ハワーズ・エンド (1992)

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「家が人を選ぶ」

原題も「HOWARDS END」(家の名前)

 

ハワーズ・エンドは、原作者であるフォスター(18791970)

母親がかって所有していたコテージ・ハウスで

今でもロンドンから数十キロ離れたハーフォードシャーに

存在しているそうです

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フォースターの母親は労働階級の生まれでしたが

家庭教師として裕福な上流階級の夫人に引き取られ

その家の建築家を目指す甥との間にできたのが、フォースター

しかしフォースターが生まれてすぐ夫を結核で亡くしてしまい

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裕福な夫人は、母子を庇護するため

ハーフォードシャーの「古くて小さく感じがいい、赤煉瓦の家」を

フォースターの母親に与えた、というのが作品の背景(たぶん)

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20世紀初頭のイギリス

インテリ中流階級シュレーゲル家と

実業家のウィルコックス家は旅行中に親しくなり

ウィルコックスのコテージ・ハウス、ハワーズ・エンドに招かれた

シュレーゲルの次女ヘレンヘレナ・ボーナム=カーター

当家の次男ポールと恋に落ち(一夜限りの肉体関係を結んだと思われる)

姉のマーガレットエマ・トンプソン)に婚約したと手紙を送ります

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驚いた叔母は慌ててハワーズエンドにやって来ますが

ポールにその気はなく、長男のチャールズも弟は無一文で無理だと言います

(すなわち中流階級の娘と遊んでも結婚はしないということ)

怒った叔母はヘレンをロンドンに連れて帰りますが

その数か月後、ロンドンにあるシュレーゲル姉妹の家の真向かいに

長男チャールズが結婚したという理由で

ウィルコックス家が引っ越して来たのです

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時を同じくして、ヘレンが雨の日傘を間違えたのをきっかけに

レナード・バストという文学青年(しかも蓮っ葉な妻がいる)と

知り合ったシュレーゲル姉妹が

彼の感性に共感し親しくなっていくエピソードと

 

マーガレットがウィルコックス家の夫人ルース(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)と

意気投合し、女性の友情で結ばれていく様子が描かれます

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しかしルースは重い病に冒され、やがて死の床で

(マーガレットが契約で生家を出なければいけないため)

ハワーズ・エンドはマーガレットに」という遺書を書き残します

 

ウィルコックス家の長ヘンリー(アンソニー・ホプキンス)は

ルースが書き残したメモを尊重したいと言いつつ

そんなことさせてたまるか、母は遺産目当てに騙されたんだという

息子たちの意見に従い、メモを焼き捨ててしまいます

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そのわりには気になって、マーガレットに探りを入れる(笑)

やがて、住む家がないのなら私の屋敷を貸しましょう

唐突に結婚することにまでなってしまう

 

あんなオールドミスのどこがいいのか、と息子たちは嘆きますが

ここまでのエマ・トンプソンは確かに魅力的

知識をひけらかして、鼻につくところはあるけれど

明るくお人好し、自分の欠点を知っている謙虚さもある

男のほうもいい年になって、精力も衰え

同じ知的レベルで話し相手になる女性のほうに魅力を感じる

心の変化が起こったのかも知れません

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だけどここから先が、ドロドロでボロボロ(笑)

ヘンリーの助言で保険会社から転職したレナードはリストラ

しかもヘンリーとマーガレットの結婚式では

レナードの妻ジャッキーが、ヘンリーの愛人だったことが発覚

(レナードもヘンリーもこの女のどこがいいのか・・)

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深く傷ついたレナードに、自責の念を抱いたヘレンは

レナードと一夜を共にした後、姿を隠してしまい

 

ヘレンを探しにハワーズ・エンドに行ったレナードは

(継母の妹を妊娠させたのは「家」の恥ということか)

チャールズに殴られ死んでしまう(死因は持病の心臓発作)

チャールズの上級国民は労働者を死なせても罪にならない

と信じている法則は覆され、殺人容疑で逮捕

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結婚後は、ジャッキーのことや

不倫の子を身籠ったヘレンを認めないヘンリーと

衝突ばかりしていたマーガレットでしたが

 

