スーサイド・スクワッド(2016)

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「女はちょっとイカれているほうがいい」

原題も「SUICIDE SQUAD(特攻隊)

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こういう映画に内容を期待していけないのはわかってるのですが(笑)

デヴィッド・エアーは元ミュージックビデオの監督だけあって

派手な映像にキャラクターの設定や見せ方はうまい

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だけど注目度ナンバーワンは、どんなアクションよりバットを振り回す

ハーレイ・クインマーゴット・ロビー)のお尻になってしまった悲劇(笑)

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魔女エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)は

弟のインキュバスを召喚し人類を滅亡させようとしていました

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米国政府の高官アマンダ・ウォラーヴィオラ・デイヴィス)は

死刑や終身刑の犯罪者に減刑と引き換えに

特殊部隊「スーサイド・スクワッド」を結成します

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まさかスリップノットがこんなに早くフェードアウトするとは(笑)

デッド・ショット(ウィル・スミス)はやさしいパパすぎるし(笑)

エル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)はいきなり覚醒するし

カタナはひとり言をブツブツ言ってるし

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無敵そうな魔女の弟は爆弾で簡単に殺られるし

魔女は露出度の高いコスチュームでウニョウニョダンス

(姿消せるならずっと消えていればいいのに、サービス心旺盛 笑)

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ジョーカー”(ジャレッド・レト)はメンバーじゃなかったのね

ラストのハーレイ・クインを助け出すシーンは余計

続編ありきなんだから、2の冒頭にもってきたほうがよかったと思う

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結局みんないい人ばかりで、「悪者の魅力」が全く感じない中

よかったのは、デッドショットが「相当腹黒いな」とこぼすほど

相手の弱みをつかんで利用する冷徹な黒幕、政府高官のアマンダ・ウォラー

こいつが一番悪い奴に見えるわ(笑)

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監督がスタントなしのアクションシーンにこだわったため

6ヶ月間にわたり、戦闘の基礎アクションや

レーニングに励んだというマーゴット・ロビー

さらに撮影現場にはジムが設置され、13回のトレーニングを

キャスト総出で行っていたそうです

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その甲斐あってか、登場人物のハマりっぷりは相当なもの

とはいえビジュアルだけでなく、敵の倒し方やオチの付け方には

さすがにもう少し策を練ったほうがいい

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ひとこと感想は予告が一番面白かった(笑)

 

 

【解説】allcinema より

スーパーマンバットマンでお馴染みのDCコミックスの悪役キャラクター総出演で贈るバイオレンス・アクション超大作。世界崩壊の危機を前に、人類の命運を託された悪党たちが、人類の未来などお構いなしに好き放題に暴れる大暴走の行方を描く。出演はウィル・スミス、マーゴット・ロビージャレッド・レトーほか。監督は「エンド・オブ・ウォッチ」「フューリー」のデヴィッド・エアー。スーパーマンがいなくなった世界に最大の危機が訪れた。政府は最後の手段として、服役中の悪党たちによる最強の特殊部隊“スーサイド・スクワッド”を結成することに。さっそく、百発百中の冷酷スナイパー“デッドショット”やジョーカーに一途な想いを寄せるクレイジー・ガール“ハーレイ・クイン”をはじめ選りすぐりの極悪人が集められ、減刑と引き換えに到底達成不可能と思われる危険なミッションが託される。ただし、そのクビには、命令に背けば即座に爆発する自縛装置が巻かれていた。こうして、人類史上もっとも凶暴な悪党たちが、刑務所の外へと放たれるのだったが…。

イエスタデイ(2019)

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原題もYesterday」(エスタデイ)

 

ポール・マッカートニーがガールフレンドの部屋で寝ているとき

夢の中で「Yesterday」のメロディが流れ

忘れないよう起床後すぐにコードを探し曲を完成

それがあまりにも完璧な曲だったので、既に誰かの曲かと疑い

みんなに聞かせて回ったところ、誰からも「知らない」と言われ

そこでやっと自分のオリジナル曲だとわかった

というエピソードから着想を得たそうです

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イギリスの小さな海辺の町に住むインド系のシンガー・ソングライター

ジャックは12分間の世界同時停電のせいで、バスにはねられてしまい

目が覚めたら前歯が2本折れ、トレードマークの髭が剃られていました

退院後、快気祝いにマネージャー兼運転手のエリーと友人たちから

ギターを贈られ「今の気持ちを歌って」と歌った「イエスタディ」

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エリーは感動し「イエスタディ」を絶賛

友人たちは誰ひとり「イエスタディ」もビートルズも知らないといいます

ジャックが目覚めた世界にはビートルズが存在しなかったのです

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これは「もし世界中が〇〇になったら」と願い地位と名誉を手に入れる

ドラえもんの「もしもボックス」と同じ(笑)

 

場面場面での主人公の立場と、ビートルズの曲のあわせかたは、かなりうまい

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TV番組で演奏してエド・シーランが最初に聴く曲「イン・マイ・ライフ

エドのロシア公演の前座で「バック・イン・ザ・U.S.S.R

エドとジャックの即興対決で「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」

歌詞を思い出すため訪れたリヴァプールで「ペニー・レイン」

「エリナー・リグビー」「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」

ジャックがアルバム制作のためにレコーディングする曲

「ヒア・カムズ・ザ・サン

「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」

「ヘイ・ジュード」(は“ヘイ・デュード(相棒)”に変えられる)

