世にも怪奇な物語(1967)

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原題はHistoires extraordinaires」(特別な物語)

フランス・イタリア製作3部構成からなるホラー映画

原作はエドガー・アラン・ポー短編小説

 

いくらオムニバス形式だからって

ロジェ・ヴァディムジェーン・フォンダ

ブリジット・バルドーテレンス・スタンプ

一本の映画に出てるって、すごくない?(笑)

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第一部(中世篇)「黒馬の哭(な)く館」
原題はMetzengerstein」(メッツェンゲルシュタイン)

監督/ロジェ・ヴァディム
脚本/ロジェ・ヴァディムパスカルクーザ
撮影/クロード・ルノワール
出演/ジェーン・フォンダピーター・フォンダ

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全てが思いのまま、乱交パーティで快楽に溺れる

美貌の女性伯爵フレデリックジェーン・フォンダ

狐狩りの罠にかかったある日、先祖代々から宿敵の名家の

ウィルヘルム男爵(ピーター・フォンダ)の虜になってしまします

だけど男爵は、醸し出す色気とは真逆に

人間より動物が好きという変わり者(それってBBと同じじゃん 笑)

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自分に対する冷たい態度に怒ったフレデリック

家臣に男爵の厩(うまや)に放火しろと命じ

そのため愛馬を守ろうしたウィルヘルム男爵は焼死してしまいます

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振り向いてもらうため、ほんの少し懲らしめるつもりが

男爵を失い深い喪失感に襲われてしまったフレデリック

そこに現れたのがタペストリー(壁掛けの織物)そっくりの黒馬

フレデリックはその黒馬と過ごすことだけで癒されるようになり

やがて織物職人がタペストリーを完成させたとき

黒馬に乗ったフレデリックは燃え盛る野火の中に飛び込むのでした

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これはもうロジェ・ヴァディムによる

ジェーン・フォンダのコスプレ映画(笑)

ファッションとビジュアル的な美しさを満喫できるうえ

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イージー・ライダー(1969)で、まだブレイク前の

ピーター・フォンダの貴重な王子様姿を見ることまでできます(笑)

 

 

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第二部(近代篇)「影を殺した男」

              原題はWilliam Wilson」(ウィリアム・ウィルソン

ポーの短編の中で最も有名で、テーマはドッペルゲンガー

監督/ルイ・マル
脚本/ルイ・マル、クレメン・ビデル・ウッド、ダニエル・ブーランジェ
撮影/トニーノ・デリ・コリ
出演/アラン・ドロンブリジット・バルドー

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アラン・ドロンの子ども時代を演じた子役が

あまりにもドロンさまにそっくりで驚いた(笑)

これはルイ・マルの演技指導の賜物でしょう

 

突然「人を殺した」と神父に懺悔しに教会にやってきた

ウィリアム・ウィルソンアラン・ドロン)と名乗る男

そして彼が殺したという、もうひとりのウィリアム・ウィルソンについて

語り始めます

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養護施設時代から悪ガキと虐めで仲間から恐れられていた

ウィリアム・ウィルソンの前に、同姓同名で容姿までもそっくりな

ウィリアム・ウィルソンという正義の少年が現れます

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やがて成長したウィルソンは医学校に通いますが

サディスティックな性格は治ることはなく

娼婦を誘拐し医学生たちの前で生きたまま解剖しようとします

そんなウィルソンの悪事が成し遂げられようとする寸前

いつもやってきて邪魔するのが、もうひとりのウィルソン

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軍隊に入り士官となったウィルソンは

悪事でその名を世間に知られ畏れられていました

しかし賭博場で出会ったジュセピーナ(ブリジット・バルドーだけは

ウィルソンをけなし見下していました

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怒ったウィルソンはジュセピーナにカードの勝負を申し込み

イカサマで勝利しジュセピーナの上半身を鞭で打ちます

そこにまたもうひとりのウィルソンが現れ、インチキが暴かれてしまう

怒り狂ったウィルソンは、ついにもうひとりのウィルソンを殺害してしまいます

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神父はウィルソンに、もうひとりのウィルソンは妄想だと言いますが

ウィルソンは発狂したように塔に登り、投身自殺をしてしまいます

しかし死体はウィルソンに刺殺された、もうひとりのウィルソンのものでした

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ドロンさまにはこういう禍禍しい役が良く似合います(笑)

善や道徳が死んでしまうということは、その人にも死をもたらすという示唆

ただ投身するドロンさまが、あまりにチープな人形にはちょっとがっかり(笑)

