主戦場(2019)

日系アメリカ人、ミキ・デザキ(1983年生まれ)が初めて

監督、脚本、撮影、編集、ナレーションまで手掛けたドキュメンタリー映画

原題はShusenjo: The Main Battleground of the Comfort Women Issue

(慰安婦と日本の歴史戦争)

 

日韓両国で混迷し続けている「慰安婦問題」を

27人の論客によるインタビューをもとに

従軍慰安婦は「性奴隷」だったか、それとも「ビジネス」だったかの

仮説を実証していくというもの

これはレビューが難しいですね

なぜなら、慰安婦が「性奴隷」か否かだけに論点をあてていて

戦場での慰安婦たちの生活や実態がどうだったのか

(少なくとも映画の中では)ちゃんとした調査が

行われたように思えないからです

日本軍に強制連行された韓国人慰安婦の数は20万人

しかも1日20~50回レイプされたと主張します

ナショナリスト派(監督曰く歴史修正主義者)の

ケント・ギルバートさんの反論は

その数はひとりの日本兵が韓国人慰安婦だけで

毎日6回以上セックスしなければならない計算になること

慰安婦は強制連行でなく募集され、当時としては破格の給料が支払われていたこと

更に将校から多額のチップがもらえ

夜会や野球観戦にも連れて行ってもらえたと

韓国側が元慰安婦の証言だけをもとにしているのに対し

当時の新聞広告や、慰安婦だった女性の貯金通帳を掲示します

それだけに限らず、すべてが全くかみ合わない議論

これではいつまで経っても平行線のまま

30世紀になっても解決しません

確かに岡本喜八監督の「独立愚連隊」(1959)を見ても

「戦争が終わったら銀座で店をやる」と言う慰安婦がいて

給料やチップが良かった事がうかがえます

将校の愛人として特別待遇されていた女性もいたでしょう

それは映画の話、作り話だろうと言われたらそれまでですが

慰安婦たちは兵隊の後について一緒に戦場を移動

テントを張り、食事を作ったり洗濯をしたりもします

(妊娠して産まれた子どもについては、今ここでは考えないでおく)

敵の攻撃を受けて命を落とすこともあります

彼女らも国のため従軍し、共に戦地で戦っていたのです

(と、私は思っている)

それを「性奴隷」だとか、「ビジネス」だとか

(そもそもComfort Women=「性奴隷」という字幕は正確なのか)

どちら側にも誠意が全く感じられません

 

挙句の果て、靖国神社が出てきて

岸総理が出てきて、反安倍の香りがプンプン

さらに「テキサス親父」を名乗るアメリカ人YouTuberの

慰安婦像に紙袋を被せてネタにする動画

(10年前のもので、本人はアメリカンジョークの例えのつもり)

確かに像を設置した人たちにすれば、不快極まりないでしょうが

(今更)この動画を拡散してどうしたいのか

これも映画の中では触れていませんが

朝鮮戦争で韓国陸軍は韓国軍の他に

アメリカ軍と国連軍にも慰安婦を派遣し

女性たちは「ドルを稼ぐ妖精」「民間外交官」と呼ばれることもあったそうです

いろいろな考えがあることはわかったとして

現実的に元慰安婦を救済するためにはどうしたらいいのでしょう

 

私の個人的な考えとしては

大戦中に日本軍と共に戦った朝鮮人兵士や

講和条約日本国籍を失い、恩給を受ける資格も失った)

従軍慰安婦(韓国人だけとは限らない)またはその遺族には

日本人の退役軍人の恩給と同額程度の金銭は

日本が発展した時期に、支払われるべきだったと思います

彼(彼女)らもまた、日本人からは朝鮮人と差別され

国へ帰ると日本に味方した売国奴と罵られた

戦争の犠牲者たちなのです

今となっては、ほとんどの元従軍慰安婦が亡くなっていますが

生存されている方と、遺族は恩給を受け取る権利を

(裁判になり、従軍した証明は必要になるだろうが)

主張していいのではないでしょうか

日本政府が、総理が、頭を下げてくれればいい

謝罪さえしてくれれば、お金なんて1銭もいらない

世界中に慰安婦像を設置することこそが目的というなら

そちらの意思を尊重するにはしますけど

政府や極右派が、頭を下げたからどうなるというのでしょう

慰安婦像を何百何千作ったところで、誰が幸せになるのでしょう

それより、韓国人と日本人が和解しあい

いろいろな分野で発展していくことのほうが

私は大切だと思っています

 

 

 

【解説】ウィキペディア より

ミキ・デザキの監督デビュー作となる作品で日本の慰安婦問題を扱っている。インタビュー形式で多くの知識人・文化人や学者が登場する。2018年釜山国際映画祭ドキュメンタリー・コンペティション部門出品作品。

デザキは、2019年の11月から、イギリスやフランス、ノルウェー、ドイツ、イタリア、スイス、スウェーデンといったヨーロッパの国々を巡って上映会を行っている。

取材を受けた映画出演者5人が、合意なしに映画を商業公開されたとして民事訴訟を起こしているが、一審、二審、最高裁全てで監督と配給会社が全面勝訴した。

「ようこそ、『慰安婦問題』論争の渦中(バトルグラウンド)へ」

「ひっくり返るのは歴史か それともあなたの常識か」

「あなたが『ネトウヨ』でもない限り、彼らをひどく憤らせた日系アメリカ人Youtuberのミキ・デザキを、おそらくご存じないだろう。ネトウヨからの度重なる脅迫にも臆せず、彼らの主張にむしろ好奇心を掻き立てられたデザキは、日本人の多くが『もう蒸し返して欲しくない』と感じている慰安婦問題の渦中に自ら飛び込んでいった。慰安婦たちは『性奴隷』だったのか?『強制連行』は本当にあったのか?なぜ慰安婦たちの証言はブレるのか?そして、日本政府の謝罪と法的責任とは・・・?...」