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アルバム発売記念でホテルの屋上で演奏する「ヘルプ!」

ジャックがエリーへの気持ちに気付く「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」

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ビートルズの曲が永遠に偉大なのは、ジャックだけでなく

誰でも自分の人生にもあてはまるものがあったり

共感できる部分が多いからかもしれない

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エド・シーランが本人役でガッツリ登場するのは笑えるし(笑)

レディオヘッドイン・レインボウズのポスターが貼られていたり

フランツフェルディナンドのTシャツを着ていたり

ロックネタが散りばめられているのは楽しい

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ただスッキリしないのはジャックとエリーの恋愛部分

こんなに献身的にしてくれて、どんな時も励ましてくれて

顔も可愛いくて、エリーがいなきゃ何もできなかったくせに

ただの幼馴染としか思っていなかったなんてひどすぎる

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しかもギャビンは最初にジャックの曲を認めてくれた人で

無料でレコーディングしたりCD配布したりしてくれたのに

ジャックがエリーではなく、スターになる道を選んだせいで

傷ついたエリーに寄り添ってくれたのに

あまりにギャビンの扱いが酷すぎる

(ラストですぐに新しい恋人は作ってあげたけどさ)



注意:ここから映画の内容とは関係ありません


そもそも漁師のジョン・レノンは必要だったのか

(それともリヴァプールは漁師の街なのか 笑)

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(ジャックと同じく世界同時停電でやって来たと思われる)

あのおじいちゃんと、おばあちゃんは、どうやってジョンを探したんだ

その前にロシアとリヴァプールで、どうやって知り合ったんだ

なんで記者会見会場に入れたり、ジャックの楽屋がわかったんだ

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自分の曲じゃないとカミング・アウトするのにも、突然「ビートルズ」って

ポールもリンゴもジョージも存在しない世界で発表して意味あるのか

昔(この世界では)名前も知られていないバンドがありました

くらいの前置でいいと思います

 

そして私なら、ジャックとエリーは(この世界では)復活させないな

ビートルズのナンバーが終わった最後に

「これが僕が本当に作詞作曲した曲です」と

ジャックはエリーにオリジナルの新曲を捧げるのよ

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それが奇跡的に感動的な曲で、エリーも会場のみんなも涙

マーケティング部では「大ヒット間違いなし」と大騒ぎ

曲が終わり歓喜喝采の中、誰より大切エリーと

チャンスを与えてくれたエドとギャビンに感謝の気持ちを伝えた

その瞬間

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ステージに雷が落ちて停電

目を覚ますとそこは元の世界で

目の前にはいつものように笑顔のエリーが待っている

 

大事なのは有名になることでなく、大切な人と一緒にいること

ジャックは思わずエリーにプロポーズするの

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もとの世界でジャックは、平凡という幸せを見つけ


映画の最後に流れるテロップで、あっちの世界のジャックの様子が

映像と字幕で紹介されます


謎の「ビートルズ」メンバーの作詞作曲でグラミー賞受賞

最優秀レコード賞「イエスタディ」

最優秀アルバム賞「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド

最優秀楽曲賞、最優秀新人賞

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その後「ビートルズの歌詞がはっきり思い出せない」という理由で

またもや謎の「オアシス」のギャラガー作詞作曲という楽曲を発表

さらに多くの若者の支持を得、ワールドツアーは大成功

エド・シーランU2を抜いて観客動員数は第1


ジャックは医師から双極性障害と診断されたものの

実在しない妄想の「ビートルズ」と「オアシス」はカルト的バンドとなり

ジャック考察による、コカコーラと名付けられた清涼飲料材も

ペプシに対抗するという、飲料界に革命を起こしました

 

ハリー・ポッターも忘れちゃいけない(笑)

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ダニー・ボイルはいいアイディア持ってるんだけど、脇が甘い

 

傑作「ボヘミアン・ラプソディ(2018)があっただけに

誰もが「ビートルズ」のライブ感が蘇ることを期待したと思うのですが

ライブシーンは盛大に、恋愛部分は控えめに

それが逆になってしまったのが、最大の敗因

 

これはただの初恋ロマンス

ビートルズを語ろうと思って見てはいけません



【解説】allcinema より

トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督と「ノッティングヒルの恋人」「ラブ・アクチュアリー」の脚本家リチャード・カーティスの初コラボで贈る音楽ファンタジー・コメディ。ある日突然、自分以外の誰もビートルズの曲を知らない世界に迷い込んでしまった青年が、彼らの名曲の数々を新曲として発表し一躍大スターとなっていく興奮と戸惑いの行方を描く。主演は英国の人気TVシリーズ「EastEnders」に出演のヒメーシュ・パテル。共演にリリー・ジェームズケイト・マッキノン。またエド・シーランの本人役での出演も話題に。
 売れないミュージシャンのジャックが夢を諦めたその日、世界規模で12秒間の大停電が起きる。その瞬間、交通事故に遭い、意識を失って病院に担ぎ込まれたジャック。彼が目覚めると、そこはなぜか歴史上からビートルズの存在が完全に消えた世界になっていた。ジャックが仲間たちに弾き語りでビートルズの『イエスタデイ』を披露すると、幼なじみで友人のエリーは初めて聴く美しいメロディに驚き、大感動してしまう。やがてジャックが歌うビートルズの名曲の数々は、彼の持ち歌として世間の注目を集め、瞬く間にスターへの階段を駆け上っていくジャックだったが…。

