アリスの恋(1974)

原題は「Alice Doesn't Live Here Anymore」(アリスはもう、ここにはいない)

夫を突然の交通事故で亡くした専業主婦が

娘の頃からの夢だった歌手になるため

反抗期真っ盛りの息子を連れ、オンボロ車にボストンバッグ1つで

ニューメキシコから故郷のモントレー目指すロード・ムービー

マーティン・スコセッシの初期の傑作で

第47回アカデミー賞で主演女優賞

第29回英国アカデミー賞では作品賞、脚本賞

主演女優賞、助演女優賞ダイアン・ラッド)を受賞

ただ、この作品を面白いと思うかどうかは

ヒロインのアリスの行動や考えに

共感できるかどうか、だと思います

(ちなみに私は全く共感できませんでした)

いまではシングルマザーは珍しくはありませんが

それでも親(子どもの祖父母)に面倒を見てもらうとか

シングルになる前から安定した職業に就いている、でないと

生活するのは大変だと思います

それが50年前ならなおさらのこと

しかもアリスは35歳

体系は崩れ始め、特別美人なわけでもない

なのに歌手になれると本気で思っている

クソ生意気な息子はそんなの無理だとわかっていて

母親をバカにするわけですが

アリスはそれに気付かず、面白くなく

息子と喧嘩にばかりなってしまいます

さらにアリスは男運が悪い(男を見る目がない)

お金に尽き、なんとかバーで歌える仕事をもらうと

客としてやってきた、可愛い顔の年下の男をすぐ好きになり

それがとんでもないDV男なうえ、妻と病気の子どもまでいて

夜逃げするハメになります

エレン・バースティンがまた巧いんですよ(笑)

この普通にどこにでもいそうな、ダメ母を見事に演じていて

見る側を不穏にさせるのです

 

そんなアリスに思いを寄せるクリス・クリストファーソンがセクシー

ギターを弾き、数フレーズを歌っただけでプロの貫禄(笑)

(有名なカントリー歌手で「スター誕生」のバーブラ・ストライサンドの相手役)

アリスの歌が金を稼げるような代物でないことを

際立させることに成功しています

もうひとり、ダイナーの同僚でウェイトレスのダイアン・ラッド

仕事は早いし出来るけど、すっごいキツいんですよ

いわゆるお局様ですね

女性が新しい職場で働く厳しさは国が違えど同じ(笑)

 

なんの才能もなく、金もなく、決していい母親でもない

そんなアリスは、はたして自立できるのか

それとも、やはり男に頼らなければ生きていけないのか

おのずと結果は見えてくるというもの

そしてその通りの結末を迎えます

ニューメキシコ州ソコーロに暮らす35歳の専業主婦

アリス(エレン・バースティン

ひとり息子で11歳のトムは、バリの反抗期でロックが大好き

大音量で音楽を聞くものだから

夫のドナルド(ビリー・グリーン・ブッシュ)が激怒

でもドナルドは家では何もしない昔ながらの亭主関白

息子に注意をするのはアリスの役目でした

その夫が(コカ・コーラの配達員をしている)トラックの事故で

突然んでしまいます

夫の葬式を終えると、手元に残ったお金は僅か1ドル59セント

アリスは歌手として生計を立てることを決め

家財道具を売り払い、トムと共に故郷のモンテレーを目指します

ドライブ中トムは、今後の生活費はどうするのか

9月から学校に通えるのかとアリスに質問をぶつけ

アリスと言い争いになります

すぐにお金は尽き、途中の町で歌手の仕事を探すアリス

しかしいくら若作りをしてみても、仕事は見つかりません

ついにはバーのオーナーへ泣き落としを仕掛け

何とか歌手として働けるようになったある日

ベン(ハーヴェイ・カイテル)と名乗る、若い男に声をかけられます

彼は銃器の弾(火薬を詰める仕事)工場で働いているといい

純粋な彼の好意にアリスも惹かれ、モーテルで会うようになって1週間

モーテルに訪ねてきた女性が、ベンの妻だと言うのです

アリスのもとに通うようになってから、ベンは仕事に行っておらず

家にお金も入れず、難病の子どもの薬が買えなくて困ってると説明します

アリスは謝罪し、ベンに会わないことを約束しますが

そこにベンが帰って来て、モーテルのドアを激しく叩きます

身の危険を感じアリスが鍵を開けないでいると

玄関ガラスを割って侵入したベンは

ナイフを突き付けて彼女を追い出すとアリスを激しく殴り

「お前の仕事終わりに迎えに行く」と言い残し去っていきます

 

