ブロードウェイ・メロディー(1929)

「客は踊り子の顔に10ドル払う訳じゃない」

「それがブロードウェイだ!」

原題は「The Broadway Melody

2アカデミー賞作品賞

メトロ・ゴールドウィン・メイヤーMGM)による

世界初の全編トーキーによるミュージカル作品

ミュージカルとしてはまだ試験的な作品で

肝心のダンスは脚の動きさえバラバラ

見ごたえがなくて驚きます(笑)

どちらかといえばドラマ部分のウエイトが高い

それでも観客は、声と音楽と豪華絢爛な衣装に驚き

女性の極端な肌の露出は衝撃的で卑猥だったのではないでしょうか

「サプライズ!」や整形がこの時代からあったこともわかります

ヒロインを演じたアニタ・ペイジは

サイレントとトーキー両方で成功した数少ないうちのひとりで

絶大な人気を誇っていたそうです

しかも94歳まで現役で活躍(2008年に98歳で没)していたというのですから

ファンだけでなく制作者にも愛された本物の女優だったのでしょう

ストーリーはその後の映画作りの基礎になった、と

いっていいほど王道

田舎から夢を抱いてブロードウェイにやってきた

ハンク(ベッシー・ラヴ)とクィニー(アニタ・ペイジ)のマホーニー姉妹

先に田舎から出てきて、歌手としてそこそこ成功している?

ハンクの婚約者エディ(チャールズ・キング)は

自身が作詞作曲した「ブロードウェー・メロディ」とともに

ザンフィールド一座のリハーサルを姉妹が受けれるよう

段取りを整えていました

ところがエディは何年かぶりに会い

大人になった妹のクィニーに惚れてしまい、クィニーの思いも同じでした

リハーサルでは座長が妹のクィニーだけ雇うといい

(部下の3人組の背広の男がばかばかしい)

「姉と一緒でなければ断る」とクィニー

しかたなくハンクも採用する座長

一方のエディは楽団とソリ合わず、上手くいきませんでした

(ピアニスト役はアニタ・ペイジの最初の夫)

そのうちエディがクィニーにますます夢中になっていき

そうとは知らない姉を思って、エディに自分のことを諦めさせようと

ステージのリハーサルで知りあった富豪のプロデューサー

ジャック(ケネス・トンプソン)に気があるふりをします

田舎者の妹が弄ばれるのではないかと心配するハンクに

クィニーに豪華なドレスや衣装をプレゼントしたり

有名人が集まるパーティに招くジャックを妬み、交際を反対するエディ

クィニーがジャックとのデートに行こうとするのを止めるために

エディは必死さのあまり、ハンクの目の前で

クィニーに愛していることを打ち明けてしまいます

クィニーがジャックと付き合うのは

エディと自分のよりを戻させようとしたためだとわかり

ショックを受けるハンク

姉の顔を見ることが出来ず、クィニーは部屋を飛び出して行きます

ハンクは気を取り直し、持ち前の健気さでエディに

クィニーを愛しているなら取り返しに行って!とハッパをかけます

そのあとのハンク泣きが凄まじい・・

クィニーも本当に好きなのはジャックではなくエディ

ジャックの求めに応じられず逃げ出すと

(今まで紳士だったのに、ご都合よく襲ってくる)

追いかけてきたエディと結ばれます

クィニーと結婚したエディは

ハンクに「3人で暮らそう」と持ち掛けると

(本物のクソだな、この男)

ハンクは自分は天性の旅芸人だと

クィニーの代わりに、リハーサルの意地悪女となぜか意気投合(笑)

新たな出発を決意するのでした

100年前の映画なので

今の価値観に当てはまるものではないですが(笑)

こんなに綺麗な画面で観れるのになったのは

素晴らしいことですね



 

【解説】allcinema より

後の名製作者A・フリードが作詞で貢献した(作曲はN・H・ブラウン)MGM初期のミュージカル・メロドラマで、原案はE・グールディングが手がけた。歌手のエディは自作曲の“ブロードウェイ・メロディ”を引っ提げ、ジーグフェルドを彷彿とさせるザンフィールドのショウに大いに売り込む。そして、成功した彼を頼って、ドサ廻りで互いに苦労したマホーニー姉妹がNYへやって来る。始めは妹のクィニーだけが採用されるが、姉のハンクは持ち前の粘りでザンフィールドに食い下がり、役を得る。ハンクの恋人エディは、いまや昔日の痩せぎすな面影もなく美しく成長したクィニーに夢中になってしまう。それを、姉思いの妹は涙をのんで撥ね付けて、金持ちの御曹司とのかりそめの恋に興ずるが、姉は遥か以前から妹の本心を見抜いていた……。この姉妹の愁嘆場の演出はいかにもご大層で、彼女たちは唄も踊りも決して上手とは言えない。ただ、バック・ステージの描写はまだリアル・タイムの活気を伝えて、全体に平板なこのグッド・オールド・デイズ的作品を今でも輝かせている。アカデミー作品賞受賞。