原題も「Yesterday」(イエスタデイ)
ポール・マッカートニーがガールフレンドの部屋で寝ているとき
夢の中で「Yesterday」のメロディが流れ
忘れないよう起床後すぐにコードを探し曲を完成
それがあまりにも完璧な曲だったので、既に誰かの曲かと疑い
みんなに聞かせて回ったところ、誰からも「知らない」と言われ
そこでやっと自分のオリジナル曲だとわかった
というエピソードから着想を得たそうです
イギリスの小さな海辺の町に住むインド系のシンガー・ソングライター
ジャックは12分間の世界同時停電のせいで、バスにはねられてしまい
目が覚めたら前歯が2本折れ、トレードマークの髭が剃られていました
退院後、快気祝いにマネージャー兼運転手のエリーと友人たちから
ギターを贈られ「今の気持ちを歌って」と歌った「イエスタディ」
エリーは感動し「イエスタディ」を絶賛
友人たちは誰ひとり「イエスタディ」もビートルズも知らないといいます
ジャックが目覚めた世界にはビートルズが存在しなかったのです
これは「もし世界中が〇〇になったら」と願い地位と名誉を手に入れる
場面場面での主人公の立場と、ビートルズの曲のあわせかたは、かなりうまい
TV番組で演奏してエド・シーランが最初に聴く曲「イン・マイ・ライフ」
エドのロシア公演の前座で「バック・イン・ザ・U.S.S.R」
エドとジャックの即興対決で「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」
歌詞を思い出すため訪れたリヴァプールで「ペニー・レイン」
「エリナー・リグビー」「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」
ジャックがアルバム制作のためにレコーディングする曲
「ヒア・カムズ・ザ・サン」
「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」
「ヘイ・ジュード」(は“ヘイ・デュード(相棒)”に変えられる)
アルバム発売記念でホテルの屋上で演奏する「ヘルプ!」
ジャックがエリーへの気持ちに気付く「オール・ユー・ニード・イズ・ラヴ」
ビートルズの曲が永遠に偉大なのは、ジャックだけでなく
誰でも自分の人生にもあてはまるものがあったり
共感できる部分が多いからかもしれない
エド・シーランが本人役でガッツリ登場するのは笑えるし(笑)
レディオヘッドの「イン・レインボウズ」のポスターが貼られていたり
フランツ・フェルディナンドのTシャツを着ていたり
ロックネタが散りばめられているのは楽しい
ただスッキリしないのはジャックとエリーの恋愛部分
こんなに献身的にしてくれて、どんな時も励ましてくれて
顔も可愛いくて、エリーがいなきゃ何もできなかったくせに
ただの幼馴染としか思っていなかったなんてひどすぎる
しかもギャビンは最初にジャックの曲を認めてくれた人で
無料でレコーディングしたりCD配布したりしてくれたのに
ジャックがエリーではなく、スターになる道を選んだせいで
傷ついたエリーに寄り添ってくれたのに
あまりにギャビンの扱いが酷すぎる
(ラストですぐに新しい恋人は作ってあげたけどさ)
注意:ここから映画の内容とは関係ありません
そもそも漁師のジョン・レノンは必要だったのか
(それともリヴァプールは漁師の街なのか 笑)
(ジャックと同じく世界同時停電でやって来たと思われる)
あのおじいちゃんと、おばあちゃんは、どうやってジョンを探したんだ
その前にロシアとリヴァプールで、どうやって知り合ったんだ
なんで記者会見会場に入れたり、ジャックの楽屋がわかったんだ
自分の曲じゃないとカミング・アウトするのにも、突然「ビートルズ」って
ポールもリンゴもジョージも存在しない世界で発表して意味あるのか
昔(この世界では)名前も知られていないバンドがありました
くらいの前置でいいと思います
そして私なら、ジャックとエリーは(この世界では)復活させないな
ビートルズのナンバーが終わった最後に
「これが僕が本当に作詞作曲した曲です」と
ジャックはエリーにオリジナルの新曲を捧げるのよ
それが奇跡的に感動的な曲で、エリーも会場のみんなも涙
マーケティング部では「大ヒット間違いなし」と大騒ぎ
チャンスを与えてくれたエドとギャビンに感謝の気持ちを伝えた
その瞬間
ステージに雷が落ちて停電
目を覚ますとそこは元の世界で
目の前にはいつものように笑顔のエリーが待っている
大事なのは有名になることでなく、大切な人と一緒にいること
ジャックは思わずエリーにプロポーズするの
もとの世界でジャックは、平凡という幸せを見つけ
映画の最後に流れるテロップで、あっちの世界のジャックの様子が
映像と字幕で紹介されます
最優秀レコード賞「イエスタディ」
最優秀アルバム賞「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」
最優秀楽曲賞、最優秀新人賞
その後「ビートルズの歌詞がはっきり思い出せない」という理由で
またもや謎の「オアシス」のギャラガー作詞作曲という楽曲を発表
さらに多くの若者の支持を得て、ワールド・ツアーは大成功
ジャックは医師から双極性障害と診断されたものの
実在しない妄想の「ビートルズ」と「オアシス」はカルト的バンドとなり
ジャック考察による、コカコーラと名付けられた清涼飲料材も
ペプシに対抗するという、飲料界に革命を起こしました
ハリー・ポッターも忘れちゃいけない(笑)
ダニー・ボイルはいいアイディア持ってるんだけど、脇が甘い
傑作「ボヘミアン・ラプソディ」(2018)があっただけに
誰もが「ビートルズ」のライブ感が蘇ることを期待したと思うのですが
ライブシーンは盛大に、恋愛部分は控えめに
それが逆になってしまったのが、最大の敗因
これはただの初恋ロマンス
ビートルズを語ろうと思って見てはいけません
【解説】allcinema より
「トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督と「ノッティングヒルの恋人」「ラブ・アクチュアリー」の脚本家リチャード・カーティスの初コラボで贈る音楽ファンタジー・コメディ。ある日突然、自分以外の誰もビートルズの曲を知らない世界に迷い込んでしまった青年が、彼らの名曲の数々を新曲として発表し一躍大スターとなっていく興奮と戸惑いの行方を描く。主演は英国の人気TVシリーズ「EastEnders」に出演のヒメーシュ・パテル。共演にリリー・ジェームズ、ケイト・マッキノン。またエド・シーランの本人役での出演も話題に。
売れないミュージシャンのジャックが夢を諦めたその日、世界規模で12秒間の大停電が起きる。その瞬間、交通事故に遭い、意識を失って病院に担ぎ込まれたジャック。彼が目覚めると、そこはなぜか歴史上からビートルズの存在が完全に消えた世界になっていた。ジャックが仲間たちに弾き語りでビートルズの『イエスタデイ』を披露すると、幼なじみで友人のエリーは初めて聴く美しいメロディに驚き、大感動してしまう。やがてジャックが歌うビートルズの名曲の数々は、彼の持ち歌として世間の注目を集め、瞬く間にスターへの階段を駆け上っていくジャックだったが…。