アリスは大慌てで全財産の90ドルを持ち、サムを連れ

ベンから逃れるため町を後にします

モンテレーへ向かう道中にあるトゥーソンという町で

再びモーテルに泊まりながら仕事を探すアリス

やはり歌手の仕事見つからず、ウェイトレスとしてダイナーで働くことにします

 

ダイナーには常に客がやってきて忙しく、仕事

さらに先輩ウェイトレスのフローダイアン・ラッド)は気性荒く

もうひとりのウェイトレスのベラは容量が悪すぎてイライラする

今までにないストレスの中、懸命に働くアリスの姿に

常連客のデイビッドクリス・クリストファーソン)が好意を寄せます

デイビッドは離婚した牧場主で

次第にアリスも優しいデイビッドに親近感を覚えていきますが

ベンとの関係の失敗で恋愛に慎重になっていました

一方で息子のトムはデイビッドに懐いていました

しかしトムの12歳の誕生日パーティをデイビッドの家で開いたとき

デイビッドとトムが(ロックとカントリー)音楽のことで意見が対立

父親面して命令するデイビッドに腹を立てたトムが、家を飛び出してしまいます

デイビッドとアリスも、子育てに対する考えの違いから決裂してしまいます

その夜トムは、同じギター教室に通う(ジェンダーレスな)不良少女

オードリージョディ・フォスターの家行くと、ふたりはワインを飲み

酔っ払って警察に補導されてしまいます

泥酔状態のトムを引き取りに行ったアリスは

トムの将来や、先の見えない生活に悩むのでした

(悩むのが遅すぎだけどな)

デイビッドと別れ、モントレーへ向かうべきかどうか

仕事も手につかないアリス

そんなアリスを見かねたフローが、彼女をバックヤードへ連れていき

何があったか問いただします

デイビッドやサムのことを洗いざらい告白すると

「男に頼らなければ生きていけないのか」と泣き出してしまうアリス

フローは「私達の人生は男に捧げるための人生じゃない」

「望みをハッキリさせて それを突き詰めるのよ」と激励します

これぞ、まさしくアリスにぴったりな言葉

ダイナーへ戻ると、アリスとやり直すためデイビッドがやって来ていました

逃げようとするアリスを、本音で話しあうのよとフローが引き留めます

アリスはデイビッドに「私は歌手なの!」と

夢を諦めきれない、モンテレーへ向かうと告げます

するとデイビッドは牧場なんてどうでもいい

牧場を辞めて一緒にモンテレーへ行くと言い

その言葉を聞いたアリスがデイビッドを許すと

店中の客がふたりを祝福します

そのことで、アリスはモンテレー行きよりも

歌はどこでも歌えるからと、デイビッドとトゥーソンで暮らす決意をします

トムにそのことを伝えると、トムは嬉しそうに

「デイビッドと喧嘩するかもしれないけど 上手くやるよ」と

答えるのでした

 

 

【解説】映画.COMより

突然の事故で夫を亡くした中年女性とその長男の旅を描く。製作はデイヴィッド・サスキンドとオードリー・マース、監督は「ミーン・ストリート」の新人マーティン・スコセッシ、脚本はロバート・ゲッチェル、撮影はケント・ウェイクフォード、音楽はリチャード・ラサール、編集はマーシア・ルーカス。出演はエレン・バースティンクリス・クリストファーソン、ビリー・グリーン・ブッシュ、ディーン・ラッド、レリア・ゴルドーニ、レーン・ブラッドバリー、ヴィック・タイバック、アルフレッド・ルッターなど。

1974年製作/アメリ
原題:Alice Doesn't Here Anymore
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:1975年11月22日