男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎(1981)


 
 
シリーズ27作目
マドンナは松坂慶子さん。
夢は竜宮城。
騒動はタコ社長が行方不明。
 
本当に綺麗で艶っぽくて渥美清さんとの相性もよくて
シリーズで最高のマドンナなのではないでしょうか、松坂慶子さん。
 
輝く黒髪に絹のようにきめ細やかな肌
完璧なうなじのライン、抜群のスタイル
女性から見ても溜息が出るくらい美しいですね。
彼女が話す(ちょっと苦手そうな)大阪弁も色っぽいこと
しかも上品ですねえ。
 
お墓参りしている女性と偶然知り合った寅さん。
大阪で芸者をしているふみさんは
やはり孤独で幸薄という、シリーズ共通のマドンナです。
 
お互い根なし草、堅気じゃない。
ふたりは共通点を感じたのでしょう、無意識に惹かれあいます。
 
そして松坂慶子様だからこの凝った演出なのか。笑
気の利いたセリフ、女性なのにとても粋。
決して男のメンツを壊さないのです。
寅さんの勘定の足りない財布にそっとお金をしのばせる・・
 
ふみさんに行き別れた弟がいることを知り
一緒に弟を探す寅さん。
でも弟は心臓発作で亡くなっていました。
哀しみにくれたふみさんは寅さんの下宿に酔ってやってきます。
 
寅さんの手を握り甘えようとするふみさんの手を
彼女のひざに戻す寅さん。
耐えきれず寅さんの膝で泣くふみさん。
 
そんなセンチメンタルを下宿のオヤジとおかみさん親子が
絶妙なタイミングで壊してくれます。
芦屋雁之助さんと初音礼子さんのやり取りはもう最高!
 
芸者としてたくさんの男性と接してきただろうふみさん。
男性を知り尽くしているだろう彼女は、やさしい態度の寅さんに
自分は女性としてではなく「友だち」としか思われていないのだと
感じたのではないでしょうか。
 
そして、寅さんもまたふみさんから「友だち」としか
思われていないと考えていたのでしょう。
自分は立派な人間でもないし、しかも冴えない。
 
本心は好きなはずなのに、寂しさを補い合いたいはずなのに
不器用なふたりは
お互いがお互いから逃げてしまうことになります。
 
そして柴又に戻った寅さんが
とらやのみんなに話すセリフにはジーン・・・
こんな本気で素直な寅さんの言葉があったでしょうか。
 
「気持ちだけはあるんだ
 でも、いくら気持ちだけあったって
 何してやりゃあいいのかわからねえんだよ。
 金はねえしなあ~
 ましてや、頭でも良けりゃあ
 何か気の利いた言葉のひとつも
 かけてやれるものを・・・
 それもできやしねえ」

寅さんに逢いにとらやにやってきたふみさん。
でもそれは寅さんに結婚することを報告するためでした。
 
「ハガキ一本出しゃすむことじゃねえか・・」
 
「こっちの気持ちにもなってくれって言うんだよ。
 こんな惨めな気分にさせられてよお」
 
私の解釈なのですけれど
(寅さんから友人としか思われていないと思っている)ふみさんは
結婚して遠い場所に行く前にどうしても
「好きな人に、恩人に、もう一度だけ逢っておきたかった」
のではないでしょうか。
 
でもふみさんのことを本当に好きだった寅さんにとって
それは残酷なことでした。

対馬にふみさんを訪ねる寅さん。
再会の感動に涙するふみさん。
 
大阪の下宿でふみさんを励ました時の
寅さんの言葉がよみがえります。

 
「そら、今は悲しいだろうけどさ、ね
 月日が経ちゃあ、どんどん忘れていくもんなんだよ」
 
「忘れるってのは、本当ににいいことだなぁ…」

「いや、オレ、ほら頭悪いから、すぐ忘れちゃうんだよ!へヘヘ」
 
 
次の旅へ、次の恋に、また頑張ってね。寅さんって
本当に寅さんを応援したくなるそんな「男はつらいよ」。
 
とにかく松坂慶子さんが綺麗すぎました。
彼女の眩しい美しさに終始うっとり。
これはもうお気に入りにしちゃうしかないです。

 


 
【あらすじ】ウィキペディアより
寅次郎は、旅先の瀬戸内海の小島で出会った薄幸な美人芸者ふみ(松坂慶子)と大阪で再会する。それまで、関西弁や関西の薄味に性が合わなかった寅次郎だが、ふみと出会ったことで一変する。そこで寅次郎は通天閣のたもとにある新世界の宿で大阪暮らしを満喫していた。自分の不幸な身の上話をとうとうと語るふみのかわいそうな姿を見るにつれ、寅次郎の価値観は変化していくのであった。気分はすっかり関西人なった寅次郎に、とらやの皆はどこで一体何があったのかとハラハラ、ドキドキする。しかし、ふみは結婚して対馬で暮らす事になってしまい、またしても寅次郎はフラれてしまうのであった。