ウインド・リバー(2018)

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原題も「WIND RIVER」(風の川)

プロットはFBI捜査官がレイプ殺人犯を追うという

よくあるクライムサスペンスなのですが

見せ方が巧みなうえ、もの悲しさを含む重厚な仕上がりで

とても良く出来ていると思います

 

アメリカ中西部ワイオミングの辺境の地、ウィンド・リバー

ネイティヴ・アメリカンの居留区

コリー(ジェレミー・レナー)はそこで、家畜を襲う野生動物を駆除する

FWS(合衆国魚類野生生物局)のハンターをしています

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子牛が殺されピューマの狩りのため山奥に行ったコリーは

雪に埋もれたネイティブ・アメリカンの少女

ナタリーの変死体を発見します

BIA(インディアン部族警察)署長のベンは

すぐにFBIに連絡しますが

やって来たのは新人女性捜査官のジェーンひとり

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ウィンド・リバーは鹿児島県と同じくらいの面積で人口は23万人

失業率が高く、アルコール依存者も多い

犯罪発生率は全米平均のなんと5~7倍(被害者は先住民族

にもかかわらず部族警官は6名しかおらず

そのうえ居留地は一応連邦政府の土地であるため

事件を自由に捜査する権限がありません

いくら頼りなくても、この女性捜査官に任せるしかないのです

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検死の結果、少女には裂傷やレイプ痕があるものの

死因はマイナス30℃の冷気を吸ったことによる、肺の出血による窒息死

他殺ではないと断言します


連邦法にはレイプ犯罪の規定がないため

レイプ犯を逮捕するのは州や市の警察になるわけですが

州や市の警察は居留地の中で行動することはできません

つまり居留地ではレイプ犯を捜査することも、裁くことも出来ないのです

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そこでジェーンはFBI本部に何も報告しないまま犯人を捜すことにします

そして土地勘のあるコリーに助手を頼むのです

 

コリーには断れない理由がありました

彼の愛娘も16歳の時行方不明になり

山に捨てられた遺体はコヨーテに食い荒らされ検死もできなかった

という過去があったのです

そして愛娘と死んだナタリーは親友でした

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土地は広いけど閉ざされた空間なので

すぐに犯人の足取りは掴めるんですね

ナタリーの兄の証言で、ナタリーは

掘削現場の白人警備員マットと付き合っていたことがわかります

そこでコリーがスノーモービルの跡を追っていくと

撲殺されたマットの死体を発見します

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ウィンド・リバーは山に死体を捨てたら

あっという間に吹雪で死体も足跡も隠れてしまうし

肉食の野生動物も生息するので

ほとんど発見されることがないんですね

 

しかもそんな猛獣がウヨウヨいるので

誰もが護身用とかじゃなくて、戦争か!っていうくらい

高性能のライフルやマシンガンまで持っている

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ジェーンと部族警官たちは掘削現場に事情聴取に行きますが

全員どうみても怪しい(笑)

明らかに犯人に決定なんですけど、そこからの見せ方がまた巧い

 

居留地ではネイティヴ・アメリカンが白人を逮捕する権利がないという

裁定が下されているため
部族警官警備員に銃を向けられて膠着(こうちゃく)状態になっても

逮捕することが出来ないのです

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そしてジェーンがトレーラーハウスをノックしたところから

事件の真相が明かされます

 

地味だけど見ごたえのある銃撃戦

ナタリーを襲ったのと、娘を殺した犯人が同一人物かどうかはわからない

でもコリーは復讐せずにいられませんでした

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あくまで白人側から見た、ネイティヴ・アメリカンの姿ですが

今でも多くのネイティヴ・アメリカンが僻地で差別され

時代に取り残され、貧しい暮らしをしているという

情報発信として成功していますし

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ジョン・ウェインの西部劇時代から

変わっていないという事実に驚かされる

 

ネイティヴ・アメリカン女性の行方不明者の統計が存在しない」

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実話ベースで、居留地での行方不明者が多いことや

部族警官が6人しかいないことは社会問題になり

2012年にオバマ大統領が6倍の36人にしたそうです

それでも少ないけど、それが精いっぱいだったんだろうな

 

 