 

黒髪のブリジット・バルドーの退廃した美しさは人間離れしていて

もうムンクの絵画の中の女性のようでした

 

 

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第三部(現代篇)「悪魔の首飾り」
原題はIl ne faut jamais parier sa tête avec le diabl」
悪魔に首を賭けるな

監督/フェデリコ・フェリーニ
脚本/フェデリコ・フェリーニベルナルディーノ・ザッポーニ
音楽/ニーノ・ロータ
撮影/ジュゼッペ・ロトゥンノ
出演/テレンス・スタンプ、サルボ・ランドーネ

 

原作は大幅に翻案され、アル中で落ち目のシェークスピア役者の

幻覚と不安と焦燥感を描いた悪夢世界の疑似体験

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テレンス・スタンプの衰弱しきった病的な演技も凄まじいのですが

大きなボールを持った少女の、怖くて怪しく美しい姿には

ジェーン・フォンダブリジット・バルドーも消えた(笑)


さすがフェリーニ、映像の魔術師と呼ばれるだけのことはある(笑)

この少女の表情がその後のホラー映画に大きな影響を与えたことは

間違いありません

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イタリアに映画の撮影のためやってきた落ち目の英国人俳優

トビー・ダミット(テレンス・スタンプ)は迎えのプロデューサーから

映画はキリストを主役とした西部劇で、ドライエルとパゾリーニの中間をいき「

少々ジョン・フォードの味を加えた画期的な映画・・

なのだと説明を受けます(笑)

 

空港のロビーで群がる怪しげなインタビュアーやパパラッチ

異様人工的なテレビのトーク番組撮影

わけのわからない映画賞の授賞式

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ただ話題が「悪魔」に触れた時だけ、トビー・ダミットは身を乗り出し

「私にとって悪魔は可愛くて陽気だ 少女のように」 と答えるのです

そして授賞式を逃げ出し、報酬のフェラーリに乗って走り出す

 

ニーノ・ロータのモダンな音楽に乗っミュージカルのような軽やかさと

人物がデフォルメされシュールフェリーニの猥雑

現代象徴する高級車が、古くから残っているローマ市街をライトで照らす

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走っても走っても車を止めることのできなかったダミット

やがて通行止めの標示を蹴散らし、崩れ落ちた高架に辿り着きます
その途切れた道の先に、白い毬を持った少女が立ち微笑みかける
ダミットは笑い、車を一度後退させて少女に向かい一気に突っ込みます

道に張られていたワイヤーが血で赤く染まり浮かび上がる

少女はほほ笑み、白い毬のかわりに

道に転がるダミットの首に手を伸ばすのでした

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底知れぬ絶望と、暗闇に飛び込んでしまいたい願望

 

これ短編映画としてもホラー映画としても

結構な傑作だと思いますよ(笑)

フェリーニを古いとか、難しいくて苦手という人でも見やすいし

若いムービーファンの初フェリーニ作品としてもお薦めだと思います

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これはもう3作品とも間違いなく隠れた傑作

しかも変態映画としても逸品(笑)

 

久々の「お気に入り」を献上させていたたきます




【解説】allcinema より

エドガー・アラン・ポーの怪奇幻想小説を、仏・伊を代表する3大監督が競作したオムニバス作品。第1話「黒馬の哭く館」“Metzengerstein”はR・ヴァディムが監督。当時の妻であったJ・フォンダとP・フォンダ主演で、黒馬に乗り移った男の魂によって死へと誘われる令嬢の姿を妖しく描く。第2話「影を殺した男」“William Wilson”の監督はL・マル。同姓同名の男の存在に脅かされるウィリアム・ウィルソンの末路を追ってドッペルゲンガーの恐怖に迫る一編で、暗い画面とA・ドロンの神経質的な演技がじわじわとスリルを生む。最後の第3話「悪魔の首飾り」“Never Bet the Devil Your Head”はF・フェリーニが担当。飲酒によって人生を転落しつつある俳優の前に現れる少女の幻影。あまりにも綺麗な少女の姿がかえって不気味な感じを出し、舞台を現代に置き換えた事もあってか“ミスマッチが作り出す恐怖”の醸造に長けている作品。3篇の中ではもっとも出来が良いが、他の2篇も監督の個性がうまく発揮されており、トータル・バランスにおいて優れたオムニバス映画といえよう

ショック療法(1972)

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原題も「TRAITEMENT DE CHOC」(ショック・トリートメント)