跡取りの逮捕に落ち込むヘンリーに

彼女のもともと持っている博愛主義が再び目覚め

夫に寄り添い、慰める決意をします

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そしてそれから1年半後、ハワーズ・エンドの所有権は

ヘンリーによって、ヘレンの子に与えるという結末を迎えます

結局ルースの遺言通り、ハワーズ・エンド

シュレーゲル家のものになったのです

(レナードの妻はどうなった 笑)

 

原作は読んでいないので言い切れませんが

これはたぶんイギリスでは私たちが想像する以上に

「家」を重んじる、ということなのでしょう

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住居として住む「家」、先祖代々からの「家名」

血で繋がった「家族」の中に、いくら嫌いな人間がいても

簡単には疎遠になれない

好きだからという理由だけで結婚もできない

自由をアピールする国ほど、もしかしたら不自由なのかも知れません

 

 

【解説】映画.COMより

名匠ジェームズ・アイボリーが「眺めのいい部屋」「モーリス」に続いてEM・フォースターの名作小説を実写映画化した長編作品。知的で情緒豊かな中流階級のシュレーゲル家と、現実的な実業家のウィルコックス家。両家は旅行中に親しくなり、シュレーゲル家の次女ヘレンはウィルコックス家の田舎の別荘「ハワーズ・エンド」に招かれる。そこで次男ポールに一目ぼれするヘレンだったが、ある行き違いからウィルコックス家と気まずい関係になってしまう。その後、ロンドンのシュレーゲル家の向かいにウィルコックス家が引越してくるが、ヘレンは彼らに会おうともしない。一方、姉マーガレットはウィルコックス家の老婦人ルースと深く理解しあう。やがてルース夫人は「ハワーズ・エンドはマーガレットに」という遺言を残して他界する。しかし遺言はもみ消され、マーガレットはウィルコックス家の当主ヘンリーのもとへ嫁ぐことになり……。シュレーゲル姉妹をエマ・トンプソンヘレナ・ボナム・カーター、ウィルコックス氏をアンソニー・ホプキンス、ルース夫人をバネッサ・レッドグレーブがそれぞれ演じ、トンプソンがアカデミー主演女優賞を受賞した。

ボス・ベイビー(2017)

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原題も「THE BOSS BABY

私の勝手なジンクス

「ブシェミが出てれば、そこそこ面白い(ハズ)」(笑)

 

人間の赤ちゃんより、子犬のほうが愛される時代に突入

しかも品種改良による可愛いミックス犬の登場により

更なる赤ちゃん人口の減少が予想されるという事態

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そこで新種のミックス(成長しない=ずっと子犬のまま)の秘密を探るため

7歳のティムの両親のもとに赤ちゃん製造会社(天国?)から派遣されたのが

見た目は赤ちゃんだけど、中身はオヤジなボス・ベイビー(笑)

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いままでひとりっ子で、両親からの愛情を一途に受けてきたティムは

突然やってきたベイビー(弟)の存在を受け入れることが出来ません

しかもこのベイビー、両親がいない時には喋るし、札束まで持っている

ずる賢いうえ、怪しい、怪しい、怪しい

なのにティムの言うことを、大人たちは誰も信じてくれない

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だけど任務を達成したら消えるというベイビーに

ティムは渋々協力することにします

そして数々の苦難を乗り越えていくうちに

本物の兄弟愛が芽生えていくというもの

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我が物顔でウザかったベイビーが

ミルクが切れるとバブバブになったり

会社に戻ると、ティムを思い出して、ひとりしんみりしたり

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一方のティムは、我儘だった自分からちょっぴり成長

ひとりより、ふたりのほうがうまくいく(かも)

お互いの「一緒にいたい」という気持ちが高まります

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アメリカでも少子高齢化は問題

ペットの増加もまた問題になっているそうです

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日本と同じように、まだ一切しつけされていない赤ちゃん犬を

ペットショップで購入するのがあたりまえなのか

それとも、飼い主が責任を持って面倒を見なかったり

迷惑騒音や糞尿問題もあるのか

(それって、ワンコやニャンコより飼い主の問題だがな)

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そんな社会問題を、キュートでユーモラスだけど

グサリと皮肉ってるブラックコメディ

 