【解説】KINENOTEより

「ボーダーライン」脚本のテイラー・シェリダン初監督作品。雪深いネイティブアメリカン居住地“ウィンド・リバー”で女性の死体が見つかる。新人FBI捜査官ジェーンは、心に傷を持つハンターのコリーと共に謎を追い、思いもよらなかった結末にたどり着く。出演は、「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナー、「マーサ、あるいはマーシー・メイ」のエリザベス・オルセン、ドラマ『ウォーキング・デッド』のジョン・バーンサル

厳寒の大自然に囲まれた、雪深いアメリカ中西部ワイオミング州にあるネイティブアメリカンの保留地“ウインド・リバー”で、突如女性の死体が発見される。FBIから単身派遣された新人捜査官ジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)は、遺体の第一発見者で地元のベテランハンターであるコリー・ランバートジェレミー・レナー)に協力を求めるが、不安定な気候と慣れない雪山の厳しい条件により捜査は難航する。隔離されたこの地では多くが未解決事件となる現状を思い知るも、不審な死の糸口を掴んだコリーと共に謎を追うが、思いもよらなかった結末が待ち受けていた。

好きにならずにいられない(2015)

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原題は「Fúsi 」(フーシ=主人公の名前)

 

フーシはアイスランドの空港で働40代男で

美容師の母親と2人暮らし

ミリタリーヲタクでヘビメタ好き

趣味はジオラマとラジコン

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その巨漢な容姿のせいで職場の若い同僚からバカにされ

都合のいいように利用されています

マイノリティ差別って人種や性的少数者に限らず

ごく一般の普通の人間にもあるんだと教えられる

 

日本でのキャッチコピーも43 デブ オタク ドウテイ」

作中のフーシを虐めている奴らと同じ感覚に、むかつく

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母親に新しい恋人ができて、引きこもりがちなフーシに

女性との出会いを期待してダンスチケットのプレゼントします

渋々行ってみると天気は大荒れ、シェヴンと名乗る小柄な女性が

家まで送ってくれないかとフーシの車に乗り込みました

 

そうしてふたりはドライブしたり食事するようになり

フーシは付き合っているつもりになってしまい

エジプト旅行に行くことを提案しますが

突然シェヴンから「勘違いさせてごめんなさい」と

打ち明けられてしまいます

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醜男なのにキャバクラに行ったら意外とモテるみたいな(笑)

フーシもそんなお人好しだけど、賢そうな男

なので近所の子どもたちからも好かれてしまう

だけど、その気になれば女性から振られ

子どもに優しくすれは、子どもの親から変質者扱い

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でもフーシは自分のことをよく知っていて

自分の身に降りかかる不幸を真摯に受け止め

決して相手を攻撃しません

 

有休を使い、鬱になったシェヴンの代わりに清掃会社で働き
シェヴンのために家事をして猫の面倒を見る

清掃会社で働く皆はいい人で、試合観戦に誘ってくれたり

ビールをおごってくれたり

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悪いことのあとには、ちょっと善いことがある

そんな「救い」の見せ方がうまい

 

やがて回復したシェヴンから「一緒に暮らそう」と言われ

フーシが引っ越ししたその日

またもやシェヴンの気が変わってしまう(双極性障害

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それでもフーシはシェヴンにやさしい

マイノリティにしかわからない

マイノリティであることの辛さ

フーシはシェヴンがやりたがっていた花屋の鍵をポストに入れ

ひとりエジプト行きの、初めての飛行機に乗り笑ってしまう

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決してハッピー・エンドではないけれど

フーシの成長を感じられるラストにほっこりした気分

気が付けばこんな彼氏が欲しいと思わせてくれます(笑)

 

 

【開設】KINENOTEより

アイスランドを舞台に、オタクでシャイな大男の恋の行方を綴ったラブストーリー。空港の荷物係として働くフーシは、ジオラマ製作とヘビメタ音楽好きな43歳の独身男。母親から勧められ、ダンススクールを訪れたところ、小柄な女性シェヴンと出会うが…。主演は“アイスランドモンティ・パイソン”と呼ばれる風刺番組の主要メンバーとして活躍したグンナル・ヨンソン。

うず潮(1975)

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原題は「LE SAUVAGE 」(ザ・ワイルド=野生)

イブ・モンタンカトリーヌ・ドヌーヴ

破壊と、無茶っぷりの、無人島サバイバル

まさかドヌーヴがここまでやるとは

おっぱいポロリのサービスショットまであります(笑)