公開当時はアラン・ドロンの全裸走行が話題になったそうですが

ドロン様があまりに無邪気で楽しそうなのがショックだわ(笑)

でもフランスのヌードビーチは、日本の銭湯文化のようなものかも知れませんね

老中男女のまっぱに、いやらしさを感じることはありません

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しかもワカメ食やジャグジーやサウナで若返りできるなら

フランスにも食堂付き、格安床屋付き、マッサージ付き、漫画読み放題

日本式スーパー銭湯を作ったら絶対ヒットしそう

銭湯経営者の皆さん、ヨーロッパでビジネスのチャンスですよ(笑)

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冒頭、トラックで運ばれる南米系の若い男たち

 

アパレル業界で働く38歳のエレーヌ(アニー・ジラルド)は

恋人を若い女性に奪われ、男友達のジェロームの紹介で

若返りできるというサナトリウム(長期療養所)にやってきます

そこには不老長寿を願うブルジョワが治療を受けるため集まっていました

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しかし事業失敗で療養できなくなってしまったジェロームの自殺や

従業員たちの会話から(エレーヌはポルトガル語が理解できる)

療養所の所長デブリエ博士(アラン・ドロン)疑問を抱き始めるのですが

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人気絶頂期の、長い前髪が最高に似合うドロン様から

「やってみる?」と聞かれたら、断れる人いないよね(笑)

ベッドに誘われたら、断れる女性もいないよね(笑)

現実に治療には効果が感じられ、若返った気分になりますが

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マノエルと名乗る少年から逃がして欲しいと頼まれ

その夜マノエルを迎えに行くと、彼に意識はなく

やって来た医師たちが血液を抜く姿を見てしまいます

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若返りの血清は若い男の内臓から作られていた

それを知ったエレーヌはデブリエと格闘になり、彼を刺し殺してしまいます

警察は殺害犯としてエレーヌを逮捕

そして彼女の供述はすべて、彼女の妄想だと判断するのです

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アンチエイジングというよりは、新興宗教的で

ツッコミどころも満載な、B級C級なホラーサスペンスなんですけど(笑)

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前衛的なスコアといい、大物スターたちのオールヌードといい

今となってはありえない「貴重」な作品には間違いありません

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【解説】allcinema より

アラン・ドロンが謎めいたドクターに扮した、若返りの治療を行う海辺の療養所を舞台にしたサスペンス・スリラー。公開当時、ドロンがオールヌードで浜辺を走る姿が大きな話題を呼んだ。
順風満帆の人生を歩んできたエレーヌも36歳となり、体力にも人生にも疲れが見えてきた。そんな時、友人のジェロームの誘いでブルターニュ地方の海辺にあるサナトリウムを訪れる。そこではドクター・デビルの指導の下、若返りのための様々な療法が行われていた。数人のゲストと共に治療を受け、体調を取り戻していくエレーヌ。しかし一方で、そこで働くポルトガル人の青年たちは常にどこか具合が悪そうだった…。

 

 

ロスト・コマンド/名誉と栄光のためでなく(1966)

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原題も「Lost Command 」(失望した兵士)のアメリ/フランス合作映画

アンソニー・クイン、アランドロン、 ジョージ・シーガル

ミシェル・モーガン、クラウディア・カーディナーレという豪華なキャスト

アメリカでは戦争映画の中でも人気が高く

フランスでも1966年の興行成績は第5

1位は「La Grande Vadrouille」”ラ・グランド・ヴァドルイユ”

にもかかわらず知らないタイトルでした(ミリタリーファンのくせに!笑)

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1954年、フランスの植民地であったベトナムでの

ディエンビエンフーの戦い共産主義のヴィエットミン軍による攻撃)

での敗北の瞬間と

その後、貧しい農民出身ながらアルジェリア戦争で英雄になった

パラシュート落下部隊部隊長が主人公の話

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退役した貧しい農民(プチ犯罪者)出身の部隊長が

指揮官としての実力はもちろん、力のある女性や戦友からの協力を得て

アルジェリアのテロを制圧することに成功、したというのが主なストーリー

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モデルは海兵歩兵パラシュート連隊の前身であった部隊を率いた

フランス領インドシナの実際の司令官マルセル・ビガード

その後のフランスの「型破りな」戦争思考に支配的な影響を与えた

と考えられている有名な軍人

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とはいえ、第二次世界大戦以降の戦争の背景がイマイチわかっていないので(笑)

