さらば愛しき女よ(1975)




「お古いタイプなのね」
「上半身だけはね」


原作ファンからは人気が高いミッチャム版マーロウ
けだるいながらも、古いミステリー本を読むような展開には
評価の高さもうなずけます

撮影時には、すでに60歳オーバーのミッチャムは
「強くなくては生きてはいけない」のマーロウには
さすがに老けすぎの感もありましたが(笑)

でもチャンドラーの偉大な原作を生かすには
その粋なセリフに陶酔するのには
やはり見た目や年齢より
渋くて素敵な声の、読み聞かせ的な要素が
重大なのかも知れませんね

ストリーは、銀行強盗で投獄されたものの
出所して大金を持っているムースという大男から
娼婦である、べルマ探しの依頼をマーロウがうけるとういもの

べルマという女性は名前を変え精神病院に入っており
すぐに見つかります
しかしムースは彼女は他人だという
本物のべルマは有力者の妻となっていました

男を虜にする女

そうなんだよな
たとえ滅んでしまってもいいから
手に入れたい女
そういうのを描くのがチャンドラーはうまい
堕ちたい願望

だけど、それをかっこよく
とことん気障にする

金は手にしたけれど
向かうのは安ホテル
ディマジオの記録を語りながら

悪い女を好きになったことは、決して言わない
女のことは決して悪く言わない

「やさしくなければ、生きている資格がない」
さすがでございました

でも、やっぱり原作は
私は「プレイバック」が一番トキメク



【解説】allcinemaより
R・ミッチャムのマーロウが、ラジオから流れるディマジオの連続安打記録をやたら気にしてて、それが巧い開幕と終幕をつくっており、さらに時代色をも出している。実際、撮影にしろ美術にしろ、40年代初頭のLAの雰囲気を心憎いほど掴んでいる。S・ランプリングの魔性の女ぶりも素晴らしく、ジャジィな音楽に心はすっかりチャンドラーの世界。ハード・ボイルドと呼ぶにはあまりにウェットで曖昧な彼の文学に、最も近いテイストを持った映画化作品だろう。