忠臣蔵(1958)

f:id:burizitto:20210117193453j:plain

みなさん、あけましておめでとうございます(遅いよ)

さて年末になると毎年のように放映される「忠臣蔵

忠臣蔵」と「白虎隊」の違いもよく知らない私ですが(酷すぎる)

今更ながら初めて鑑賞しました


しかも大映オールスター総出演による

忠臣蔵」映画の中でも最高傑作と言われている名作

f:id:burizitto:20210117193528j:plain

元禄14年、浅野長矩(あさのながのり)(市川雷蔵

江戸へ下向する東山天皇の勅使の接待役を幕府より命じられます

しかし高潔な長矩は、高家肝煎(こうけきもいり=儀式や典礼を司る役職)で

接待指南役吉良義央(きらよしひさ)に

忖度しなかった(賄賂を贈らなかった)ため、いじめや嘘の作法を教えられ

 

314日、江戸城将軍が勅旨(ちょくし=天皇の命令書)に対して

奉答ほうとう=謹んでするお答えする)するという

幕府の1年間の行事の中でも最も格式高い

勅答(ちょくとう=天皇が臣下に答えること)の儀が執り行われる直前

f:id:burizitto:20210117193557j:plain
度重なる侮辱にたえかね、ついに長矩はキレてしまい

吉良に刃で襲いかかってしまいます

すぐに長矩は取り押さえられ、吉良はかすり傷ですみましたが

将軍徳川綱吉は儀式を台無しにされたことに激怒し

長矩を大名としては異例の即日切腹に処し、赤穂浅野家お家断絶

一方吉良には何の咎めありませんでした

 

主君の仇を討つため

赤穂藩国家老・大石内蔵助(おおいしくらのすけ)(長谷川一夫)をはじめとする

赤穂浪士47名いわゆる「赤穂四十七士」(あこうしじゅうしちし)は

商人や遊び人になりすまし、人目を忍んで吉良を討ち取る日を待つのでした

f:id:burizitto:20210117193616j:plain
ついに機が熟した元禄151214日未明

本所・吉良邸への討ち入りに成功

赤穂四十七士」は命をかけて主君の名誉を取り戻したのです

 

そこに吉良邸の間取り図が欲しい岡野金右衛門鶴田浩二)と

大工の娘お鈴(若尾文子)の純愛や(大工の父ちゃんがまたいい人なんだ)


老いた母を連れて江戸を目指す少年、矢頭右衛門七(梅若正二)や

勝田新左衛門川崎敬三)と妻の父である大竹重兵衛(志村喬

酒飲みの(フリをしている)赤垣源蔵(勝新太郎

f:id:burizitto:20210117193635j:plain
大石に秘かに惚れる女間者のおるい(京マチ子)や浮橋太夫木暮実千代

女遊びの果ての絶縁の意味を(仏壇の位牌から)理解する妻のりく淡島千景

一方で本当に愛しているのは家族だと察する太夫が可哀そう


大石が最後の挨拶に瑤泉院(ようぜんりん=長矩の妻)(山本富士子)を訪れ

「とうとうその日が…」と復讐を待ちわびた瑤泉院

「東の方に仕官の口がありお別れに来ました」と嘘をつくシーンは胸を打つ

f:id:burizitto:20210117193702j:plain
この物語が昔も今も人気があるのは

政界の権力の構図や、不正なお金(税金)の流れがなくなってほしい

悪徳で老害な政治家はさっさと死んでほしいという願いがあるからでしょう


それは理解できても、国家にとって大切な儀の直前に

一時の感情を抑えきれなかった長矩の乱心には同情できない

どうせやるなら確実に殺せばいいのに、なんじゃありゃ

f:id:burizitto:20210117193723j:plain
長矩の切腹は「赤穂四十七士」の主君への忠誠心と、復讐心を駆り立て

吉良を成敗した瞬間は達成感に酔いしれたのかも知れないけど

私から見た長矩は、お家や優秀な部下たちに対していうならば

吉良より無責任な人間にしか思えませんでした


これが日本で一番有名で

日本人に一番愛されているプロパガンダ

f:id:burizitto:20210117193739j:plain
とはいえ、映画としての娯楽性はばっちり

ヒーロー感たっぷり、女性は美人揃い

民衆から喝采を持って迎えられるラストも後味がいい

 

