血と砂(1965)

靖国神社にだけは行くなよ

あそこはねぇ 他の神様にいじめられるから

一番良いのは なーんにもなくなっちまうこと」

 

なんか今の靖国神社問題を予知するようなセリフですね

原作は伊藤桂一悲しき戦記

岡本喜八戦争体験を喜劇にしてしまう手腕は相変わらず

(同じアナーキズムでも今村昌平の「冷笑」とは違う)

悲劇を「笑い」というベールで覆った、戦死者たちに対する鎮魂

完璧ともいえる伏線回収の脚本

1945年(昭和20)夏、北支戦線(支那方面軍)

少年兵13人の軍楽隊(音大生)が「聖者の行進」でやってきます

後ろから騎馬に乗った小杉曹長三船敏郎)に

小杉曹長をお追いかけてやってきた従軍慰安婦

お春”こと金春芳(団令子)が合流します

お春は慰安婦たちの中でも人気があり

上官からのチップも弾み、札束を数えるほど

お春の姿を見ただけで、立ち上がれなる少年兵たちに

「若いんだなあ」と微笑む小杉

基地では敵前逃亡の罪に問われた見習士官が銃殺される事件があり

(実は敵地から連絡に戻っただけだった)

小杉は大隊長佐久間大尉(仲代達矢)を殴りつけ

処刑をおこなった”出刃”こと犬山一等兵佐藤允) を

軍規違反だと独房に入れます

怒った大隊長により、少年兵たちは楽器をとりあげられ

一般兵として毎日軍歌を歌わせられることになります

小杉の処刑を恐れたお春は、寝床で隊長に泣きこんで

小杉の命乞いをします

(小杉が北支戦線に左遷されたのは、嫌がるお春を守ろうとして上官を殴ったため)

大隊長から小杉にヤキバ砦奪還の命令が下され

同行するのは戦闘経験が一度もない軍楽隊の少年兵たちと

営倉(軍律違反に問われた軍人を収容する施設)に入っていた

葬儀屋”こと持田一等兵伊藤雄之助) と志賀一等兵天本英世

そして(板前だった)出刃でした

いわば「使えない」のと「問題児」ばかり

しかもこちらが17人に対して砦には50人以上

奪還どころか自殺行為

しかし「少年たちを軍歌で送るには寂し過ぎる せめて明るく送ってやりたい」

という小杉の思いに、大隊長は楽器だけは返すことにします

小杉は「野球やってた奴はいるか?

(コンダクター原田) 「ハイ!自分はピッチャーでした

榴弾持って俺についてこい

トロンボーンは軽機だ、出てきた敵を撃ちまくれ」

「アルト・サックスとクラリネットは大薬種」

「大太鼓と小太鼓擲弾筒(てきだんとう)ぶっ放せ」

「ピッコロ、スーザホーン、トランペット突っ込め」

 

「リズムを忘れるな、リズムが狂ったらやられるぞ」

スポン、ガツン、はいレフト、いちにっさん、ボカン!

スポン、ガツン、はいセンター、いちにっさん、ボカン!(笑)

小杉と原田は水汲みをしていた敵の服を奪い、変装して砦に潜入

榴弾を爆発させ、仲間を突撃させると

2名の死者を出したものの、砦を乗っ取ることに成功します

さらに砦の近くには国民政府軍の基地があり

小杉は大砲に二重に弾を詰めると、出刃とともに夜襲をかけ

殲滅(せんめつ=皆殺し)します

そこに日本軍から奪ったトラックで国民政府軍がやってくると

小杉らはそこでも敵を撃退し

同乗していた(小杉を追いかけてきた)お春を救出します

お春は小杉のことを本当に好きなんですね

お春が来たことが嬉しくてたまらない少年たち

お春のために「なでしこ部屋」を用意し

オリジナル・ソング「お春さんの歌」が歌われます(笑)

その夜、「お前たちは童貞か?訊ねる小杉

俺もですと手をあげる葬儀屋(笑)

 

若くして戦死した兵士のを

「楽しみも知らずに逝くなんて」と嘆くお春に

小杉が少年たちの相手を頼むと、無償で小杉の願いをききます

(なんの問題もなくノビノビと(笑)「はい、次!」)

でもなんか、小杉とお春の

男女とかセックスとか、そういうところを超えてしまっている

絶対的な信頼関係っていいですね

 

一方で出刃は銃殺した見習士官が

小杉の実の弟であったことを知り衝撃を受けますが

砦の奪還にやってきた国民政府軍の激しい襲撃により

小杉が戦死してしまいます

小杉弔いのため、大砲と砲撃が吹き荒れる中

楽器を演奏する少年たち

爆破音と「聖者の行進」によるハモり

しかし大隊長の援軍を待つことなく

少年たちも、お春も犠牲になってしまいます

その日、815

戦闘に巻き込まれ死んだゲリラの少年の手には

終戦を告げるビラが握られていました

 

 

【解説】ウィキペディアより

岡本喜八監督、三船敏郎主演による1965年9月18日公開の日本映画である。モノクロ、シネマスコープ、132分。

当時、日本映画界全般を見渡しても屈指の名コンビ(監督・主演者)と言い切れる活躍ぶりを展開していた岡本喜八三船敏郎による戦争活劇大作映画である。『独立愚連隊』(1959/東宝)、『どぶ鼠作戦』(1962/同)で根幹に据えたテーマをよりわかりやすく表に出そうという岡本の思いのもとに企画された。そうしたこともあり、「独立愚連隊」シリーズの少年版、番外編、または東宝『独立愚連隊』ものの七作目とも一部からは言われる。ヒロインは日本名を持つ朝鮮人慰安婦である。