ボディ・ダブル(1984)

原題の「Body Double」 とは、映画やテレビドラマで

出演者に代わりに裸やアクションシーンを演じる代役のこと

(エンドロールが「ボディ・ダブル」の説明になってるのが面白い)

権力者の影武者(そっくりさん)という意味でも使われるそうです

 

もうひとつ、デ・パルマ自身が

ヒッチコックの「ボディ・ダブル」だと

かけているとのではないかと思います

留守番を頼まれた部屋で

隣家に住む美女を盗み見をした主人公が

彼女が殺される現場に遭遇してしまうというもの

 

ヒッチコックの巻き込まれ方サスペンスを

デ・パルマがエロエロにオマージュ(笑)

そのまんま「舞台恐怖症」

覗きは「裏窓」

高所恐怖症が閉所恐怖症になり、美女への執着と回転するカメラは「めまい」

(この360度グルグル回転する撮影はデ・パルマの定番になります)

資産家の妻の財産を狙うのは「ダイヤルMを廻せ!

しかも主人公を助けるのが

「鳥」と「マーニー」でヒロインを演じたティッピ・ヘドレンの娘

メラニー・グリフィス

 

ヒッチコック・ファンを豪語するデ・パルマ

完全なる趣味映画なんですが(笑)

デ・パルマからヒッチコック・ファンへの

「どこまで元ネタがわかるかな?」と問いかけている

ヒッチコック検定な映画でもあります(たぶん)

しかしデ・パルマの映画愛は全く理解されず

殺しのドレス」(「サイコ」のオマージュ)でも

「女性蔑視」だ「変態」だと酷評した良識派の批評家たちに

さらに女体満載に、過激な殺戮シーンで

お前らヒッチ先生の何を知ってるんだと、再び宣戦布告(笑)

おかげさまでラジー賞最低監督賞にも見事ノミネート

しかも本作含め5回ノミネートされているという快挙(笑)

(ほとんどの作品が後に再評価されている)

次作では「アンタッチャブル」という、映画史に残る傑作も生み出していますが

たぶんどちらも本気がデ・パルマ(笑)

売れない役者のジェイク(クレイグ・ワッソン)は閉所恐怖症で

吸血鬼役の映画の撮影シーンで気絶してしまい役を下ろされ

家に帰ると同棲している彼女が他の男と寝ているのに遭遇

追い出され(なさけない)住むところもなくなり落ち込むジェイクに

オーディションで知り合ったサム(グレッグ・ヘンリー)から

ヨーロッパに出張に行ってる知人の豪邸の留守番をしているが

舞台の公演ツアーに出ることになり

代わりに(観葉植物に水をやるため)留守番をしてくれないかと頼まれます

家というより完全に展望タワーですね(笑)

望遠鏡から向かいの建物に住む美女の姿が覗き見ることができ

ジェイクは留守番することを快諾します

この美女が窓のそばで夜な夜なセクシーダンスをするものだから

アメリカ映画では女性が窓のそばで裸になる、あるある)

ジェイクはすっかり彼女の虜になってしまいます

そしてアンテナ工事をする男も、彼女の家を覗いていることに気付きます

翌日女性が外出すると、その顔に傷のある怪しい男が後をつけるのを目撃

「彼女が危ない!」とジェイクは後をつけ

女性がショッピングモールで新しい下着を買い

脱ぎたてほかほかパンティをゴミ箱に棄てると、それを拾い上げる(笑)

途中、女性が公衆電話で話すのを盗み聞き

ホテルで待ち合わせしていることがわかります

海辺のホテルに到着し、彼女が砂浜に出てくると

ジェイクは女性に「何者かがあなたを狙っている」と伝えます

女性も尾行に気付いていたと言い、「それはあなたでは?」(もっともだ)

そこに傷の男が現れ、女性のバッグを奪っていきます

男を追いかけるジェイク、しかし男がトンネルに逃げ込むと

ジェイクを閉所恐怖のパニックが襲い

男はバックから何かを取り出すと、バックを捨て消えてしまいました

女性に抱えられ(なさけない2)トンネルを出ると

突然ジェイクの発情スイッチが入り(痴漢かよ)