のめり込むことはできませんでしたが

勝つためには容赦はしないし汚い手も使う

手の届かない女を手に入れるために出世する

戦場での英雄を決してヒーロー扱いしない手堅い作りには好感もてます

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また普通の庶民がマッチ箱を用いた小型爆弾を作ったり

自爆テロを扱った先駆けともいえる作品かも知れません

 

ディエンビエンフーの戦いの最後の瞬間

ラスペギ中佐(アンソニー・クイン)率いる窮地にやってきた

パラシュート部隊のひとり、歴史学者で記録係のインテリ大尉

エクスラビエ(アラン・ドロン

考え方や行動のスタイルは違うけれど

軍人として特別な魅力をもっているふたり

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インドシナから帰国し退役したラスペギ中佐は

戦死した少佐の未亡人、クレアフォン伯爵夫人(ミシェル・モーガン)

指揮官に復職し軍事的目的を果たしたいと会いに行きます

そして伯爵夫人のコネで、アルジェリアのメリーズ将軍の下

パラシュート第10連隊の指揮を与えられることになります

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旦那さん死んでからすぐ、ほかの男と寝ても不謹慎にならないのが

フランス文化のいいところ(笑)

「将軍になって迎えにくる」と誓うアンソニー・クイン

少年のようで可愛い

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ラスペギ中佐はベトナムでのかっての仲間を集めます

キャプテン・ボワフェレス、ディア医師、そしてエクスラビエ

だけどアラブ人将校ベン・マヒディ (ジョージ・シーガル) だけとは

連絡がつきません

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マヒディの弟は(フランスからの)「独立」という落書きで警察に射殺され

そのうえバス会社を営んでいた裕福な実家は

市政側のライバル会社によって放火され、焼き払われてしまいます

弟と両親を失ったマヒディはアルジェリア国民解放戦線(FLN)の反乱軍に加わり

軍隊で得た知識をもとにゲリラ指導者になっていました

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そしてマヒディの美しい妹ミシェル(クラウディア・カルディナーレ)が

娼婦(のふりをしてスパイ活動やテロ支援)と

軍人から非難されているところに遭遇したエクスラビエは

上官としてミシェルを擁護し、しかも彼女に恋をしてしまいます

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多すぎず少なすぎず、女性の使い方は上手い

しかも相手は女王陛下か伯爵夫人のミシェル・モーガン様と

イタリアのセクシー大女優、CC様だ

このふたりをいざ目の前にして、惚れない男がいたら出てこい(笑)

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やがて戦況が厳しくなるにつれ、仲間たちは殺され

己の感情を抑え敵にも敬意を払うという騎士道は失われ

しかも苦しませながら殺すという、恐怖で弱者を支配しようとする

復讐心と悪知恵で、無関係な罪のない庶民まで大量殺戮してしまう

 

エクスラビエはそれを愁い(女は死ぬほど殴ったがな)

ラスペギは行き過ぎた行為を間違いだと承知しながら

勝つためにはありうる判断だと(戦犯を)見逃すのです

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晴れ晴れしく軍事表彰されるアンソニー・クインを見た後

   アラン・ドロンはどこに向かったのか

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それぞれ観た人の答えはあるでしょうが

ほぼ99%クラウディア・カルディナーレを探す旅に出たと

思ったことでしょう

 

 

 

【解説】allcinema より

インドシナ戦争後に新任地へついたフランス軍将校が、かつての戦友との哀しき再会や部下の宿命的悲恋を目の当たりにしながら非情に任務を全うしていく姿を描いたドラマ。
 インドシナ地域でゲリラ部隊と激闘を繰り広げたフランス軍パラシュート部隊の将校ラスペギイ。彼はその戦争終結後、フランスへ帰還するも、ほどなくしてアルジェリアで新

大地(1937)

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原題は「The Good Earth」(良い地球)

原作者のパール・バックウェスト・バージニア生まれですが

幼少時代に宣教師の両親共に中国江蘇省に渡り

英語と中国語バイリンガル、しかも自分は中国人と信じて育ったそうです


自称「生まれと祖先はアメリカだけど、心は中国人」 

本作でも映画化は中国人か、中国系のキャストを望みましたが

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当時のアメリカでは、観客が白人以外の主役を受け入れる

心の準備ができていなかったため、ポール・ムニが起用

ヒロイン役を予定していたアンナ・メイ・ウォンが

ヘイズコード反誤解ルールで降ろされてしまいます

(白人と有色人種が結婚できない法律 ← 現実ではなく映画の中の役なのに!)