子どもでも、お金儲けだけの繁殖がいけないことや

可愛いだけでペットを飼ってはいけないことを訴えているし

大人はより深く考えさせられる(べき 笑)

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でもベイビーのお尻には、やっぱりほっこり(笑)

ティムがパウダー、パ・パ・パーン♪は、きっと誰も語らない名シーン(笑)

ラストの新しい家族(ベイビー)がやってきた瞬間のティムの歓喜GOOD

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家族の幸せこそが、最大の幸せ

そして生まれたばかりの赤ちゃんは、確かに天使で悪魔(笑)

BOSS BABY」に、タイトル賞という

オスカーは捧げてもいいかもね(そんな賞ないけど 笑)

 

 

 

【解説】allcinema より

シュレック」や「マダガスカル」のドリームワークス・アニメーションが、赤ちゃんを迎えた家族の激動の日々をユーモラスに綴ったマーラ・フレイジーのベストセラー絵本『あかちゃん社長がやってきた』を映画化した痛快コメディ・アニメ。7歳の少年のもとに初めての弟としてやって来た赤ちゃんが、実は中身はある任務を帯びた中間管理職のおっさんだったことから巻き起こる大騒動をコミカルに描く。赤ちゃんのボス・ベイビーの声をアレック・ボールドウィンが担当。監督は「マダガスカル」シリーズのトム・マクグラス
 優しいパパとママの愛情を独占してきた7歳のティムのもとに、ある日弟がやって来た。しかしその赤ちゃんは、黒いスーツにネクタイをビシッと締め、ブリーフケースを手にした“ボス・ベイビー”だった。両親の前ではかわいい赤ちゃんを演じる一方、ティムと2人だけのところではおっさんの本性を現わし、口が悪く人使いの荒いボスとして振る舞うのだった。そんなボス・ベイビーには、上司から課された重要な任務があった。早く家から出て行ってほしいティムは、任務を無事に終えれば会社に戻れるというボス・ベイビーに協力することに…。

赤ちゃん教育(1938)

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原題は「BRINGING UP BABY」(赤ちゃんを育てる)

ハワード・ホークスの「どうやって撮影した?動物シリーズ」

第一弾(が、たぶんこれ 笑)

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「赤い河」(1948)では1万頭の牛を運ぶロングドライブ
「モンキービジネス」(1952)でのチンパンジーの名演

「ハタリ!」(1961)プロハンター集団と猛獣の駆け引き

「男性が好きなスポーツ」(1964)では熊が自転車に乗って通り過ぎる

本作では本物の豹のなんておりこうなこと!(笑)

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ただヒロインの人格がとにかく問題

名シーンはあるし

脚本はキャサリン・ヘプバーンのために特別に書かれ

彼女もノンストップで身体を張って演じていますが


こればかりは、やたら演技が巧いのが災いしたのか(笑)

可愛いドジっ子というより、最後までイラつく残念賞

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事実ヘプバーンはこの作品で「興行毒」のレッテルを貼られてしまい

(後年その卓越したコメディエンヌ振りは高く再評価されたそう)

フィラデルフィア物語(1940)でやっと名誉回復したということです

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博物館に勤務する古生物学者のデビッド(ケイリー・グラント)は

4年の歳月をかけ恐竜の骨格を組み立て、あとは鋤骨鎖骨が届けば完成

助手のアリスと骨格が完成したら結婚する約束をしています

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そして博物館に百万ドルの寄付をしてくれるというランダム夫人の弁護士

ピーボディ氏に会うためゴルフ場へ向かうと

突然現れたスーザン(キャサリン・ヘプバーン)という女のせいで

ゴルフも夕食メチャクチャにされてしまう

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そのうえアフリカにいるスーザンの兄から贈られてきたきた

ベイビーという名の豹を口実に、スーザンはデビッドを呼出し

散々振り回すのです


人の言うことなど意に介さないスノッブ(上級国民だけど、鼻もちならない人)