機会があれば東映オールキャスト版「赤穂浪士」も

見てみたいと思います(あっちは千恵蔵さまだし 笑)



 

【解説】allcinema より

おなじみ「忠臣蔵」を、大映が総力を挙げて映画化した大型時代劇。渡辺邦男が八尋不二、民門敏雄、村松正温とともに書いた脚本をもとにメガホンをとった。長谷川一夫をはじめ勝新太郎鶴田浩二市川雷蔵など、キャストも豪華の一言。「忠臣蔵」映画の中でも最高傑作の呼び声が高く、公開当時も大ヒットを記録した。
 江戸城の松の廊下において、浅野内匠頭吉良上野介への刃傷に及び、即日切腹を申しつけられる。赤穂で知らせを受けた大石内蔵助は、お家断絶となった家中に仇討を呼びかけた。赤穂を追われた内蔵助は妻子と離別、浪士たちをまとめ始める。十二月の雪の夜、四十七士が吉良屋敷への討ち入りを果たした

 

ユリシーズ(1954)

f:id:burizitto:20201226211037j:plain

原題は「ULISSE」( 英題Ulysses

トロイの木馬」の後日譜

原作はホメロス叙事詩オデュッセイア

ギリシャ語がラテン語を経由し英語で「ユリシーズ」と呼ばれるようになり

イギリスの作家チャールズ・ラムの子ども向けの再話

ユリシーズの冒険」(1808)によって

ユリシーズはイギリスの男の子たちの英雄になるのです

f:id:burizitto:20201226211053j:plain
トロイの戦いで勝利を確信したイタカの国王

ユリシーズカーク・ダグラス)は調子に乗ってしまい

ポセイドンの神殿を破壊してしまいます

f:id:burizitto:20201226211115j:plain
海神の怒りによって暴風雨に会い、船の沈没を避けるため

トロイで奪ったすべての財宝も食料も海に捨てます

しかもやっとたどり着いた島は人間を喰う一つ目巨人島でした

 

確かに一つ目巨人(ポセイドンの息子)との戦いは

子ども向けの紙芝居みたいでしたが(笑)

f:id:burizitto:20201226211130j:plain
冷静に考えるとトロイでの虐殺も酷い話だし

人魚の歌声(聞いたら死ぬ)に自ら惑わされたり

魔女と浮気して優秀な部下を全員死なせる

f:id:burizitto:20201226211146j:plain
フェアーチ人の島で王女ナウシカア(ロッサナ・ポデスタ)と結婚式当日

宮崎駿の「風の谷のナウシカ」のモデル)

私には妻がいたのを思い出したとバイバイ

f:id:burizitto:20201226211201j:plain
乞食に化け、后ペネロペ(シルヴァーナ・マンガーノ)に会いに行き

10年待たせておいて、妻に求婚した男は全員皆殺し

指揮官としても、男としても、これってどうよ?(笑)

f:id:burizitto:20201226211220j:plain
ユリシーズその場所が悪霊に祟られぬよう火を放つよう命令

一応血で汚れた手はさっと洗い(笑)

アテナの神の画に「昔のあの人をお返しください」と祈るペネロペ

「これからは共に穏やかな日々を送ろう」と微笑む

 

「騙せ」「殺せ」「壊せ」「盗め」「食料を奪え」「女をモノにしろ」

命だけでなく尊厳も、信仰も、思想や知識、全て破壊し焼き払ってしまう

ユリシーズ」(オデュッセイア )は戦争や侵略や革命の

全てが詰まってる最初の文学、というよりテキスト

f:id:burizitto:20201226211241j:plain
しかも何事もなかったように、いきなりハッピーエンド(笑)

