原題は「THE HANGING TREE」 (ぶら下がりの木)
テーマは「金よりも、愛や善人の命のほうが尊い」だと思うのですが
単純明快な西部劇というよりは、かなりの異色作
どちらかといえば難癖のある作品が好きな方におススメ(笑)
まずは主演俳優が見ごたえあり
悪役カール・マルデンの、まあ憎たらしいこと
狂信的な役やらせたらジョージ・C・スコットの右に出る者もいない
笑わないゲイリー・クーパーは、この2年後に
癌で亡くなっていることを考えると
(「コルドラへの道」(1959)も極限状態で任務を果たす男性像だった)
身体的に本当に辛かったのかも知れません
モンタナにある新興の金鉱地にやってきた
医師のジョー(ゲイリー・クーパー)は丘の上の小さな小屋を買い
診療所を開きます
そこで町で盗みを働き、顔役のフレンチ(カール・マルデン)に
肩を撃たれた青年、ルーン(ベン・ピアッツア)を助け
治療費を貰う代わりに助手として働かせることにします
この 若き日のポール・ニューマンにちょっと似ている
ベン・ピアッツアという俳優が妙に色気があって
一瞬隠れゲイ西部劇かと思ったのですが(笑)
ジョーはルーンだけではなく
治療費の払えない、貧しい人たちも無料で診察します
町で呪術的な治療をしてきたジョージ(ジョージ・C・スコット)は
ジョーは悪魔だと人々に説教し始めますが
この時点ではまだ人々は彼の話に耳を傾けていません
そんなある日、フレンチは襲われた駅馬車の生存者で
日差しによって目が見えなくなり、火傷を負った
エリザベス(マリア・シェル)というスイス人の女性を助け
ジョーは雑貨屋の離れに彼女を入院させることにしました
それからというもの、フレンチは自分が命の恩人なのだと
恩着せがましくエリザベスを狙い、近寄ろうとします
ジョーとルーンはエリザベスを守ろうとしますが
ご婦人達までもが、異国の美女に(夫が浮気するのではないかと)嫉妬心を燃やす
ジョーがエリザベスの治療費を、身体で払って貰ってると
根拠の無い噂まで流れます
確かにジョーは聖人なわけではありませんでした
カードゲームで鉱山の権利書を手に入れたり
妻が実の弟と浮気しているのを知り、焼き殺した過去がありました
悪い噂が流れても当然だったのです
だからエリザベスがフレンチでも、ルーンでもなく
ジョーに思いを寄せても
ジョーは受け入れることが出来なかったのです
やがて回復したエリザベスは、この町で暮らすため金脈を探す決意をします
家宝の宝石(ブローチ)を質に入れた資金で
(宝石は偽物、雑貨屋に頼んでお金を出したのはジョー)
フレンチとルーンを雇い砂金を見つけるための水門を組みます
だけどなかなか見つからない金に、資金はかさみ
フレンチのストレスはマックス
フレンチもちゃんとした目的をもって働いている時は
真面目でいい奴なんだけどな
ちょっとした失敗や不平不満があると
すぐに傲慢な男になってしまう
もう金は見つからないと諦めかけたとき
エリザベスは嵐で倒された大木の根に金脈を発見
フレンチと共に歓喜したものの
フレンチはすぐに町に乗り込み、金をばらまき
酒場でウイスキーを振舞う
そうして町の人々の信頼を受けるのですが
そのまま英雄気取りで贅沢な暮らしでもしていればいいものを
またもやエリザベスを襲おうとし、ジョーに撃たれてしまいます
フレンチが殺され、今度は呪術師の言葉に扇動され
暴徒となってしまう人々
町はずれの「縛り首の木」(縛り首台ではない=裁判を通さない不法な死刑)に
ジョーを吊るすことにします
だけどジョーは後悔していない
妻と弟を殺した自分には、不名誉な死こそ相応しい
そう覚悟を決めていたのです
しかしジョーの首に縄がかけられたとき
エリザベスはジョーを救うため、ジョーの命を引き換えに
金塊の入った袋を投げ捨てます
金脈見つかった鉱山の権利書も、風に吹かれなびいていく
町の貪欲な人々は、ジョーのことも呪術師のことも忘れ
我先にと金塊に群がり、権利書を追いかける
金がもたらすものとは、怒りや、略奪や、殺しばかりなのか
ならばそんなものは全て捨ててしまおう
そのことに気付いたエリザベスの、純真な愛を
ついにジョーは受け入れる決意をするのでした
それはそれで「愛は金で買えないが、命は金で買える」という
下衆なラストなのですが(←そう思うのはオマエだけだ)
あとはエンディング曲が全て説明してくれます(笑)
♪~死にかけて初めて生きることを知った 俺の場合はそうだった
金と引き換えに自由を手にし 俺は縛り首の木を後にする
愛する人と肩を並べて
そのとき初めて気が付いた あの縛り首の木は新たな命の木だったと
俺にとっての新たな希望 俺にとっての新たな愛
縛り首の木 縛り首の木 縛り首の木~♪
【解説】allcinema より
D・デイヴィスの文学趣味濃厚な、ドンパチのほとんどない異色のウエスタン。ある金鉱の町で、自らの過去にさいなまれつつも、医師としての務めを果たしたことから窮地に追い込まれていく主人公をG・クーパーが渋く好演。彼の過去を知る女にM・シェル、彼が助けて助手にする青年にB・ピアザ、彼らの理解者である町の有権者にK・マルデンと、助演者たちの顔ぶれも実に60年代的に、リアル志向になっており、このジャンルの過渡期を現している