コーヒーをめぐる冒険(2012)

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原題は「Oh Boy

フランソワ・トリュフォーのような映像と

ウディ・アレンのような鬱陶しさと

ジム・ジャームッシュのような時間の使い方

 

コーヒー、煙草、ウォッカという小物使いがうまく

全編に流れるジプシー・ジャズもいい

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早朝、ガールフレンドが寝ている間に

こっそりアパートを抜け出そうとする若い男

目覚めた彼女が予定を聞いても、漠然としか答えられず

コーヒーをすすめても、急いでいると自分のアパートに帰る

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これだけで、いかに曖昧な性格で

はっきり断れない男なのかがわかります

それは優しさのようにも見えるけど

臆病で自分の気持ちを伝える勇気がないだけ

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このあともこのニコという名の青年が

苦手なシチュエーションになるたびに

その人から逃げようとする展開が繰り返されます

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2年前にロースクールを退学したことを父親に教えず仕送りだけ受け取ってる

一方の父親は仕切りたがり屋で、ひとり息子の将来のために

レールを敷いてきました

それが原因の全てとは思いませんが、ニコは自分で考えようとせず

幼い頃から何をやっても長続きしませんでした

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しかも、もう息子がダメだと期待することを諦めた瞬間

優秀な部下を連れてきて、ぐうたらなニコと比較する

それでもニコは父親に反論できないし、お金が欲しいと正直に言えない

ニコはどこでも争いを避けている

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昔太っていて虐めた同級生の女の子が、今は痩せてダンサーとなり

「好きだった」と告白されても、太っていた頃のトラウマを話されると

はっきりしない態度で相手を怒らせてしまう

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そんな彼にとって気持ちを落ち着かせるアイテムのひとつが

コーヒーなんでしょうね

だけどコーヒーマシンが故障していたり

高級カフェでお金が足りなくて買えなかったり

無料サービスのポットのコーヒーが切れていたり

なんらかの事情でどうしてもコーヒーが飲めないストレス

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最後にニコは、バーで老人と出会い

幼い頃ナチスの敬礼の練習をさせられたり

父親と石を投げて窓ガラスを割ったという話を聞きます

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最初は鬱陶しいと思っていた老人でしたが

次第に話に引き込まれ

店を出て老人が倒れた時には、病院まで付き添いました

翌朝、看護師から老人が亡くなったと聞き

彼には身寄りがなく、名前はフリードヒだと知りました

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ひとりぽっちで死んでしまったフリードヒ

はじめてニコが最後まで逃げず、向き合うことができた人間がフリードヒ

その時、何かがニコを変えました

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日本では戦後75年で、戦争の記憶が薄れつつあると言われていますが

ドイツではイマドキの洒落たモノクロ映画の中でも

戦争や、ナチスや、A級戦犯の話題をさらりと入れてくる

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朝の食堂でやっとありつけたコーヒーには

「責任」という

今まで味わったことのない、大人の味がしたのではないでしょうか

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これはもう、私好みでお気に入り寸前(笑)

 

ただ、どうしてもトリュフォーと、ウディ・アレンと、ジャームッシュ

二番煎じ感が拭えないという新しさのなさ

 

とはいえ、この作品が長編デビュー作という若い監督(1978生)

この抜群のセンスに、さらなる活躍を期待したいと思います

 

 

【あらすじとネタバレ】

最初にニコが向かったのは州が任命する心理学者のところでした

ニコは飲酒運転で運転免許を取り上げられ、免許を取り戻すためには

ドイツでは適性検査を受けなければならないようです

検査員は飲酒だけでなくロースクールを中退したことや

両親との関係、恋人のこと、ニコが触れたくないことばかり質問

ニコの情緒が不安定だと免許の返却は却下されました

 

次にニコはコーヒー専門店で店員とのやり取りの末

コロンビアを注文しますがお金が足りません

お金を下ろそうとATMに行くとカードが吸い込まれ

眠ってるホームレスからお金を取り戻そうも通行人が見ている

 

引っ越したばかりの自分のアパートに戻り

父親に助けてもらおうと電話をします

そこに上の階に住んでいる男が妻の手料理を持ってやってきて

さっさと帰って欲しいが、うまく断れない

結局酒を持っていたので部屋に入れ

男の妻が乳がんの手術をした話まで聞かされ

妻との関係に泣く見知らぬ隣人を慰めますが

男の帰った後に、差し入れのミートボールをトイレに流す衝撃

 

そのあとニコは車で迎えに来た友人、マッツエとレストランに行き

好みの女の子が店に入って来たので笑顔を送りました

すると女の子が近づいてきて(昔太っていた)同級生のユリカだと名乗り

ダンサーをしているので舞台を見に来てほしいとふたりを誘いました

 

それからマッツエはニコを連れ、映画の撮影現場を訪れます

演劇学校時代の友人に仕事がないか頼みに来たのです

友人は売れっ子俳優のようで

ナチスの将校と書店で働くユダヤ人娘の恋愛映画の撮影中でした

撮影を見せてもらうふたりでしたが

肝心のクライマックスの撮影時にニコの携帯が鳴る(笑)

