ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(2012)





「人生とは捨てることだよ・・」


スランプに陥った青年作家が、旅行先のインドで
偶然知り合った老人に紹介された
「パイ・パテル」という男性の生い立ちと
虎と漂流した奇遇な運命を紹介した物語。

十五少年漂流記のような海洋冒険もの
少年少女向けのサバイバルファンタジーと思い鑑賞しました。
でも、ある意味どんでん返し系でした。

終盤の展開には、底のない沼のような深さまで感じます。
人が救いようのない窮地に立ったとき
またはそうでなくても
人は別の人格を作り出すことはある、私も思います。

パイは海難事故で虎と漂流することになりました。
共に飢え、食料を奪い合い、命がけの戦い。

でも現実になら動物と暮らしたら汚物も出るでしょう。
動物は自然の浄化にまかせ、人間のように自分で処理するわけでない。
長い間一緒に暮らすなら人が清潔を保つしかないのです。
そのことでも、虎が現実の虎でないことがわかります。
パイが産みだしたもの。

ミーアキャットの島は女性の比喩とか。
なんと辛辣な(笑)
昼間は豊かな食物も水も与えるのに
夜の水は酸性となり命を奪う死の島
しかも森の植物は男を喰うのです。

私的には、女性の怖さは喰うまでしないけど
「カチカチ山」のうさぎレベルの陰険さかなと願います。
(死なない程度・・笑)

そして宗教的な戒律。
母親はヒンドゥーのため菜食主義者です。

そんな母に育てられたパイが海での漂流に生きるためには
人間以外のものになるしかない・・
魚を糧にしなければいけないのだから。

そのうえ幼いころからイジメられていたなら
虎が心に共存していたのもあたりまえに感じます。

表紙は幻想的な映像な10代の冒険ファンタジーもの。
裏面は大人の寓話。
CGの美しさに惑わされてしまいがちですが
哲学的な作品でしょう。

私の中の獣は何なのかしら?

でも、今が幸せならそれでいい
きっと、そういうお話。



【解説】allcinemaより
ブロークバック・マウンテン」「ラスト、コーション」の名匠アン・リー監督が、ブッカー賞に輝いたヤン・マーテルの世界的ベストセラー小説を3Dで実写映画化した衝撃と感動のサバイバル・アドベンチャー・ドラマ。大海原で嵐に巻き込まれ遭難し、小さな救命ボートに獰猛なトラと乗り合わせることになった一人の少年が、その後いかにして生き延びることが出来たのか、その想像を絶する漂流生活の行方を、美しくも幻想的な3D映像で描き出していく。主演は新人スラージ・シャルマ、共演にイルファン・カーン、レイフ・スポール、ジェラール・ドパルデュー
 小説のネタを探していたカナダ人作家は、パイ・パテルというインド人男性を訪ね、彼の語る驚愕の冒険譚を聞くことになる――。インドのボンディシェリで動物園を営む一家に育ったパイ少年。やがて彼が16歳となったとき、一家はカナダに移住することになり、パイは両親や動物たちと一緒に日本の貨物船に乗り込むことに。しかし、途中で嵐に遭遇し、船は沈没。運良く救命ボートに乗り移ることができたパイだったが、彼と同じように辛くも逃げ延びたシマウマやハイエナ、オランウータン、そしてリチャード・パーカーと名付けられたベンガルトラと同乗するハメに。こうして少年パイの過酷な漂流生活がスタートするのだが…。