おまけに中国で行われた撮影が、中国政府とアメリカで意見が分かれ

カリフォルニアで再撮影しなければならなくなり

ジョージ・Wヒル監督は、ハリウッドに戻ると自殺

撮影はシドニー・フランクリンが引き継ぐまで延期され

プロデューサーのアーヴィング・タルバーグが急死するという

曰く付きだらけの作品

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プロットは、中国の故事「糟糠(そうこう)の妻は堂より下さず」から

「糟糠の妻」とは、酒の糟(かす)や糠(ぬか)しか

食べるものがないほど貧乏と苦労をともにした妻のこと
「堂より下さず」は、表座敷から下げないという意味

そんな妻ほど正妻の地位から追い出してはならないという格言


時代は清朝末期の中国安徽省

小さな畑で麦を栽培し生計を立てている貧農のワンロンは

嫁となる家事奴隷のオランを迎えにいくことになっていました

妻を迎えるのに貴重な水で身体を洗い、ニヤケ顔が止まらない(笑)

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オランは器量よしではありませんでしたが

ワンロンはオランの重い荷物をもってあげたり、桃を買い与えたりします

奴隷扱されるのでは、と怯えていたオランはワンロンの優しさに笑顔になる

ワンロンが捨てた桃の種を拾い、庭に植えて育てることにします


やがて長男が恵まれ、次男と長女も産まれささやかだけど幸せな日々

ワンロンは真面目一徹に働き、お金を蓄え土地を増やしていきました

しかし干ばつや飢饉が続き、一家は仕事を求め都市に移住する決意をします

そこでオランは生きるため、子どもたちに物乞いの指導(笑)

だけどプライドの高いワンロンは、恵みや盗みを決して許せない

家族を守るためなら生きる手段を選ばない妻と、清貧を貫こうとする夫

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そんな夫婦の溝が深くなったある日

辛亥革命の混乱に巻き込まれたオランは

暴徒に襲撃された大邸宅の床に押し倒されてしまいます

気が付いた時、富豪の残した宝石が詰まった袋を見つけました

一家は故郷に戻り、再び農業を営み土地を広げていく

ワンロンがやり直せたのは、すべてオランが拾った宝石のおかげでした

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なのに裕福になって慢心したワンロンは、連れていかれたサロンで

若い歌姫、 蓮華に心を奪われてしまいます

蓮華のため地主の館を買い占め、第二夫人に迎い入れ

蓮華のためオランが大切に守っていたふたつの真珠を譲ってくれと言う

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だけど蓮華は若くてイケメンなワンロンの次男を誘惑していました

その真実を幼馴染の使用人から教えられ

激怒したワンロンは長年の友人をクビにし(ばかだ)

次男まで勘当(ばかだ)

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権力とお金を得た人間は、かっての苦労を忘れ

大切な人との絆さえ見えなくなってしまうのか

そんな身勝手な男に再び試練はやって来る


大空を埋め尽くし麦畑を襲来するイナゴの大群

この映像はかなり迫力あります

まさか本当にイナゴの大群がやってくるのを待って撮影したのでしょうか(笑)

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しかし農政を学んだ長男の機転と

運よく風向きが変わったおかげで、被害は最小限に食い止められました


その時やっとワンロンは自分の成功は

家族の協力あってだと気が付いたのです(遅いよ)

次男と和解し妻に真珠を返したものの、時すでに遅し

オランは過労で命尽きようとしていました

そして「土地は農民の命」という言葉を残し息絶えてしまいます

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ワンロンは結婚の日オランの植えた桃の木の前にひざまずき

「おまえが大地だった」と嘆くのでした


ポール・ムニとルイーゼ・ライナーという白人が

中国人を演じたことに違和感や酷評もあるようですが

私は数分で白人だとか中国人だとかは、気にならなくなりました

個人的には、ルイーゼ・ライナーよりアンナ・メイ・ウォンちゃんを

眺めたかったという願望は残ったけど(笑)

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名作や傑作のリメイクは、好きではないのですが

この作品に関しては、ウォン・カーウァイの新解釈とか

中国ロケ、中国人キャストで制作し直してもいいのではないかと思います


それでこそパール・バックの思いも、浮かばれるというもの

アジアとアメリカを繋いだ、偉大な女性なのだから



【解説】KINENOTEより

パール・バック出世作の小説を映画化したもので、「科学者の道」「黒地獄」のポール・ムニと「逢瀬いま一度」「巨星ジーグフェルド」のルイゼ・ライナーとが主演する。脚色は、オウエン及びドナルド・デーヴィスの舞台劇を参酌して「ロミオとジュリエット」のタルボット・ジェニングス、「白い蘭」のクローディン・ウェスト及びテス・スレシンガーが協力して当たり、「ダアク・エンゼル(1935)」「白い蘭」のシドニー・A・フランクリンが監督に任じ、「裏町」「巨星ジーグフェルド」のカール・フロイントが撮影した。助演者は「結婚クーデター」のウォルター・コノリー、「沙漠の花園」のテイリー・ロッシュ、「我は海の子」のチャーリー・グレイプウィン、「夕陽特急」のジェシー・ラルフ等で、中国人俳優多数も出演している。