音楽はミシェル・ルグラン


その美貌でイタリアン・マフィアの大物、ヴィットリオに求婚された

フランス人ネリー(カトリーヌ・ドヌーヴ)は

4日後に結婚式を控えたパーティの夜、寝床を抜け出しタクシーで逃亡

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辿り着いたホテルで一息もつかの間、ヴィットリオがやって来て

たまたまネリーの部屋の隣に宿泊していたマーティン(モンタン)

婚前夫婦の痴話喧嘩に巻き込まれてしまいます

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親切心でネリーを助けたものの

これがとんでもない迷惑な最悪サイコ女

フランス行きの飛行機に乗せてやるものの

ナイトクラブのボス、アレックスから盗んだ

ロートレックの絵画が原因で搭乗できず

マーティンが独りで暮らすベネズエラの孤島まで追いかけてくる

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車も、船も、ロートレックも破壊して

本気度が凄すぎて笑えない


なによりイヴ・モンタンの作る自家製ワイン

新鮮野菜やハーブ、魚や鶏を使った手の込んだ料理を

ひっくり返って台無しにするという暴挙

これじゃあ誰でも怒るわ(笑)

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それでも美人というのはやっぱりお得なもので

ボロしか身にまとっていないカトリーヌ・ドヌーブ

だんだんと可愛く見えてくる不思議


いい男というのも、何歳になってもいい男で(笑)

実はイヴ・モンタンは高名な香水の調香師

巨大企業に嫌気がさし、孤島で自給自足の暮らしをしながら

ライフワークの香水作りをしていたのです

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農業も自給自足も無理だけど(笑)

こういう秘密基地のような場所での、独り暮らしには憧れる

 

マーティンはネリーへの愛に気付き

島を出る前夜にネリーを食事に誘いますが

ヴィットリオは婚約者を取り戻すため

アレックスは盗まれたロートレックを取り戻すために

島は見つけ出され、ネリーはボートで誘拐

マーティンの家は燃え尽きてしまいます

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翌日、飛行機に乗ったカメラマンがマーティンつけ

ニューヨークで回復したマーティンは

自分が勤めていた企業の会議に出席します

そこで会社への協力より、たとえ契約違反で訴えられても

自由になる道を選びます

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そして数か月か数年後、刑務所を出所したマーティンは

ネリーを探す旅に出るのです


奔放とは一言でおさまらない、圧倒的な生命力

これが大御所のドタバタコメディ

ラストにはペンキ塗りする汚れた顔のドヌーヴが

(当時32歳の色気で)しっとりと魅せてくれました

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ちなみにひとこと感想は

美味しい料理を作れる男は女を虜にする

実際フランス料理のシェフは、女性にモテモテなのだそうです

(クチも上手いんだろうがな 笑)



 

【解説】映画.comより

シェルブールの雨傘」「8人の女たち」のカトリーヌ・ドヌーブと国際的スター、イブ・モンタンの初共演作。結婚に嫌気がさしたネリーは、式直前に逃げ出してしまう。程なく婚約者に見つかってしまうが、通りがかったマルタンに助けられる。文明生活を嫌い孤島に住む彼のもとにネリーが押し掛けたことから、2人の奇妙な共同生活が始まる。音楽は「華麗なる賭け」でアカデミー歌曲賞を獲得した、ミシェル・ルグラン

ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男(2017)

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原題は「BORG vs McENROE

1980年、ウィンブルドンでのビヨン・ボルグとジョン・マッケンロー

勝戦に焦点を当てた

スウェーデンデンマークフィンランド合作のスポーツドラマ

なのでボルグのほうが主役寄り(笑)

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リアルタイムを再現したような緊迫感溢れる映像は

私もですが、実際に試合を見ていない人でも楽しめると思います

 

物語はウィンブルドン4連覇中

全仏オープン6回 、チャンピオンシップ(年末選手権)3回

グランプリスーパーシリーズについては16回優勝したビヨン・ボルグが

パパラッチされ、ファンに追いかけられ

そんな気の休まらない中

誰にでも紳士的に対応する姿が映し出されます

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一方で快進撃を続けるアメリカの新星、ジョン・マッケンロー

気に入らないことがあれば暴言を吐き、審判に抗議

コートにラケットを投げつる悪童として注目を浴びていました

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そんな対照的に見えるボルグとマッケンローですが

本当のふたりはよく似ていた、と、この作品では訴えます

 

