エルヴィス(2022)

脚がない鳥がいることを知っているか

彼らは陸に降りることなく空を飛び続けるんだ

眠りたくなったら羽根を広げて風に乗って休む

そして地上に降りる時は・・・

原題も「Elvis

エルヴィス・プレスリーのことはあまり知らないので

内容の評価は難しいのですが、私の好みではありませんでした

どちらかといえば、エルヴィスの音楽性より

マネージャーのトム・パーカー

自称パーカー大佐の糞人間ぶりを描いた映画

エルヴィスが幼い頃、父親は犯罪者で入所していて

メンフィスの黒人スラム街の貧民住宅に住み

黒人の子どもたちと遊び、ブラックミュージックやダンスに親しむ

教会ではマヘリア・ジャクソンのゴスペルを聞いて育ち

BBキングと友好を持っていた(本当?笑)

そこからエルヴィスのファッションやステージの

スタイルが確立されるまでは一切描かれていません

エルヴィスが登場した時って、音楽界が変わるくらい

もっともっと凄い衝撃だったと思うんですよ

だけどライブでは下半身を突き出すシーンを強調するカメラ

それに悲鳴をあげて喜ぶ女の子たち

カーニバルの見世物小屋で働いていたパーカー大佐は

人がいかに新しいもの、珍しいものに興味を持つか熟知していました

ブラックミュージックを歌う白人エルヴィスに目をつけ

(エルヴィスは未成年)エルヴィスの両親と契約します

しかもエルヴィスは音楽のこと以外は無知で不器用

すべての権利をパーカー大佐に任せてしまいます

彼の望みは母親にピンクのキャデラックを買ってあげること

それだけ

1956年「ハートブレイク・ホテル」 でスターになったエルヴィス

しかし時代は公民権運動、音楽さえも人種隔離的な扱いを受け

黒人のR&Bを歌うエルヴィスは保守層から非難され

「骨盤ダンス」「R&Bは青少年が不良になる原因」

下半身を動かせば逮捕されてしまいます

(代わりに小指を動かして歌う 笑)

1958アメリカ陸軍への徴兵され

所属部隊長の娘、プリシラ・アン・ボーリューと知り合いのちに結婚

1960年、除隊後はパーカー大佐が映画会社と契約し

約30本の映画に出演しますが

パーカー大佐のマネージメントで選ばれたのは駄作と凡作だけ

ジェームス・ディーンに憧れ、ディーンの映画の台詞全て覚えていた

エルヴィスの映画に対する夢は砕かれ

1969年から再び歌手としてステージに立つようになります

海外ツアーを望んでいたエルヴィスですが

それもパーカー大佐にうまく言いくるめられ

ラスベガスでのショーを続けることになります

パーカー大佐はオランダからの密入国者でした

パスポートがないため、一度海外に出たら再入国できない

エルヴィスが海外ツアーで成功したら

彼はもう自分を頼りにしないかも知れない

そして金に困っている人間はどんな嘘もつく

エルヴィスの父親に莫大な「経費」を要求するのです

さらにエルヴィスの父親は金の管理には無頓着で

一文無しだったことがわかります

このままだと屋敷も手放さないといけない

結局エルヴィスはパーカー大佐の元で働くしかありませんでした

エルヴィスにお金がなくなったのは

実はパーカー大佐が自らの借金返済のため

勝手にエルヴィスの楽曲の権利をRCAに売り渡しため

印税が入らなくなったのです

そのうえ映画からテレビ、ラスベガスのショー、ツアー

パーカー大佐による過密なスケジュールと

疲れと体調不良で医師から処方された薬を過剰摂取

家族と過ごす時間はなく

妻のプリシラは娘のリサ・マリーを連れ出て行ってしまう

やがてストーンズビートルズなどの新しい曲が代行し

エルヴィスの人気に翳りが出はじめ

過食により体重も増加していきます

そんな頃、バーブラ・ストライザンドから

映画「A Star Is Born」(スター誕生)の共演のオファーがきます

それさえもパーカー大佐は出演料が気に入らないと勝手に断ってしまう

それでもエルヴィスはパーカー大佐をクビに出来ませんでした

この男の最大の能力は素直な人間を洗脳して摂取すること

新興宗教霊感商法と同じ

全て吸いつくして空なるまで決して開放しない

私利私欲に塗れただけの、テロより怖い存在

最後のラスベガスのショーでは立つことさえできなくなったエルヴィス

それでもピアノを弾き熱唱する

アンチェインド・メロディ」(Unchained Melody

これは(刑務所に入っている男が)恋人に待っていてほしい

家に帰りたい・・という歌詞なんですね

1977816

自宅のバスルームでエルヴィスの遺体が発見

享年42

 

主治医のニック医師は朝には覚醒を呼び、夜には惰眠を導くため

アンフェタミンバルビツール酸系精神安定剤

睡眠薬、瀉下薬、ホルモン剤 など

1年間で1万包以上長年与え続け

さらに偽薬も調合し与えていたそうです

マイケル・ジャクソンやプリンスもですが

今もアメリカの悪辣な医師による過剰な処方はなくならない

カーター大統領は「我が国家の貴重な財産がもぎとられた」と

追悼スピーチを発表

エルヴィスの存在は私たちが思う以上にアメリカでは大きいのでしょうね

その証拠にアメリカではどこの観光地に行ってもエルヴィスがいる

(次に多いのはスパイダーマン 笑)



オースティン・バトラーとトム・ハンクス

パフォーマンスは素晴らしかったと思います

トム・ハンクスは嫌われちゃいそうだけど(笑)





【解説】映画.COMより

「キング・オブ・ロックンロール」と称されるエルビス・プレスリーの人生を、「ムーラン・ルージュ」「華麗なるギャツビー」のバズ・ラーマン監督のメガホンで映画化。スターとして人気絶頂のなか若くして謎の死を遂げたプレスリーの物語を、「監獄ロック」など誰もが一度は耳にしたことのある名曲の数々にのせて描いていく。
ザ・ビートルズやクイーンなど後に続く多くのアーティストたちに影響を与え、「世界で最も売れたソロアーティスト」としてギネス認定もされているエルビス・プレスリー。腰を小刻みに揺らし、つま先立ちする独特でセクシーなダンスを交えたパフォーマンスでロックを熱唱するエルビスの姿に、女性客を中心とした若者たちは興奮し、小さなライブハウスから始まった熱狂はたちまち全米に広がっていった。しかし、瞬く間にスターとなった一方で、保守的な価値観しか受け入れられなかった時代に、ブラックカルチャーを取り入れたパフォーマンスは世間から非難を浴びてしまう。やがて故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムでライブを行うことになったエルビスだったが、会場は警察に監視され、強欲なマネージャーのトム・パーカーは、逮捕を恐れてエルビスらしいパフォーマンスを阻止しようとする。それでも自分の心に素直に従ったエルビスのライブはさらなる熱狂を生み、語り継がれるライブのひとつとなるが……。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」などに出演したオースティン・バトラーがエルビス・プレスリー役に抜てきされ、マネージャーのトム・パーカーを名優トム・ハンクスが演じる。第95アカデミー賞では作品賞、主演男優賞ほか計8部門にノミネートされた。

2022年製作/159分/Gアメリ