金持ちで、我儘で、自由奔放で、何でも自分の思い通りになると疑わない

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そのうえ大事な恐竜の鋤骨鎖骨を

犬が盗み出し広大な庭のどこかに埋めてしまう

そして犬を追い回したり、豹がいるだのと言うデビッドと

スーザンは「病気で頭がおかしい」とランダム夫人や来客に説明するのです

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そんなとき、小屋からベイビーが逃げ出し

同じ頃サーカスで調教師が豹に襲われるという事故があり

殺処分されることになった豹がトラックで輸送されます


その凶暴な豹をベイビーと勘違いしたスーザンはデビッドは

運転手が道に迷ってトラックを停めた隙に

なんと狂暴な豹を逃がしてしまうのです

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犬を追いかけ、豹を追いかけふたりはボロボロ

ついには車泥棒の容疑で警察に捕まってしまう(これもスーザンが悪い)

しかも、すべて真実を話しても、すべてデタラメにしか聞こえない(笑)

しかも、やっと容疑が晴れた時、デビッドは婚約者にフラれてしまいます

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これね、デビッドに(聡明で美人な)婚約者がいる

という設定が特にマズかったと思う


もしデビッドが恐竜一筋、女に全く縁のないヲタク研究者だったら

ヒロインが、あの手この手で彼の気を惹こうとしても罪悪感なし

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物質的な破損のほとんどは、現実お金で解決できるし(笑)

恋の駆け引きに、失敗しても迷惑かけても

誰も傷つかなかったはず

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ひとこと感想は

「ホークス的女性像」も、脱線するときは脱線するんだな(笑)

そして、それでも、名作には間違いない事実なんだな



【解説】allcinema より

博物館主グラントに次々と災いをもたらす令嬢ヘプバーンと、彼女の叔母に届けるベイビーという名の豹が巻き起こす、これぞ元祖スクリューボール・コメディ。小道具や人物設定に一分の隙も無い良質な脚本によって次から次へと繰り出される笑いのシチュエーションは絶品で、男性映画の名匠ホークスがコメディにもその才能をいかんなく発揮した傑作。気弱で生真面目な役に扮したグラント(ホークス&グラントはこの作品の直後にも「ヒズ・ガール・フライデー」という傑作を放つ)と一方的でわがままだがどこか憎めない可愛い女に扮したヘプバーンの魅力も大きい。「おかしなおかしな大追跡」は本作のアレンジ・リメイクにあたる。

ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー(2017)

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原題は「REBEL IN THE RYE 」(ライ麦の反乱軍)

原作はケネス・スラウェンスキーのベストセラー本

サリンジャー 生涯91年の真実」(2013)


単行本未収録作品や未発表原稿や手紙

関係者の証言、政府の資料を突き合わせながら

 

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コロンビア大学でのバーネット教授との出会い

ウーナー・オニールとの恋

(彼女がチャップリンと結婚し破局

 

太平洋戦争ではノルマンディー上陸作戦に参加し

多くの仲間を失いながら激戦をくぐり抜け

ダッハウ強制収容所で見た骨と皮だけのユダヤ人たち

そんな戦争体験と戦後のPTSDという狂気の中から

やがて禅に目覚め

 

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「仲間と敵を厳しく区別」する潔癖さや

「無垢で壊れやすいものを守りたい」という願望を描いた

代表作「キャッチャー・イン・ザ・ライ」が発表されるまで

 

そして有名人になった彼は、ニューハンプシャーにある

コーニッシュの村に引きこもり、平穏な生活を送っていましたが

親しくしていた女子高生のひとりが、学生新聞の記事として受けたインタビューを

スクープとして地元の新聞にリークしたのがきっかけで

 

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人間も言葉も信じられなくなり、社会からも家族からも孤立してしまう

サリンジャーの人物像を丁寧に書き換えているそうです

 

私はキャッチャー・イン・ザ・ライ

ナイン・ストーリーズも読んでいないので(笑)

この映画の主人公がどれくらいサリンジャー本人に近いのか

わかりませんが

 

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印象深かったのは、二番目の妻

1人目は戦時中神経衰弱で入院したとき知り合ったドイツ人医師)

のクレアが「私が老けても愛してくれる?」と尋ねるシーン


彼女の心配は的中し、11女を儲けるもののやがて離婚

作中では描かれていませんでしたが、その後18歳の女性と同棲

1990年にはなんと50歳年下の看護師と結婚(笑)