ボルグもかっては手に負えない激情家でした

(しかも子ども時代を演じているのは、ボルグの実子 笑)

何度も試合中にキレてしまい、テニス界を追放されるまで陥りますが

その危機を救ったのがボルグの才能を見出したコーチ、ベルゲリンでした

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感情をコントロールすることや、スマートな振る舞いを教え込まれ

抑え込まれたエネルギーを試合にぶつけ、世界王者を目指します

 

一方のマッケンローは、良家のお坊ちゃん出身

絶対的権力の持ち主である父親に反抗できない、気弱な少年でした

だけど本当は父親が望む勉学より、テニスが大好き

そんなマッケンローのヒーローがボルグ

ボルグを真似てボルグと同じヘッドバンドをする

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これ羽生結弦クンが、少年時代プルシェンコが好きすぎて

プルシェンコと同じ髪型にしていたのと似ている(笑)

 

北欧のクールな映像がリアリティで

出ている俳優たちの成りきり度の凄さ(笑)

本人と見間違える役作り、テニスプレーの個性

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ボルグは怒りを抑え込み

マッケンローは怒りを爆発することで

人間の高みを超えていきます

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やがて宿命の決勝戦

タイブレーク、フルセットの死闘

この時、マッケンローは自分に不利な判定でも

ボルグにだけは抗議することはありませんでした

(これが敗因だろうな)

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試合が終わった瞬間のノーサイド

有名なボルグの勝利のガッツポーズ

帰りの空港で健闘をたたえ合うふたり

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それぞれ数多くの神的、歴史的試合があるなか

ただひとつの試合だけに焦点をあてたのはわかりやすいし、感動する

だけど、どんな世界にもやってくる世代交代、栄枯盛衰

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翌年のウィンブルドンでは、マッケンローが勝利

ボルグは26歳という若さで引退を決意

その後もボルグとマッケンローは親交が続き

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簡潔な引き際、しんみりしない幕引き

素人が口出しする隙を与えない容赦なさ

 

たとえテニスファンでなくても

見て後悔のない秀作に間違いないでしょう

 

 

【解説】KININOTEより

2人のスタープレイヤーの対決が世界を熱狂させた1980年のウィンブルドン勝戦を映画化。20歳の若さでウィンブルドン初優勝を果たしたビヨン・ボルグと、その前に立ち塞がるジョン・マッケンロー。対照的な2人がウィンブルドン勝戦で激突する。出演は「ストックホルムでワルツを」のスヴェリル・グドナソン、「フューリー」のシャイア・ラブーフ。監督は「アルマジロ」のヤヌス・メッツ

テニスブームに沸く1980年。まるでハリウッドスターのような人気を誇る対照的なスタープレイヤー2人の戦いに、世界中が熱狂していた。弱冠20歳でのウィンブルドン初優勝から4連覇を達成し、彫刻のように美しいビジュアルと冷静沈着なその姿で“氷の男”と呼ばれたビヨン・ボルグ(スヴェリル・グドナソン)。一方、絶対王者ボルグの5連覇を阻止しようと現れたのが、ジョン・マッケンローシャイア・ラブーフ)。類稀な才能を持つマッケンローだったが、不利な判定に対しては怒り狂い、野犬の如く審判に噛みつくその態度から“悪童”と呼ばれ、バッシングを受けていた。エレガントなプリンスとワイルドな野生児がぶつかり合ったウィンブルドン勝戦。果たして、世界中が固唾を呑んで見守った世紀の試合の行方は…

上海特急(1932)

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原題も「Shanghai Express


タイトル・バックの前の”神”と書かれた銅鑼を叩く上半身裸の男

PEIPINGPEKING)ーSHANGHAIの看板

「北平車站」「天津浦口鐵路」の文字

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「上海まで1等で」「35ドル36Cです」

1927815日の新聞「4年前よ、今は1931年よ」「これが一番新しいです」

黒いベールをまとった金髪の美女「上海リリー、悪名高き中国の白い花」

民家と民家に挟まれたギリギリの線路を列車が走る

一等列車に乗り合わせた、英、仏、独、米、中国の老若男女の

グランドホテル形式の人間模様&サスペンス

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当時の中国は蒋介石中華民国が支配していて

毛沢東率いる共産軍と内戦状態

満州事変が勃発し日中戦争が始まる数年前

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本当に中国で撮影したようなリアルな映像

なんとこれが全部セット

マレーネ姐さんは、北京にも上海にも行っていないのです(笑)