彼女に情熱的なキスをし、女性もいったんはそれを受け入れますが

人妻なのだと、去ってしまいます

ジェイクはバックにあった身分証で

彼女がグロリア(デボラ・シェルトン)という名前だと知り

その夜もグロリアの家を覗くジェイク

すると例の男が(バッグから盗んだカードキーで)侵入し金庫を開けていました

そこにグロリアがやってきて、男と鉢わせになり

男がグロリアの首を締めます

彼女が殺される!グロリアの家にるジェイク

ジョギング中の男性にも助けを求め、ガラス窓を破って侵入

しかし大型犬が襲ってきて行く手を拒みます

その時、グロリアの悲鳴が聞こえ

男は金庫を空けるためのドリルで、グロリアを貫通し殺害したのです

ジョギング男に助けられ(なさけない3)ジェイクが2階へ向うと

すでにグロリアは死んでおり、男の姿はありませんでした

警察は「覗き見」で事件を知ったというジェイクを疑いますが

ジョギング男証人のおかげで解放されます

部屋に戻ったジェイクは落ち込み

酒を飲みながらアダルト番組を見ることにすると(なんでそうなる)

出演しているポルノ女優のダンスが

覗き見していたグロリアのダンスと、うりふたつでした

ジェイクはポルノ男優のオーディションを受け

ハリー(メラニー・グリフィス)というダンスの女優に近づきます

さらに自分は映画のプロデューサーだと嘘をつき、ハリーを誘い出

展望台の家に連れていきます

豪邸にウキウキのハリーでしたが、望遠鏡での覗きを聞かされ

ハリー金を出すから、グロリアの家の窓際で踊るように

知らない男から電話で依頼されたのだと説明します

 

そこに舞台の公演に出ているはずのサムから電話が入り、スピーカーにすると

声を聴いたハリーは、依頼した男の声はこの声だったと言います

ジェイクは、(声の主)サムは殺されたグロリアの夫で

ハリーをセクシーにるだけだと金で雇

閉所恐怖症という弱点をもつジェイクに部屋を貸し、興味を引かせ

さらに顔に傷のある男を使ってグロリアを殺した

その現場をジェイクに望遠鏡で目撃させることで

サムが妻殺しを雇った黒幕であることを隠ぺいしようとした

という推理をハリーに聞かせます

ですが、ジェイクが映画プロデューサーで

映画に出れると思っていたハリーは、騙されたことを知り

そのうえ殺人事件にまで利用されていたと、怒って帰ってしまいます

 

警察に届けようと(女を追いかけるんじゃないんかい)ジェイクがすと

前を走っている車の中で、拉致されたハリーが傷男に殴られていました

は町外れの用水路近くに車を停め

あらかじめ掘っていた穴に気絶させたハリーを入れ、埋めようとしていました

ジェイクがそっと近づくと、車に乗っていた大型犬が吠え

男に気づかれてしまい、揉み合いになります

ジェイクが男の顔をつかむと、男の顔の皮が破れ

現れたのはサムの顔でした

(殺人現場で犬が犯人に吠えなかったのはそのため)

 

サムは特殊メイクで他人になりすまし、自分の妻を殺し

さらに口封じためハリーも殺そうとしたのです

サムに反撃され穴に落ちてしまうジェイク

ジェイクは閉所恐怖の発作で身動きが出来なくなってしまいます

それでも何とか、穴を埋めようとするサムのスコップを掴むと

サムを助けようと、車から突進してきた犬がサムに激突(ばかだ)

サムと犬は用水路に転落し、水に沈んでしまいます

 

ジェイクとハリーは穴から脱出し、事件は解決

しかもジェイクは閉所恐怖症を克服し(ダメンズも克服できたらいいけどな)

吸血鬼の役に復帰を果たしたうえ、ハリーという新しい恋人もできました

なんだかんだ言っても、人間が大切にすべきものは「勧善懲悪」という王道

それをポルノ=変態=悪と決めつける輩への挑戦状

 

もちろん悪質ポルノには反対ですが、そうではない

良心ぶった知能犯のほうがもっと怖い

仮面を被った傷男のように




【解説】映画.COMより

俳優のジェイクはしばらく旅に出ることになったサムの部屋の留守番を請け負う。そこの望遠鏡で向かいに暮らす美女グロリアの部屋を覗き見してしまうジェイク。彼はグロリアを尾行し、その後、ふたりは結ばれることに。しかしグロリアが電気ドリルで惨殺されるという事件が。やがてジェイクは自分が罠にハメられたことに気づく……。ヒッチコック調の設定に加え、官能的なシーンを盛り込んだデ・パルマ監督お得意のサスペンス・スリラー。

1984年製作/114分/アメリ
原題:Body Double
劇場公開日:1985年2月9日