電話は父親からで、ゴルフ場にいるので

一緒にゴルフをやろうというものでした

 

ゴルフコースで父親は、ニコに新しい若くて優秀なアシスタントを紹介し

      クラブハウスではシュナップスの3ショットを注文しました
ニコがATMにカードを吸い込まれた話をすると
父親は学会で偶然、ロースクールの教授に会い
ニコが2年前に中退したことを知ったと言います

2年間毎月送っていた大金を何に使ったという父親の質問に
ただ「考えていた」と答えるニコ
口座は「お前のために」解約したと「髪を切って靴を買え」と
父親はいくらかの現金を渡し去って行きました
      ショットを飲み、森の中を歩くニコ

 

駅に行くと切符の販売機が故障していて

(自称)地下鉄切符検査官と名乗る怪しい男2人組に捕まり

無銭乗車の罰金を払えと詰め寄られました

ニコは2人組の隙をみて別の電車に乗って逃げ

父親から貰ったお金で買い物してアパートに戻りました

 

夜になりユリカの演劇を見に行くため再びマッツエが迎えに来ます

途中(クスリを買うため)マルセルという男の家に寄ったマッツエ

マルセルのおばあちゃんのマッサージチェアで寝てしまうニコ

(サンドイッチおばあちゃんが可愛い)

 

      ニコとマッツエはユリカの舞台の開場に遅れ、ひんしゅくを買ったうえ
ユリカが自分の体を食べて嘔吐し混乱するという
前衛的なダンスシーンにマッツェが大笑い
ユリカが招待してくれた公演後のキャスト・パーティーでは
劇を笑ったことを激怒しているライター兼監督と
コメディだと思ったと弁明するマッツェが口論になります

煙草を吸うために路上にやって来たニコのもとに
ユリカが心配してやって来ました
そこに酔っ払った3人の男が、ユリカにからみ
ニコが止めるのも聞かず、ユリカも負けじとやり返す
とばっちりを受けたニコは鼻を殴られ、ユリカは楽屋で彼を看護します

ここまではユリカはニコに対し、大人の対応で頑張ってきたのですが(笑)
イイ感じになり、キスをしセックスが始まると
「太っているエリカを好きと言って」と何度も強要
やがてセックスすることを不快感を隠し切れないニコに
(太り過ぎで虐められた過去がすり込まれている)エリカは激怒し
「相手には困っていない」とニコを楽屋から追い出したのでした

ニコがバーに行きウォッカとビールを注文すると

酔っ払いの老人がやって来て、ニコにも飲み物を注文し

「人が言っていることが理解できないと」話を始めます

そして彼が幼い頃、父親に自転車の乗り方を教わったこと

ヒトラーに敬礼する厳しい訓練を受けたこと

父親と石で、バーの窓ガラスを割ったこと

道路がガラスの破片だらけで、自転車に乗れないと思って泣いたこと

ニコに戦時中の思い出を語ってきかせました

 

そして老人がバーを出たとたん、倒れてしまい救急車で運ばれます

老人を心配したニコは病院まで付き添い

あくる朝老人が亡くなったと知らされます

看護師は彼に家族はなく、ひとりきりだったこと

そして名前はフリードヒだと教えてくれました

 

思えばニコが人の話を最後まで聞きことが出来たのは

この老人が初めででした

病院を去ったニコは食堂に入り

やっと1杯の温かいコーヒーを飲むことができました

 

【解説】映画.comより

ベルリンの街をさまよう青年の災難続きの1日をモノクロ映像で描き、新人監督ヤン・オーレ・ゲルスターの長編デビュー作にしてドイツ・アカデミー賞主要6部門を総なめしたオフビート・コメディ。ベルリンで暮らす青年ニコは、2年前に大学を中退して以来、自堕落な毎日を送っていた。ある朝、恋人の家でコーヒーを飲み損ねた彼は、車の免許が停止になったり同じアパートの住人に絡まれたりと散々な目に遭う。気を取り直して親友マッツェと街へ繰り出したニコの前に、ひとクセもふたクセもある人々が次から次へと現われ……。主演は「素粒子」のトム・シリング。

ぼくらの七日間戦争(1988)

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宗田理の同名ベストセラー小説の映画化

原作は家出した中学生たちが廃工場にたてこもり

日本大学全学共闘会議をまね

校則で抑圧する教師や勉強を押し付ける親に反旗を翻す・・・

というというストーリーということ

ちなみに「戦車」は出てこないそうです(あたりまえだ)

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この時代の校則は冗談じゃなく映画のように厳しかったですね

教師による体罰は当たり前で、授業中や部活動での態度が悪いと

殴られたり蹴られたりする男子生徒もいました

女生徒はスカートの長さを測られ、肩より長い髪の毛は必ず結ぶ

授業と関係ない私物は教師に取り上げられます

ギリギリ間に合わなくて遅刻した女生徒が

門に頭を挟まれて死亡する事件もありました

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尾崎豊の「卒業」じゃないけど、これじゃあ

夜の校舎窓ガラス壊して回るわな(笑)

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作中でも、教師がわかりやすいくらい悪者(笑)

