシーに襲われた母親が心臓発作を起こして横死してしまいます

恋人のジー(ナンシー・ケリー)から報せを受けたジェシ―は

復讐のためパーシーを射殺し、強盗団を組織

セント・ルイス・セダリア鉄道の処女運転を襲うことにします

 

f:id:burizitto:20210718202113j:plain

どうしてアメリカでは(殺人を含めた)列車強盗や、銀行強盗が英雄扱いされるのか

日本人の感覚としてはよくわからなかったのですが

鉄道会社や銀行に、土地を奪われてきた歴史がひとつにあるのですね

彼らにとっては、奪われたものを奪い返そうとしただけ

f:id:burizitto:20210718202016p:plain

そこで鉄道会社のマッコイ社長は、ジーを呼び出し

ジェシーが自首さえすれば刑を軽くする、数年で出所して一緒に暮らせると約束します

そこでジェシージーは結婚式を挙げ、翌日ジェシーが自首すると

社長はジェシーに死刑の宣告をします

刑を軽くするなど、最初から嘘だったのです

 

f:id:burizitto:20210718202122j:plain

ジェシーは憤り、怒り狂った兄のフランクはジェシーを脱獄させる

もう誰も信じられない

彼らの犯罪はますます冷酷なものになっていき

5州を股にかけて鉄道や銀行を襲い、その名を知られていきます

しかし有名になればなるほど、強力な追っ手もやってくる

 

f:id:burizitto:20210718202028j:plain

子どもを産んだジーは不安な生活に耐えきれなくなり

やがて故郷に帰ってしまいます

妻に去られたジェシーは自暴自棄になり、仲間に不安を与え

強盗の計画も失敗してしまう

 

そんな時、ミズリー州がジェシーの首に1万ドルの懸賞金を賭けたのです

 

序盤は新聞記者のコメディっぽいシーンや

ジーと保安官(ランドルフ・スコット)のほのぼのとした展開もあり、かなり人情的

ジェイムズ兄弟が鉄道会社相手に、戦いを挑むプロセスも感傷的でわかりやすい

 

f:id:burizitto:20210718202006j:plain


後半は巨大組織の横暴さや、金銭社会に立ち向かうという大義より

自分たちもただの無法者になってしまう

友情や思いやりは消え、裏切りが生まれる

 

史実でもカットするところは大幅にカットし

脚色するところはしっかり脚色

西部劇というよりは、ヘンリー・キングらしい人情ドラマ

それに100分でまとめているので、だれることがない

f:id:burizitto:20210718202302j:plain

最初は違和感あった、タイロン・パワーとヘンリ−・フォンダも

最後はちゃんと兄弟に見えるから不思議(笑)

 


【解説】KINENOTEより

「頭上の敵機」と同じく、ダリル・F・ザナック総指揮、ヘンリー・キング監督作品で、「彼と人魚」のナナリー・ジョンソンが共同製作者兼脚本担当者として参加している1939年度作品、撮影は「善人サム」のジョージ・バーンズ、音楽はルイス・シルヴァース。主演は「狐の王子」のタイロン・パワー、「科学者ベル」のヘンリー・フォンダ、「紅の翼(1939)」のナンシー・ケリーで、「西部の裁き」のランドルフ・スコット、ヘンリー・ハル、「初めか終りか」のブライアン・ドンレヴイ、「駅馬車(1939)」のジョン・キャラディンの他、スリム・サマーヴィル、J・エドワード・ブロムバーグ、ドナルド・ミーク、ジョン・ラッセル、ジョーン・ダウエルが助演している。なお、この映画は「西部魂(1941)」と同じく、テクニカラー映画として製作されたが、輸入されたのは黒白版である。