愛しのシバよ帰れ(1952)

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原題は「COME BACK, LITTLE SHEBA (戻ってきて、リトルシバ)

シバ」とはかつて飼っていた犬のこと


ある朝、部屋を探している女子大生マリーがローラを訪ねてきます

ローラから話を聞いた夫のドクは渋りますが

再訪してきたマリーを一目見たとたん

ドクは洋裁部屋を貸すことを快諾します

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どう見ても奥さんのほうが、人格的にちょっと危ない感じなんですが

実は夫のほうが断酒会に通う元アルコール依存症

これはアルコール依存症患者が断酒したとしても

ちょっとした不満や不安がきっかけで

再び依存症に戻ってしまう可能性を描いているのですが

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実はイネイブラーについても考えさせられる作品

「イネイブラー」とは嗜癖(しへき=有害な習慣)から生じる問題行動

依存症や中毒、ひきこもり、摂食障害、窃盗癖・・する人を助けようとして

実は嗜癖を助長している患者の身近な人間のこと

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ドクは名門医大に通っていたにもかかわらず

ローラが妊娠し父親によって家から追い出されたため

大学を中退して結婚、指圧師として働きますが

ローラは流産してしまいます

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夢を諦め、子どもにも恵まれることはなく

ドクは酒に溺れ、親の残した遺産を酒代で使い果たしてしまいます


ローラはドクがまた酒を飲むのではないかと怯える日々を送り

朝起きれず、食事の用意も掃除もほとんどすることはない

ラジオを聞いて好きなダンスを踊り

いなくなったシバのことばかり考えている

(シバは本当に犬なのか、本当に飼っていたかは疑問)

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そんなふたりは若いマリーと遠距離恋愛中のブルースに

かっての自分たちを見たのかもしれないし

流産した子が成長していたらと、マリーと重ねたのかもしれない

ドクは聡明なマリーを大切に思うようになります

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しかし可愛いマリーがタークという

やり投げの陸上競技選手と付き合いだしたのをきっかけに

マリーがタークをモデルにしたポスターを描いたり

夜中にマリーの部屋にタークが入っていくのを目撃して大激怒

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もちろんマリーはセックスを強要するタークを断り

故郷の恋人ブルースとの結婚を選びます

ローラはそれを歓び、マリーを迎えに来るブルースのために

家を掃除し、部屋を飾り、料理を作る

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それを知ったドクは、ローラの妊娠は本当に自分の子だったのか

という疑念を抱いてしまった

ブルースも俺と同じように女に騙されたバカな男なのだ


ドクの被害妄想が、再び酒瓶を手に取りどこかに行ってしまう

マリーとブルースを祝福することもなく

翌朝帰ってきたときは泥酔で正気を失っていました

ナイフを握りローラを襲い、首を絞めて殺そうとします

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バート・ランカスターの豹変ぶりがすごい(笑)

普段は穏やかな人間がアルコールによって全く別人になってしまう

暴言、暴力、その奥にある嫉妬や憎しみといった感情の揺れを

見事に表現しています


ローラから連絡を受けた断酒会のエドとエルモ

意識を失ったドクを私立病院(精神病院)に入院させました

そこでベッドに縛り付けられ、昏睡状態に陥ったドクは

「愛しいローラ」と何度もうなされていました

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義務ではなかったのに、愛していたから結婚したのに

勇気がなくて真実を見つめることができなかった

複雑にして、悪いほうにばかり考えて、酒を飲んで忘れようとする


そんな夫によかれと思って、余計な口出しをしてしまう

それは相手を苛立たせ、ついには怒りが爆発して暴力を受けてしまう

それでもそのあとの過剰な夫からの優しさに

「彼を助けられるのは自分しかいない」という愛し方の勘違い

これがイネイブラー

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お喋りで、オドオドしていてだらしなく、

思わず殴りたくなるような(でも理性のある人間なら殴りません)

