サイレント・ランニング(1972)




これは、カルトな作品でした
ほぼ、ブルース・ダーンのひとり芝居

今となってはかなりレトロに感じるSF映画ですが
その分味わいはありました

とくにヒューイ、デューイ、ルーイと名付けられた
3体のロボットが愛嬌があって可愛い

ロボットなのにずいぶん感情的なものを感じるなと思ったら
下肢不全の俳優が中に入って操作しているそうで
どうりで人間らしいわけです

「ウォーリー」がこの作品の影響を受け
その後ような物語なのは明らかだと思います
(ディズニーは自社の著作権には厳しいくせに
 手塚治虫氏など含め、他の作品をパクるのはいかがなものでしょう)


ここでのテーマは「人命か、それとも自然の優先か」
自然を守るために人を殺すことは正当化できるのか
と、いうこと

地球ではすべての自然が滅び、わずかな標本が
宇宙ステーションに取り付けられた温室ドームで
植物学者のフリーマン・ローウェルによって育てられていました

しかし他の(3人の)乗組員は、本物の自然を再生するより
人工管理された食生活のほうが便利だと感じています

地球からも「植物保存計画」は中止
ローウェルが8年間大切に育てた動植物を爆破し
地球に戻るようにという命令が下されます

ローウェルは動植物を守るため
命令に背き、仲間を殺し
遭難を偽装するため土星のリングに突入します





そのせいで作業中のルーイは宇宙に飛ばされてしまう

ローウェルは、自分と
自分の育てた植物が可愛いだけの勘違い男
信念のために、責任や愛情は一切ない

ロボットの方が、よほどやさしい
独り残されたデューイの姿が泣けます


宇宙空間なのに重力があったり
植物が枯れた理由が太陽光と気が付かなかったり
(植物科学者のくせに 笑)
手薄な演出にツッコミどころもありましたが(笑)


グリーンピースが設立されるより前に
このような作品を生み出すという着眼点がすごい

さすがSFX映像の父(私が勝手にそう呼んでます)
ダグラス・トランブル

自然保護論がかかえる矛盾や
エコテロリズムを描いた隠れた名作だと思います



【解説】allcinemaより
地球から緑が消えて久しい未来。植物は宇宙ステーション内のドームでわずかに栽培されているに過ぎなかったが、遂にそのステーションも放棄の命令が下る……。ベトナムの影残る70年代初頭に制作された米SF映画には絶望の未来を扱った作品が多く、これも環境破壊を主題にしたエコロジカルSFであったが、一人の植物学者によって宇宙に放たれたドームとそこに動く作業ロボットの姿を捉えたラスト・シーンはジョーン・バエズの切ない主題歌と共にそのテーマを最も明確にしたものと言えるだろう。M・チミノ、D・ウォッシュバーン、S・ボチコー(後にTVシリーズ「L.A. LAW/7人の弁護士たち」を産む)の脚本はややもすると感傷的で、ひとりよがりな主人公の性格をうまく処理出来ておらず、「未知との遭遇」等の名特撮マン、トランブルの初演出ともども荒削りな物だが、それ故に従来の作品には無かった新鮮な魅力がある。TV放映、ビデオ発売の後、最後に劇場(それもミニ・シアターだが)にかかったという不遇な秀作。