ベイビー・ブローカー(2022)

「育てられないなら産むなよ」

「母親だけが責められて父親の責任は?」

 

原題は「브로커;」英題は「Broker」(仲買人)

いかにも是枝裕和です!という感じの物語でした(笑)

 

正直、是枝の犯罪をファンタジー化する作風は

私好みでないのですけど(それはオマエが毒女だから)

ファンタジー度はさらに増していました(笑)

名前のエピソードにはくるものがありました

「羽星」だからウソン 、 「海進」だからヘジン

叶わない想いを名前に託す、いつかきっと叶うように

 

そしてクライマックスの「生まれてきてくれて ありがとう」

さすがにグッとくるシーンですね

釜山から浦項(ポハン)、 盈徳(ヨンドク)、蔚珍(ウルチン)

ソウルまで向かうロードムービー

 

雨の夜、若い女性が教会の乳児を置き去りにし

女を張り込んでいた女刑事スジンは(そのままだと死んでしまう)

赤ちゃんを「ベビーボックス」に入れます

釜山でクリーニング店を営むサンヒョンが

「ベビーボックス」から赤ちゃんを受け取ると

夜勤の(教会の養護施設に勤めている)ドンスに

ボックス内の監視カメラの記録を消すように命じ

(赤ちゃんの生命が第一優先で、人物の姿は撮影されないことになっている)

赤ちゃんを連れ去ります

 

サンヒョンとドンスは、赤ちゃんを望む夫婦に乳児斡旋をして

金儲けしている、自称「善意のブローカー」でした

しかし思わぬことに、母親のソヨンが施設に赤ちゃんを取り戻しに来ます

ドンスは警察に届けるというソヨンをサンヒョンのところに連れて行き

謝礼を半分分けることを条件に、3人と赤ちゃん

さらに施設で育った男の子ヘジンと共に、里親探しの旅に出かけます

通称「赤ちゃんポスト」とは

親が育てることのできない赤ちゃん(新生児や子ども)を

匿名で緊急避難的に受け入れることを目的としたシェルターで

戸を開けて内部のある保育器に赤ちゃんを預けることができます

 

日本では、熊本県熊本市の慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」と

北海道石狩郡当別町の市民団体「こどもSOSほっかいどう」による

「ベビーボックス」の2ヵ所があり

望まない妊娠や、養育困難を抱えた親への

カウンセリングも行っているそうです

でも幼い少女や、言葉の通じない外国人などが

妊娠の相談したり、出産した赤子を届けるのには

九州や北海道はあまりに遠いし、お金も相当掛かります

日本の女性や児童に対する保護法はまだまだ後進国なのが現状

 

一方韓国ではキリスト教会「主の愛共同体教会」が運営する

2ヵ所ある「ベビーボックス」では、年/200人以上の子どもが預けられ

日本より圧倒的に保護される母子の数が多いんですね

しかも国が運営費用の7割を補助しているそうです

サンヒョンとドンスも親に捨てられ養護施設で育ちました

赤ちゃん(誘拐だけどな)ブローカーをしているけど

生活の安定した優しい両親に育てられることを願っているし

外国への転売など決して許しません

里親が決まるまでは我が子のように可愛がっています

 

ソヨンは売春婦でヤクザの幹部の子を妊娠、周りの反対を押し切って出産し

挙句の果てヤクザを殺し逃走中

なんとか赤ちゃんブローカーを掴まえたい刑事スジン

ソヨンを泳がせ、サンヒョンとドンスを現行犯逮捕しようとしています

(韓国の警察は殺人犯を逮捕しなくてもいい特権があるのか 笑)

 

さらに死んだヤクザの幹部の妻が

自分の子として育てると、子分(といってもサンヒョンの知り合い)に

女と赤ちゃんを追わせることにします

やってることは正しいといえないのですが(笑)

とにかくサンヒョンとドンスがやさしいんです

決して人が傷付くようなことは言わないんですよ

 

今まで誰からも親切にされたことのないソヨンは

最初は戸惑うのだけど、サンヒョン、ドンス、ヘジン

そして赤ちゃんとの生活が温かく、居心地よくなるんですね

でも元売春婦でヤクザの愛人で殺人犯

しかも赤ちゃんを捨ててしまった自分を許せないでいます

ソウルの夫婦は、子どもを死産してしまい養子を求めていました

赤ちゃんを抱き「おっぱいを飲ませてもいいですか」と言う奥さん

旦那さんの条件は、ウソンを実子として育てたいので

今後ソヨンとの面会は避けたいというものでした

 