自分の国の利益と俺様の家族だけが大事

虐殺と略奪が正しいと、それが「愛のため」だと信じている

 

冒険ファンタジーとしては

カーク・ダグラスが強そうに見えず顔も暑苦しい(笑)

ストーリーの焦点も定まっていないB級ですが


こういう英雄に持ち上げられた人間の持つ内面の矛盾を

ドゥニ・ヴィルヌーヴの新解釈で現代版にリメイクしたら

面白いような気がします



 

【解説】KINENOTEより

ホーマーの叙事詩『オディッセイ』の色彩映画化である。脚色にはフランコ・ブルザーティ、マリオ・カメリーニ、エンニオ・デ・コンチーニ、ヒュー・グレイ、ベン・ヘクト、イーヴオ・ペリッリ、アーウィン・ショーの七人が当り、ヴェテラン、マリオ・カメリーニが監督に当った。製作はカルロ・ポンティディノ・デ・ラウレンティス、一九五四年度作品である。撮影は「オズの魔法使」のハロルド・ロッスン、音楽は「陽気なドン・カミロ」のアレッサンドロ・チコニーニ。「アンナ」のシルヴァーナ・マンガーノと「死の砂塵」のカーク・ダグラスが主演し、「指紋なき男」のアンソニー・クイン、新進女優ロッサナ・ポデスタ(貴女は若すぎる)、ジャック・デュメニル、ダニエル・イヴェルネル、シルヴィ、フランコインテルレンギ、エレナ・ザレスキ、リュドミラ・ドゥダロヴァなどが共演する。

コン・エアー (1997)

f:id:burizitto:20201224192801j:plain

原題も「Con Air

コン・エアーアメリカ連邦保安局の空輸隊のことで

出廷や医療緊急事態に出動したり、実際に囚人輸送も行っているそうです

 

18ゴールデンラズベリー賞ラジー賞)で

Worst Reckless Disregard for Human Life and Public Property

(最低人命軽視と公共物破壊しまくり作品賞)受賞

人がたくさん死ぬギャグパロディなアクション映画

f:id:burizitto:20201224192813j:plain
レンジャー隊員のキャメロン・ポー(ニコラス・ケイジ)は

酔っぱらいに絡まれた妊娠中の妻(モニカ・ポッター)を守ろうと喧嘩になり

誤って殺してしまいます

 

過失致死で収監されて8年後、娘の7歳の誕生日に仮釈放が認められ

囚人輸送機「コン・エアー」に乗り込みます

殺人、強盗、誘拐繰り返し、刑務所内でも囚人を殺害、何度も脱獄を図った

知能犯サイラス・グリサム(ジョン・マルコヴィッチ

サイラスの手下で元ゲリラのダイヤモンド・ドッグ(ヴィング・レイムズ)

連続レイプ犯のジョニー23ダニー・トレホ)も同乗していて

離陸後間もなく「コン・エアー」はサイラスにハイジャックされてしまいます

f:id:burizitto:20201224192838j:plain
そこからはニコラス・ケイジが女性護送官や、

重い糖尿病のベイビー・オー(ミケルティ・ウィリアムソン)を

見捨てることができず

妻と娘に会うことより、機内に残って凶悪犯たちと戦うというもの

そしてただひとり異変に気付く連邦保安官ジョン・キューザック

f:id:burizitto:20201224192857j:plain
いちばん笑えるのが

37人を惨殺し、殺害した少女を助手席に乗せてドライブしたという

伝説の連続殺人犯がスティーヴ・ブシェミなこと

羊たちの沈黙」のレクター博士バリの厳重な拘束具で拘束されてきて

出てきたのオマエかよ(笑)

 