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ペドフィリア小児性愛)とまではいかないけれど

単に可愛いからという理由だけでなく、若い女性しか好きになれないのは

精神年齢がそれだけ若いということでしょうね

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大人達が作り上げたインチキな社会のルールに怒り

従って生きることに耐えられない

 

恋愛においても10代の娘と付き合うのが

いちばん精神年齢が釣り合ったのでしょう

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でも、そんなサリンジャーの社会に対する「怒り」や「不信感」に

多くの若者たちが共感し、孤独から救われたのです

 

おかげでキャッチャー・イン・ザ・ライの主人公

ホールデン・コールフィールドを、自分がモデルだと思い込み

ストーカー化する読者が続出

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結局サリンジャーは晩年まで、コーニッシュの村の

2メートルの塀で囲った屋敷の中で生活したそうです

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映画としては特に惹き込まれるところはなく

実際、評価も支持率も低かったようですね

 

それともサリンジャー・ファンなら、何か特別なものを感じる

サリンジャー・ファンのためだけの映画なのでしょうか

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でも最後はバーネット教授と師弟愛を取り戻せてよかったね

 

 

【解説】allcinema より

名作『ライ麦畑でつかまえてキャッチャー・イン・ザ・ライ)』によって世界中に熱狂的な読者を持つ有名作家となりながら、人気絶頂の中で表舞台から姿を消して以降は沈黙を貫き、死ぬまで隠遁生活を送ったJ.D.サリンジャーの謎に包まれた素顔に迫ったケネス・スラウェンスキーのノンフィクション『サリンジャー 生涯91年の真実』を基に、サリンジャーの若き日にスポットを当て、その数奇な半生と創作の原点を描いた伝記ドラマ。主演は「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のニコラス・ホルト、共演にケヴィン・スペイシー、ゾーイ・ドゥイッチ、サラ・ポールソン。監督は「大統領の執事の涙」「ハンガー・ゲーム FINA」などの脚本を手がけ、本作が映画初監督となるダニー・ストロング。
 1939年、ニューヨーク。作家を目指すサリンジャー20歳の時にコロンビア大学の創作文芸コースでウィット・バーネット教授と出会う。彼の指導の下で完成させ処女短編は、多くの出版社に断られた末にようやく文芸誌に掲載が決まり、作家としての第一歩を踏み出す。そんな中、劇作家ユージン・オニールの娘ウーナと恋に落ち、青春を謳歌するサリンジャー。やがて自分の分身ともいえる若者ホールデン・コールフィールドを主人公にした短編が一流誌『ニューヨーカー』に掲載されることが決まるが、その直後に始まった太平洋戦争の影響で掲載は見送られてしまう。その後陸軍に入隊したサリンジャー1944年、一兵卒として激戦のヨーロッパ戦線に参加するのだったが…。

邂逅(めぐりあい)(1939)

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「頭の中で強く願い、心でも強く思う、そして諦めずにずっと願っていれば叶う」

原題は「LOVE AFFAIR」(恋愛)

オリジナルを鑑賞したのは初めて

内容は1957年版とほぼ同じでした

 

名曲「Sing My Heart」はこの映画で歌われたのが最初で

ハロルド・アーレンがアイリーン・ダンのために作曲したそうです

 

恋愛映画の王道というか、教科書のような作品で

前半はロマンチック・コメディ

終盤は涙と希望の溢れるラストまでいっきに運んでいきます

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世界的に有名なプレイボーイ、ミシェルシャルル・ボワイエ)は

富豪の令嬢と結婚するため、アメリカに向かう豪華客船で

聡明でユーモアのあるひとり旅のアメリカ人女性

テリーアイリーン・ダン)と意気投合します

 

ミシェルは9日間の船旅を一緒に過ごそうと提案しますが

テリーにはニューヨークにパトロンがいました

しかも有名人のミシェルとは、一緒にいるだけで噂の的

お互い離れようとするものの、またくっついてしまう(笑)

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そして船がマデイラ島に停泊したとき

ミシェルはテリーを祖母(マリア・オースペンスカヤ)の家に連れて行きます

そこでテリーはミシェルが描いた油絵を見たり

素敵おばあちゃんからミシェルの幼い頃の話を聞いたり

 