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上海リリー”マデリン(マレーネ姐さん)は高級娼婦

同室は同じ職業と思われる中国人美女フー・フェイ(アンナ・メイ・ウォン)

上海で下宿屋を営む老女、ハガティ夫人

英国人と中国人のハーフ、チャン

賭け事が大好きでなんでも賭けてしまうサム・ソルト

神学博士のカーマイケル牧師

ドイツ人でアヘン商人のエリック・バウム

フランス語しか話せない退役軍人レナ―ル少佐

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マレーネ姐さんと アンナ・メイ・ウォンのツーショットは最高ですな(笑)

どちらも美人だけど愛想がなく、すましていて冷たそう

だけどそれは誰にも媚を売らず、誰にでも平等にしているだけ

本当は情熱的で、優しい心だって持っているのです

そんなキャラクターに、これ以上ないくらいぴったり

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線路上に牛や鶏が立往生し、列車が停車

客たちが廊下に出て様子を伺っていたとき

イギリス軍の軍医ハーヴェイ大尉は、かっての恋人

今は”上海リリー”と呼ばれているマデリンと再会します

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5年と4週前、マデリンはハーヴェイの愛を確かめようと

ちょっとした悪戯で違う男とつきあいました

そのせいでハーヴェイは彼女の元を去ってしまい

高級娼婦に身を崩してしまったのです

だけどふたりは今でも、心の内では愛し合っていました

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食堂車で夕食中、乗客たちは列車から降ろされ政府軍の尋問を受けます

そしてひとりの男が連れ去られました

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深夜、列車は革命軍に乗っ取られ

駅舎で軍服に着替えたチャンにより、乗客ひとりひとりの身分が調べられます

チャンは政府軍と人質交換するために身分の高い人間を探していました

そこで上海で総督閣下の手術を行う予定のハーヴェイが選ばれるのですが

革命軍の人質が釈放されてもハーヴェイは釈放されませんでした

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マデリンはハーヴェイを助けるために

チャンの愛人となり、チャンに同行すると約束します

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ハーヴェイは解放され

チャンはフー・フェイによって殺され

マデリンも列車に戻ることができましたが

ハーヴェイはチャンを選んだマデリンを許せません

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多国籍な人々が、中国で革命に巻き込まれるというプロットは悪くないし

タンバーグらしく粋でお洒落なシーンも多いのですが

肝心の恋の駆け引きや、命のやりとりで

全く緊迫感が伝わってこない(笑)

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マデリンから話を聞くカーマイケル牧師

彼は本当は”上海リリー”のことが好きだったのです

昔フラれた腹いせに、悪口を言っていただけ(笑)

ハーヴェイにマデリンを失うのは馬鹿だと忠告します

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上海駅で紳士用の時計を買うマデリン

マデリンに近づくハーヴェイ

「教えてほしい」

「多くの人前でどうやってキスすればいい?」

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80年代に連載されていた少女漫画

      蘇州夜曲」森川久美)はこの映画の後日譚なのですね

男はつらいよ」シリーズの浅丘ルリ子さんの”リリー”も

上海リリー”の影響を受けているような気がします


莫大な製作費に、それを回収できるだけの実力と

独特の雰囲気と美しさを持つマレーネ姐さんの魅力は

多くのクリエーターにも影響を与えたのでしょう

あんな羽根のドレスや毛皮が似合うのも

美空ひばりか、姐さんしかいません(笑)

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なにより、マレーネ姐さんと、アンナ・メイ・ウォンの美の共演は

一見の価値ありでした





【解説】ウィキペディアより

上海特急』(シャンハイとっきゅう、英語:Shanghai Express)は、1931年(昭和6年)に撮影、1932年(昭和7年)に製作・公開されたアメリカ映画である

ジョセフ・フォン・スタンバーグが監督、マレーネ・ディートリヒとクライヴ・ブルックが主演した。スタンバーグとディートリヒのコンビ作では、『嘆きの天使(1930)『モロッコ』(1930年)、『間諜X27』(1931年)に次ぐ4作目の映画(嘆きの天使」はドイツ映画なのでアメリカ映画としては3作目)である。

アカデミー撮影賞:リー・ガームズ

ノミネーション作品賞監督賞:ジョセフ・フォン・スタンバーグ

インターステラー(2014)

