小説が原作ということで
ゴッホの人生を忠実に描いたものではありませんが
ゴッホのイメージを定着させた作品だということです
世界中のゴッホの画を集め、
描かれた背景がわかるように
作中の要所要所に登場
豊富な色彩を駆使して
人物も、室内も、風景も
モチーフをそのまま再現
(郵便夫がそっくり!)
美術専門家が見たらどうかはわかりませんが
ビンセント・ミネリの演出は、非常に見事だと思います
監督自身がゴッホになったつもりで
撮影したと言っても過言でありません
物語は弟テオへの手紙を元に、ゴッホの生涯を順に追っていきます
なので私たちはゴッホに共感するというよりは
彼を客観的に見つめることが出来ます
恋愛も友情も不器用なくせに、ストレートで空回り
だけど幼い子どもを可愛がったり
ゴーギャンのため部屋に絵を飾ったり
愛情や思いやりある一面も描かれています
お互いの個性や主張が強くてぶつかり合いばかり
愛想をつかして出ていくのはあたりまえ
それでいて孤独を嫌うゴッホは
誰であっても付き合いきれない
だけど、弟のテオだけは違った
お兄さんを愛し続けるのです
この弟の兄を思いやる行動こそが
ゴッホの名画を残すことができた偉業だったのかも知れません
(実際には兄弟間でも口論が絶えなかったそうです)
37歳という若いゴッホの死は
短銃による自殺が定説ということですが
弾の入射角などから他殺という異説もあるそうです
確かにこのような人格では
他人とのトラブルが多かったに違いありません
私が今まで見たカーク・ダグラスの主演作の中で
一番の熱演と力作
オスカー受賞のアンソニー・クインは
本物の芸術に触れることができる数少ない傑作
だけど語られることは少ない
ゴッホ同様、不遇の名作なのかも知れません
「疲れ果てて 永遠の入口で」
【解説】allcinemaより
色彩の探究者V・ミネリが、印象派の代表的画家ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの悲運の生涯を、I・ストーンの原作から映画化した、美しい映像がとにかく印象的な作品。主演はたっての願いでこの役を得たK・ダグラスで、さすがに力演を見せる。伝道の道を志したゴッホだったが、貧しい炭坑で坑夫と共に生活した廉で破門、故郷に帰り、弟テオの保護を受け絵に専従する。30をすぎてパリに出てゴーギャン(A・クイン好演、オスカー助演賞)と出合い、アルルで共同生活を送るが、豪放磊落な彼とは次第に折り合いを悪くし、遂に発狂し精神病院入り。それも快方に向かうが、大作『鴉のいる麦畑』を描いた後、短銃で自殺する。ハリウッド映画としては誠実な(しかし、その域には留まる)作品だ。