ふたりでカトリックの聖堂で祈りを捧げるうちに

単に気の合う友人ではなく、愛し合ってることに気付くのです

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これって石田純一を好きになるわけがないと思っていた女が

思わず石田純一を好きになるようなもの(笑)

 

遊び人の浮気男だと思って警戒していたのに

実は優しくて才能がある一面を知ったとたん惚れてしまうのです

 

ミシェルは「自立するまで半年待ってくれ」とテリーにいい

半年後の71日午後5

エンパイアー・ステート・ビルの102階で再会する約束をします

 

ミシェルは看板描をしながら画家を目指し

テリーはフィラデルフィアのホテルの専属歌手として契約を結びます

ついにやってきた71日午後5

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テリーは交通事故に

何も知らないミシェルは待ち続け、そして諦めます

「下へ?」と同じ台詞を繰り返すエレベーター・ボーイ

コミカルなぶん、フラれた男の心情が痛い

 

そしてそれからまた半年後、ふたりは偶然劇場で出会い

クリスマスの日、テリーの住所を探し出したミシェルは

おばあちゃんがプレゼントをすると約束していたショールを持って

テリーに逢いにやって来くのです

 

約束の場所に行ったのに、行かなかったと謝るミシェル

行っていないのに、待ちくたびれたと嘆くテリー

その時のお互いの気持ちを代弁しあう

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そして画商の言葉を思い出したミシェルが見たものは

鏡に映った「聖母と女性」の絵だったのです

 

テンポのいい会話のやりとりと、楽天的主観に

決して華々しくはないけれど、最後まで気持ちよく見れる

 

シャルル・ボワイエ石田純一に例えてレヴューしたのは

ファンから怒られそうだけど(笑)

 

 

 

解説KINENOTEより

レオ・マッケリーが製作監督した恋愛ドラマで、当時原題のLove Affairが風紀上よろしくないというので、わざわざ日本版の題名をSincerityに改題した。なおマッケリーは戦後の1957年にケイリー・グラント、デボラ・カー主演で再映画化し、「めぐり逢い(1957)」の題名で日本でも公開した。

巨星ジーグフェルド(1936)

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SF映画を思わせる邦題ですが(笑)

原題は「THE GREAT ZIEGFELD 」(偉大なるジーグフェルド)


1896年から1931年の間

50本以上のブロードウェイのステージをプロデュースし

数々のスターを発掘したことでも有名な

フローレンツ・ジーグフェルド・ジュニア(18671932)がモデル

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9アカデミー賞では7部門ノミネート

作品賞、主演女優賞(ルイーゼ・ライナー)、ダンス監督賞を受賞

 

が、作品そのものの評価より

今では映画にまつわるエピソードのほうが有名で

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製作費は218万ドルを超え、その金額は

実際の"ジーグフェルド・フォリーズ" よりを上回り

「オスカーを金で買った」とか

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ルイーゼ・ライナー(の
2年連続の受賞)は

「オスカー史の謎」と揶揄され

(受賞するなら美術賞のほうだ 笑)

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ライナー本人も、身に余る重責から消息不明になったり

離婚してしまったり(夫は脚本家のクリフォード・オデッツ)

MGMを解雇されたり、その後の人生はまるでヒロインのようで

「オスカーの呪い(オスカー・カース)」と呼ばれたそうです

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かといって決して駄作ということではなく

ひとこと感想は、さすがMGM、これぞMGM (笑)

ファニー・ブライス はなんと本人役で出演

バーブラ・ストライサンドの「ファニー・ガール」のモデル)

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最大の見どころは豪華絢爛なショー

巨大なウェディング・ケーキのような舞台や

(首の筋肉を相当使う 笑)派手な衣装には

呆気にとられてさえしまいます

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そこにジーグフェルドの、ショープロデューサーとしての

生き様が描かれていきます

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この男、アイディアを生みだすセンスと才能はあるけど

とにかく女好き(プレゼント好き)で、金銭感覚が全くない(笑)

借りた金は返さず、衣装代は払わず、にもかかわらず、金を湯水のように使う

なので何度も破産を繰り返します

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だけど新しい舞台を作ろうとするたび、助けてくれる人間が現れる

これが本当なら、相当魅力のある人間だったのでしょう


そんなジーグフェルドも、最後は株に投資してしまい

世界恐慌をきっかけに財産を失い

ショーでも収益を得られないまま、胸膜炎で逝去(65歳没)