5人は仁川(インチョン)市街地にある月尾テーマパークに遊びに行きます

ヘジンが乗りたいと言っていた大観覧車

でもいちばん高いところで気分が悪くなってしまう

決して高いところの人間にはなれないと示しているように

一方ソヨンと観覧車に乗っていたドンスは

嫌だったらウソンを売らなくてもいい、5人で家族になろうと提案します

涙が溢れそうになるウソンの顔をドンスの手が覆う

 

その後サンヒョンは娘に会いに行きました

だけどテーブルに教科書を並べ、目もあわせず食事にも手をつけない

「また一緒に暮らそう」「もう少しでまとまった金が入る」というと

携帯が鳴りママからの伝言だと「もう二度と連絡してこないで」

「赤ちゃんが産まれるの」「ごめんねパパ」去ってしまいます

もう二度とやり直せないことを覚悟するサンヒョン

その夜のホテル

サンヒョンはウソンに何か別れの言葉をかけてやれ、とソヨンにいいます

言葉が見つからないというソヨンに

あるだろ「生まれてきてくれて ありがとう」だとか

「なんなら、みんなに言えよ」

 

ドンスが部屋の灯りを消すと、ソヨンが囁きます

「ヘジン 生まれてきてくれて ありがとう」

「ドンス 生まれてきてくれて ありがとう」

「サンヒョン 生まれてきてくれて ありがとう」

「ウソン生まれてきてくれて ありがとう」

 

ドンスもソヨンに言います

「ソヨン 生まれてきてくれて ありがとう」

翌朝、ソヨンの姿はありませんでした

サンヒョンとドンスが出かけようとすると

知り合いのヤクザの手下が現れ、ウソンを渡すよう迫ります

サンヒョンは赤ちゃんをドンスに預け

「用事がある」とヤクザと消えてしまいました

ホテルに行き、ドンスが赤ちゃんを夫婦に渡すと

奥さんは「スヨンにいつでも会いに来てほしい」と言います

しかしそこに警官隊が突入、ドンスと夫婦は人身売買の現行犯で逮捕され

ソヨン自首したことを教えられます

 

一方テレビでは「暴力団員が殺され部屋から4,000万ウォンの現金が見つかる」

というニュースが流れていました

赤ちゃんを奪われないため、サンヒョンが殺したと思いますが(その後逃亡)

こんなヤクザの下っ端まで殺す必要があったのかな

3年後、ウソンはスジン刑事と彼女の夫が育てていました

情状酌量で刑期を追えたスヨンがウソンと再会する日

ウソンを引き取る予定の夫婦(執行猶予付き)もやって来ます

 

その様子を車の中から見つめる視線

バックミラーには5人で撮った時の写真がぶら下がっていました

(どうやって再会の場所を知ったんだ 笑)





【解説】ウィキペディアより

『ベイビー・ブローカー』(ハングル:브로커;英:Broker)は、2022年の韓国のドラマ映画。監督は是枝裕和。出演はソン・ガンホカン・ドンウォンペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨンら。

本作は、是枝裕和監督初の韓国製作及び韓国語作品で、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品作品である。

何らかの理由で親が育てられない新生児を預かる「ベイビー・ボックス」に預けられた1人の赤ちゃんを巡って、善意と悪意が絡まりながら色んな思惑を持った人々の姿を描き出す人間ドラマ。

第75回カンヌ国際映画祭では最優秀男優賞(ソン・ガンホ)とエキュメニカル審査員賞の2冠を達成。2022年5月26日夜(日本時間27日未明)に開催されたワールドプレミアでは上映終了後に12分間に及ぶスタンディングオベーションが起こった。

日本国内最大級の映画レビューサービス・Filmarks(フィルマークス)で6月公開の映画期待度ランキング1位を獲得した。

本作は全世界188か国に販売された。2022年6月8日に韓国、6月16日にインドネシア、6月23日に香港とシンガポール、6月24日に日本・ベトナム・台湾で公開された。今後、10月20日にドイツ、12月7日にフランス、12月26日に北米で公開予定。