主人公の江分利満(えぶり まん)とは
エブリマン=every man=普通の人、だれもかれも、のこと
岡本喜八が描いた高度成長期サラリーマンのコメディ
原作は山口瞳の戦中派の「昭和人」を描いた自伝的小説
会社員の昼休みの屋上風景は
「みんなでコーラス」「みんなでバレーボール」「みんなでダンス」
じゃりの道路、二日酔いで遅刻してもいい会社
下宿している外国人のお焼香
だけど主人公、江分利だけはどこにいても浮いている
口癖は「おもしろくない」
「おもしろくない」「おもしろくない」「ああ、おもしろくない」
酒を飲んでは愚だを撒き、周囲の人間からはちょっと引かれてる
確かに、こんなエブリマン誰も見たくない
戦争成金の親父はもっとヒドイ←しかも水戸光圀公(東野英治郎)
公開は客が入らず1週間で打ち切りになったそうです
とはいえ、アニメ、ストップモーション、合成技術
スマッシュカット(突然の転換を表現するテクニック)の編集技法が面白い
突然ユーモアの中に戦争の影をぶち込んでくるのも岡本喜八らしい
監督自身も自作の中で好きな作品のひとつだそうです
主人公の江分利はサントリーのコピーライター
仕事ぶりは優秀で才能があるのでしょう
その分会社からも優遇もされている(たぶん)
ただ文才のある人間特有の嫌味も持ち備えている
頭のいい人間あるある、周りの人間が阿呆にしか見えない
価値観が違う、話が噛み合わない、誰もわかってくれない
「おもしろくない」「おもしろくない」「ああ、おもしろくない」
だけど泥酔したある夜、見知らぬ男女と一緒に飲んだ
そしてしらふになった翌日、その男女が会社にやって来た
・・・誰だ?全く記憶にない
彼らは「婦人画報」の編集者で
江分利は酔った席で「婦人画報」に小説を書くと約束したと言うのです
・・・なんだ?全く記憶にない
でも結局引き受けちゃう、酔っ払いあるある(笑)
なんだかんだ悩んだ末、結婚のこと、奥さん(パニック障害)のこと
おふくろのこと、ダメ親父のこと
自分の負け犬人生を書き綴るわけですが
そんな自虐ネタが女性からも大人気
直木賞まで受賞してしまうのです
でも皆さん、これを棚ぼたと勘違いしてはいけません
主人公には文才があった
そして、その才能を認めた人たちがあったからこと
出来たことなのだから
【解説】ウィキペディアより
山口瞳の小説。1961年10月 - 1962年8月、『婦人画報』に連載。戦中派の「昭和人」江分利満の生活を通して、昭和30年代の典型サラリーマンの日常を描写する。直木賞受賞作。
1963年には東宝の製作・配給で映画化された。東宝からDVDが発売されている。モノクロ。シネスコ。原作とは大きく変更された。まず原作はオムニバスでまとまったストーリーを持たなかったので、映画として1つの筋にまとめられた。また、主人公の勤める会社が東西電機からサントリーへと変更された。そして、主人公がふとしたきっかけで直木賞を受賞するというように、原作より山口瞳本人の分身に近づいている。江分利満を演じた小林の見た目も、山口本人によく似せている。映画化が決定した当初、監督は川島雄三に決定していた。川島は「作中、主人公が社宅から一歩も出ない」という構想を持っていたようで、その通りの脚本が出来上がった。キャスティングも決定してあとは撮影に入るだけだったが川島が急死したため、急遽、岡本のもとに企画が回ってきた。プロデューサーの藤本真澄は、社長シリーズなどのサラリーマン映画の延長上にある喜劇映画を意図していたが、それまでアクション映画やライト・コメディばかり監督していた岡本は、戦中派のボヤキを前面に押し出した、軽妙なテンポの中に重いテーマを据えた作品に仕上げた。そのため、完成作品を見た藤本は喜劇映画とは明らかに毛色の違う作風に激怒したという。作品はそのまま封切られたが客が入らず、公開は2週間の予定を1週間で打ち切られた。アニメーションや合成技術、ストップモーション・スローモーションの多用など、岡本らしい当時としては斬新な手法が見られる。岡本も自作の中で好きな作品として挙げており、代表作のひとつである。ただし、自己を吐露する長大な終盤場面は、これまで決してエンタテインメントの枠をはみださなかった岡本監督としては異例であり、小林信彦は作品的価値とは別に観客を戸惑わせて監督の不遇を招いたと指摘している。なお併映は、高峰秀子主演・成瀬巳喜男監督『女の歴史』