原題も「기생충(Parasite)」(寄生虫)
ネタバレあり注意
アジア映画初の米アカデミー賞作品賞受賞ということで
今、最も話題になっている映画ですね
日本で黒澤明の「羅生門」(1950)が
ヴェネツィア映画祭金獅子賞とアカデミー賞名誉賞を受賞したときのように
韓国では盛り上がっているのではないでしょうか(想像です)
「半地下」とは1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が
北朝鮮との戦争に備え防空壕の役割として義務付けた建築法のこと
1989年に義務化が解かれたあとは安く賃貸する家やアパートが増え
低所得者の住まいの象徴となりました
(最近は老築化と不衛生のため減少する傾向にあるそうです)
そんな「半地下」住宅に住むキム一家は、元運転手の父は失業中
長男のギウと長女のギジョンは大学受験に失敗しフリーター
専業主婦の母は砲丸投げの選手だったようです
ある日ギウの友人で一流大学に通うミニョクが
家庭教師をしている女子高生のダヘに
自分の留学中英語を教えてくれないかと頼みに来ます
ギウは、妹のギジョンにソウル大学の入学証を偽造してもらい
IT企業の社長の奥様を見事騙し、仕事を貰うことに成功します
しかもインディアンヲタクで落ち着きのない末っ子に悩む奥様に
アメリカで「美術セラピー」を学んだと、妹のギジョンを紹介するのです
どうやらこの奥様、「アメリカ」の地名が出てくるとヨワイらしい(笑)
そして安藤加津が奥田英二に一目惚れしたように
世間知らずのお嬢様は無一文の男に弱いのか(笑)
テヘはすぐにギウに惚れてしまいます
さらに父親を社長の運転手として
母親をVIP専門の派遣会社の家政婦だと奥様に雇わせます
しかし末っ子の誕生日に社長一家がキャンプに行った夜
クビにした元家政婦がやってきて、事件はおこります
スゴイなと思ったのは北朝鮮ネタ(笑)
日本でも総理や大臣のモノマネをするお笑い芸人はいますが
映画でここまでできるのは、文化の違いはもちろんですが
日本より表現の自由が進んでいる証拠でしょう
(だからといって「表現の不自由展」を褒めているわけではない)
そして韓国特有の現象として、10大財閥の一族と
(サムスン、ヒュンダイ、LG、SK、ロッテ、韓進
斗山、コーロン、ハンファ、錦湖(クムホ)アシア)
そこに勤める従業員と家族ばかりが上流と認められる傾向にあり
いくら高学歴でも、財閥系に関わる仕事に就かないと
低所得から抜け出すのは難しい
これでは庶民が富裕層に対するうっぷんが溜まっても当然
キム一家はたとえ詐欺行為であったとしても
うまいこと高収入で財閥一家の仕事に就けた
へんな欲を出さず、”同じ穴のムジナ”の元家政婦にも親切にして
恩を着せておけばよかったものを・・
「半地下家族」と「地下家族」の戦いの火蓋はきられ
決戦は集中豪雨で「半地下」が水没した翌日
社長の家に財閥一家が集まったホームパーティ会場になります
そこで死んだ「地下親父」の体臭にイヤイヤする社長の姿に
キレてしまった「半地下親父」
でもご主人様が変わっても
結局その家に寄生していくというオチ
確かに面白いといえば面白いのですが(笑)
記憶に新しい「カメラを止めるな」(2017)もそうですが
終始怒鳴って、喚(わめ)いて、他人をおちょくる
このタイプのノンストップムービーに笑えないし
それどころか見終えたあとに疲れが出てしまう
そんな新しい時代の映画に、ついていけない自分を感じた
アカデミー賞4部門受賞作品でした
【Story】公式ウェブサイトより
過去に度々事業に失敗、計画性も仕事もないが楽天的な父キム・ギテク。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン… しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。
“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。Wi-Fiも弱い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク一家が暮らす高台の大豪邸だった——。
パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。