南北戦争後、鉄道は西へ西へと延び、西部に繁栄をもたらしたが、その背後に多くの運命的な事件が起こった。1876年、セント・ルイス中部鉄道会社はセント・ルイスとセダリア間の鉄道敷設のため農民の汗の結晶の耕地を、只同様の安値で買い始めていた。ジェームズ農場も、鉄道会社のパーシーから無法な言い値の交渉を受け、長男のフランクはパーシーの輩下から乱暴を働かれ、弟のジェスが駆けつけてパーシー一味を追い払った。パーシーはこれを恨みに思い、ジェームズ兄弟の逮捕状を入手して再び農場に行く。兄弟は新聞社を経営するコッブの忠告で一時姿をかくしたが、留守中、パーシーに襲われた兄弟の母親サミュエルス夫人は横死を遂げる。コッブの姪でジェスの愛人だったジェラルダからの報らせを聞いたジェスは、セダリアに乗りこんでパーシーを射殺し、鉄道会社の復讐のため列車強盗団を組織して、セント・ルイス、セダリアのの処女運転列車を襲った。鉄道の社長マッコイはジエラルダに、ジェスが自首すれば刑を軽くするよう取り計らうと申し出たので、ジェスは彼女と結婚式をあげた翌日、シェリフのライトに自首した。しかし、マッコイの証言は掌を返したようなもので、ジェスは死刑に値するといわれる。兄のフランクも憤り、マッコイに果し状を送ると共にジェスの脱獄を助けた。ジェラルダは事の成り行きを深く悲しみ、セダリアの生家に帰る。妻を失ったジェスは一層冷酷になり、銀行・列車を次々と襲い、5州を股にかけて荒した。ミズーリ州知事は懸賞金をかけて彼を追及した。その1万ドルの大金はジェスの子分のボッブ・フォードを裏切らしめ、フォードの手びきによってジェス一味のノースフィールドの銀行襲撃は失敗に終わった。ジェスはジェラルダの元にゆき、カリフォルニアに去って平和に暮らそうと考えるが、フォードに暗殺され、波乱の生涯を終える。コッブは、悪漢ながら同情すべき人間だったジェスのために、ジェームズ農場に彼の碑を建ててやった。

無頼の群(ぶらいのむれ)(1958)

f:id:burizitto:20210718125115j:plain

マカロニ・ウエスタンやアメリカン・ニューシネマの先駆けのような作品で

復讐の鬼の主人公も、グレゴリー・ペックより

いかにもクリント・イーストウッド演りそうな役柄


原作があるということなので

たぶん「罪人を赦す」という宗教的な教えと

怒りや憎しみといった実際の人間の感情の

アンバランスがテーマなのだろう、とは思うんですが

f:id:burizitto:20210718125159j:plain
女性がレイプされたり、真犯人が別人だったという

決してスカッとしない結末を

無理やりハッピーエンドにするのは、やはり違和感がありますし

主人公の気持ちの変化も突然で、伝わらない

(この頃のペックはまだ大根役者と呼ばれている)

f:id:burizitto:20210718125218j:plain
それでもオープニングの音楽からワクワクするし

ブレイク前のスティーヴン・ボイドや、往年の名わき役が揃っているので

エスタン・ファンやオールド・ファンには見る楽しみあり

カメラはレオン・シャムロイ

f:id:burizitto:20210718125132j:plain
アメリカ南西部にあるリオ・アリバという村に

ジム・ダグラス(グレゴリー・ペック)と名乗る男がやって来きます

ジムの目的は、銀行強盗の罪で死刑判決を受けた4人組の

絞首刑を見届けることでした


村の人々はジムを怪しみますが

かっての恋人だったジョセファ(ジョーン・コリンズ)は

5年ぶりにジムと再会したことを喜び乾杯します

だけどジムが結婚したと知り、ちょっとがっかり

しかも妻は死んだと聞き、微妙な気分になってしまいます

f:id:burizitto:20210718125246p:plain
その夜ジョセファはジムを教会のミサに誘います

(神父がジムのことを知ってるのは謎のまま)

その間に4人組は村の雑貨屋の娘、エマを人質をとって逃亡してしまう

 

エマの父親に恋人、村の男たちは躍起になって4人組を追おうとしますが

ジムだけはひと眠りして朝になってから追跡するという

そんなジムにジョセファはがっかりするのですが

f:id:burizitto:20210718125336j:plain

誰よりも4人を許さず、裁きを与えると誓っていたのはジムでした

まずは混血のパラル(リー・ヴァン・クリーフ)を捕まえ

土下座して謝る彼を殴り殺します

次にテイラー(アルバート・サルミ)を馬で引きずり木に吊るす

(片足を捉えたのに、逆さづりにされた時にはなぜか両足 笑)