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原題も「INTERSTELLAR 」恒星間

 

2001年宇宙の旅」(1968)へのオマージュたっぷりの作品

5次元の世界から父親が娘を覗く書棚は“HAL”のウラ版みたいだし

モノリスみたいなAIロボットも登場

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板みたいなロボットが、意外と頼もしく

動きだけでなく、性格もユニークで愛嬌がある

なのでイチバン泣きそうになったのが

このTARSくんが切り離されるところでした()

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主人公を裏切ったせいで、未知の氷の惑星に取り残されてしまう博士が

ノンクレジットで出演しているマット・デイモン

エリジウム(2013)では月に

「オデッセイ」(2015)では火星

アンタどれだけ宇宙に取り残されるのが好きなの、と

笑ってしまいます

(笑うシーンではないけどな 笑)

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近未来、雨が降らず地上は砂漠化、植物は減り酸素も減っていました

地球に人類が住めなくなるのは時間の問題

NASAは人類が移住できる惑星を見つけようと

 

すでに他の銀河に3名の探検隊が出発していて

彼らから送られてくる信号を頼りに第2の地球を探すミッションに

   元宇宙飛行士で今はとうもろこし農家のクーパー(マシュー・マコノヒー)も

参加することになります

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しかし人類が住めるような惑星がそう簡単に見つかるわけがない

しかもその間、宇宙と地球の時間の流れの違いで

クーパーの帰還を待つ愛娘のマーフは大人になり

旅立った父親を恨み、忘れようとしていました

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アメリア(アン・ハサウェイエドマンズの惑星に行けるよう

宇宙に投げ出され、ブラックホールに飛び込んだクーパーは

5次元世界に迷い込み

そこからマーフにモールス信号で、人類を救う方法を知らせます

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ストーリーそのものは単純なんですけど(笑)

 

アインシュタイン相対性理論

ワームホール(正式な名称は「アインシュタイン=ローゼン橋」というらしい)

ホーキングのブラックホール特異点定理だとか

「空間の三次元と、時間の一次元に重力を加えた五次元世界」という

純粋理論物理学みたいな、物理ヲタク大好きそうなネタ満載で

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ヘンに難しく見せようとしている気がする(笑)

 

でもターゲットは物理ヲタではなく

あくまで”娘のいるお父さん層”らしく(笑)

アン・ハサウェイと恋愛関係にならない展開はよろしい

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数々の大作を成功させているクリストファー・ノーランのわりには

5次元世界のデザインがイマイチだったり

人類が到達した避難場所が、宇宙コロニーと古典なのには

ちょっとがっかりでしたが

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最後にTARSくんが見つかったのは、よかった

アン・ハサウェイを助けに行くより、そこかよ 笑)

 

 

【解説】allcinema より

ダークナイト」「インセプション」のクリストファー・ノーラン監督が、理論物理学者キップ・ソーン博士のスペース・トラベルに関するワームホール理論を下敷きに描くハードSF超大作。かつてない危機に直面し、新たに発見されたワームホールを利用した超遠距離惑星間移動に最後の希望を託す人類の運命と、重大な使命と引き換えに永遠の離別を迎えようとしている一組の父娘の絆を壮大なスケールで描く。主演は「MUD マッド」「ダラス・バイヤーズクラブ」のマシュー・マコノヒー、共演にアン・ハサウェイジェシカ・チャステインマイケル・ケイン
 近未来の地球。環境は加速度的に悪化し、植物の激減と食糧難で人類滅亡の時は確実なものとして迫っていた。そこで人類は、居住可能な新たな惑星を求めて宇宙の彼方に調査隊を送り込むことに。この過酷なミッションに選ばれたのは、元テストパイロットのクーパーや生物学者アメリアらわずかなクルーのみ。しかしシングルファーザーのクーパーには、15歳の息子トムとまだ幼い娘マーフがいた。このミッションに参加すれば、もはや再会は叶わないだろう。それでも、泣きじゃくるマーフに“必ず帰ってくる”と約束するクーパーだったが…。

ザ・ビートルズ  EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years(2016)

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「誰も演奏なんか聴いていないんだ まるで暴動だった ショウじゃない

 ステージから降りると、まるで戦闘地帯をくぐり抜けたような状態で

 まさに戦争だと思うよ

 いつも何かをぶつけられながら歌い続けたり

 微笑み続けたりするなんて 無理な話だ」(ジョン)