イラつく主婦をシャーリー・ブースが好演

アカデミー主演女優賞を受賞していますね


退院したドクは「見捨てないでくれ」とローラに謝罪し

ローラはマリーとブルースが結婚したことを報告し

これからは料理も掃除もすると

そして「もうシバの話はしない」と約束するのです

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過去を振り返っても、後悔しても、やりなおすことはできない

未来に生きるしかないと悟ったふたり


でもこれで酒を止めるか止めないかは、また別の話(笑)

朝起きて後悔しても、夕方には忘れるのが依存症なのだから



【解説】映画.comより

ウィリアム・インジの舞台劇の映画化で、「底抜け落下傘舞台」のハル・B・ウォリスが製作にあたった1952年作品。脚色はケッティ・フリングス、監督は舞台の演出を担当したダニエル・マンである。撮影は「その男を逃すな」のジェイムス・ウォン・ハウ、作曲はフランツ・ワックスマン。主演は舞台と同じシャーリー・ブース(52年アカデミー主演女優賞獲得)と、「真紅の盗賊」のバート・ランカスターで、テリー・ムーア(「猿人ジョー・ヤング」)、リチャード・ジャッケル「暴力帝国」、フィリップ・オーバー、リザ・ゴルム、ウォルター・ケリーらが助演する。

 

天使の入江(1963)

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原題は「La baie des anges」(天使の湾)

天使の湾とはニースから、プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール

アンティーブ岬まで広がる地中海の湾のこと

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日本では長らく未公開で、初めて公開されたの

20073月のフランス映画祭での特別上映

モナコカンヌのカジノが制作支援(ギャンブル中毒の映画なのに!笑)

ジャンヌ・モローの衣装を手がけたのはピエール・カルダン

(紹介したのはココ・シャネル、この出会いでふたりは大恋愛に発展

ギャンブラーの気持ちを表すような高揚感ある音楽はミシェル・ルグラン

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パリの銀行で働くジャンは同僚のキャロルから

賭けで大儲けをし新車を購入したと聞かされます

そして無理やりキャロルにカジノに連れて行かれるのですが

ビギナーズラックで大儲け

堅物な時計職人の父親の反対を無視して

休暇を利用しニースのカジノに向かいます

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そこで白いスーツに金髪の美女、ジャッキーと出会い

最初は賭けに慎重だったジャンは、たった一晩でお金の感覚が麻痺してしまい

ジャッキーに振り回されてしまいます

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ジャンヌ モローの、いわゆるファム・ファタールもの

ギャンブル依存症で、わがままで、嘘つきで、思いやりがない

無一文になれば知り合いからお金を借りるし(返す様子はない)

ジャンのお金もジャンに内緒で賭けるし、全部すっても平気な顔

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大金が手に入ったら入ったで、お酒を奢って、高級レストランに連れて行って

車を買って、ドレスを買って、高級ホテルではスィートルーム

そして有り金をまたすべてルーレットですってしまう

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だけど彼女はそのことを十分に自分でも理解している

ギャンブルのせいで離婚して、子どもの養育権は元夫のもの

カジノに来ている金持ちの男性や、ディーラーに色仕掛けし

運もお金もなければ、駅の待合室で寝る生活

それでもギャンブルをやめられないことを知っているし

ギャンブルで破滅したことにも後悔していない

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それなのにジャンはジャッキーに「愛してる」という

一緒にパリに帰って、ギャンブルの世界から抜け出そうとします

ジャンは父親に手紙を書き、書留で5万フランを送ってもらいました

それは父親が真面目に働いてコツコツと貯めたお金だということが

誰にでも想像できます

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そうしてジャッキーをカジノに迎えに行きますが

ジャッキーはパリに行くつもりはありません(パリのカジノでは出入り禁止)

が、突然気が変わり

 

カジノを去っていくジャンを追いかけるという

オープニングと同じ一点消去な構図を用いた

あっさりしすぎるラスト

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ハッピーエンドのように見えるけど、到底そうは思えない

ジャッキーの目当ては、ジャンの父親が送ってくれた

なけなしの5万フランを持って再びカジノに戻ること

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はたしてジャンはジャッキーの甘い誘惑に勝てるのか

それともこのまま共依存する関係を続けてしまうのか

私はジャンはジャッキーを断れないと思います

挙句の果て、勤め先の銀行で横領でもして

刑務所送りになるでしょう

 