おままごとした女の子を殺す気にならなかったのは

女の子がブスで好みじゃなかったからだと思う

(オマエの解釈は相変わらずゲスだな)

f:id:burizitto:20201224192915j:plain
麻薬取締局捜査官のおっさんの高級車 (シボレー・コルベットC2)が

飛行機にぶら下がって飛んでいくのはいい気分(笑)

 

どうせありえない話で、ここまで人命無視で破壊するならなら

最後に突っ込むのはラスベガスじゃなく、ディズニーランドにして

ディズニー映画を敵に回せば面白かったのに

(オマエは発想もゲスだな)

f:id:burizitto:20201224192933j:plain
それよりなにより、クリスマス・イブにこんなレビュー書いてる

私ってどうよ(笑)

 

 

【解説】allcinema より

ザ・ロック』のプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーが、再びニコラス・ケイジを主演に迎えたサスペンス・アクション。ハイジャックされた囚人輸送機で起こる、囚人対囚人の闘いをスピーディーな展開で描く。ジョン・キューザックジョン・マルコビッチスティーヴ・ブシェーミ共演。不運な事件に巻き込まれ、8年の刑期を終えて出所した元軍人のキャメロン。彼は一刻も早く愛する妻子の顔が見たいと、連邦保安局の空輸機に乗り込んだ。だが、その空輸機は凶悪犯サイラスが率いる囚人グループにハイジャックされてしまう。

ロスト・バケーション(2016)

f:id:burizitto:20201222204859j:plain

原題は「The Shallows 」(浅瀬

 

ジョーズ(1975)シリーズの二番煎じか

  トゥームレイダー2(2003)のような

B級サバイバルパニックだろうと

期待しないで見たのがよかったのか(笑)

思った以上に楽しめました

f:id:burizitto:20201222204918j:plain
サメに襲われ負傷を負った女性が

海岸から200メートルの岩礁で身を守りながら

救助を待つ、ほぼそれだけの内容ですが

 

自分の知恵と知識を駆使して生き延びる姿は

無人島に遭難した「キャスト・アウェイ(2000)

火星にひとり取り残された「オデッセイ」(2015)の感触に近い

f:id:burizitto:20201222204934j:plain
ヒロインのバックボーンの描きかたも巧く

医学生のナンシー(ブレイク・ライヴリー)は

母は癌と戦ったが勝てなかった”ことを理由に

医師への道を閉ざそうとしていました

そして母から教えてもらったメキシコの地元民しか知らない

美しいビーチにサーフィンをするためやってきます

 

地元のガイドに案内され、その日最後の波に乗っている時

ナンシーは若いザトウクジラの死骸を見つけます

そして突然、巨大なホウジロザメに襲われ脚を噛まれてしまうのです

f:id:burizitto:20201222205113j:plain

ナンシーはザトウクジラの死骸の上に非難しますが

サメはクジラに何度も突っ込みます

振り落とされそうになった彼女は

孤立した岩礁に泳ぎつくことに成功します

 

しかしサメからの攻撃から逃れられるタイムリミットは満潮まで

サーフボードストラップを使って止血(痛い痛い)

三日月形のネックレスで裂かれた肉を縫い(痛い痛い)

ウェアの袖口を裂いて傷口を圧迫できるのも(痛い痛い)

彼女に医学の知識があったからこそ

f:id:burizitto:20201222204959j:plain

岩礁には自分と同じようにサメに傷つけられ

飛べないカモメが佇んでいました

たかが1羽のカモメ

だけどその(スティーブン・セーガルと名付けた 笑)カモメが

彼女の孤独を紛らわし、生きる希望を持ち続けることに

大きな役割をはたします

f:id:burizitto:20201222205018j:plain

やがて夜が来て、朝が来る

浜辺で倒れている(泥酔した)男に

バックパックの中のスマホで救助を呼んでと頼みますが

男はスマホと財布を盗み

ついでに流れ着いたサーフボードを拾おうと海に入ると

突然やってきたサメに下半身を食いちぎられて死んでしまいます

(サメって座礁しないの?笑)

f:id:burizitto:20201222205219j:plain
次に(前日ナンパしてきた)サーファーふたりがやって来て

ナンシーはサメがいることを警告しますが

ふたりは波乗りをはじめ、やはりサメに殺されてしまう

 

