地獄への逆襲(1940)

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原題は「The Return of Frank James(フランク・ジェイムズの帰還)

ジェーシー・ジェイムズ兄、フランク・ジェームスのその後を描いた

地獄への道(1939)の続篇

 

主演のフランク・ジェイムズにヘンリー・フォンダ

フォード兄弟にジョン・キャラダインとチャールス・タンネン

鉄道会社の社長にドナルド・ミークなどが同役で出演

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大きく変わったのは、監督がヘンリー・キングから

フリッツ・ラングになったこと

 

前作からのコメディタッチを残しながらも

悪義も正義も、平等に陪審員制度で裁かれるべきという

社会派・・

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までいけてない(笑)法廷ドラマ

 

1861年から1865年にかけて、北部のアメリカ合衆国北軍)と

南部のアメリカ連合国(南軍)の間で行われた南北戦争(内戦)

 

映画の舞台となるミズリー州では

断固としてアメリカ合衆国に残留しようとした北軍派と

あくまで南部支持感情を捨てることの出来ない南軍派が

まっぷたつに分かれてしまいます

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しかも州内で行われた戦闘は、南軍の兵士は正規軍ではなくゲリラ

「市民兵士」(あるいは暴徒)でした

そのなかのひとりが、ジェシー・ジェイムズ

戦後になっても北部(の資本主義)と戦い続けます

 

兄のフランクは弟ほど有名ではなく、記録も少ないので

ほとんどが脚色されたフィクションだと思います

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冒頭、使用人(黒人奴隷)のピンキーが「フランク様、フランク様」と

何度も語りかけます

すでに強盗団から足を洗い、名前も素性も替えていたフランクは

「フランクは死んだ」「ベン様となぜ言えない」と何度も説明しますが

正直者のピンキーは長年の習慣を替えられない

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これが後から、フランクが弟を殺したフォード兄弟に復讐するより

不法に逮捕され死刑宣告を受けたピンキーを救うため

自らが自首する、という伏線になるわけです

 

私たちがメディアによって植え付けられた奴隷制度といえば

白人からの一方的な差別や虐待や強制労働、レイプや放火や縛り首

でもそれは(KKKやネオナチように)理想世界を目指す集団や

自分より弱い立場の人間に、暴力や死を与えることによって

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快楽を覚える一部の人間によるものだったのかも知れない

その理由のひとつが白人が黒人(奴隷)や先住民を殺しても

有罪にならないから

 

賞金稼ぎが賞金首を殺しても罪にはならないのも同じ

賞金首が有罪か無罪か冤罪か、証拠がある、無いのにもかかわらず

誰かが誰かに懸賞金を賭けただけで、人が人を殺しにやってくる

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だけど「風と共に去りぬ(1939)のマミーや

ハティ・マクダニエルが黒人初のオスカーを受賞)

 「ドライビング Miss デイジー(1989)で

映画の中の話ではあるものの、その家にとっては使用人も家族の一員

 

対等に意見を言えるのはもちろん、お互い助け合って生きている

ピンキーを死刑判決から救おうと逮捕されたフランクの

弁護人を引き受けた新聞社のトッド少佐は

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ヤンキー(北部の人間)の言ってることのほうが間違ってる

南部の人々から、土地や財産や生命を奪ったのはヤンキーのほう

フランクが強盗した鉄道会社の金庫の警備員を殺したのも

きちんと調べればフランクでないことが証明されるはず

その言葉は裁判官や陪審員に届きます

 

フランクは全員一致で無罪判決

法廷に姿を見せたボブ・フォード(フォード兄弟 弟)を

(兄チャールズは作中では逃走中に崖から落ちて死亡←実際は鬱による自殺)

すぐに追ったフランクでしたが

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裁判所の前で待っていたクレムと相撃ちになり

クレムは息を引き取ってしまい

ボブ・フォードは馬小屋でのフランクとの接戦で

捕らえられるのを恐れ、自ら命を落とします

(結局フランクは、誰も殺さなかったということ)

 

このような復讐劇に、無鉄砲な若者や

正義感強い女性が邪魔に入るのはよくあるパターンですが

こちらは両方(笑)

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肝心な所やピンチに限って、大人になったつもりの少年クレム

一流のジャーナリスト気分満々の大学生エレノアが

邪魔に入ることで、ストーリーを面白くしています

ラスト、やっとフランクに訪れた本当の平和

 

これからは小さな農場で、誰にも知られずつつましく生きていく

もしかしたらその場所に

若くて美しい女性ジャーナリスト、エレノア(ジーン・ティアニー)が

来きてくれるかも知れない、という希望を抱いて

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ハリウッドに迎えられてからは

ジャンルを問わず、多くのB級作品を撮ったフリッツ・ラング

 

このような作風に批判したファンも多くいたと思いますが

もしかしたら、本人は生きるためだけでなく

案外楽しんで映画作りをしていたかも知れません(笑)

 

【解説】KINENOTEより

ジェシー・ジェームズの半生を描いた「地獄への道」の続編、1940年作品。前作同様ダリル・たF・ザナックが製作指揮に当たり、サム・ヘルマン(「荒野の決闘」の潤色)のオリジナル・シナリオを、「扉の影の秘密」のフリッツ・ラングが監督している。撮影はジョージ・バーンズ(「レベッカ」)とウィリアム・V・スコール(「ジャンヌ・ダーク」)の協同。「地獄への道」と同じくヘンリー・フォンダがフランクを、ジョン・キャラダインが敵役ボブを演ずる他、「夫は偽者」のジーン・ティアニー、かつての子役ジャッキー・クーパー、「ジェニーの肖像」のヘンリー・ハルらが共演。

ジェシーと共に西部を荒し回っていたフランク・ジェームズ(ヘンリー・フォンダ)は、弟と別れてから正道に戻り、変名で一介の農夫として働いていた。ある日彼は、弟がかつての仲間ボブ・フォード(ジョン・キャラダイン)とその弟に殺されたことを聞き、更に彼らが絞首刑を免れて保釈されたと知って、固く復讐を誓った。彼は仲良しのクレム(ジャッキー・クーパー)と鉄道駅を襲い資金を獲得しようとしたが、クレムが誤って人を殺し、不当な裁きを受けようとしたので、彼を伴って逃走した。デンヴァで、彼は新聞記者の娘エリアナジーン・ティアニー)から、世間は彼がすでに死亡していると信じていることを聞き、公然とフォードを探すことになった。やがて彼は目指す仇の兄弟に巡り合い、烈しい撃ち合いで弟を殺すことができたが、当のボブは取逃した。デンヴァに戻ると、彼の召使の黒人ピンキーが駅の殺人犯人として絞首刑に処せられようとしていた。フランクは自分の素性を明かして黒人の無罪を証明、自首して出たが、この時ボブと再会、めでたく本懐とげて、心安らかに縛についた。