その間(ジムの牧場の隣にある小屋に住む)バトラーが

主犯格のザカリー(スティーヴン・ボイド)に殺されてしまいます

ザカリ―はエマを襲い

その隙にメキシコ人のカルロ(ヘンリー・シルヴァ)は

バトラーが持っていた砂金を盗みます

f:id:burizitto:20210718125406j:plain

ジムや村人たちが小屋に到着した時

すでにふたりの姿はありませんでした

(エマの姿は映し出されない)

ジョセファは犯人を殺してとジムに懇願します

 

ジムは粘り強く追跡を続け、ザカリ―を射殺

国境を越え(保安官たちは法によって越えられない)

カルロの家を見つけます

が、カルロの妻に壺を叩きつけられ気絶(笑)

f:id:burizitto:20210718125346j:plain

気が付いたジムは、なぜ自分たちを追うのかと

逆にカルロに質問されます

ジムは自ら制裁を加えた3人同様、妻と娘が写った写真を出します

半年前自分が留守の間、家にやって来た白人2人と混血と先住民の4人組に

妻は強姦され殺された

その砂袋の砂金は我が家のものだ、と答えます

f:id:burizitto:20210718125300j:plain

カルロは牧場の前を通ったのは確かだが、アンタの女房のことは知らない

砂金は小屋の住人のバトラーが離さず握っていたものを

盗んだものだと言います

(いい人そうだけど、銀行強盗の仲間で死刑囚なのは忘れちゃイカンよ)

f:id:burizitto:20210718125145j:plain

妻が殺されたとき、4人組を見たと教えたのはバトラーだった

それからというもの、復讐のためだけに4人組を追いかけてきた

なのにまさか、親切でお人好しだと信じていた男が

砂金目的のために妻を殺していたなんて

f:id:burizitto:20210718125709j:plain
すっかり自失したジムは、ひとり村の教会に向かい

神父に罪を懺悔します

自分が殺した3人にも、妻子や母親がいたのに・・

 

しかし村人たちにとっては、彼らは殺されて当然の鬼畜

ジョセファはジムの娘を着飾らせ、ジムと結婚する気満々(笑)

村人たちはジムを英雄として拍手と喝さいで迎えます

f:id:burizitto:20210718125414j:plain
ジムは戸惑いながら、その事実を受け入れるのでした

娘のため、刑務所に入るわけにはいかない

これからも生きていくしかないのです

 

ヘンリー・キングとしては、中くらいの出来ですが

新しい西部劇スタイルの境界線になった作品には間違いないでしょう

 


【解説】KINENOTEより

「陽はまた昇る」「拳銃王」のヘンリー・キング監督が、「バラの肌着」のグレゴリー・ペックを主演に、復讐に燃えて4人の仇をつけねらう男を主人公にして作った西部劇。フランク・オルークの小説をシナリオ化したのはフィリップ・ヨーダン。撮影監督は「女はそれを我慢できない」のレオン・シャムロイが担当、メキシコのモレリア付近およびインフェルト山脈一帯のロケを行なっている。音楽はライオネル・ニューマン。出演者は、ペックの他に「気まぐれバス」のジョーン・コリンズ、「月夜の宝石」のスティーブン・ボイド、「カラマーゾフの兄弟」のアルバート・サルミ、「夜を逃れて」「ゴーストタウンの決斗」のヘンリー・シルヴァ、テレビ出身の新人キャスリーン・ギャラント、「青春物語」のバリー・コー、「若き獅子たち」のリー・ヴァン・クリーフ等。製作はハーバート・B・スウォープ・ジュニア。

 

ボーダー 二つの世界(2018)

f:id:burizitto:20210715200642j:plain

原題は「Grän」(英語の "border"=国境、境目、境界 )

脚本は「ぼくのエリ 200歳の少女」(2008)の原作者

ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストと

イラン系デンマーク人のアリ・アッバシ監督の共同

 

スウェーデンのファンタジー映画ということで

見る前からグロは覚悟はしていましたが

これはかなり上級者向け、耐久性が必要(笑)

f:id:burizitto:20210715200705j:plain
人間が本能的に拒否反応をおこす生々しい造形は

場合によってはトラウマになるかも知れませんし

どちらかといえばニッチなマニア向き(笑)