サーフボードの切れ端で日差しを防ぐものの

脱水症状が進み唇はかさつき

f:id:burizitto:20201222205240j:plain


しかも時刻はPM556満潮まであと25

ナンシーはサメが岩礁を周回する一定の規則と時間があることに気付き

海洋ブイまで泳ぐ決心をします

 

  サーファーのひとりが装着していたヘルメットカメラ

Goproを拾い(ドラレコのようなアクションカメラ)

自分の状況と位置情報と、父と妹に”愛してる”のメッセージを録画

ヘルメットの中敷きからプラスチックの破片を取り出し胸にしまい

誰かが拾ってくれることを祈り海に流す

f:id:burizitto:20201222205258p:plain
ティーブン・セーガルを診察し、脱臼しているとわかり手当て

サーフボードの切れ端に乗せて非難させ、海に飛び込む

が、夕方になり海中は大量のクラゲだらけ(笑)

 

腕を刺されたものの

クラゲのおかげでサメが近寄れず、ナンシーはブイに到着

だけどはしごは腐食して外れるわ

信号弾は落としてしまうわ

やっと1発信号を撃ちあげたものの、貨物船は気付かずスルー(笑)

f:id:burizitto:20201222205318j:plain
残る手段はサメと直接対決、殺らなければ殺られる

ナンシーはブイを鎖から外し

金属がひっかかり身動きできなくなったサメもろともに海中に沈み

折れたパイプにサメを串刺しする

SWATでもここまで活躍できるかどうか 笑)

 

浜辺で”Gopro”の映像を見た少年が父親を呼びに行き

少年の父親は倒れているナンシー見つけ

心臓マッサージにより彼女は息を吹き返します

f:id:burizitto:20201222205349j:plain


1年後、医学校を卒業したナンシーは

故郷で妹とサーフィンを楽しんでいました

(こんな怖い思いしても続けるんだな)


このての作品は絶対主人公が助かるとわかっているので(笑)

頭を使わず気軽に楽しめるし

ブレイク・ライヴリーの体育会的なボディが健康的で

目の保養になります

f:id:burizitto:20201222205431j:plain
エンディングソングの「Bird Set Free」(SIA)も

ラストを飾るのにふさわしいナイスな選曲でした

 

 

【解説】allcinema より

フライト・ゲーム」「ラン・オールナイト」のジャウマ・コレット=セラ監督が、巨大ザメに追い詰められ、小さな岩場で絶体絶命の窮地を迎えたヒロインの決死のサバイバルの行方を描いた戦慄のサスペンス・スリラー。主演はTV「ゴシップガール」、「アデライン、100年目の恋」のブレイク・ライヴリー
 医学生のナンシーは、亡き母が教えてくれた地元のサーファーしか知らない秘密のビーチで休暇を満喫しようとしていた。美しいロケーションと理想の波に、時が経つのも忘れてサーフィンに興じるナンシー。すると突然、何かにぶつかり脚を負傷してしまう。慌てて近くの岩場に避難したものの、傷口からは大量の出血が。しかし何よりも彼女を恐怖のどん底に陥れたのは、目の前を悠然と泳ぐ巨大なサメの影だった。岸までの距離はおよそ200メートル。しかも徐々に潮が満ち始め、岩場の面積はみるみる狭まっていく。それでもラッシュガードで何とか止血し、生き残るための方策を必死で考え抜くナンシーだったが…。

太陽の中の対決(1967)

f:id:burizitto:20201220222304j:plain

原題はHombre(スペイン語で男)

 