【解説】映画.comより

シェルブールの雨傘」などで知られる名匠ジャック・ドゥミの長編第2作。南仏ニースの美しいリゾート地を舞台に、ギャンブルに魅入られた男女の運命を描く。パリの銀行で働くジャンは、同僚に連れられて訪れたカジノで大当たりする。すっかりギャンブルの魅力に取りつかれた彼はニースの安ホテルに居を移し、カジノ通いの毎日を送るように。そんなある日、カジノで出会ったブロンド美女ジャッキーと意気投合したジャンは、彼女とパートナーを組んでますますギャンブルにのめり込んでいくが……。ジャッキー役に「死刑台のエレベーター」のジャンヌ・モロー。日本では2017年の特集上映「ドゥミとヴァルダ、幸福(しあわせ)についての5つの物語」で劇場正式初公開。

 

散り行く花(1919)

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原題は「Broken Blossoms or The Yellow Man And The Girl

(壊れた花、あるいは黄色い男と少女)

映画の父DW・グリフィス×サイレントの女王リリアン・ギッシュ

とても有名な映画ですが初見(笑)

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"flower" ではなく "blossom" なのは
大輪の花ではなく、観賞用に作られた花でもない
果実をとるため咲く花(若い女性のたとえ)だから

しかし実を作る前に散ってしまう
複数形なのは、同じような少女がたくさんいるということ

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意外だったのは、中国(仏教)は平和な文明、西洋は野蛮な文明

白人男性優位、女性蔑視、あくまで弱者な有色人種という構図を

はっきりと打ち出しているところ

(見ようによってはロリコンの愛玩プレイだがな ←

 オマエは相変わらずそういう見方しかできない女だよ 笑)

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実際に1919年は第一次大戦が終わった翌年で

戦勝国の日本に対して排日運動があるなど

欧米諸国では「黄禍論(こうかろん)」が激しい時代で

グリフィスは黄色人種に対し「寛容」というテーマで制作したそうです

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上海で品のない振舞いをするアメリカ人の水兵たち

ひとりの青年(イエローマン)が西洋に仏教を伝えようと決意します

しかしたどり着いたロンドンのスラム街では

小さな雑貨店の店主になることしかできず、やがて阿片に溺れていきます

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同じスラム街に住む15歳の少女、ルーシーは

しがないボクサーで、酒好きで女好きの父親に

殴られる日々を送っていました

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ある日、激しい暴力により倒れたルーシーを

イエローマンは助け店の2階で匿うことにします

ルーシーに綺麗な服に髪飾り、食べ物と人形を与えます

はじめてひとの優しさに触れたルーシー

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ふたりの関係はプラトニックなものでしたが

娘が中国人と暮らしていると知った父親は激怒し

ルーシーを連れ戻し、殴り殺してしまうのです

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26才のリリアン・ギッシュが15才の少女を演じ

その可憐さが日本でも評判になったそうですが

身長は164センチとそう小柄なわけでもない(笑)

相手役のリチャード・バーセルメス

父親のドナルド・クリスプを大きく映すことで

(そして昔の俳優は顔がデカい 笑)

華奢に見せることに成功しています

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また指で口を広げ、笑顔を作るシーンは

リリアン・ギッシュ自身が考えたものだそうです

 

最後、銃が出てきてしまうところはちょっと残念

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さすがに100年前の映画なので

イマドキの4Kテレビで見ると映像の状態は良くないものの(笑)

アートスティックな画作りに、目が離せませんし

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人種差別、麻薬や風俗、虐待死

それを引き起こす最もな原因が貧困であることなど

世の中の社会問題を共感をもって取り上げつつ

純愛ドラマとして完成した傑作でした

 

【解説】allcinema より

絶対的ロリコンのグリフィスが永遠の少女リリアンに、究極の乙女を演じさせる。ここで彼女の被る苦難は、元プロボクサーの父による虐待。彼の他の大作のヒロインほど大仰な悲運ではないだけに、その逃れられなさは絶望的。名優クリスプがまた、この希代の憎まれ役に入魂の演技を見せるので、観客の誰もがうすうす、死の他に彼女を解放する手段がないことを予感する。その彼女に想いを寄せるのがバーセルメスの純真な中国商人。本来なら異様な、白人の東洋人への化身も、このバーセルメスにだけは許される。そんな真摯さに溢れた演技で、リリアンと清らかな愛を紡いでいく。後にゴダールによって「勝手にしやがれ」で引用されるラスト・シーンが美しい。瞳は悲しみを湛えているのに、リリアンはその白魚の指で口の端を上向きに歪ませて、最後の微笑を作るのである