原題も「IKARIE XB 1」(宇宙船の名称)
これはすごい映画でした
原作はスタニスワフ・レムの「マゼラン星雲」(1956)
「共産主義の未来をバラ色に描きすぎた」とレムが言っている通り
「(集団で)苦難を乗り越えた先にある桃源郷」的なプロパガンダSF
とはいえ冒頭はまるでフィルムノワール
洗練されたデザイン(低予算で東宝特撮的なのは親近感 笑)
人間ドラマとしても成り立ち、しかもたったの88分
「スター・トレック」や「2001年宇宙の旅」が影響を受けたそうですが
行きついた先はイスカンダル的な、まんま「宇宙戦艦ヤマト」(笑)
光る衣装についてはマイケル・ジャクソンもパクっています(笑)
2163年、宇宙船イカリエ-XB1号は航海士や調査隊
老若男女40人と、犬やロボットまで連れ
アルファー・ケンタウルス系へ生命探査の旅をしていました
乗組員たちは楽観的で、食事やダンスやデートを楽しんでいます
悲観的なのは、未知への恐怖を抱く数学者と
地球に妻子を残してきた副艦長
テレビ電話で、副館長の妻が嘆いている
「あなたが帰った頃、私は老婆」
途中難破船を発見し、調査員ふたりが向かうと
(ナチス残党が作った宇宙ステーションらしい))
何らかの事故で酸素が不足し司令官が乗組員を毒殺
残った司令官も殺しあったと思われます
しかも核ミサイルを搭載、調査員が被爆し犠牲になります
その後も旅を続けいつも通り船外活動していた乗組員が
突然意識を失い(ひとりは死亡)
他の乗組員たちも次々不明の疲労感に襲われ眠りにつきます
25時間後目を覚ますと、原因は未知の惑星ダークスターから
発射された放射能線だということがわかりますが
錯乱したひとりの乗組員が中央制御室を封鎖してしまいます
しかもバーナーで壁を破ろうとしたパトリック(ロボット)を
銃で撃って破壊してしまう
(人間より、このロボットのほうに愛着を感じる)
通気孔から制御室に入った副艦長がなんとか説得に成功
ダークスターから発せられていた放射能線も
ある惑星の知的生命体が遮断してくれたことが判明し
イカリエはその知的生命体の惑星へ進路を取ると
妊娠中の乗務員が出産し「スター・チャイルド」が誕生
やがて雲を通り抜けると乗組員たちの目の前には
美しい都市が広がっていました
そして艦長の言葉が締めくくる
「我々が彼らを発見したのではない 彼らに我々が発見されたのだ」
希望に溢れ、生命が続く未来
冷戦や、核開発、宇宙開発競争があったにもかかわらず
戦後~80年代頃までは夢があった
貧しくても心の豊かさがあった
レトロではありますが、考察のはかどる秀作で
教養として見るのにもオススメだと思います
【解説】KINENOTEより
1963年.共産主義下のチェコスロヴァキアでつくられた本格的SF作品のデジタル・リマスター版を劇場初公開。密室の中で徐々に狂気に汚染されていく宇宙船の乗組員たちのサスペンスフルな人間ドラマと、近未来のユートピア的世界を独創的なスタイルで映し出す。スタニスワフ・レムの小説『マゼラン星雲』にインスピレーションを受け脚本を執筆したのは、特撮映像作品を多く手がけるインドゥジヒ・ポラークと「狂気のクロニクル」のパヴェル・ユラーチェク。衣装を「ひなぎく」の脚色を担当したエステル・クルンバホヴァー、音楽を「悪魔の発明」のズデニェク・リシュカ、監督をインドゥジヒ・ポラークが務める
22世紀後半、生命探査の旅に出た宇宙船イカリエ-XB 1は、アルファ・ケンタウリ系へと向かう途上、漂流中の朽ちた宇宙船を発見する。それはかつて地球から旅立った宇宙船で、船内には謎の死を遂げた乗組員たちの死体が横たわっていた。そんななか、この難破船に積まれた核兵器が爆発、数名の調査員が命を落とす。悲劇に見舞われた後も変わらず旅を続けるイカリエ-XB 1であったが、謎のダークスターによって乗組員たちはみな眠りについてしまうのだった……。