自分の名誉と評判ばかり気にする校長に金田龍之介

校長の機嫌ばかりをうかがう笹野高史

生徒に反省文を強要し、気に入った生徒だけえこひいきする佐野史郎

冷徹な生活指導の大地康夫

日常的に生徒に体罰を加えている体育教師の倉田保明

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そんな中、男子生徒に人気なのが英語を教える賀来千香子

こんなお洒落で綺麗な先生はそういないでしょうが(笑)

そんな時代でも生徒に理解ある先生もいました

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親は親で、父親は仕事や接待や浮気で家に寄り付かず

母親は勉強、勉強とうるさい

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1年A組の男子生徒8人は家出を決行、廃工場にたてこもります

そのあと女生徒3人が加わり、男子生徒の間で亀裂が入りますが

(男の子ふたりは宮沢りえが好きなのね)

やがて居場所を突き止めた教師や親たちと戦うことになります

しまいには機動隊が出動し、テレビ局に野次馬

大騒ぎになってしまいます

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100%中学生目線なので、それはそれは現実的ではなく(笑)

角川映画らしく話の構成が甘く

ツッコミむどころか非現実過ぎてかなり無理がある

戦車であんなに大量の花火の打ち上げ、どうやった?(笑)

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それでも80年代は、こういう映画に

何の疑いもなくロマンや冒険心を感じていたのです

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当時”美少女”と、もてはやされていた宮沢りえがさすがの存在感

その後、ふんどし姿やヌード写真集と多くの話題を生みました

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今では教師による体罰や、校内暴力は聞かなくなったものの

子ども同士による悪質ないじめ問題があとを絶たない

見て見ぬふりをする教育委員会

あの頃の「オンザ眉毛」やスカートの長さとの戦いが

ファンタジーにさえ思えてしまいます

 

 

【解説】KINENOTEより

校則に反発して廃工場に立て篭った中学生と教師や親など大人たちとの戦いを描く。宗田理原作の同名小説の映画化で脚本は前田順之介と菅原比呂志が執筆。監督はこれが第一作となる菅原比呂志、撮影は河崎敏がそれぞれ担当。

ある日、校則に反発した青葉中学の一年・菊地ら男子生徒8人が失跡した。彼は自衛隊の廃工場に立てこもっていたが、学校側は体面を取りつくろうばかり。そのうち、ひとみら女生徒3人も加わり、11人での自炊生活か始まった。しかし、居場所がバレて教師や親が説得にやってきた。その場はなんとか追い返したが、子供たちはバリケードをつくり武装を始めた。体育教師の酒井らはエンジン・カッターで工場のシャッターを壊して侵入。ひとみらは地下からついに戦車まで持ち出した。学校側も機動隊の出動を要請したが、どさくさに紛れ、ひとみらはマンホールから外に脱出するのだった。

戦争童画集~75年目のショートストーリー~(2020)

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戦後75年の今年、新型コロナの中で次々と中止に追い込まれる平和教育

そんな中でも伝えたいと作られた

3つの反戦オムニバス・ショートストーリー

 

民放では815日を過ぎると、一切戦争に触れることはなくなりますが

せめてNHKだけはは8月に限らず、反戦への姿勢を貫いてほしいと思います

 

花火職人の父親(田中要次)が倒れ、

コロナ渦の中、東京から広島の実家に帰ってきた娘(橋本環奈)は

1枚の勤め先のスタジオの監督が書いたというイラストを見せます

「いつまでも見ていたくなる青い空でしょ」

 

そして吉永小百合さんのナレーション

戦争体験の朗読を続ける吉永さんには、やがて

戦争体験者からの手紙がたくさん送られてくるようになったそうです

そんな戦争体験を共有できるように、山田洋次監督や坂本龍一さんなど

一流のクリエーターたちが集まりました

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一つ目のドラマは詩人、林幸子さんの手記をもとにした

山田洋次監督脚本、演出の「あの日」

 

広島の原爆の爆心地から1㎞の場所にあった場所から

自宅まで戻ろうとする高校生を長澤まさみさんが演じます

原爆投下後の変わり果てた広島の風景が語られる、ほぼ一人芝居の朗読劇

家族を喪ってしまい、同じく家族を喪ってしまった近所の主婦として

広岡由里子さんがほんの少し出演しています

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長澤まさみさんが圧巻の演技

言葉の力だけで原爆の恐ろしさを伝える、これぞ言霊

戦争に救いなんてひとつもない

生き残った人間は、苦しさと悲しみに

ただ耐えて生きていくしかないと思い知らされます

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二つ目のドラマは、こちらも広島の原爆をテーマにした

山田洋次監督脚本、演出の「こんばんわ」

 

蒼井優さんのナレーションから始まると

ザ・女優オーラ全開、この人も本物

 

と思わせた瞬間、ベテラン加藤健入魂の演技

被爆した幼い孫に食べさせるため”みかんの缶詰”を探すカトケン

当時の”みかんの缶詰”はとても高級でなかなか手に入らないもののひとつで

探して探して探して、これで最後の1軒と決めた家の奥さんが蒼井優さん

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事情を聞いた奥さんは貴重な”みかんの缶詰”を快く差し出してくれ

その汁をひと口だけすすっただけで孫は死んでしまう

 