西部劇ではよくあるネイティブアメリカンに育てられた白人の話なのですが

マーティン・リットの人種差別に対する怒りや

裕福な白人アメリカンへの反骨心が垣間見えるポストウエスタン

高低差と奥行きを活かした演出も逸品

    カメラはジェームズ・ウォン・ハウ

f:id:burizitto:20201220222336j:plain
ネイティブ・アメリカンは白人を殺しても

子どもは”神からの授かり者”という概念があるため

子どもは殺さず連れ帰り、自分たちで育てるそうです

f:id:burizitto:20201220222352j:plain
1880年代のアリゾナ

幼い頃アパッチに育てられたジョン・ラッセルポール・ニューマン)は

死んだ養父が遺産として下宿屋を残したと

昔からの知り合いで(鉄道が開通したため廃業となった)

駅馬車の御者ヘンリー・メンデスから知らされます

f:id:burizitto:20201220222415j:plain
居留地管理人のフェイバー教授と夫人が南に向かうため

メンデスから駅馬車を買い取り

f:id:burizitto:20201220222434j:plain
ラッセルは下宿屋を処分しコンテンションという町で馬の群れを買うため

仕事も保安官の恋人も失ったジェシーは新天地でやりなおすため

何かを変えたい(メンデスの助手)ビリーの新婚の妻ドリス

若い兵隊から切符を奪った見るからに問題を起こすとわかる(笑)

グライムスが同じ馬車に乗り合わせます

f:id:burizitto:20201220222502j:plain
案の定グライムスは強盗の一味で馬車はグライムスを含む5人に襲われます

強盗達は居留地から横領したフェイバー教授の大金と

飲み水を狙っていました

ラッセルは3人を撃ち殺し大金を取り戻しますが

フェイバー夫人を人質にしたグライムスと

仲間のメキシコ人は逃げてしまいます

f:id:burizitto:20201220222528j:plain
何が起きてもラッセルとほかの乗客との埋まらない距離感

まるで感情がないかのような無表情

やがて白人たちの身勝手さと偽善者ぶりが露見していくと

彼の冷たい表情の中にある、怒りや悲しみに共感していく

f:id:burizitto:20201220222548j:plain
廃坑に小屋にたどり着いたとき、仲間を裏切り大金を持って逃げようとした

フェイバーにジェシーは水を与えます

「白人は助けあうものだ」と一見反省したかのように思われましたが

金と交換を条件ににグライムスに日干しにされてる夫人をあっさり見捨てる

f:id:burizitto:20201220222626j:plain
ジェシーは金を持ってフェイバー夫人を助けに行くと言い張り

ビリーに援護を頼み、渋々フェイバー夫人を救いに行くラッセ

その夫人がビリーが狙う敵の前に立ちはだかる

f:id:burizitto:20201220222646p:plain
炎天下で歩けなくなるまで大声で叫びまくって、このバカ女が!

でもここまでやるバーバラ・ラッシュに女優魂は感じた(笑)

f:id:burizitto:20201220222707j:plain
ラッセルとグライムスと銃の達人というメキシコ人は撃ち合いになり

ラッセルとグライムスは即死

悪人の年寄りが生き延びるという理不尽なラスト

死に際メキシコ人は、メンデスにラッセルの名前を尋ねるのでした

f:id:burizitto:20201220222732j:plain
一切笑わないポール・ニューマンを見れるのは希少だけど

この類の西部劇に、ポール・ニューマンはいい男過ぎだな(笑)

f:id:burizitto:20201220222747j:plain
エルモア・レナードらしいカタルシスなしのハードボイルド で

タランティーノが影響を受けた1作というのもよくわかりました

 

 

 

【解説】映画.comより

エルモア・レナードの小説『オンブレ』を、「ハッド」のアーヴィング・ラヴェッチとハリエット・フランク・ジュニアが脚色、同じく「ハッド」のマーティン・リットが監督した西部劇。撮影も「ハッド」のジェームズ・ウォン・ホウ、音楽は「南極ピンク作戦」のデイヴィッド・ローズが担当した。出演は「引き裂かれたカーテン」のポール・ニューマン、「アルトナ」のフレドリック・マーチ、「リオ・コンチョス」のリチャード・ブーン、「華麗なる激情」のダイアン・シレントほか。製作は監督のマーティン・リットと、脚色のアーヴィング・ラヴェッチ。

