逆転のトライアングル(2022)

「ありがとう ごちそうさま」

原題は「Triangle of Sadness」 (悲しみの三角)で

美容用語で「眉間に出来る皺」のこと

 

予告編で無人島に座礁したクルーズ船の乗客と乗組員の立場が逆転・・

おおよその筋はネタバレしていますが

胸スッキリの下剋上ものではないのでご注意を(笑)

トライアングル、というタイトルの通り物語は3部構成になっています

険悪なカップル、クルーズ船のカオス、島でのサバイバル

共通のテーマは、皮肉、皮肉、皮肉(笑)

1部目は男性モデルのカールのオーディションから始まります

「平等」「多様性」を強調するファッション界

H&M(低価格のファッションブランド)と

バレンシアガ(高級ブランド)の顔の違い

後から来たVIPに席を譲らされてしまう

口先だけで、世の中に平等などひとつもないという真実

恋人のヤヤとのデートでは食事代を払う、払わないで口論

このレストランで男女どっちが払うという喧嘩は

監督のリューベン・オストルンドの実経験だそうです

(なんてセコイ、しかもクドイ)

さらにヤヤは結婚するのは、妊娠して働けなくなっても

養ってくれる男と言い切ります(そりゃそうだ)

でもお互いなくてはならない存在、最終的には仲直り

部はクルーズ船に招待されたヤヤとそれに同行するマーク

ヤヤはインフルエンサーSNSを通じて影響を与える人)なんですね

インフルエンサーが宣伝のため、タレントや評論家と同じ扱いのうえ

高級ホテルや食事付きでイベントに招かれることはよくあるそうです

私もブログやインスタの営業を本気でやってフォロワーが増えていたら

今頃は映画の試写会くらいは招待されていたかも知れない(笑)

クルーズ船の乗組員を率いるのはポーラ

忍耐の後には高額なチップがあると一致結束させます

乗客たちは、妻と愛人を連れ楽しむ

ロシアの肥料会社の富豪(オリガルヒディミトリー

イギリスの武器メーカーの老夫婦クレメンタインとウィンストン

脳梗塞の後遺症で失語症になり車椅子の生活のドイツ人夫人のテレサ

アプリ用コードで億万長者になったヤルモ

オリガルヒの妻は給仕人を無理やりジャグジーに入れたり

スライダーを用意させスタッフ全員を海に飛び込ませます

(食中毒と、機関室の故障の原因になる)

「帆が汚れている」とケチをつけるご婦人もいる

(クルーズ船に帆はない)

そんな乗客のクレームや無理難題をなんとかしようと

ポーラはトーマス船長を呼びに行きますが

船長はセレブの接待をするため船長になったんじゃないと

酒を飲み、部屋から出てきません

しかもクルーズのメインイベントのひとつ

キャプテンズ・ディナーを時化の日を狙ってやると言います

これ、実物大のセットを本当に揺らして撮ったそうで(笑)

演じるほうも、見ているほうも船酔い状態必須

揺れる画面とゲロと便の放出が延々と続きます

映画の品や芸術性はどこに消えてしまったのでしょう

最近の肛門期の映画のなんて多いことか

しかも、嘔吐のシーンはチューブからの放出とCGということですが

オリガルヒの妻役のはリアルだそうです(真実か宣伝かはわからない)

沈没の原因はそっちかい(笑)

榴弾を見つけた老婦人が「うちの会社のね」とニコリと笑う

3部、島に流され生き残ったのはカールとヤヤ

ロシア人のディミトリー

億万長者ヤルモ

失語症のドイツ人夫人テレーズ

クルーのリーダー、ポーラ

機関士のネルソン(海賊)