これが芝居、舞台俳優の実力というものなのか

目の前にその光景がまざまざと浮かび上がる説得力

泣かずにいられない

 

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最後のドラマは、沖縄戦ひめゆり学徒隊がテーマ

劇作家で俳優、松居大悟脚本演出の「よっちゃん」

 

よっちゃん黒島結菜さんは、壕(ガマ)で爆発した爆弾で

同じひめゆり学徒隊親友(芋生悠さん)を喪い

榴弾で自決しようしますが、死にきれず

爆発音を聞いアメリカ兵に救助されるというものでした

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イマドキなテレビドラマ風の作りで、新型コロナ感染の最中なので

あえて若者にわかりやすい演出をしたのかも知れませんが

「医療従事者が足りないとか

当時の看護婦が医療従事者なんてセリフ知ってるわけないし(苦笑)

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父娘のエピソードも必要だったのかどうか(笑)

 

ただ45分という短尺は見やすいですし

吉永小百合さんのナレーションと詩は良かった

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山田洋次監督(御年88歳)はじめてのテレビ朗読劇

 


【解説】NHKオンラインより

戦後75年の今年、新型コロナの中で次々と中止に追い込まれる平和教育。そんな中、戦争の記憶を語り継ぐために一流のクリエーターが結集し、オムニバスでストーリーを紡ぎ出します。

巨匠・山田洋次監督は、はじめて朗読劇に挑戦。広島に原爆が投下された86日、その時を生きた一人の女性の物語を長澤まさみさんの朗読で。また被爆した少女を失った物語を加藤健一さん、蒼井 優さんが演じます。

そして、黒島結菜さん・芋生 悠さんのコンビが演じる沖縄戦の壮絶なドラマ。ひめゆり学徒として戦場に向かった二人の女性の苛酷な戦いと友情の物語。

番組を案内するのは、日本を代表する映画俳優・吉永小百合さん。ニューヨークの坂本龍一さんとリモートでコラボレーションし、平和の詩の朗読も披露します。

さらに、橋本環奈さん、松下由樹さん、田中要次さんが家族を演じるドラマなど、家族全員で見られる平和の物語です。

 

あやしい彼女(2016)

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韓国映画「怪しい彼女」(2014)の日本版リメイク

オリジナル版は見ていません

よくある”入れ替わり”ものの定番で

73歳のおばちゃんが20歳の姿に戻って、孫のバンドで大活躍するというもの

でも中身はババアのまま(笑)

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私の母もですが(笑)

年配の女性って同じことを何度も聞いたり

昔話を何度も繰り返すので

正直ウザイと思ってしまうことがありますよね

(私も将来そうなるかも知れないケド)

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幼馴染の次郎(志賀廣太郎)の銭湯でパートするカツ(倍賞美津子)も

毎日のように、夫を早くに亡くした苦労話や

雑誌社に勤める一人娘、幸恵(小林聡美)の自慢ばかり

さらに毒舌が加わって、人間関係でもトラブルを起こしてしまうタイプ


(年齢のせいで)ファション誌の編集長の仕事を外されたこともあり

息子の翼(北村匠海)がバンド活動に熱中して大学を留年したこともあり

カツが詐欺に100万円騙し取られたこともあり

イライラが募っていた幸恵は、何かと恩着せがましいカツと大喧嘩

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家を飛び出したカツは写真館に飾ってある

オードリー・ヘプバーンの写真に吸い寄せられ

写真館のマスター(温水洋一)に記念撮影をしてもらうことにします


写真館を出たところで、男子学生たちとバイクのひったくりを捕まえると

ミラーに映っていた自分の顔は20歳の頃のものでした

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青春プレイバックとATMから大金を引き出し

髪型を変え、洋服を変え(といっても昭和レトロ)

行くところがないので次郎の銭湯に行き

大鳥節子(多部未華子)と名乗り

適当な嘘をついてそのまま次郎の家に居候させてもらいます

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そして商店街の夏祭りのカラオケ大会で歌ったことから

孫の翼からバンドのメンバーになってほしいと頼まれ

音楽プロデューサーの小林(要潤)に追われることになります


カツのライバル、金井克子のスタイがル良すぎて驚いた(笑)

遠くから見たら、多部ちゃんよりもプロポーション抜群

でもここは「恋の奴隷」じゃなくて「他人の関係」歌わないとダメでしょ(笑)

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昭和歌謡って、日本語の歌詞だからこそ日本人の心に響くのでしょう

多部ちゃんは撮影3か月前からボイストレーニングと歌のレッスンを受け

「悲しくてやりきれない」は音楽担当の小林武史も絶賛したそうです


ATMの防犯カメラの映像から、次郎は節子がカツを誘拐したと思い

節子を捕らえようとしますが、逆に縛られ呆れられてしまいます

そこでやっと節子がカツだと気づくのです

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そこからロックフェスティバルに出場するためオリジナル曲を作ることなったり

節子が怪我をして血の出たところが老化することがわかったり

幸恵が自分は20歳まで生きられないと言われていたことを知ったり

ライバルの金井克子が死んだり

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いよいよロックフェス当日、翼が交通事故に遭い病院に運ばれてしまいます

翼の血液型はRHマイナスAB

血液が足りず、同じ血液型はカツしかいないと幸恵は言います

翼を助けるため節子に迷いはありませんでした

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一時は淡い恋心を抱いた小林を、眩しそうに見つめる73歳に戻ったカツ

