アリー/ スター誕生(2018)



女優の樹木希林さんが、インタビューで夫の内田裕也さんのことを

(うろ覚えですが)「自分の汚れた部分を一枚、一枚

 全部剥ぎとって行って
 最後に残った純粋なものが裕也さん」と、語っていたのが印象にあります

世間からみたらなんでこんな男と・・と思っても

妻にとっては誰より愛すべき男

決して見捨てることができない男


そんな愛の形がここにもありました




2011年にリメイク版の話が持ち上がった当初は
クリント・イーストウッド監督×ビヨンセ主演で交渉されたそうですが

ビヨンセの妊娠により延期


私はブラッドリー・クーパー×レディー・ガガで良かったと思います

確かにクーパーの初監督は未熟なものもあるかも知れませんが

その素人っぽさが、かえって初々しい


ガガの初主演も、自分に自信のない不安げなヒロインの姿と

うまくシンクロしていたような気がします

カメラは数々のミュージックビデオも手掛けているマシュー・リバティーク



ライブでアリーナを埋めつくす人気カントリー・シンガー

そして重度のアルコール依存症でした

あるライブの後、酒を飲むため偶然入ったドラッグ・バー

「ラ・ヴィアン・ローズ」を歌うアリー(ガガ)の歌声に

魅了されてしまいます


次のコンサートでジャックは突然アリーを起用し

ふたりのデュエットは観客から喝采を浴び

動画サイトでも話題になります




アリーはツアーを同行するようになり、ジャックと恋人にもなります

やがてアリーメジャーデビューのチャンスが舞い込み

カントリーから、歌って踊れるポップ歌手へと転身

テレビにも出演し、瞬く間にスターへの階段を駆け上がっていくのです


アリーが音楽性を捨たように思えてしまうジャック

しかもジャックの片耳は聞こえず、もう片方も進行性の難聴でした




ベートーベンやベドルジハ・スメタナ

フジコ・ヘミングさんから、今時のシンガーソングライターまで

なぜか音楽家に難聴は多い


耳の聞こえが悪いと簡単に言っても

日常生活におけるストレスは相当なもので、鬱にもなります

ましてやミュージシャンにとっては致命的




ジャックが酒やドラッグで現実逃避するのも気持ちも

わからなくはありません


だけど泥酔しすぎてライブに遅刻したり

道端で寝込んでしまうことも度々

ついにはアリーの授賞式でこれ以上ない失態をしてしまう




それがきっかけとなりジャックはリハビリ施設で更生

アルコールを絶つことに成功するものの

アリーのマネージャーであるレズが、海外ツアーの決まった

「アリーの成功を邪魔するな」と警告しにやってきます


だけどアリーは「海外ツアーを中止してあなたと過ごす」と

新しいアルバムを作るのだと嘘をつくのです


そして、ジャックがとった行動とは・・




愛し合うふたりが、なぜやりなおせなかったのか


オリジナル&2度のリメイクありきの作品ですが

ミュージシャン同士のいざこざや、仲間割れ

依存症への苦悩というようなお馴染みの展開は一切省いて

恋愛描写のみに焦点を当てた作風は

ボヘミアン・ラプソディ」と、また違った味わいがありました


ボヘミアン・ラプソディー」のヒットにも通じることですが

もしかしたら時代は、シンプルなロックやカントリーを

求めているのかも知れません




カントリーは特に、歌詞がいい

愛する人や、故郷への想い

失った時にはじめて気が付く切ない気持ちには

誰もが共感するものがあります


ジャックの死に「嘘をついたから」と自分を責めるアリー

ボビー(サム・エリオット)はそんなアリーをなだめます

「誰も悪くない、悪いとしたらそれはジャックだ」

ジャックのやさしさも、純粋さも、弱さも

兄のボビーがいちばんよく知っているのでしょう


やがてジャックの追悼式、(髪の色を戻した)アリーが

一度も歌われることのなかったジャックの曲

IllNever Love Again」を歌い上げるシーンは感動的




サントラは5ツ星級の傑作」と評価され

多くの国でアルバム・チャート1位を獲得

サントラを聞いてから映画を見るのもいいでしょう


それにしても4度も映画化されるなんて

アメリカ人はよほどこの映画が好きなのでしょう(笑)

もしかしたらアカデミー賞もマジで獲ってしまうかも知れません




【解説】allcinemaより

これまでにも何度もリメイクされてきた1937年の名作「スタア誕生」を原作に、世界的歌姫レディー・ガガが映画初主演を果たし、相手役を務める「世界にひとつのプレイブック」「アメリカン・スナイパー」のブラッドリー・クーパーが記念すべき監督デビューを飾った感動の音楽ドラマ。歌手を夢見る一人の女性が、国民的人気ミュージシャンに見出されたのをきっかけに、瞬く間にスターダムへと駆け上がっていくさまと、その中で皮肉な運命が交差していく2人の間に芽生えた愛と葛藤の行方を、レディー・ガガの圧巻のパフォーマンスとともに描き出す。
 ウェイトレスとして働きながらも歌手を夢見るアリーだったが、なかなか芽が出ず自信を失いかけていた。そんな時、場末のバーで歌っていたアリーの前に、世界的ロックスターのジャクソンが現われる。彼はアリーの歌声に惚れ込み、彼女を自身のコンサートに招待する。そして、いきなり大観衆が見つめるステージにアリーを呼び込み、一緒にデュエットを披露し、観客からの喝采を浴びる。これをきっかけにアリーは一気にスターへの階段を駆け上がっていくとともに、ジャクソンとも深い愛情で結ばれていくのだったが…