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おっさんたちへの、粋な「華麗なる復讐」や

同じショービス界で成功し、株で失敗した

古い友人が慰めるシーンは感動的ではあったものの

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妻のビリー・バーク(演じたのはマーナ・ロイ)は

ジーグフェルドの死後、彼の残した借金を返すため

現実でも20年以上休まず働いたそうです



【解説】allcinema より

1893年シカゴ湾で、怪力男サンドーの見せ物興行をうっていたフローレンツは、彼の腕の筋肉をご婦人方に触ってもらうサービスを始め好評を得て、以来、サンドーで大いに売り出すがそのショウでいんちきをやって総スカン。すると今度は、何かと覇を競っていた興行師ビリングズを出し抜いて、フランスの歌手(ライナー)をスターにして、彼女と結婚。という前段がちょっとモタモタするが、MGMの豪華趣味の権化みたいなレビュー場面の数々に度胆を抜かれる、天才的舞台製作者F・ジーグフェルドの伝記映画。特に彼が考案したいわゆる“ジーグフェルド・フォリーズ”の最初の公演場面で、巨大なウェディング・ケーキのようならせん階段のついた円錐形の回り舞台にワン・ショットで展開される、世界各地の名曲を盛り込んだナンバー(セット・デザインはC・ギボンズ)には呆気にとられた。生涯女出入りが激しく、資金の苦労につきまとわれたジーグフェルドにW・パウエル、彼の晩年の糟糠の妻ビリーにM・ロイと、当時人気絶頂だった「影なき男」シリーズの名コンビがやはり夫婦役で組んだのはご愛敬。ファニー・ブライスなどのジーグフェルドのショウ出身のスターが、本人役で顔を出すのが嬉しい。アカデミー作品賞他を受賞。

 

 

歌え!ロレッタ 愛のために(1980)

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原題は「COAL MINER'S DAUGHTER (炭鉱夫の娘)

 

1976カントリー歌手ロレッタ・リン(1932)発表した

ベストセラーの自伝小説が原作

53アカデミー賞では作品賞を含む7部門にノミネート

歌の吹替なしでロレッタの1335歳までを演じた

シシー・スペイセクオスカーを獲得しました

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そのほかにもロレッタの父親役で「ザ・バンド」のリヴォン・ヘルムや

後見人の役としてロレッタが現実に世話になったという

カントリー・シンガーのアーネット・タブが本人役として出演

心温まる友情出演にカントリーが好きな人が見たら

たまらないものがあるのではないでしょうか

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貧しい炭鉱夫の娘ロレッタ(シシー・スペイセク)は

軍隊から戻ってきたドゥー(トミー・リー・ジョーンズ)と

恋に落ちてしまい親の反対を押し切り結婚

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しかしまだ13歳、料理は下手だし家事もろくに出来ない

セックスは嫌がる、ドゥーとは喧嘩してばかりで実家に戻りますが

その時すでに妊娠、炭鉱夫を嫌ったドゥーとワシントンに移り住み

(映画では)18歳の時には4児の母になっていました

(現実でも最終的に6人の母親、なんと29歳で孫が誕生 笑)

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そんなロレッタの趣味はラジオを聞いて流行歌を歌うこと

やがて自分でも曲を作って子どもたちに歌い聞かせるようになります

ロレッタに才能を見出したドゥーは

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結婚記念日にロレッタがねだった結婚指輪の代わりに

中古のギターをプレゼント

そして自主制作したレコードをラジオ局に送り

夫婦で営業活動をするようになります

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はじめてのレコーディングで緊張したロレッタが

子どもたちの見守る中で歌うシーンがほのぼの

ラジオで下ネタと気付かず発言して大騒ぎになったり

でもそれがウケたのか(笑)ロレッタの曲はチャート入り

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交通事故で入院中の大スター、パッツィー・クライン(19321963)を

見舞ったのをきっかけに、彼女と親交を深めツアーに同行するようになり

ロレッタもまた大スターの道を歩みはじめるのです

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そこでいじけてしまったのが、夫のドゥー

ロレッタと離れ田舎で子どもたちと暮らす決意をするのですが

実際の彼はかなり女遊びをしたようで(笑)