目の前にスクーターで現れたのは

グレゴリー・ペックになった次郎(野村周平)でした


「このまま旅にでもでるか」

そうだよ何歳になったって、どんな見た目になったって

そばにいてくれるのは次郎なんだよ

ふたりは「ローマの休日」のように、二人乗りをして出発するのでした

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映画としてもの凄くいい出来、とは言いませんが

気軽に親子3代世代で楽しめる作品(笑)

若い人はもちろん、子育てがひと段落した母親や

シニア世代にも共感できる部分が少しづつあると思います

今でも愛され続けている「ローマの休日(1953)

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そして多部ちゃんの名言の数々にスッキリ

「歌って自分だけが気持ち良くなりたいなら 風呂場で歌いな!」

「その短い棒で人生棒に振るよ」


人生は二度と戻ることはない

11日を自分と家族を大切に生きていくことが

何より大事なのです



【解説】シネマトゥディより

2014年公開の韓国映画『怪しい彼女』を、『舞妓 Haaaan!!!』『謝罪の王様』などの水田伸生監督がリメイクしたコメディー。73歳の頑固な女性がひょんなことから20歳の姿に戻り、失われた青春を取り戻していく姿を描く。ヒロインの20歳時を『ピース オブ ケイク』などの多部未華子が、73歳時を『うなぎ』『OUT』などの倍賞美津子が演じる。多部による1960年代から1970年代のヒット曲の熱唱や倍賞の毒舌など、一人の女性を演じる二人の女優に期待が高まる。

愛と死の記録(1966)

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「エッチじゃね」

「すごい冷たい手じゃね」

「心はぬくいんよ」

「参った!仲直り」

 

渡哲也さんを偲んで”数えきれないほどの映画やドラマの中から

NHKBSPが選んだ1作がこれ


吉永小百合といえば、いつもの浜田光夫(笑)

その浜田が、名古屋で喧嘩に巻き込まれ右目を重傷しまい

そこで抜擢されたのが、新人アクション俳優の渡哲也でした

この映画をきっかけにふたりは交際をスタート

しかし吉永の両親の反対により結婚には至らなかったそうです

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まるでふたりの将来を暗示するような映画ですが

映画の結末とは違い、ふたりは友人として絆を深めていきます

サリン・ヘプバーンと、スペンサー・トレイシーのような大人の関係


2017年の「松竹梅」CMの収録後の記者会見で

吉永に「最後の1本はラブシーンをやりましょう」と言い

吉永が「老夫婦の恋愛作品を作りましょう」と答えたエピソードも洒落ています

原作は大江健三郎のノンフィクション「ヒロシマノート」(1965)

紹介された実話の中のひとつ

 

ただの青春日活ロマンの悲劇ものかと思っていたのが

まるで北欧映画のような救いのないラスト

カメラは姫田真佐久(ひめだしんさく

ドキュメンタリータッチで見ごたえのある映像に唸り

音楽は名手黛敏郎、ベテランの技が光ります

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ある朝、和江(吉永小百合は勤め先の楽器店の前で

バイクにはねられそうになり持っていレコードを割ってしまいます

運転していた幸雄(渡哲也)は、同じ印刷会社に勤める藤井(中尾彬)から

2千円を借り和江にレコード代を弁償します

 

和江と同じ楽器店で働くふみ子(浜川智子)と、その恋人藤井の策略で

ふたりは再会し思いがけず意気投合

茶店での「橋尽くし」の会話

窓辺のマスコットを手にして「私のあだ名はバンビ」

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バンビがチャイコフスキーの「悲愴」を誰にプレゼントするか気になったり

藤井とふみ子と一緒にバイクでWデート

まだ交通規制が緩い時代で、バイクがノーヘルだったり

ちょっと危険で、若々しい交際がスタートします


だけど幸雄から愛の言葉や、結婚の話がひとつも出てこない不安を

バンビが打ち明けてしまったことや

ツーリングの帰り道、2人乗りをトラックの荷台の作業員にひやかされ

雨の中突然バンビをバイクから降ろし、幸雄は走り去ってしまいます

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かと思えば、橋の上をトボトボ歩く和江のもとに戻ってきて

「好きなんじゃ!」と叫び抱きしめる


かと思えば、印刷会社の上司で養父代わりの岩井(佐野浅夫)が持ってきた

縁談があると打ち明け、連絡を断ってしまいます

これが放置プレイならともかく(オマエはそういうことしか思いつかないのか)


バンビの兄嫁は「理由があるのよ」

「突然部屋を訪ねてみなさい」とアドバイスします


ベランダからバンビの姿を見たパジャマ姿の幸雄は

慌てて寝ていた布団を隠します

幸雄もまたバンビへの思いを断ち切れず、強く抱き合うふたり

そして幸雄はバンビを原爆ドームに連れて行くのでした

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戦後20年経っても瓦礫が残る原爆ドームの敷地内

地上から見上げる天井のフレーム

私は原爆ドームの姿がどうだったのか、元の建物の正式名称も知りません

だけど広島の人々は、その変わり果てた姿を見るたび

ピカドンを思い出してきたのでしょう

 