 

実際に北欧では、妖精が自分の子どもと人間の子どもを取り替える

または連れ去られるという伝承があり(取り替え子)

そのことを巡る歴史的記録を少しでも知っておくと

この映画を見る目もかなり違ってくると思います

f:id:burizitto:20210715200721j:plain
国際フェリーの税関職員として働くティーナは

「嗅覚」だけで犯罪者を見分ける能力を持っていました

酒の密輸、児童ポルノSDカード

その的中率は100%で、一緒に働く職員からも信頼されています


ある日の到着ゲート、自分と似た特殊な顔の男に何かを感じたティーナは

男を呼び止め荷物のチェックをします

しかし怪しい金属製の箱は、昆虫の孵卵器だとわかりました

f:id:burizitto:20210715200752j:plain
そしてまた数日後、その男はやって来ます

ティーナはまたもや犯罪者の臭いを感じ取ると

同僚(男)にヴォーレと名乗るその男の身体検査を頼むのです

すると同僚はその男からは何も出てこず

しかも生殖器が女性のものだったと動揺を隠せません

(肛門や膣の中も調べなければいけない、ということか)


そこではまだ、典型的な両性具有者なのかな

と、思っていたのですが


どうしてもヴォーレと、ヴォーレの臭いが気になったティーナは

彼に宿泊先を聞きます、そうして会いに行ってしまいます

すると彼は庭の木の幹から蛆虫をつかまえて食べていました

「気持ち悪い」というティーナに「試したいくせに」と笑うヴォーレ

f:id:burizitto:20210715200816j:plain
そしてティーナはヴォーレを家に招き、ゲストハウスを貸すことにします

ボーイフレンドのローランドは彼を不気味がり連続殺人犯呼ばわり

しかしローランドはヒモで居候の身分、強いことは言えません


ティーナは外見が似ているだけじゃない

自分にもヴォーレと同じ腰に傷のあとがあること

雷に撃たれたあとがあること

そして犯罪者の臭いと、我慢できないほど惹かれる匂い


だけど自分は染色体に異常があって醜いうえ

子どもを産めない身体だと打ち明けます

しかし彼は「人と違うことは優れていること」と言い

ふたりは愛し合い、自分たちは「トロル」だと教えられるのです

f:id:burizitto:20210715200844j:plain
謎に思っていた自分の生い立ちを知り

いままで抱えていたトラウマが消えていくティー

(でもお父さんは許してあげようよ)

 

それにしても、肝心のストリーがわからなくなってしまうほど

重要なシーンにモザイクをかけてしまうのはいかがなものか

せめて内容が損なわれない程度のぼかしにするべき

f:id:burizitto:20210715200856j:plain
時を同じくして、ティーナは児童ポルノ摘発のため

警察に協力するよう頼まれていました

すぐに怪しい男は見つかり、臭いを頼りに部屋まで追いかけると

そこにいたのはごく普通に見える夫婦でした


警察はティーナを戒めますが、ティーナは自分の嗅覚を疑うことはありません

犯罪の臭いがする、絶対赤ちゃんはいた

留守を狙い警察が踏み込むと(合法なのか?笑)

ティーナの予言通りポルノを撮影したビデオが隠されていました


妻は夫が知らない男から赤ちゃんを買ったといいます

そして夫がその男と会ったのは一度だけだと

しかし犯人を知っている夫は、護送中に何者かに車から引きずり出され

殺されてしまいます

f:id:burizitto:20210715200918j:plain


現場から臭いを嗅ぎ取ったティーナは森の中でヴォーレを見つけます

税関で感じた犯罪の臭いはやはり間違いではなかった

夫婦に赤ちゃんを売ったのはヴォーレだったのです

では赤ちゃんはどこから


チェンジリング」(取り替え子)

ヴォーレは定期的に赤ちゃんを産み(未受精のため長く生きられない)