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アメリカ南部では当時は女性が13歳で結婚するのも珍しくなく

その苦労がロレッタの曲に真実味を帯びせ

さらに人々の共感を得たのかもしれません

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ロレッタはあっという間にカントリーのトップ歌手まで上り詰め

その後何度も訪れる挫折にも、夫婦の危機にも負けず

ヒット曲を生み続けていくのです

 

炭鉱夫の娘”には”強い女”という意味もあるのだろうか(笑)

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華奢なシシー・スペイセクが困難を乗り越えていく姿に勇気をもらえ

若きトミー・リー・ジョーンズの髪型に、なぜか笑える(笑)

カントリー音楽映画の佳作

 

 

【解説】KINENOTEより

現代アメリカのポップス界で、シンガー・ソングライターとして人気のあるロレッタ・リンの生いたちから、結婚、出産を経て歌手として成功するまでの波乱の半生を描く。製作総指揮はボブ・ラーソン、製作はバーナード・シュワルツ、監督は「アガサ 愛の失踪事件」のマイケル・アプテッド、ロレッタ・リンとジョージ・ベクシーによるリンの自伝を基にトム・リックマンが脚色。撮影はラルフ・ボード、音楽はオーエン・ブラッドレー、編集はアーサー・シュミット、製作デザインはジョン・W・コルソが各々担当。出演はシシー・スペイセクトミー・リー・ジョーンズビバリー・ダンジェロ、レボン・ヘルム、フィリス・ボーエンズなど。

ケンタッキー、テネシー州にまたがるアパラチア山脈沿いの山間地の貧しい炭抗町、ブッチャー・ホラー。炭抗夫テッド(レボン・ヘルム)を父にもつロレッタ(シシー・スペイセク)は母クララ(フィリス・ボーエンズ)も含めて10人という大家族の中で成長し、今年13歳になっていた。厳しい生活を送りながら不満ひとつ感じていない彼女は、父親の愛情を一身に受けていた。が、ある日、ひとつの変化が生じた。炭抗夫の息子で軍隊にとられていたドゥーリトル・リン(トミー・リー・ジョーンズ)が町に戻って来たのだ。ロレッタの憧れの視線を感じたドゥーは、毎日のように彼女を誘い出し、2人の仲は急速に発展する。そしてささやかな結婚式を挙げる2人。しかし13歳の妻は性には無知で、新婚早々トラブルが生じる。しかも炭抗夫の生活を嫌ったドゥーはひとり新しい生活を切り開くために旅立ってしまった。その時、ロレッタはすでに妊娠していた。やがてドゥーがロレッタに旅費を送ってよこし、ロレッタもこの炭抗町を去っていった。6年の歳月が流れて、ワシントン州に落ちついた彼女は、次々に4人の子供を生んだ。ドゥーの仕事もまずまずで、平凡だが幸せな生活を送るロレッタに、ドゥーがギターをプレゼントした。以前から彼女の歌を聞くのが好きだったのだ。そして町の酒場にロレッタを連れてゆき、デビューさせるドゥー。それが大成功し、ドウーは彼女の歌をレコードに吹き込みそれをラジオ局へ送った。そんな彼女の元に父の死という悲しい知らせがとどく。葬式を済ませ再び売り込みに努める2人。やがてアイム・ア・ホンキー・トンク・ガールをヒットさせ、C&Wの女王、パッツィ・クライン(ビバリー・ダンジェロ)にめぐりあったロレッタは、彼女から多くのことを学ぶが、派手になってゆく彼女に、ドゥーは批判的だった。烈しい喧嘩の後、しかし、ドゥーはロレッタに結婚以来彼女の夢だった指輪を贈った。パッツィが飛行機事故で29歳の若さで死んだ。悲しみにくれるロレッタは、その時生まれた双児の女の子にパッツィとペギィと命名した。今やC&Wの女王となった彼女は、家族と離れて忙しい日日を送っていたが、町から町への巡業生活は彼女を錯乱状態においやり、結局彼女は、ドゥーと家族が待つ新しい家に帰ってゆく。牧場の静かな生活で、ロレッタはやっと心の平和を取り戻すのだった。