天国は待ってくれる(1943)

f:id:burizitto:20201219134014j:plain

原題も「HEAVEN CAN WAIT


エルンスト・ルビッチ初のテクニカラー作品のファンタジー・コメディ

生涯女好きだった男が、閻魔大王に地獄の受付で

自分の人生を語って聞かせる話


セリフのやり取りがお洒落で(英語が理解できたらもっと面白いのだろう)

ルビッチらしいというよりフランク・キャプラ

f:id:burizitto:20201219134036j:plain
閻魔大王「君は女性を幸せにしてきた」と男を天国に送ったけど

昔は脚線美が自慢だった老婦人が脚を見せようとしただけで

地獄へ落とされたり

年増の看護師に検温させないのに、若い看護師にはさせたり

(金髪美女が現れてあの世行きはルビッチのこの先を予言しているみたい)

f:id:burizitto:20201219134054p:plain
この男ら、美人には親切だが年増のブスには見向きもしない

実際に身近にいたら女性を幸せにするどころか

多くの女性を嫌な気分にさせるタイプで

アメリカお得意のご都合主義なのですが(笑)

それなりに楽しく、よくできています

f:id:burizitto:20201219134138j:plain
物心ついたときから女好きで遊び好きな金持ちのボンボン、ヘンリー

26歳のとき従弟の婚約者マーサに一目惚れしてしまい、略奪婚

妻を誰より愛し、ひとり息子に恵まれるも浮気は続く(笑)

ある時女性への高価なプレゼントがばれ、妻は実家へ帰ってしまう

生まれながらの嘘つき、うまいこと言って妻を呼び戻し

仲睦まじく暮らしますが(といっても息子の恋人にまで下心を抱く)

銀婚式を迎えたあと妻は死んでしまいます

f:id:burizitto:20201219134153j:plain
その後も若い女好きは治らず、隠居後も息子に金を無心する

息子に咎められると、今度は穏やかな日々を送るために朗読係を雇うという

相手は24歳の女性だという

f:id:burizitto:20201219134207j:plain
そのとき偶然手にした本が「夫を幸せにする方法」

妻と出会ったときの本でした

彼女は夫の浮気を知りながら何度も許してきたのでしょう

(だから早死にしたのよ)

ちょっとしんみりしてしまうヘンリー

f:id:burizitto:20201219134229j:plain
だけど結局死ぬまで若い美人が大好き(笑)

それがたとえお金にものをいわせた一時のお遊びでも

彼にとってはかまわない

女性問題で地獄に落ちるなら、それこそ本望

その潔さはすがすがしい(笑)

f:id:burizitto:20201219134251j:plain
戦争中にアメリカではこんなコメディ作って、庶民が見ていたんですね

しかもバリバリのユダヤ人のルビッチが(笑)

f:id:burizitto:20201219134307j:plain
エンディングに戦時公債を買いましょう、この劇場でも売ってます

という字幕が入るのには時代を感じます

 

 

【解説】allcinema より

年老いて死んだ主人公が地獄の王に、自分の生涯を回想形式で語るファンタジー・コメディ。生前の行いが元で地獄に落とされた男ヘンリー。マーサという愛妻がいるにも関わらず、多情な彼は数々の女性遍歴を経ていたのだった。やがてサタンの前に引き出された彼は、安らかな表情で自分の犯してきた過ちを語り始めるが……。

 

