モダン・タイムス(1936)

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原題も「MODERN TIMES」(現代)
何度観ても安心のクオリティ
最小限の音声と字幕、最大限の風刺と哀愁
ここまで境地に達したら、チャーリーがトーキーに
踏み切れなかったのもわかる

それでも次作「独裁者」(1940)のラストの演説の言霊には心が震える
もし赤狩りとハリウッドからの追放がなければ
この天才はあといくつの名作を生みだしていたのだろう

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冒頭の工員たちの出勤のシーンはフリッツ・ラング
メトロポリス」をパクッたそうですが(オマージュともいう 笑)

工場の巨大セットや、自動食事マシーンに
相当なお金が使われているのがわかりますし
チャーリーの動きに、絶妙なタイミングであわせるわき役陣の力量
エキストラも多くチャーリーの絶頂期の作品だったことがうかがえます

 

【ここからネタバレあらすじ】

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チャーリーは今でいう社会不適応者
みんなと同じように仕事ができず失敗ばかり
ついに発狂してしまい病院送り

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ようやく退院を迎えた日
トラックから落ちた赤旗を拾い、運転手に返そうと追いかけていくと
いつの間にかデモ隊の先導になってしまい拘置所生活
ある日の食事中、麻薬所持者が塩の容器に隠した麻薬を食べてしまった
チャーリーは脱獄囚を撃退、放免されます

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拘置所の紹介状で造船所の仕事に就くものの
またもや大きな失敗で、浮浪者になってしまいます

そしてもうひとりの主人公、ポーレット・ゴダード(当時25歳)
(この後チャップリン事実婚もしました(1936年 – 1942年))
船荷のバナナをギラギラとした瞳で盗み弟や妹に投げ与え
裸足で駆ける姿はまるで狼少女

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父親が突然死してしまい、家は差し押さえられ
姉弟は孤児院に預けられるため役人に連れ出されてしいます
その隙に役人から逃げ出しますが、行く当てもなく
空腹でパンを盗んだその罪を「私です」とかばうのがチャーリー
だけど目撃者の証言で結局少女が捕まってしまいます

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どうしても刑務所に戻りたいチャーリーは、わざと無銭飲食
しかし護送車に乗らされると、少女と再会
護送車がカーブを曲がり切れず事故を起こした瞬間
ふたりは逃げ出します

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チャーリーはデパートの夜警として働きだし
閉店後こっそり少女を呼びふたりだけのパーティ
ローラースケートのシーンには毎度ながら唸らされる
どうやって撮影したんでしょ(笑)
だけどその夜泥棒に入った元の職場の仲間と酒を飲みすぎ泥酔
再び留置所に拘留されます

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少女はチャーリーの釈放を待ち
「家をみつけたの」と河原のボロ小屋に連れて行きます
柱は落ちるし、床は抜ける、だけど幸せ

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工場がまた人を雇うと知ったチャーリーは
本当の家を手に入るため働きに出ますが、やっぱり失敗
一方少女は路上で踊っているのをキャバレーの支配人に認められ
ダンサーとして働きだします
少女の口利きで、歌手として雇ってもらったチャーリー
だけど全く歌詞が覚えられない(笑)
そこでアドリブでパントマイムを披露、それが客に大ウケ

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しかし役人に少女が見つかってしまったことで、ふたりはクビ
絶望する少女に「絶望なんてない、二人で頑張るんだ」と励まし
「スマイル」と手を取り合って歩き出す

 

【ネタバレあらすじ終了】

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テーマは、資本主義と文明への批判と警鐘
でも批判するだけなら、誰にでもできる
チャーリーの違うところは、それでも愛する人のために家を建てよう
何度失敗しても、うまくいかなくても働こうとするところ
全てを失っても、また頑張れる

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そして名画には名曲あり
"Smile"はチャーリーがプッシーニの「トスカーナ」に
インスピレーションを得て作曲したということ
1954年にはナット・キング・コールが歌詞を付け大ヒットしました

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If you smile through your fear and sorrow
心配や悲しいことがあっても、笑顔なら
Smile and maybe tomorrow
You’ll see the sun come shining through for you
明日は日差しを迎えられるかもしれない
You’ll find that life is still worthwhile
If you just smile
生きることは、笑うことが最も重要なのだから

 


【解説】allcinemaより
文明という名の機械化の波があれよあれよという間に押し寄せてきた30年代。工場で働くチャーリーは、スパナを両手に次々と送られてくるベルトコンベアーの部品にネジを締めていた。ところが絶え間なく運ばれてくる部品を見ている内に、段々彼の頭がおかしくなっていった……。彼が機械文明に対して痛烈な諷刺を込めて描いた傑作。驚異的に進む機械化の中で、一個の歯車として駆けずり回る労働者と、それを私設テレビで監視する資本家との構図によって、この後訪れる人間喪失の時代を30年も前に先取りしていたという点で、彼の社会に対する観察眼の鋭さ、その才能の凄さには改めて感心させられてしまう。またこの作品が製作された38年と言えば、世界のほとんどがトーキー化していたが、彼はそんな中でもキャバレーのシーンで“ティティナ”を歌う意外一言もセリフを喋らず、かたくなに動きと映像だけでこのテーマを訴えた。トレード・マークでもある、山高帽、ドタ靴、ステッキというスタイルが最後となった作品でもある。