そして脱出用ポットで漂着したフィリッピン人の清掃員

アビゲイルでした

ポットには水とスナック、毛布などが積まれていました

皆に水とポテチを分け与えるように命令するポーラ

アビゲイルは嫌々ながら応じます

さらにアビゲイル素手でタコや魚を捕まえ

火もおこせる、料理も出来る

サバイバルスキルを持っているんですね

でもセレブたちが全く働かないことに腹を立て

食べ物を分けることを拒否します

ここでは自分がキャプテンで、従った者にだけ食事を与える

プリッツェルを与える代わりに、夜な夜なカールをポットに呼びサービスさせる

仲間はカールを冷やかしますが、カールはまんざらでもない

ヤヤとアビゲイル、どちらを選ぶか迷うようになります

サバイバル生活が続くうち、みんな強くなっていくんですね

ディミトリーは死んだ愛人の遺体から泣きながら宝石だけは取り

ヤルモはロバを撲殺し食料にする

拾ったペットボトルに雨水をためて飲む

ヤヤも何か見つけるため山に登りたいというと

ひとりは危険だからとついていくアビゲイル

そこは生きていくため、ライバルでも協力します

最初の森の道はアビゲイルが優位でしたが

険しい崖路に入るとやはり若いヤヤのほうが体力がある

 

ついに島の反対側に着くと、そこにあったのは

テラスとエレベーターでした

この島も金持ちのためのリゾートだったのです

もとの生活に戻れることを確信して喜ぶヤヤ

アビゲイルに感謝しつつも

「私の付き人になってもいい」と言います

若くて、美人で、金持ちの白人

たとえ無意識でも、結局は上から目線

(次にバズるのはサバイバルと閃いたからかも知れないけど)

岩を持ちそっとヤヤの背後に忍び寄るアビゲイル

ラストシーンは、傷だらけになっても森を激走するカール

カールも、テレーズが遭遇した

金持ちにブランド品(漂着物だろう)を売る男に

会ったのではないでしょうか

 

アビゲイルが、自分が原因でヤヤを殺すかも知れない

でもこの島は無人島ではなかった、みんな助かる

急いで知らせに行こう

はたしてアビゲイルはヤヤを殺したのか

彼女はそんなに馬鹿じゃないと思います

よほど島の頂上までヤヤを担いで行って

山間に死体を突き落とせる体力があるなら別ですけど(笑)



この映画も「ポセイドン・アドベンチャー」や「タイタニック」のように

やがて名作として何十年先まで称えられるのでしょうか

 

私的にはどんな変態映画にも耐えられるほうですが

スカトロジーとスカトロジストだけは

あまり好きじゃないのよね



【解説】映画.COM

「フレンチアルプスで起きたこと」「ザ・スクエア 思いやりの聖域」など、人間に対する鋭い観察眼とブラックユーモアにあふれた作品で高い評価を受けてきたスウェーデンの鬼才リューベン・オストルンドが、ファッション業界とルッキズム、そして現代における階級社会をテーマに描き、2022年・第75カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した人間ドラマ。第95アカデミー賞でも作品、監督、脚本の3部門にノミネートされた。モデルでインフルエンサーとしても注目を集めているヤヤと、人気が落ち目のモデルのカール。美男美女カップルの2人は、招待を受けて豪華客船クルーズの旅に出る。船内ではリッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでもかなえる客室乗務員が笑顔を振りまいている。しかし、ある夜に船が難破し、海賊に襲われ、一行は無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態のなか、人々のあいだには生き残りをかけた弱肉強食のヒエラルキーが生まれる。そしてその頂点に君臨したのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃係だった。
オストルンド監督は本作で、前作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」に続いてパルムドールを受賞し、史上3人目となる2作品連続のパルムドール受賞という快挙を成し遂げた。ヤヤ役は、20208月に32歳の若さで亡くなり、本作が遺作となったチャールビ・ディーン。カール役は「キングスマン ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソン。そのほか、フィリピンのベテラン俳優ドリー・デ・レオンや、「スリー・ビルボード」「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」のウッディ・ハレルソンが共演。

2022年製作/147分/Gスウェーデン