人間の赤ちゃんと取り替えていたのです

それは両親を拷問死された、人間たちへの復讐でした

f:id:burizitto:20210715200933j:plain


一緒に逃げてたくさん子どもを作ろうと言うヴォーレ

だけどいくら彼を愛していても、性犯罪のための誘拐は許せない

しかも親しくしている隣人の赤ちゃんまで・・

ティーナがゲストハウスに戻ると、ヴォーレは荷物をまとめて消えていました

「フェリーで待つ」というメモを残して


しかしティーナは警察に通報し

フェリーから海に飛び込んだヴォーレは

そのまま海に消えてしまいます


そして数か月後、ティーナの家の前に置かれていた箱の中には

フィンランドの絵葉書と、尻尾の生えた赤ちゃんが入っていました

f:id:burizitto:20210715201002j:plain
日本人のイメージする妖精と違って

ヨーロッパでいう妖精とは、しなびた外観に不愉快な性格

人間に畏れられ、侵略され、森の中や地下に隠れてしまいます


作中では女性の股間から性器が突起し、男性が出産する

女性と男性のボーダーはどこにあるのか

LGBTQを妖精たちに例えて、差別や虐待によって

多様と人権が奪われていることを訴えているのです

f:id:burizitto:20210715201023j:plain
主人公を演じた女優は体重を約20キロ増加させたそう

しかも醜い顔にボサボサの髪に、汚れた歯と爪

この外観で喜怒哀楽を表現するのには苦労したと思います

スウェーデン映画の特殊メイクの技術の高さにも驚きました

 

ただ、オススメかというと

ノーマルなムービーファンには正直あまり勧められません(笑)



【解説】ウィキペディアより

2018年のスウェーデンのファンタジー映画。監督はアリ・アッバシ、出演はエヴァ・メランデルとエーロ・ミロノフなど。ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストのアンソロジー集『Pappersväggar (Paper Walls)』に収録されている同名の短編を基にアッバシ、イサベラ・エクルーフ、リンドクヴィストが脚本を執筆した。第71カンヌ国際映画祭ではある視点賞を獲得した。第91アカデミー賞外国語映画賞スウェーデン代表作として出品されたものの落選したが、一方でメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。

ティーナは生まれつきの特殊な嗅覚を活用して、国境フェリー税関職員として働いていた。 密輸犯罪者や違法ポルノ所持者を嗅覚で嗅ぎ分けるため、評価は高かった。 同居人ローランドは犬のブリーダー。表向きはカップルとして生活しているが、 ティーナは自分の醜い顔、他人と違う性質のせいで孤独感に悩んでいた。

ある日、税関で怪しい旅行者ヴォーレを検査するが何も出ず、税関は彼を通した。 そのやりとりを通じ、ティーナとヴォーレはお互いに共通する何かを感じ取る。 ティーナは個人的にヴォーレと接触し、自宅の離れに泊めることにする。 ヴォーレと話をするうちに、やがてティーナとお互いを求めあうようになり、 そしてついに、ティーナは自分が人間ではない出生の秘密を知る。

ティーナは人間の価値観と彼らの性質との間の葛藤により苦悩するようになり、ローランドを自宅から追い出す。 その後税関で疑いをかけた違法ポルノの男を追ううちに、ヴォーレが犯罪に関わっていることを知る。 ティーナは人間として社会生活を送る以上、ヴォーレを犯罪者として無視できず、 ヴォーレを逮捕しようとする

 

 

ウディ・アレンの6つの危ない物語(2016)

f:id:burizitto:20210715150503j:plain

原題は「CRISIS IN SIX SCENES (6つの場面での危機)

ウディ・アレン監督、脚本、主演手掛け

初めての(約23×6話完結)TVコメディ

 

批評家からは「重い」「面白くない」「話が離脱している」と酷評

ウディ自身も何故こんなことになったのか分からないし

引き受けたことを後悔してる

映画を6回に分けた要領と思ってたけど、全然違うと痛感した

宇宙中に恥をさらすことになったよ」

とコメントしたそうですが

f:id:burizitto:20210715150533j:plain
仰せの通り、ひとつの映画をただ6つに分けただけ(笑)

ウディ作品の中で、際立った秀作ではありませんが

そこまで駄作でもない

 

ただ、アメリカのリベラル派のご婦人たちが

毛沢東思想や、革命に目覚めていくというブラック・ユーモア

アメリカの大衆が受け入れるのは(中国に対する黄禍論もあるし)