そこで幸雄は「7000日前、4000度の熱線を俺は見た

300レントゲンのγ(ガンマ)線を体にうけた

忘れてください、あなたの長い生涯の為に」と

自分は4歳の時に被爆した戦災孤児だと打ち明けます

 

ウクライナでもチェルノブイリ出身者は結婚するのが困難だったそうですが

当時の広島では被爆者への差別や偏見が色濃く残っていたのですね

それでも幸雄と結婚したいバンビは、家族にそのことを打ち明けます

ちょうどその時バンビにはこれとない縁談の話が持ち上がっていました

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母親(三崎千恵子=寅さんのおばちゃん)や(垂水悟郎)

原爆症の青年との結婚より、現実的な幸せを願いますが

冒頭のレコードのお金のやりとりからもわかる通り

バンビは真面目で卑怯なことはできない性格なんですね


原爆病院(なんという病院名)に入院した幸雄を毎日看病していました

介護に迷ったときは、ふみ子が「幸雄には誰もいない、ひとりぼっち」と

バンビの代わりに泣いてくれました

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ある夜、危篤の幸雄に付き添い一夜を共にしたことで

結婚前の女性が外泊したとみんなが怒っているから

一度帰ってきてと兄嫁から病院に電話があります


バンビが家に帰っているわずかの間に

バンビを呼びながら、幸雄が逝ってしまう

もしこの時、バンビが幸雄を最期を看取っていたら

もしかしたら違う結末を迎えたのかも知れません


幸雄の遺体と対面したバンビは言葉を失い

ただ呆然と立ちすくみ

流れる涙が顎から雫になって落ちるだけ

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幸雄が死んだあと、バンビは岩井の紹介で主治医に会いに行きます

主治医(滝沢修)は戦後多くの被爆者を治療し

自らも被爆者(ハゲも被爆が原因だという軽いジョーク)でした

バンビは幸雄の再発の可能性について黙っていたことを批判しますが

「幸雄くんが白血病とわかって愛することをやめましたか?」とバンビに問います

「いいえ」と言うバンビに「愛のためには人は自殺さえ・・・」

と心の内を打ち明けるのです


主治医との面会の後、バンビは周りに明るく接するようになります

家族には、勉強になった、いい人を探すわ、と

藤井とふみ子には、広島中の橋の絵を描こうと思うの、と

そして喫茶店の窓辺に飾ってある

バンビのつがいのマスコットを貰っていくことにします


「私のあだ名はバンビ」

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バンビが元気になったことで、家族や友人が安心した中

バンビはひそかに、いつもレコードを届けている

隣のおねえさん(芦川いずみ)を訪ねていました


おねえさんはバンビの兄と結婚の約束をしていましたが

被爆者という理由で結婚が許されず、ひとりで生きていくことに絶望し

自殺未遂した過去がありました

でも今は死ねなかった分、老いた両親のため生きると言います

「天国があると思うか?」というバンビの問いには

「うち死に損ないじゃけん、まだわからんわ」と微笑むだけ


芦川いずみさん、雰囲気がなんともいえないですね

こんな美人な死に損ないがいたら、日本中の男が殺到しますから(笑)


誰もが、バンビが幸雄の死という悲しみを乗り越え

これからの人生に前向きになったのだと、そう思ったとき

幸雄の主治医に届いたバンビのマスコット

裏側には、幸雄と和江の名前と年齢が書いてありました


ここからのスピード感が凄い

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サイレンを鳴らし走る救急車

布団に横になったまま動かないバンビを揺する家族

枕元に見える楽の瓶

バンビの両手を布で巻く消防隊員

走り去る救急車

その様子を窓から覗く、隣のおねえさん、顔に残るケロイド

新聞に小さく載った被爆者青年の死を追い」という見出しと顔写真

かってふたりで訪れた原爆ドーム


なぜ主治医は自殺の話をバンビにしたのでしょう

それからバンビは自殺という思いに憑りつかれてしまった

もしかしたら長年の医師としての経験から

健康なバンビにも、死相が見えたのでしょうか

(医療従事者には、そういう勘が身に着くことがあるそう)

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誰もが、それぞれの立場から苦渋の選択を迫られる

被爆地で生きる人々にとって、悲劇が今なお続いているということを

さりげない台詞、さりげない工ビソードで表現している上手さ


広島、長崎の原爆投下もですが

福島の原発記憶さえ薄れつつある現代において

このような作品は、もっと注目されるべき存在

 

たとえニュースにならなくても

私たちが思う以上に差別や偏見で自殺している人は

多いかも知れないのだから

 

 

【詳細】NHKホームページBSシネマより

【監督】蔵原惟繕,【出演】吉永小百合,渡哲也,中尾彬,浜川智子,芦川いづみ佐野浅夫滝沢修,【脚本】大橋喜一,小林吉男,【音楽】黛敏郎

先日亡くなった渡哲也さんをしのんでの放送。吉永小百合との初共演となった純愛映画。昭和30年代後半の広島市レコード店で働く和江は、印刷会社で働く青年・幸雄と偶然に出会い、恋に落ちる。毎日のように一緒に過ごす2人。しかし、楽しい日々は長く続かなかった。幸雄は、幼いときに原爆で両親を失い、自身も被爆していた。原爆症のため、入院することになった幸雄。和江は周囲の反対を押し切って、愛を貫こうとするが…。