原題も「The Beatles: Eight Days a Week - The Touring Years

「エイト・デイズ・ア・ウィーク」(週に8日はビートルズ)とは

ビートルズ4枚目のアルバム「ビートルズ・フォー・セール」(1964)

(レノン=マッカートニー名義の)B1曲目

本作ではエンディング曲としても使用されています

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今まで数々のビートルズのドキュメンタリー作品が作られていますが

アップル・コア(ビートルズによって設立された会社組織)の

公式作品として認められたのは「ザ・ビートルズ・アンソロジー」以来

21年ぶりということ


確かに他の作品といえばジョンとポールの確執や

オノ・ヨーコを交えてのメンバーの不和に重点を置いて描いたものばかり

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1962年のキャヴァーン・クラブ公演から

1964年の人気絶頂期を経て

1965年以降の曲作りや、私生活の変化

思いがけないバッシング、アンチ・ビートルズ

やがて傑作

サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(1967)

が誕生するまでが描かれ


ロンドンのアップル・コアの屋上で行われた

事実上ビートルズの最後のライヴ・パフォーマンス

「ルーフトップ・コンサート 」(1969)で幕を閉じます

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ロン・ハワードだけあって、見せ方もうまい

コメンテーターも、ビートルズと関わり合いのあった

どこかの音楽関係者が列を連ねるものではなく(笑)

 

実際のビートルズのメンバーの音声が使用され

ゲストも自称ビートルズファンである、エルヴィス・コステロ

ウーピー・ゴールドバーグ シガニー・ウィーバー という豪華さ

 

日本からは1966年のビートルズ来日時に密着撮影した浅井慎平が登場

来日時のメンバーのリラックスした姿をとらえた

貴重なショットが紹介されます

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一方で武道館がコンサートに使われることへの批判や

日本赤軍によるヘイトスピーチの映像が流れ

ビートルズを歓迎しない人々も多くいたことがわかります


アメリカでは、ジョンの「キリストより人気がある」という

イギリスでのインタビューでの、誰が聞いてもただの軽いジョークが

大問題となり批判され、レコードは集められ焼かれるという事態に陥ります

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リヴァプールで偶然巡り会った、サッカーより音楽が好きな4人の青年が

巨大なモンスターに飲み込まれそうになる

それでも彼らは、お互い助け合い荒波を乗り越えていきます


やがて大人になり

家庭を持ち、守るべきものが変わっていくのは当然だし

リエーターとして新しい音楽のスタイルを目指すのも当然

 

だけど多くのファンが求めていたのは、年月が過ぎても

「ラヴ・ミー・ドゥ」「抱きしめたい」の頃のビートルズでした

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過酷なツアー、度重なるレコーディング

彼らの疲労は想像できません

そしてほんの数年で、かってのアイドルの面影は消えてなくなり

実際、悟りを開いたかのように老けてしまった


これを見たら、ほかのビートルズのドキュメンタリー作品が

全部ニセモノに見えてしまう(笑)

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私たちがいつまでも高校時代の親友とつるんでいないのと同じに

ジョン、ポール、ジョージ、リンゴが、それぞれの道を歩んでいったのは

あたりまえのこと


そんなビートルズのメンバーひとりひとりを個人として認め

やんちゃで天真爛漫だった若き日々をやさしく見つめる

ファンにとっての特別な「あの日」を思い出させることに成功している

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誰もが知ってるビートルズだからこそ

ロン・ハワードの力量が試された1作だと思います



【解説】映画.comより

ポール・マッカートニーリンゴ・スターという存命のメンバーや、ヨーコ・オノ・レノン、ジョージ・ハリスンの未亡人オリビア・ハリスンら関係者の全面協力のもと製作された「ザ・ビートルズ」の公式ドキュメンタリー映画。監督をロン・ハワードが務めた。初期のリバプール時代から、1963年に始まった15カ国90都市166公演におよぶツアー、そして観客の前での最後の演奏となった66年のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パーク公演までのライブ映像を中心に、関係者などのインタビューを織り交ぜながら、ビートルズの曲の変遷、半世紀以上も愛され続ける彼らの人気の理由を探る。日本公開版は、66年の来日時のエピソードが長めに収めらた特別版となっており、日本武道館でのライブシーンや、来日時のビートルズの撮影を担当したカメラマン・浅井慎平のインタビューも盛り込まれている。