アルカトラズからの脱出(1979)

f:id:burizitto:20201218213228j:plain

原題も「Escape From Alcatraz

脱獄不可能とされたアルカトラズ連邦刑務所から2人の囚人とともに脱出した

フランク・リー・モリス(1926-1962611日失踪)がモデル

IQ133

f:id:burizitto:20201218213240j:plain
2年間に渡モリスとエングリン兄弟は独房内の換気口の格子

仕事場から道具を盗み交替で穴を掘り

浮き袋を三角形に組み合わせシートを貼り付けたいかだと

紙くずと粘土や穴の削りくず自分たちに似せた人形を作

 

3人はベッドに用意しておいた人形を配置し

掘った穴から煙突を登って屋根伝いに脱出、夜の海に消えます

f:id:burizitto:20201218213309j:plain
脱獄もの、というより刑務所ものの原型がこれ

入所するまでのエピソードもほとんどないし、脱獄した後も描くこともない

脱走映画としては「大脱走(1963)や「パピヨン(1973)のほうが

エンタメ的に面白いですが(笑)

f:id:burizitto:20201218213337p:plain
実際に刑務所を脱走するとなると、看守に目を付けられたら最後

真面目で地味な模範囚を演じているはず

ましてフランク(クリント・イーストウッド)は脱獄の常習犯

要注意人物として最初からチェックされているのです

誰にもばれないよう用意周到な準備をしなければなりません

 

刑務所内の仲間のキャラクターは脚色だと思いますが

それぞれの人物が、それぞれ違う男臭くさを漂わせていていい

f:id:burizitto:20201218213423j:plain
頼りになるアングリン兄弟

換気口の格子をはずせずひとり取り残される隣の独房のバッツ

古株の黒人でびっこの図書係イングリッシュ

ネズミをペットにしているデザート大好きな(自称アル・カポネ)リトマス

絵を描くことが生き甲斐の老人ドク

スティーブン・キングは絶対この映画のファンだ)

f:id:burizitto:20201218213440j:plain

そして刑務所長のリズナNo.6 )と看守たち

フランクに嫌われて逆恨みするカマ掘りのデブ、ウルフを悪役に回すことで

脱獄する側に正当性を感じさせてしまうという

ドン・シーゲルの演出の手堅さ

カメラはいつものブルース・サーティース

f:id:burizitto:20201218213508j:plain
フランクは被害者であるにも関わら懲罰房に入れられ

放水されるという理不尽な扱いを受け

ドクは署長の肖像画を描いたことで画材を取り上げられる

リトマスは所長に花を飾ることを禁じられた怒りで心臓発作をおこしてしまう

でもここでキレてしまったらすべての計画がおしまい

f:id:burizitto:20201218213524j:plain
看守の見回り、立ち入り検査は地味でもヒヤヒヤ(笑)

フランクと仲間たちに同情し、味方になってしまう

f:id:burizitto:20201218213547j:plain

こんなユーモラスな人形で看守を騙したのにはびっくりですが

こんなことを考えるとは、誰にも思いつかない(笑)

たぶん消灯後の暗さも計算したトリックでしょう

f:id:burizitto:20201218213600j:plain
「人間のつくった房ですから、人間が破れぬはずがありませんよ」

 どこか「昭和の脱獄王」 白鳥由栄しらとりよしえ )と共通する部分もあり

人間が人間の作った殻を破っていく、という

哲学的なものさえ感じました

f:id:burizitto:20201218213631j:plain



【解説】allcinema より

 脱獄絶対不可能と言われたサンフランシスコ湾に浮かぶアルカトラズ刑務所。実話を基に、そこから奇跡の脱出を果たした男たちの姿を描いたサスペンス映画の傑作。冷酷な刑務所長(P・マクグーハン好演)と寡黙な囚人イーストウッドの対立を軸としながら、脱獄までのプロセスを丹念に描写、その中で紡ぎ出されるサスペンスの数々は何度観ても唸らされる。紙粘土で造った人形を身代わりに仕立て、脱出準備を行うシーンの緊迫感など尋常ではない。イーストウッドのキャラクターに代弁されるが如く、静かな淡々とした作品で、決して派手なものではないが、D・シーゲルの確かな演出が存分に味わえる逸品である