「与えれば、与えられる 求めよ、さればもたらされる」
原題は「Loin des hommes」(男から遠く離れて)
原作はアルベール・カミュの短編集「L'exil et le royaume」(追放と王国)の
中の一編「L'Hôte」(客)
フランス人からはアラブ人と言われ、アラブ人からはフランス人
またはエスカルゴ(スペイン人←母親がスペイン系)と呼ばれた
私は「異邦人」しか読んだことがないのですが
彼の倫理や正義や愛に対する不条理や反抗というテーマは
本作にも共通しているように思えます
1954年、人里離れたアルジェリアの村の学校
フランス人の教師で元軍人のダリュ(ヴィゴ・モーテンセン)が
子どもたちに勉強を教え、配給(食料)を配ります
そこにフランス人憲兵がやってきて
従弟殺しの容疑をかけられているモハメド(レダ・カテブ)という男を
裁判にかけるためタンギーまで送り届けてくれと命じられます
死刑になるとわかっている男の付き添いなんてまっぴらごめん
勝手に逃げてくれといわんばかりに
ダリュはモハメドの縄をほどき食事と寝床を与えます
真夜中になりモハメドが起き上がり外に出ると
やっと逃げる気になったかと思いきや
トイレを済ませて戻って来る(笑)
何故彼がフランス人によって裁判にかけられ
死刑になることを望むのかダリュには理解できません
すると次の朝、村の男たちがモハメドを殺すためにやってくるんですね
なんとかダリュが銃で追い返すと
モハメドには母親と弟たちがいて、麦がなければ飢え死にしてしまう
その麦が従弟に盗まれてしまった
盗人は殺さなければならない、それが掟
一方で家族を殺されたら、復讐しなければならない
それも掟
それでもし自分が従弟の家族に殺されたら
今度は幼い弟が復讐しにいかなければならない
掟だから
そして次は弟が殺される番・・
弟と母を救うため、負の連鎖を終わらせるため
モハメドはフランス人に処刑されることを選び
わざと憲兵に捕まったのです
ただモハメドの唯一の心残りは結婚できなかったこと(笑)
夜空を眺めながらダリュに女性とはどういうものか尋ねます
途中ゲリラの捕虜となるものの
アラブ人の知り合いも多いダリュの人徳で生き延び
なんとか街に着くとダリュはモハメドをサロンに連れて行きます
事情を察したマダムのはからいが粋だね
そしてこの経験が、モハメドに生きる希望を与えることになります(たぶん)
ダリュは裁判所への道ではなく、砂漠の道を行けば
遊牧民が助けてくれる、それが彼らの掟なのだとモハメドに教えます
「生きろ」のメッセージと練乳のチューブを渡し
モハメドが砂漠への道を選んだことを確認すると
来た道を戻っていくのでした
学校に戻ると子どもたちがいつも通り登校してきました
でもダリュはこれが最後の授業だと生徒に伝えます
幼くても戦争が始まったことは察しているのでしょう
少女が寂しそうに手を握る
黒板に(モハメドはフランス人に処刑された)
メッセージを書き残し学校を去るダリュ
その後のふたりがどうなったかはわかりません
ただ、いつか幸せに暮らせる永住の場を見つけて欲しい
そう願わずにいられませんでした
【解説】映画.COMより
ノーベル文学賞作家アルベール・カミュの短編小説をビゴ・モーテンセン主演で映画化したヒューマンストーリー。1954年、フランスからの独立運動が高まるアルジェリア。元軍人の教師ダリュのもとに、殺人の容疑をかけられたアラブ人のモハメドが連行されてくる。裁判にかけるため、山を越えた町にモハメドを送り届けるよう憲兵から命じられたダリュはやむを得ずモハメドとともに町へと向かう。復讐のためモハメドの命を狙う者たちからの襲撃、反乱軍の争いに巻き込まれるダリュとモハメド。ともに数々の危険を乗り越える中で、二人の間に友情が芽生え始めるが……。監督・脚本はフランス出身のダビド・オールホッフェン。