難しいかも知れない

しかも今やウディは「#Metoo運動」の象徴みたいにされている

f:id:burizitto:20210715150549j:plain
でも作品を見れば分かる通り

決して共産主義や、毛沢東や、革命家を推奨しているわけではなく

セックスをバカにしているわけでもなく

国や主義思想も、夫婦や男女の関係も

己を知るためには、まず相手を知ることが重要

というのが本来のメッセージ

 

そんなことも理解できない、知性も寛容さもない

そんな映画評論家なら、やめちまえ

f:id:burizitto:20210715150611j:plain
主人公は毎度お馴染み、クドくて屁理屈ばかりのウディ爺

小説家を諦め、そこそこ売れているコピーライター

セックスレス問題の)カウンセラーの妻のケイ(エレイン・メイ)と

平穏な生活を送っていました

 

その家に、突然レニー・デイル(マイリー・サイラス)という

若い女性が匿ってほしいとやってきます

レニーはケイが幼い時に世話になった知り合いの娘で

今は共産主義の革命家で指名手配中でした

f:id:burizitto:20210715150631j:plain
ウディは、レニーを匿ったら

自分も犯罪者だ共謀罪だと不安でしょうがない

しかもレニーはウディの好物の食事やおやつを全部平らげてしまう

しかも自分だって食ってばかりいるくせに

「世界中には飢えている人間が大勢いる」とか

偉そうに説教してくる

f:id:burizitto:20210715150654p:plain
ケイや、結婚を控えているアレンに「毛沢東語録」を勧め

ケイの読書会のおばさま達まで、毛沢東の言葉や革命のとりこ(笑)

アレンはレニーの生きかたに憧れ、レニーに夢中になっていきます

 

しかもケイは、レニーをキューバに逃亡させるため協力

アレンは革命のため爆弾を作ろうとして失敗、大怪我

f:id:burizitto:20210715150707j:plain
ウディの家には、アレンとアレンの怪我を心配してやってきた両親

アレンの婚約者とその両親

婚約者はアレンに妊娠したことを告白

2組のカップルはケイにセックスのお悩みを相談

読書会のおばさま達は、ブラックパンサーの登場に大興奮

f:id:burizitto:20210715150727j:plain
このドタバタを収めるには、一刻も早くレニーを追い出すこと

爺はレニーをキューバ行きの飛行機に乗せるため

車で飛行場まで送ることにします

 

ところがスピード違反で、パトロール警官に捕まってしまう

しかし警官は、ウディを「ライ麦畑・・」のサリンジャーと勘違いし

ファンなんだと違反を見逃し、サインをねだります

その隙にトランクから逃げ出したレニー

f:id:burizitto:20210715150801j:plain
その夜ウディは、何もなかったようにベッドに横たわり

「今からでもボクは、サリンジャーみたいな小説を書けるかな」と

ケイに呟いたのでした

(どうしてみんなサリンジャーになりたがるのかな)

f:id:burizitto:20210715150821j:plain
まあ、ドラマ向きではないことは確か(笑)

普通に映画として配信したほうがよかったでしょう

f:id:burizitto:20210715150835j:plain
結局amazonも世論に負けてウディを裏切るのだけど

配信まで止めないのはありがたい

作品に罪はないし

だいいち、ウディが有罪判決を受けたわけでもないのだから

 

 

【解説】シネマカフェより

1960年代後半。ニューヨーク郊外の一軒家に住むJS・マンシンガーはコピーライターとして成功を収め、かつて小説がベストセラーになったこともある。妻のケイは精神科医で毎週木曜日に近所の主婦を集めてブッククラブを開いてる。ある夜、ケイが幼少時に世話になった家の娘レニーが逃げ込んできた。レニーは世間を騒がせている合衆国憲法解放軍の闘士で、指名手配犯なのだ。ケイは彼女を匿おうとするが、夫のマンシガーは大反対。結局同意を得られないまま、ケイは彼女を家に住まわすことにした。ところが、一家に下宿している銀行家の息子アランがレニーに感化されてしまい大問題へ。爆弾製造を始めた上に、せっかく決まった婚約も取りやめようとする始末…